英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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外伝~聖なる竜王女との契約~前篇
~マーテル公園~
「フウ、何だったんだ今のは―――――え。」
安堵の溜息を吐いたリィンは目の前に倒れている頭に小さなティアラを乗せた蒼銀髪のドレス姿の女の子を見つけて呆け
「お、女の子??」
「ドレスを着ているという事は……まさか貴族の子女か?」
「いや…………あの娘はもしかしたら―――」
女の子を見たエリオットは戸惑い、女の子が着ているドレスを見たマキアスは推測し、女の子の頭に乗っているティアラに気付いたリィンは女の子の身分をある程度察し
「フム……さっきまで我々の目の前にはいなかった。という事は―――」
「間違いなくさっきの光が関係しているんだろうね。」
考え込みながら呟いたラウラの推測にフィーが続けて言い
「え―――ま、まさか…………なの……?……ーネ…………」
女の子の登場にリィン達がそれぞれ戸惑っている中、女の子の容姿を見たツーヤは戸惑いの表情をして小声で呟いた。
「?」
ツーヤの様子に気付いたリィンが首を傾げたその時
「ん…………ここ……は…………?」
「あ……!」
「目が覚めたようだね。」
女の子が目を覚まして周囲を見回した。
「??貴方達はどちら様ですか?それにここは一体……」
リィン達に気付いた女の子はリィンを見つめて尋ねた。
「―――ここは帝都ヘイムダルの”マーテル公園”だ。そして俺達はトリスタにある士官学院―――”トールズ士官学院”の士官候補生だ。君は一体……?服装からするとどこかの貴族の子女と思うけど。」
「あ、はい。わたくしの名はセレーネ。セレーネ・アルフヘイム。水の都”アルフヘイム王国”の王女の一人です。」
「!!」
「ええっ!?お、王女様ぁっ!?」
「い、一体何がどうなっているんだ!?」
女の子――――セレーネの名と出身を聞いたツーヤは目を見開いて息を呑み、セレーネの身分が王女と知ったエリオットは驚き、マキアスは混乱し
「フム……その出で立ちや纏っている雰囲気、そして言葉遣い、何よりその頭に乗っているティアラ。王族と言われてもおかしくないが……」
「”アルフヘイム王国”なんて名前の国、聞いたことが無い。」
ラウラは真剣な表情でセレーネを見つめ、フィーは首を傾げて呟いた。
「―――聞いた事が無くて当然です。アルフヘイム王国はこの世界にも、異世界―――”ディル・リフィーナ”にも存在しない国なのですから。」
その時ツーヤが静かな表情で答えて前に出た。
「ツ、ツーヤさん?」
「もしかしてその娘の事、知っているの?」
ツーヤの言葉を聞いてリィンは戸惑い、エリオットは尋ね
「”ツーヤ”……?――――!!え…………も、もしかしてツーヤお姉様なのですか!?」
目の前の黒髪の女性がツーヤと呼ばれている事に首を傾げたセレーネはツーヤの顔をよく見て驚きの表情でツーヤを見つめた。
「お、”お姉様”って事はまさか……」
「その娘、ツーヤの妹?」
セレーネがツーヤを”姉”呼ばわりした事が気になったマキアスは信じられない表情をし、フィーは首を傾げて尋ねた。
「はい。―――久しぶりだね、セレーネ。まさか貴女と再会できる日が来るとは思わなかったよ。」
フィーの疑問に静かに頷いたツーヤはセレーネを優しげな微笑みを浮かべて見つめた。
「えええええええええええええっ!?って事は……!」
「ツーヤも王女って事になるね。」
「「……………………」」
ツーヤが王女であるセレーネの姉である事でツーヤも王女である事に気付いたエリオットは大声を上げて驚き、フィーは目を丸くし、リィンとマキアスは口をパクパクしていた。
「え、えっと……本当にツーヤお姉様なのですよね?一体いつ、”成長”なさったのですか……?それに”成長”なさったという事は”パートナー”も見つけたのですよね?王宮にいるはずのお姉様が一体どうやって……」
「?あたしが王宮に?……一体どういう事?覚えている限りでいいから、何があったのかを教えて。」
セレーネの話を聞いて何かがおかしいと察したツーヤはセレーネに尋ねた。そしてセレーネは自分の事情を語り始めた。
ある日母親である女王が重い病にかかり、治療法も必死に探したが見つからなかった。そしてその夫である自分とツーヤの父親が別の大陸にあると言われているどんな病気も治すと言われている薬を探す為に部下達と共に旅立った。
セレーネとツーヤは王宮で留守番をするはずだったが、二人とも父親と共に薬を捜す事を強く思ったが、二人ともいなくなれば母親を寂しがらせてしまうと思い、どちらが父親についていくかじゃんけんをした結果セレーネが勝ち、ツーヤの助けによって王宮を抜け出したセレーネは荷物の中に隠れた。
荷物の中に隠れていたセレーネはやがて隠れていたが兵士達にわかり、慌てた兵士達はすぐに女王の夫に報告したが、夫はセレーネがついて来る事を許可し、そのままセレーネは父親達と共に旅をする事になった。
船旅は順調で無事大陸に到着したセレーネ達だったが、ある日魔物の群れに襲われ、父親も兵士達も皆魔物に殺され、唯一生き残ったセレーネは必死に逃げたが、ついに崖まで追い詰められ、魔物達が近寄った際に足を踏み外したセレーネは崖から転落し、そこで記憶は途切れた事を説明した。
「……………………」
セレーネの事情を聞き終えたリィン達は重々しい様子を纏って黙り込み
「ひっく……お父様…………」
父親の死を思い出してしまったセレーネは涙を流し始め
「……セレーネ…………今まで辛かったでしょう……今は思い切り泣きなさい……」
「ひっく……お父様……うああああああああああ―――――っ!!」
ツーヤに抱きしめられたセレーネはツーヤの胸の中で思い切り泣いた。
「……お見苦しい所をお見せしてしまって、申し訳ありませんでした。」
その後泣き止んだセレーネはリィン達に頭を下げ
「いえ、俺達の事は気にしないで下さい。」
「親が死んだら、誰だって悲しんで当然ですよ……」
「……大切な娘である貴女が生きていただけでも、貴女を守って名誉の死を遂げた御父上が浮かばれると思います。」
「……お悔やみを申し上げます。」
セレーネに頭を下げられたリィン達はそれぞれ慰めの言葉をかけた。
「……でも、今の話を聞いて思ったんだけど、おかしな事があるよ。」
「へ……」
「おかしな事って?」
フィーの疑問を聞いたリィンは呆け、エリオットは首を傾げて尋ねた。
「その娘がいる世界からわたし達の世界に移動した方法やこの公園に現れた方法はとりあえず無視するにしても、今の話だとツーヤは王宮にいる事になるけど。」
「あ……!」
「そ、そう言えばそうだよな……?」
フィーの指摘にエリオットは目を丸くし、マキアスは戸惑いの表情でツーヤを見つめた。
「あたしもその事が気になりましてね。実はあたし――――」
そしてツーヤはリィン達に自分がゼムリア大陸に来るまでセレーネと全く同じ事情で、気がついたら記憶喪失の状態でリベールのルーアン地方の森で倒れており、そこに孤児院を経営している夫婦に拾ってもらいそのまま育ててもらい、”パートナー”であるプリネと出会った後、そのままプリネと契約し、孤児院の子供達や院長先生に別れを告げてプリネと共に孤児院を旅立って今に到る事を説明した。
「そ、それって……」
「セレーネ姫とツーヤの事情がほぼ同じ……これは一体……」
ツーヤの事情を聞いたエリオットは驚き、ラウラは真剣な表情で考え込んだ。
「んー、あくまで私の推測になるけどそれでもいいかしら?」
「ベルフェゴール?今の話を聞いて何かわかったのか?」
その時ベルフェゴールがリィンの傍に現れ、ベルフェゴールの言葉が気になったリィンは尋ねた。
「え……ひ、人がいきなり……!?一体どうやって……そ、それによく見たら翼もありますし……」
ベルフェゴールの登場にセレーネは驚いたが
「ア、アハハ……後で説明してあげるね。」
「は、はい。」
苦笑するツーヤに言われ、無理矢理納得した様子で頷いた。
「多分その娘、そっちのツーヤって娘が元いた世界とは”異なる世界”――――”並行世界”から来ているんだと思うわよ。」
「へ、並行世界??」
「現実とは別に異なる現実がある世界の事か?あくまで仮説だし、そんな夢のような話、普通に考えてありえないぞ!?」
ベルフェゴールの推測を聞いたエリオットは戸惑い、マキアスは信じられない表情で指摘した。
「あら、十分にありえる話よ?―――だって、私は”ディル・リフィーナ”が”二つに分かれていた時代”から生きているんだから。当時は世界が一つになるとは思わなかったし、このゼムリア大陸へ転移する門が現れるなんて思わなかったもの。―――第一、このゼムリア大陸自体も”ディル・リフィーナにとっては並行世界”、そして”ゼムリア大陸にとってはディル・リフィーナは並行世界”と言ってもおかしくないわよ?」
「……………………」
「フム…………」
「……話が難しすぎてよくわかんない。」
「つ、つまりそちらのセレーネ姫は”ツーヤが元いた世界とは異なる世界―――並行世界”から何らかの理由でこのゼムリア大陸に現れたって事か?ひ、非常識すぎる……」
ベルフェゴールの答えを聞いたリィンは驚きのあまり口をパクパクさせ、ラウラは考え込み、フィーは疲れた表情で呟き、マキアスは表情を引き攣らせた。
「う、う~ん…………とりあえずセレーネ姫をどうすればいいのかな?」
「それは…………」
エリオットの指摘を聞いたリィンは困った表情でセレーネを見つめ
「ツーヤの話ではツーヤが元いた世界への帰還方法はわかっていないという話だからな……」
「……つまり孤児って事になるね。」
マキアスとフィーは心配そうな表情でセレーネを見つめ
「―――ツーヤ。例え並行世界の出身とは言え、セレーネ姫はそなたの妹。セレーネ姫の今後の身の振り方について何とかして差し上げられないか?」
ラウラは真剣な表情でツーヤを見つめた。
「…………そうですね。サフィナ義母さんに事情を説明して、預かってもらおうかと思っていますが……―――セレーネはどうしたいの?勿論あたしは貴女の事をあたしの妹として喜んで受け入れるよ。ただ、今のあたしは事情があって、学院に通っているから貴女とあまり一緒にいられないから、貴女をあたしの義理の母親に預けようと思っているけど。」
「わ、わたくしは…………」
ツーヤに尋ねられたセレーネは答えに困って戸惑いの表情でツーヤから視線を外したその時、ある事に気付いた。
「!え、えっと……そちらの黒髪の方、名を教えて頂けませんか?」
「へ?あ、ああ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。――――リィン・シュバルツァーと申します。」
「リィン様ですか。――――リィン様、突然の申し出で驚くと思いますが、どうかわたくしの”パートナー”になって下さいませんか?」
「へ?パ、”パートナー”??」
「あら♪何だか面白そうな予感ね♪」
「セ、セレーネ!?も、もしかしてリィンさんが……!」
セレーネの頼みにリィンは戸惑い、ベルフェゴールは口元に笑みを浮かべ、ツーヤは驚きの表情でセレーネを見つめた。
「はい。リィン様がわたくしの”パートナー”です。お母様から話は聞いていましたが、これが”パートナー”を見つけた時の嬉しさなのですね……」
ツーヤに見つめられたセレーネは頷いた後リィンを見つめて微笑み
「そう…………」
セレーネの答えを聞いたツーヤは静かな表情で頷いた。
「え、えっと、ツーヤさん?その”パートナー”って何なんだ?」
「できれば私達にも説明を頼む。」
「あ、はい。”パートナー”というのは――――」
そしてツーヤはリィン達に自分達の世界の竜族は直感的で感じた人間と”パートナー契約”を結び、共に生きて行く事を説明した。
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