英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第63話
ヨシュアと共に格納庫に向かったエステルは飛行艇がある奥の格納庫まで来た。
~グロリアス・格納庫~
「うふふ……。遅かったじゃないか。」
エステル達が奥の格納庫に到着すると、カンパネルラが現れた。
「あ、あんた……!?」
「……カンパネルラか。」
「つれないなぁ、ヨシュア。レーヴェとだけ話して僕には何の挨拶もなしかい?」
カンパネルラの登場にエステルは驚き、ヨシュアはカンパネルラを睨み、カンパネルラはからかうような口調で尋ねた。
「君が船に残っているとは思わなかったからね……。僕の動きを読んでいたのか?」
「あはは、僕はこれでも『計画』の見届け役だからね。他の連中よりも色々と気付くことが多いだけさ。」
「………………………………」
「ふふ、それにしても……。5年ぶりに会ったら君もずいぶん変わったねぇ。なかなか男前になったじゃない?」
黙っているヨシュアにカンパネルラは楽しそうな表情で言った。
「そういう君は全く変わっていないんだな。その外見のまま歳を取っていないみたいだ」
「うふふ、お肌の手入れは毎日欠かしていないからねぇ。君もよく女装するらしいし、いい化粧品を紹介しようか?」
「………………………………」
「あーもう、じれったいわね。ここで待ってたってことはあたし達と戦うつもりでしょ!?さっさと構えなさいよ!」
カンパネルラの様子を黙って見ていられなかったエステルは叫んだ後、棒を構えてカンパネルラを睨んだ。
「あはは、威勢のいい女の子だな。ヨシュアの彼女っていうからどんな子かと思ってたけど……なかなかお似合いなんじゃない?」
「か、彼女って……」
カンパネルラの言葉にエステルは照れたが
「おっと、彼女というのは空賊の女の子なのかな?モテモテだね、ヨシュアきゅん♪」
「……………………………」
続きの内容を聞くとジト目でヨシュアを睨んだ。
「……戯言はそのくらいにしてほしいな。どうしてジョゼットのことまで知っているのかしらないけど……」
一方ヨシュアは静かな口調で答えた後、双剣を構えた!
「君の戦闘力は僕と同じくらいのはずだ。それでもやり合うつもりかい?」
「あはは、そんなつもりはないよ。さっきも言ったように、僕は『計画』の見届け役でね。積極的に君たちを捕まえる義務はないんだ。」
「………………………………」
「ふーん、そうなんだ。だったらどうしてこんな所で待ってたわけ?」
楽しそうな表情で語るカンパネルラの言葉を信用していないヨシュアは油断なく双剣を構えてカンパネルラを睨み、エステルは首を傾げて尋ねた。
「うふふ、そりゃあ勿論、君たちに挨拶するためさ。でも、ただサヨナラじゃああまりにも芸がないからねぇ。君たちの脱出劇を少しばかり盛り上げてあげようと思ったんだ。」
そしてカンパネルラは指を鳴らした!すると何かが飛んで来る音がした後、エステル達の足元に銃弾が放たれ、そして目の前に大型の機械兵器が1体現れた!
「な、な、な!?」
「高機動飛行人形、”ペイルアバッシュ”!もうロールアウトしていたのか!」
大型の機械兵器の登場にエステルは信じられない表情をし、ヨシュアは真剣な表情で言った。そしてカンパネルラはお芝居をするような口調で言った!
「かくして再会した2人の前に新たな障害が立ち塞がるのでした。ああ、少年少女の運命やいかに!」
そしてエステル達は戦闘を開始した!
「……………………」
エステルとヨシュアを敵と認識した人形兵器は砲口にエネルギーを溜めこんだ後解き放ち
「っと!」
「!!」
敵の攻撃を回避した2人はそれぞれのオーブメントを駆動させた。するとその時敵はヨシュアに突撃したが
「絶影!!」
ヨシュアは神速の速さで駆け抜けて攻撃を回避するとともに反撃を叩き込んだ後駆動を終えたオーブメントでアーツを放った。
「時の牢獄に囚われろ!………クロックダウン!!」
「時よ!かの物にさらなる加護を!クロックアップ改!!」
ヨシュアのアーツによって敵の動きが鈍くされたその時エステルのアーツも発動し、ヨシュアの身体能力をあげてただでさえ素早いヨシュアのスピードをより上げた!
「朧!重裂破!!」
スピードが上がったヨシュアはすざましい速さで連続でクラフトを放った!すると装甲をも破壊するヨシュアのクラフトによって敵の装甲の一部がはげ
「鷹爪!落瀑蹴!!瞬迅爪!秋沙雨!!」
そこに跳躍したエステルが上空から強襲してヨシュアのクラフトによって防御が低くなった敵の装甲を一点集中攻撃をし
「双連撃!鳴時雨!!」
さらにヨシュアも続けて連続でクラフトを放って、エステルと共に敵に大ダメ―ジを与えた!
「…………………………」
エステルとヨシュアに集中攻撃された敵は主砲にエネルギーをチャージしたが
「「!!」」
「……………………」
同時にチャージされたエネルギーは放たれるとチャージを見た瞬間2人は散開していた為、敵の攻撃は命中しなかった!
「エステル!行くよ!」
「うん!任せて!」
ヨシュアの呼びかけにエステルは頷いて棒を構え、エステルの答えを聞いたヨシュアは神速の速さで敵を駆け抜けると共に攻撃した。
「そこだっ!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ………!」
続けてエステルは敵に近づいて、棒で強烈な連打を放って一端後退し、いつの間にか3人に分身したヨシュアと一緒に武器を構え、同時に攻撃を放った!
「「奥義!太極無双撃!!」」
分身したヨシュアが一人に戻ると同時に放った滅多斬りとエステルの強烈な一撃が命中した敵はエステルの攻撃によって床から吹き上がったすざましい衝撃波によって天井へと打ち上げられ、そして大爆発を起こしてバラバラになった!
「あはは、やるじゃない。ヨシュアは当然だけど、お姉さんの筋も悪くないね。」
「あ、あんたね~……。悪ふざけも大概にしなさいよ!」
戦闘が終了し拍手をして感心しているカンパネルラに怒りを抱いたエステルは棒を構えて、カンパネルラを睨んだ。
「怒らない、怒らない。さて、出番が終わった道化師は退場しようかな。」
「!?」
しかしカンパネルラの言葉に驚いた。
「うふふ……それじゃあ2人とも。近いうちにまた会おう。」
そしてカンパネルラはエステル達に恭しく礼をした状態で炎に包まれて消えた。
「き、消えた……。」
「幻術の一種だ。気にするほどじゃない。それよりも早く―――」
カンパネルラの行動に呆けているエステルにヨシュアが忠告しようとしたその時
「おい、本当にこっちに来たのか!?」
「ああ……間違いない!」
エステル達の背後から猟兵達の声が聞こえてきた!
「エステル、急いで!」
「う、うん!」
そしてエステルはヨシュアの先導によって1機の飛行艇に乗り込んだ。
~赤の飛行艇内~
「扉をロックして。すぐに船を発進させる。」
「わ、分かった!」
エステルに指示をしたヨシュアは操縦席に座って操作をし始めた。
(起動キー認識……。認証コード入力……。……よし!)
ヨシュアが操作すると飛行艇内の導力機関が起動し始めた!
「わわっ……」
「遠隔操作でハッチを解放する。すぐに発進するから席に座って。」
「……うん!」
そして二人が乗った飛行艇はハッチを開けてグロリアスから脱出した!
「くっ、このまま逃がしてなるものか……!」
「我々も飛行艇で出るぞ!」
すると二人が乗った飛行艇を追撃する為にグロリアスから3機の飛行艇が出撃してエステル達が乗っている飛行艇の追跡を始めた!
~赤の飛行艇内~
「わわっ……。これってレーダーよね。光が3つ、近づいてきてるわよ!」
一方飛行艇の中の席に座っているエステルは目の前にあるディスプレイに写った画面を見て慌てた。
「ああ、追っ手だ。何とかして撒く必要がありそうだな。」
「ヨシュアって……飛行艇の操作ができたんだ?」
「一通りはね。ただ、この船には武装が積まれていないんだ。あまりいい状況じゃない。」
「そっか……。って、なんでわざわざ武装がない船にしたの?」
ヨシュアの話を聞いて頷いたエステルはある事が気になって尋ねた。
「……この船だけ整備中でセキュリティが甘かったんだ。緊急の事態だったから選んでいる余裕がなくてね。」
「緊急の事態って……。あの……ひょっとして……あたしが”グロリアス”に捕まっちゃったこと……?」
「………………………………。お喋りは終わりだ。揺れるから気を付けて。」
自分が”結社”に捕われた事が原因である事を察して気まずそうな表情で尋ねるエステルに答えず、ヨシュアは警告した。すると銃撃の音がした後、飛行艇が揺れた!
「わわわっ……」
3機の飛行艇はエステルとヨシュアが乗っている飛行艇を執拗に追い、攻撃していた。
「くっ……まずいな。」
「追撃してきているヤツ、なかなか上手いわね……」
「”結社”の強化プログラムで操縦技術を修得したんだろう。応用は利かないけれど一方的な展開になると手強い。」
「そっか……。でも、応用が利かないってことは何かアクシデントが起これば―――」
ヨシュアの説明を聞いて溜息を吐いたエステルが呟いたその時、外で何かが命中したような爆音がした!
「あ、当たった!?」
「いや……この船じゃない!」
慌てて言ったエステルの言葉に予想外の出来事にヨシュアは驚いた表情で否定した。
そしてエステル外を覗くとがエステル達を追っていた3機の飛行艇の内の1機を撃墜した飛行艇――”山猫号”がエステル達の乗っている飛行艇の隣に飛んで来た!
「あ、あれって!?」
「”山猫号”……どうして?」
「……ヨシュア!そこにいるのはヨシュアだよね!?」
山猫号の登場にエステルとヨシュアが驚いたその時、スピーカーからジョゼットの声が聞こえてきた。
(この声……)
ジョゼットの声を聞いたエステルは不機嫌そうな表情になった。
「ああ……ここにいる!どうして君たちがこんな所にいるんだ!?とっくにリベールを発ったと思ったのに……!」
一方エステルの様子に気づいていないヨシュアは信じられない様子で尋ねた。
「へへ、あんたが困ってないか兄貴たちが心配しちゃってさ。それであのデカブツの様子を遠くから伺っていたんだ。」
「へへ、よく言うぜ。必死な顔で頼んできたのは誰だったかな~っと。」
「キ、キール兄!」
「ま、俺たちも”結社”には色々と借りがあるからな。リベールを発つのは借りを返してからにするぜ。」
ヨシュアがスピーカーに尋ねるとジョゼット達、カプア三兄妹の声が聞こえた。
「……そうか……。ありがとう、助かるよ。」
「へへっ……せいぜい感謝しなよね!」
「しかし、さっきから見てると反撃してないみたいだな。何か問題でもあるのか?」
ヨシュアの感謝の言葉にジョゼットは嬉しそうな様子で答え、キールはある事を尋ねた。
「武装を外した船しか調達できなくてね。ちょっと困っていたんだ。」
「そうか……」
「ど、どうしよう……」
「……よーし、こうなったらこのまま二手に分かれるぞ!一隻だったら振り切れるな?」
ヨシュアの話を聞いたキールとジョゼットは考え込んでいたが、ドルンはある事を提案して尋ねた。
「うん……問題ない。」
尋ねられたヨシュアは頷いて答えた。
「おーし、女神の加護を!」
「ヨシュア……気を付けてよね!」
そしてエステルとヨシュアが乗った赤い飛行艇と山猫号は二手に分かれ、追手も二手に分かれてそれぞれ追って行った。
~数十分後~
「エステル、レーダーは?」
「うん……もう光は消えたみたい。完全に振り切れたみたいね。」
数十分後、追手を振り切ったヨシュアはエステルに尋ねた。
「そうか……。………………………………」
「……………………………………」
エステルの答えを聞いたヨシュアは頷いて黙り、エステルも黙った為、その場は静寂に包まれた。
「え、えっと……。あの空賊たち、けっこう気のいい連中だったみたいね。まさかあのタイミングで助けに来てくれるなんて……。すごく見直しちゃったわ。」
やがてエステルが勇気を出して話し始めた。
「そうだね……。契約上の関係だと割り切っていたけど……人と人の関係はそう単純じゃないらしい。」
「あはは……今さら何を言ってるんだか。顔を突き合わせてれば仲良くなったり、ケンカしたり、色々とあるわよ。それが人の付き合いでしょ?」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルは苦笑した後、尋ねた。
「ああ……。でもそれは、僕の生きてきた世界では当たり前じゃなかった。」
「あ……」
「殺すか、殺されるか。奪うか、奪われるか。僕は君と出会うまでそんな事ばかり繰り返してきた。」
「で、でも……。お姉さんとレーヴェと一緒にいて幸せだった頃もあるのよね……?」
ヨシュアの話を聞いたエステルは恐る恐る尋ねた。
「……レーヴェが話したのか。………………………………。その記憶はあるけどまるで他人事みたいなんだ……」
「え……」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルは呆け
「心が壊れた時……僕はハーメルの思い出は自分の物じゃなくなった。人であることを辞めて人形になったからだと思う。」
「………………………………」
「姉さんが死んだ時の記憶もはっきりと覚えてはいるんだ。あの時、僕と姉さんは待ち伏せしていた男に襲われた。男は僕を殴り飛ばして……姉さんの上にのしかかった。」
「…………ッ………………」
そしてヨシュアの話を聞いて何が起こったのか察したエステルは顔を青褪めさせた。
「幼い僕は、それが意味することは分からなかったけど……それでも嫌な感じがして男の背中に掴みかかっていた。もみくちゃになった挙句、すぐに弾き飛ばされたけど……。いつの間にか、僕の手には男の銃が握られていた。」
「………………………………」
「思えば、あの時から僕には人殺しの才能があったんだろう。教わりもしないのに銃のセーフティを外した僕はためらうことなく引金を引いた。喉に穴を穿たれた男は不思議そうな顔をしてから口から血を吐いてうずくまった。そこで僕は、ようやく自分が人を撃ったことに気付いた。」
「………………………………」
寂しげな笑みを浮かべて語るヨシュアの話をエステルは悲しそうな表情で何も返さず、聞いていた。
「でも、男はまだ死んでいなかった。血走った目でヒュウヒュウと喘ぎながら軍刀を抜いて躍りかかってきた。獣に襲われた時のように僕は身を竦めて目を閉じたけど……衝撃はなく、柔らかいものにぎゅっと抱きしめられていた。」
「………………………………」
「目を開いた時、そこには微笑む姉さんの顔があった。いつの間にか男は倒れ……呆然としたレーヴェがいた。レーヴェに支えられた姉さんはハーモニカを僕に渡して……そしてゆっくりと目を閉じた。」
「………………………………」
ヨシュアの話をさらに聞いたエステルは辛そうな表情になった。
「……よく覚えているだろう?でも、こんな風に話してても僕はあんまり哀しくないんだ。他人の日記を読んでいるような……そんな不思議な違和感しかない。そしてそれは……君と一緒にいる時も同じだった。」
「………え………………」
そして唐突に自分の事を出されたエステルは呆けた声を出した。
「君の暖かさに触れて確かに僕は変われたと思う。君と共にいることに喜びを覚え、君を愛しく思うようにもなった。だけど僕は、どこかそれを他人事のように感じていたんだ。」
自分の言葉に呆けているエステルにヨシュアは寂しげに語った。
「―――それは多分……本当の僕が感じていたんだと思う。虚ろで空っぽな……できそこないの人形みたいな僕が。」
その後2人を乗せた飛行艇はルーアン地方のメ―ヴェ海道の海辺に着水した………………
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