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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第77話

”サンクト地区”に到着したリィン達は”聖アストライア女学院”の正門前まで行き、待機していた。



~夕方・サンクト地区~



「そういえば……ラウラやツーヤ達はここに入るつもりは無かったの?」

聖アストライア女学院の正門前で待機していたフィーはある事が気になったラウラ達を見つめた。

「父から勧められはしたが武術の授業が無いらしくてな。まあ、その時点で私の選択肢からは無くなった。」

「はは、なるほど。」

ラウラの答えを聞いたリィンは苦笑し

「あたしとプリネさんはレーヴェさんが話した通り、オリヴァルト皇子にトールズ士官学院に入学する事を頼まれましたので、元々考えてはいませんでした。」

「そう言えばアリサ達の話では二人はオリヴァルト皇子の依頼によって入学したんだったな……」

ツーヤの話を聞いたマキアスは考え込む動作でツーヤを見つめた。



「うーん、ラウラやツーヤが女学院に入ったらとんでもない事になりそうだね。」

「確かに……目に浮かぶようだな。」

「フフ、ツーヤお姉様ならきっと人気が出るでしょうね。」

「うっ……!」

エリオットとマキアスの意見に微笑みながら頷いたセレーネの話を聞いたツーヤは表情を引き攣らせ

「???まあ、何人か知り合いもいるし、素晴らしい学院だとは聞いている。あのアルフィン殿下も在学されているそうだからな。」

「ああ、そうらしいな……」

ツーヤとは逆に何もわかっていないラウラは首を傾げた後話を続けた。



「あるふぃん殿下……?」

「一体どなたですか……?」

一方ある人物が気になったフィーとセレーネは首を傾げ、フィーの様子を見たリィン達は冷や汗をかいて呆れた表情をした。

「君な……昨日ゼムリア大陸に来たセレーネはともかく、いくら帝国出身じゃないとはいえ……」

「はは……でも、そんなものかもな。」

「アルフィン殿下っていうのはユーゲント皇帝陛下の娘さんだよ。『天使のように愛らしい』ってすっごく人気があるんだ。」

「へえ……」

エリオットの説明を聞いたフィーは目を丸くした。



「ふふ、たしかフィーと同い年だったか。以前お会いした事があるが噂にたがわぬ可憐さだったぞ。」

「やっぱりそうなのか……何度か雑誌の写真で見かけたことはあるんだが。」

「(そういえばエリスと同学年だったはずだけど……)―――双子の弟君がおられてそちらはセドリック殿下だ。エレボニアの皇太子でもある。」

「ふむふむ。」

「つまりはこの国の跡継ぎの方達ですね。」

リィン達の話を聞いたフィーとセレーネはそれぞれ自分達の頭に情報を詰め込んだ。



「そういえば、前に雑誌で何とかって皇子を見かけたけど。ユーシスのお兄さんくらいで濃い金髪をしてた。」

その時ある事を思い出したフィーはリィン達を見つめた。

「ああ、それはプリネ達の話に何度か出て来たオリヴァルト皇子だね。アルフィン殿下たちのお兄さんにあたるっていう。」

「お兄さんなのに皇太子じゃないの?」

「普通、王家の跡継ぎは長男か長女ですよね……?」

エリオットの説明を聞いて疑問に思ったフィーとセレーネは首を傾げた。



「詳しくは知らないが母君が平民だったらしくてな。馬鹿げた決まりだとは思うが皇位継承権から外れるらしくてね。」

「でも、最近その名前を結構聞くようにはなったな。たしか、何とかっていう飛行船でリベールから帰還したとかで……」

「ああ、リベールの異変後の”アルセイユ号”での帰還か。」

「うーん、あれは僕も見たけどかなり衝撃的だったよ。あんな真っ白で綺麗な飛行船、初めてみたもん。隣にあったメンフィル帝国の戦艦を見た時は怖かったけど。」

「アハハ……」

エリオットの話を聞いたツーヤは冷や汗をかいて苦笑し

「父さんが帝都知事として殿下とリウイ陛下達を出迎えたらしいが……確かにあの時以来、オリヴァルト殿下の名前をよく聞くようになったな。」

マキアスは考え込んでいた。



「あ、もう来てたのね。」

するとその時B班のメンバーがリィン達に近づいてきた。

「ああ、そっちも来たか。」

「ふふっ、お疲れ様です。」

「早いな、そっちは。」

「うん、ちょうどいい所で課題の方にケリを付けてね。」

「そちらの方は終わったのか?」

「フン、当然だろう。帝都に馴染みはないがちょうどいいハンデだな。」

「ユ、ユーシスさん……」

マキアスの質問に済ませた顔で答えたユーシスの言葉を聞いたプリネは苦笑した。



「ぐっ……この男だけは。」

ユーシスの答えを聞いたマキアスは唸り

(プリネさん。先程リフィア殿下とエヴリーヌさんを帝都で見かけました。どうやらまた抜け出してきたみたいですが……)

(お姉様達が?ハア……何事もないといいのだけれど……)

ツーヤの念話を聞いたプリネは疲れた表情をした。



「んー、仲良くするのはちょっと難しそうだね。」

「フフ、喧嘩をするほど何とやらかもしれないが。」

「あら、あなた達……」

「……ひょっとして?」

互いの顔を見合って会話をしているフィーとラウラの様子に気付いたアリサとエマは目を丸くした。



「はは……さすが女子は鋭いな。」

「コホン………うん。その、なんだ………そなた達にも心配をかけたな。」

「もう心配無用。」

「そっか……!うんうん、良かったじゃない!」

「ふふっ……そうですか。実習が終わったら誰かの部屋で一晩中話したい気分ですね。」

ラウラとフィーの答えを聞いたアリサとエマは嬉しそうな表情で二人を見つめた。



「ちょっといいかも。」

「フフ、少し照れくさいが。」

(うーん、女の子だな。)

(あはは、お泊り会は女の子の特権みたいなものだからね。)

女子達の様子を見たリィンとエリオットはそれぞれ苦笑していた。



「それよりさっきから気になっていたが……その子供は何なんだ?」

「もしかして迷子か?」

その時ある事が気になっていたユーシスとガイウスはセレーネを見つめ

「わあ……!可愛い……!」

「ふふ、お人形さんみたいですね。」

セレーネの可憐な容姿を見たアリサは目を輝かせ、エマは微笑み

「―――お初にお目にかかります。リィンお兄様の”パートナー”のドラゴンであり、ツーヤお姉様の妹のセレーネ・アルフヘイムと申します。以後お見知り置きをお願いします。」

セレーネは上品な挨拶をした。



「ええっ!?」

「ツ、ツーヤさんの妹さん……ですか……?」

「……なるほど。確かに言われてみればツーヤと似ているな。」

「それに”パートナー”って事はまさか……!」

セレーネの事を知ったアリサは驚き、エマは戸惑い、ガイウスはツーヤとセレーネの顔を見比べて納得し、プリネは信じられない表情でセレーネを見つめ

「……おい、一体何があったんだ?」

ユーシスは眉を顰めてリィンを見つめて尋ねた。その後リィン達はアリサ達にセレーネの事情を説明した。



「こ、こんな可愛い女の子が”竜”!?」

「しょ、正直信じられませんね…………………」

セレーネの事情を知ったアリサは驚き、エマは戸惑いの表情でセレーネを見つめ

「ベルフェゴールやリザイラの時と言い、リィンには善き風の導きが備わっているようだな。」

「フフ、そうですね。よかったですね、リィンさん。今は幼い為それ程力はありませんが”成長”すれば頼もしい存在になりますよ。」

ガイウスの話にプリネは微笑みながら頷き

「……睡魔族の”女王”であり”魔王”のベルフェゴール、”精霊王女”のリザイラ、そして元いた世界では王女であったセレーネ。契約した相手全員が”王族”とは、リィンの女運は一体どうなっているのか、興味があるな。」

ユーシスはからかいの表情でリィンを見つめた。



「うっ……」

(確かにその通りね♪)

(ふふふ、その事に関しては私も同感です。)

ユーシスの指摘にリィンは表情を引き攣らせ、ベルフェゴールとリザイラはそれぞれ興味ありげな表情をし

「た、確かに言われてみればそうだよね……?」

「加えて二人とも見目麗しい女性だし、セレーネも幼い今でこれだけ可愛いんだから、成長したら間違いなく凄い美人の女性になるだろうな。」

エリオットとマキアスはそれぞれ苦笑しながらリィンを見つめた。



「(ここでまた恋敵(ライバル)が増えるとか、本当にどうなってんのよ、リィンの女運は……!)…………」

「な、何でそこで俺を睨むんだよ?俺、アリサを怒らせるような事を何かしたか?」

アリサにギロリと睨まれたリィンは戸惑い

「べ、別に、睨んでなんかいないし、怒ってもいないわよ!」

顔を赤くしてリィンから視線を逸らして答えたアリサの言葉を聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて呆れた。するとその時鐘の音が聞こえて来た。



「”ヘイムダルの鐘”か……」

「……荘厳な響きだな。」

「さすがにオスト地区で聞こえるのとは違うな……」

「これが5時の鐘……そろそろ約束の時間だけど。」

鐘の音を聞いたリィンが考え込んだその時

「兄様……?」

正門が開き、制服を身に纏うエリスがリィン達を不思議そうな表情で見つめた。



「エリス、どうして……!って、ここに通ってるんだし別におかしくはないか。」

「え、ええ……Ⅶ組の皆さんもお揃いみたいですけど……」

リィンの言葉に頷いたエリスは戸惑いの表情でアリサ達を見回した。



「ふふ、一週間ぶりかしら。」

「えへへ……ちょっと事情があるんだけど。」

「……ちょっと待ってください。兄様たち、ひょっとして……5時過ぎにいらっしゃるという11名様のお客様―――でしょうか?」

「ああ、確かにⅦ組全員でちょうど11名になるけど……って、ええっ!?」

エリスに問いかけられたリィンは頷いた後ある事に気付いて驚き

「あの、それでは……私達に用事があるというのはエリスさんなのでしょうか?」

「いえ……わたくしの知り合いです。ああもう……!本当に悪戯好きというか……いきなりこんな不意打ちをしてくるなんて……!」

エマの質問に答えたエリスは呆れた表情でリィン達から視線を逸らした後頬を赤らめた。



「えっと、エリス?」

「失礼しました。トールズ士官学院・Ⅶ組の皆様。―――ようこそ、”聖アストライア女学院”へ。それでは案内させて頂きます。」

「あ、ああ。えっと……それで悪いんだけどこの娘―――セレーネも一緒に案内してもらってもいいか?少し事情があって、俺達と一緒に行動しているんだよ。」

「……?わかりました、あの方ならお客様が一人増えた所で気にしないでしょうし。」

「ありがとうございます。」

そしてリィン達はエリスと共に女学院の中に入り、エリスの先導によって進んでいた。


~聖アストライア女学院~



「お、男の方……!?」

「あの制服……どこかの高等学校かしら?」

「”トールズ士官学院”ですわ!以前、わたくしのお兄様が通っていましたもの……!」

「まあ、あの皇族ゆかりの……!?」

「平民の方も入学されているそうですけど……」

「ラウラ様……!……ラウラ様だわ……!」

「なんて凛々しい……まさかこちらに転入を!?」

「あの黒髪の女性は……もしかして”蒼黒の薔薇”の君!?」

「それに隣にいる夕焼け色の髪の方は”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”で名高いプリネ姫……!」

「なんと可憐な方……!」

「もしかしてお二人ともこちらに転入をされるのでしょうか………!?」

「あの金髪の方……公爵家のユーシス様!?」

「はぁ、あの背の高い男性は異国の方なのかしら………」

「小柄で紅茶色の髪の方は何とも可愛らしいというか……」

「あの銀髪の娘さんもとても愛らしいですわねぇ。」

「黒髪の男性の隣で歩いている銀髪の女の子はどちらの家の方なのかしら?まるでアルフィン殿下を見ているみたいですわ……!」

「あの金髪の女性は………どこの家の方なのかしら?」

「眼鏡の女性は……その、羨ましすぎるスタイルですね。」

リィン達が女学院の中を歩いていると、女学院に通う女学生たちがそれぞれ興味ありげな表情でリィン達を見つめて会話をしていた。



「うう、これはキツイな……」

「フン、あの程度の囀り、流せばいいだけだろうが。」

疲れた表情をしているマキアスにユーシスは呆れた表情で指摘し

「あはは……みんな興味津々みたいだね。」

エリオットは苦笑していた。

「ふふ、でもラウラやプリネ、ツーヤはさすがに人気があるわね。」

「ふむ、慕ってくれるのは光栄なのだが……」

「ああいう憧れの目で見られても困るんですよね……」

「ハア……」

アリサの指摘を聞いたラウラは考え込み、プリネは苦笑し、ツーヤは疲れた表情で溜息を吐き

「セレーネは平気そうだな……」

「フフ、わたくしは人に注目される事はなれていますので、平気ですよ、お兄様。」

目を丸くしているリィンに見つめられたセレーネは微笑みながら答え

「そう言えばセレーネは王族だから、慣れていてもおかしくないね……」

「フッ、年下でさえ平気で流しているのだから、少しは見習ったらどうだ?」

セレーネの言葉を聞いたエリオットは苦笑し、ユーシスはからかいの表情でマキアスを見つめ

「グッ。やっぱりこいつだけは……!」

「やれやれ。」

ユーシスの言葉に反応してユーシスを睨むマキアスの様子を見たフィーは呆れ

「……?……お許しください。普段、外部の者と接する機会があまりないものですから……」

リィン達の会話を眉を顰めて聞いていたエリスは静かな口調でリィン達に言った。



「先頭にいる黒髪の方は平民の方なのかしら………?」

「わ、わかりませんけど凛々しくって素敵ですわね……」

「エリスさんが案内してますけどどういう関係なのかしら……?」

「……………………」

(あらあら♪さすがご主人様ね♪)

(ふふふ、何らかの形でこの学院に通っている女性も妻の一人にするかもしれませんね。)

女学生たちの会話を聞いていたエリスは呆け、ベルフェゴールはからかいの表情になり、リザイラは静かな笑みを浮かべ

「いや、確かにこれはちょっと居心地が悪いな……みんなエリスと同じくらいの年齢なのか?」

居心地悪そうな表情をしていたリィンはエリスに尋ねたが

「……知りませんっ。」

エリスは怒気を纏って明確な答えを言わなかった。その後エリスの案内によってある建物の前に来た。



「ここは……」

「屋内庭園、みたいですね。」

「本学院の薔薇園になります。こちらに、本日皆さんをお招きした方がいらっしゃいます。」

「そ、それって……」

エリスの説明を聞いて何かを察したアリサは焦り

「どうやらやんごとなき身分の方らしいな。」

ユーシスは静かな口調で呟いた。



「――姫様、お客様をお連れしました。予定より一人多いですが、構わないでしょうか?」

「ええ、勿論構わないわ。入って頂いて。」

「……っ!?」

「ま、まさか……」

「あら、この声は……」

扉を開けたエリスとある人物の会話を聞いて正体を察したマキアスとエリオットは信じられない表情をし、プリネは目を丸くした。

「エリス、もしかして……」

「ご想像通りかと。さあ―――どうぞ中へ。」

そしてリィン達は建物中へと入って行った。



~ローズガーデン~



「あ――――」

「や、やっぱり……」

建物の中に入ったリィン達はテーブルの前で自分達を見つめている金髪の少女を見て驚き

「ふふっ……ようこそ―――トールズ士官学院”Ⅶ組”の皆さん。わたくしは、アルフィン。アルフィン・ライゼ・アルノールと申します。どうかよろしくお願いしますね?」

リィン達の反応を面白そうに見ていた金髪の少女――――アルフィン皇女は上品に会釈をした後リィン達に微笑んだ。その後リィン達はアルフィン皇女の手配によって、用意された紅茶を楽しみながらアルフィン皇女とのお茶会を始めた。



「もう、エリス。悪かったから機嫌を直して。ちょっとしたお茶目じゃない。」

アルフィン皇女は怒気を纏って自分から視線をそらしているエリスに話しかけ

「……知りません。兄たちに話がおありならご勝手にどうぞ。」

話しかけられたエリスは未だ怒気を纏い続けて答え、その様子を見守っていたリィン達は冷や汗をかいた。



「ふう……まあ、それはともかく。プリネ姫、また会えましたわね♪」

「フフ、なるほど。あの時、”近い内にまた会いましょう”と仰っていたのはこの事だったのですね。」

アルフィン皇女に微笑まれたプリネは苦笑し

「ええ♪そしてそちらの方がかの”蒼黒の薔薇”の君で有名なツーヤさんですわね♪噂に違わぬ凛々しさと美しさですわね。」

「―――お褒めに預かり光栄です、アルフィン皇女。我が名はツーヤ・ルクセンベール。以後、お見知り置きをお願いします。」

笑顔で自分を見つめるアルフィン皇女にツーヤは会釈をした。

「そしてそちらの小さなお客様はどなたかしら?”Ⅶ組”の方ではないようですけど……」

「わたくしはセレーネ・アルフヘイム。ツーヤお姉様の妹で、リィンお兄様にお仕えしている”パートナー”のドラゴンです。」

「!?……………………」

(うっ……!)

「まあ……貴女のような可愛らしい方が伝説の”竜”ですか。俄かには信じ難いですが、今の話は本当ですの?ツーヤさん。」

セレーネの自己紹介を聞いたエリスは驚いた後ジト目でリィンを見つめ、エリスの視線に気付いたリィンは唸り、アルフィン皇女は目を丸くした後ツーヤを見つめた。

「ええ。セレーネはあたしと違って竜としての力はまだまだ未熟ですから、竜化はできませんが。」

「そうなんですか……ふふっ、貴女のような可愛らしい方なら、竜に変化してもきっと可愛らしいお姿になるのでしょうね。」

「フフ、竜として”成長”して機会があれば、わたくしが竜になった姿をお見せしてさしあげますね。」

アルフィン皇女に微笑まれたセレーネも微笑みを返して答えた。



「ええ、楽しみにしていますわ。――――ユーシスさん、ラウラさん。お久しぶりですね。お元気そうで何よりです。」

「……殿下こそ。ご無沙汰しておりました。」

「ふふ……お美しくなられましたね。」

「ふふ、ありがとう。……でも、ラウラさんとはこの学院でご一緒できるかと期待していたのですけど。やっぱりトールズの方に行ってしまわれたのね?」

ユーシスとラウラの称賛に微笑んだアルフィン皇女は残念そうな表情でラウラを見つめた。



「ええ、剣の道に生きると決めた身ですので……ご期待に沿えずに申し訳ありません。」

「ふう、アンゼリカさんもトールズのに行ってしまうし……こうなったらわたくしも来年そちらに編入しようかしら。」

「ひ、姫様……!?」

アルフィン皇女の口から出た信じられない提案に驚いたエリスはアルフィン皇女を見つめた。



「ふふっ、やっとこっちを向いてくれたわね。」

「も、もう……!」

そしてアルフィン皇女のからかいに頬を膨らませているエリスの様子を見たリィン達は冷や汗をかいた。

(なんか楽しい人だね。)

(随分軽妙でいらっしゃるな。)

(うーん、噂には聞いてたけど、実物はそれ以上と言うか………)

(と、とんでもないな……これが皇族のオーラか……)

(天使みたいな表現も大げさじゃないよね……)

(ふふっ……同感です。)

(……確かにいい友達に恵まれたみたいだな。さすがに皇女殿下だったとは思わなかったけど……)

クラスメイト達がアルフィン皇女の印象について話し合っている中、リィンはエリスと会話しているアルフィン皇女の様子を見てエリスの手紙に書かれてあったエリスの”友人”がアルフィン皇女である事に気付いて静かな笑みを浮かべてアルフィン皇女を見つめた。 
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