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戦国異伝

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第二百五十四話 決着その三

「これがある」
「ふむ、やはり外道か」
「坊主でありながら刃を使うからか」
「薙刀どころかな」
 薙刀は僧兵も使う、武蔵坊弁慶もそうであったし延暦寺の僧兵達もよく薙刀を使っていた。それでかなり強かったのだ。
「刃を出すとはな」
「しかしこの刃は只の刃ではない」
「かすりでもすればか」
「毒を塗ってある、命はないぞ」
「ふむ、では切られねば済むこと」
 羽柴は落ち着いた声で述べた。
「では闘うとするか」
「死ぬのは御主じゃ」
 崇伝は闇の中にある様なドス黒い笑みで言った、そしてだった。
 彼と羽柴の闘いもはじまった、明智もだった。
 天海に対してだ、刀を構えて言った。
「覚悟は出来ておるな」
「何が覚悟か」 
 天海は血走った目で明智に言葉を返した。
「わしは死なぬ」
「そう言うか」
「ここも生きてじゃ」
「また本朝に害を為すか」
「それが我等じゃ」
「魔界衆か」
「そうじゃ、だからじゃ」
 それでというのだ。
「覚悟はせぬ、絶対にじゃ」
「生きてか」
「力を取り戻すまで隠れてじゃ」 
 そのうえでというにだ。
「またこの国に害を為してやるわ」
「怨念じゃな」
「我等の考えはか」
「怨念そのものじゃ」
 まさにというのだ。
「下らぬ、それは何もならぬが」
「それでもというのか」
「諦めるのならばじゃ」 
 その彼等がというのだ。
「斬る、それにな」
「御前に操られたことはか」
「忘れておらぬ」
 それも全く、というのだった。
「雪辱は晴らさせてもらう」
「ではな」
 天海も刃を出した、彼が出したのは大鎌だった。それを出して両手に持って明智と対するのだった。そして信長も。
 老人と対しつつだ、こう言った。
「逃がさぬと言っておく」
「わしをその手で倒すか」
「御主だけはそうせねばな」
 例え何があろうともという言葉だった。
「済まぬからな」
「だからか」
「御主はわしが倒す」
 信長はまた言った。
「そのことは言っておく」
「そう言うか、しかしな」
「御主死ぬつもりはないな」
「我等はどれだけ敗れようとも生きてきた」 
 これまで多くの者に敗れてきたがというのだ。
「だからじゃ」
「それでか」
「そうじゃ、わしも他の者もじゃ」
 誰もがというのだ。
「生きる」
「この場でもか」
「そうする」
「あくまでそう言うか」
「ここで死んでどうなる」
 こうも言うのだった。
「生きてそしてこの国を闇に堕とす」
「そうか、ではわしはじゃ」
「闇をか」
「払おうぞ」
 こう言ってだった、信長は。
 右に剣、そして左に槍を持って構えた。その姿でだ。
 そのうえでだ、こう言ったのである。
「その闇を払おう」
「御主を幼い頃に消すべきだったか」
「そう言うか」
「御主は日輪じゃ」
「わしはそれか」
「この世の全てを照らすな」
 そうした者だからこそ、というのだ。 
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