デビルシスター
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2部分:第二章
第二章
「それで大学院出られて」
「今や弱冠二十七歳にして八条大学法学部助教授」
かなり有り得ない昇進である。つまり大学院を卒業してすぐにに助教授である。まず不可能な昇進である。
「その人が選んでくれたんだったら凄いじゃない」
「それであんたもそれやって成績あがったんだからいいじゃない」
「言っとくけれどね。一週間以内にどっちも全部やらないと罰ゲームあったのよ」
未来はまたまたその目をむっとさせて二人に語った。
「罰ゲーム。私の大嫌いな卵豆腐十個食べろって」
「いいじゃない。それ位」
「ねえ」
「卵豆腐位ねえ」
「全然」
「だから私大嫌いなの」
実はいい加減あまりにも適当な彼女達にも切れている未来だった。
「もうね。見ただけで顔が青くなって」
「卵豆腐は蛇じゃないわよ」
「幾ら何でもそれはないでしょ」
「ヤクザ屋さんと卵豆腐は大嫌いなのっ」
あくまでこう言うのだった。
「その二つはね。全然ね」
「で、それが嫌で勉強したのね」
「必死に」
「何とか全部やり遂げたわ」
眉をこれでもかという程顰めさせてしまっているので今にもくっつきそうになっている。顔まで変わって見えていた。
「連日連夜頭抱えながらやってね」
「何よ、結局よかったじゃない」
「おかげで未来大学に行けそうなんでしょ?」
「まあね」
何はともあれその努力で成績はあがって今に至っている。未来にしろ今の成績では八条大学は大丈夫だと言われているのである。
「それはね」
「何よ、優さんっていい人じゃない」
「ねえ」
そしてまた適当なことを言う二人であった。
「すんごく。何が不満なのよ」
「そこまでしてもらって」
「だからあんた達は何も知らないのよ」
未来は今度は頬を膨らませていた。
「何もね。私のお姉ちゃんよ」
「だから知ってるっていうのね」
「あんたが一番」
「血は水よりも濃いのよ」
こうした場合はあまり使われないかも知れない言葉である。
「本当にね。今日は何企んでるやら」
「またまた。優さんよ」
「きっと今は祈っておられるわ」
何処までも能天気な二人であった。
「世の中全ての人の平和をね」
「教会にでもおられてね」
二人の予想は半分だけ当たっていた。優はこの時教会にいた。そして礼拝堂の十字架にかけられた主の前で片膝をついている。そのうえで両手を組んでそのうえで祈っていた。
「どうか私に幸せが訪れますように」
自分のことだけを祈っていた。
「そして悪巧みが成功しますように」
次にはこんなことを願うのだった。未来の予想は当たっているようである。
しかしその彼女が立ち上がると。背は高く茶色がかったロングヘアで吊り上がり気味の目はきつい印象を与える。グレーのスーツはズボンでありそれが余計にスタイルのよさを見せている。赤いネクタイと黒いブラウスも実によく似合っている。知的な美貌もそこにあった。目鼻立ちもはっきりとしたものである。
その彼女が教会から去ろうとすると。そこに神父が来た。そうして彼女に穏やかに微笑んで声をかけるのであった。
「今日も来られているのですね」
「はい」
優は神父に対して気品のある笑みを浮かべて応えた。
「お祈りさせて頂きたいことがありまして」
「おお、それは何よりです」
神父は今の彼女の言葉を聞いてさらに言うのだった。
「それこそが神の望まれていることです」
「そうですね。その通りです」
優は今は素顔を隠していた。気品のある笑みで応えている。
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