英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
外伝~精霊の姫君と闇の姫君の契約~
一方エルモ村を観光をしていたプリネは誰かに呼ばれるような声を感じ、村を一緒に廻っていたツーヤと共に気配を追って街道に出た。
~トラッド平原~
「ご主人様、本当にこちらでいいんですか?」
「ええ。急ぎましょう。なんとなくなんだけど、声の主は切羽詰まっているようだったから。」
2人がしばらく歩くとそこには魔獣の群れが何かを囲んでいた。
「ご主人様、あそこ……!」
「ええ、もしかしたらあそこに助けを求める声の主がいるかもしれません。まず、魔獣を退治しますよ!」
「はい!」
プリネとツーヤはそれぞれ武器を手に魔獣の群れに奇襲をした!
プリネ達が来る前、街道の外れでパズモとは違った妖精が窮地に陥っていた。
「くっ……精霊王女であるこの私が……!」
その妖精はパズモと違い、身体の大きさはミントやツーヤの半分くらいはあるが小さな身体に反して胸は大きく、どこか高貴な雰囲気を纏わせて両手に自分の身体並に大きい槍を支えに跪いて、自分を囲む魔獣を睨んでいた。その妖精はパズモと違って豊富な魔力を持っていたので異世界でも平気に活動していたのだが、魔力の供給が出来なくついにその時が来て弱っているところを魔獣が見つけてしまったのだ。妖精は最初は抵抗して難なく倒していたが、弱っている身体は長持ちしなかったので、ついに戦闘が出来なくなり無意識に念話で助けを呼んだのだ。
「メェ~!」
「くっ、魔獣ごときが汚い手でこの私に触れるな!粒子弾!!」
「メェ!?」
襲って来た魔獣に精霊は片手から雷が籠った魔力弾を放ち、消滅させた。
「くっ、力が……!ウィル、私の初めてをあげたのですから助けに来なさい!(フフ、そんな事を言っても無駄なのに……お願い……!誰でもいいから私を助けなさい!)」
その妖精は妖精の中でも王族に値する種族でプライドが高く人間には興味はなかったが、自分の領域に入って来て自分を負かし、人間に興味がなかった妖精自身が唯一興味を持ち、身体を許したある人物の名前をつい口に出し、異世界にいる人物がこんな所に来るはずがないとすぐに気付き、諦めた後念話で助けを求めた後弱っていた体に鞭をうつかのように飛び上がり、襲ってくる魔獣を槍で撃破していた。
「貫け!」
妖精が槍を震うと襲って来た魔獣がまた一匹消滅した。妖精の強さに魔獣達は本能ですぐに襲いかかる訳にはいかぬと警戒し、その場は硬直していた。その時、警戒していた魔獣の群れが乱れた。
「そこっ!」
「たぁっ!」
「!?」
魔獣の群れにレイピアと刀で奇襲して倒したプリネとツーヤは妖精を見つけて、妖精を守るように自分の背後に妖精を庇った。妖精は突如現れた救援者に驚いた。
「あなたが助けを求めた声の主ですか?」
「え、ええ……貴女達は?」
プリネに尋ねられた妖精は戸惑いながら頷いて、プリネ達の正体を尋ねた。
「それは後で話します!貴女は自分の身を守る事だけに専念して下さい!」
「……わかりましたわ。」
「来ます……!」
ツーヤの警告の言葉と同時に魔獣達はプリネ達に襲いかかった!
「はぁぁぁぁ………ラファガブリザード!!」
襲いかかって来た魔獣達はツーヤを中心とした吹雪によって吹き飛ばされ、吹雪によって氷漬けになる魔獣もいた。
「闇よ!我が仇名す者達に絶望を!……黒の闇界!!」
そこにプリネの魔術が命中し、魔獣達は全滅した。しかしそこに一際大きなミミズのような魔獣が現れた。
「これは……!」
「この魔獣はギルドの掲示板にあった手配魔獣……!」
「(手配魔獣……魔獣の中でも手強く遊撃士の人も手こずる魔獣……)ご主人様、あたしに任せてもらえませんか?」
「ツーヤ!?何を言っているの!手配魔獣は普通の魔獣と違うのですよ!?」
ツーヤの言葉にプリネは驚いて声を出した。
「はい、わかっています。」
「だったらなぜ、そんな事を言うの!?貴女一人で倒すのはかなり難しいわよ!」
「自分一人の力を試してみたいんです。……ご主人様は大陸最強と言われるメンフィルの皇女様です。あたしはそんな凄いご主人様と肩を並べて戦いたいんです!護られてばかりは嫌なんです!」
「ツーヤ………わかったわ。でも、不味いと思ったら手は出させてもらうからね?」
「はい。」
ツーヤの決意にプリネは驚いた後、ツーヤの意思を尊重し、一端弱っている妖精と共に後方に下がった。
「……!」
襲って来た手配魔獣を見て、ツーヤは顔を引き締めて刀で防御した後、クラフトを放った。
「たぁっ!やぁっ!」
クラフト――飛翔剣舞によって2回斬られた魔獣はのけ反った後、自分の身体を揺らして小規模な地震を起こした。
「キャッ!?」
地震によって足元から土が盛り上がり、それによって傷ついたツーヤは悲鳴をあげた。
「ツーヤ!」
「大丈夫です!水よ、癒しの力を……ヒールウォーター!!」
プリネの心配する声に自分は無事である事を答えたツーヤは魔術で自分の傷を治した。
(傷つければ地震を起こして、反撃をする……か。だったら一気に決める!)
魔獣の攻撃を分析したツーヤは刀を構えながらジリジリと魔獣の周りを歩いて、睨みあっていた。そして睨みあいに耐えきれなかった魔獣は尻尾らしき所から稲妻のような光を放った。
「(……今!)ハァッ!」
素早く魔獣の懐に入って魔獣の攻撃を回避したツーヤは刀を片手に持ち、もう一方の籠手のしている手で魔獣の腹の部分らしき場所を攻撃した。
「!?」
クラフト――延髄砕きを受けた魔獣は腹に入った一撃のせいで身体が痺れた。さらにツーヤは片手に持っていた刀を両手に持ち、闘気を込めたクラフトを放った。
「斬!」
闘気が籠った斬撃のクラフト――十六夜”斬”を受けた魔獣は尻尾の部分と身体が分かれた。さらにツーヤは一気に勝負を決めるために一端後退して片手を空へ掲げて叫んだ。
「決めます……!凍れ!」
ツーヤが片手を空へ掲げると、魔獣の周りに吹雪が吹き荒れ、吹雪によってできた氷が魔獣を氷の中に閉じ込めた。そしてツーヤは刀で氷の中に閉じ込めている魔獣を氷ごと砕くように激しい攻撃を行った!
「ハァァァァァァッ……!ダイヤモンド……バーグ!!」
氷の中に閉じ込められていた魔獣はツーヤの滅多斬りによって消滅した。
「勝てました……!」
魔獣の消滅を見て、ツーヤは刀を鞘に収めて自分一人で勝てた嬉しさをかみしめた。
「終わったようね。」
「ご主人様。」
戦闘が終わり、近付いて来たプリネにツーヤは嬉しそうな顔で駆け寄った。
「もう……無茶はしないといったのに、いきなりこんな事をするなんて……」
「ごめんなさい……でも、あたし……」
呆れているように聞こえたプリネの声にツーヤは気不味そうな表情で口ごもった。
「フゥ……まあいいわ。私にもあなたの気持がわかるし、今回は多めに見てあげましょう。」
「ありがとうございます。」
「でも、もうさっきみたいな無茶は許しませんからね?」
「はい。」
プリネに許してもらえたツーヤはホッとした後、プリネの注意に頷いた。
「ハァ……ハァ……私を狙う無礼者達を成敗した事は感謝します、闇夜の眷属達よ。」
そこに息絶え絶えな妖精がフラフラと飛んできて、プリネ達の前に来た。
「あの……顔色が悪いようですが、やはり魔力が?」
「……ええ。今は……こうやって飛んでいるだけが……精一杯なのですわ……!」
プリネの言葉に妖精は顔色を悪くしながら悔しそうな表情で答えた。
「待ってて下さい。今、魔力を分けます。」
そしてプリネは自分の魔力を妖精に分け与えた。魔力が回復した妖精は顔色がよくなり、プリネにお礼を言った。
「………まさかこの私が闇夜の眷属から施しを受けるとは思わなかったわ……礼を言っておきますわ。私はフィニリィ。精霊の中でも王族に値するこの私が感謝しているのです。光栄に思いなさい。」
魔力が回復して元気が戻った妖精――フィニリィは高貴な雰囲気を纏わせて、プリネ達にお礼を言った。
「私はプリネ。プリネ・マーシルンと申します。この子はツーヤ。竜の子供です。」
「……初めまして。」
ツーヤは妖精であるフィニリィを興味深そうな目で見つつ、お辞儀をした。
「……マーシルンですって?どうして闇夜の眷属の皇族がこんなところにいるのよ?」
プリネのフルネームを聞いたフィニリィは驚いた後、尋ねた。
「実は………」
そしてプリネはフィニリィに事情を説明した。
「フーン……ウィルみたいな奇特な人間がこっちの世界にもいるのですね……」
「あの……今、ウィルとおっしゃいましたが、もしかしてウィルフレド・ディオンという方の事ですか?」
「ええ。あら、貴女もウィルと知り合いなの?」
「いえ、姉が以前ユイドラに滞在した事があって、その時お世話になったのがウィルフレド様だったので、その時の事を話してくれたんです。貴女はウィルフレド様の仲間なのですか?」
「……まあそんなところですわ。」
「それにしてもわざわざユイドラからどうしてここに?」
プリネはユイドラに住んでるであろうフィニリィがどうして異世界にいるかわからず、尋ねた。
「……最近ユイドラのユマ湖という場所に変なひずみを感じたましたの。精霊王女である私がそれを見に行ったのですが、そのひずみは異界に繋がっている事がわかりました。それで私はユイドラに住む人間や生物達がそれに入らないように、ひずみに入ってそのひずみが出ている元であるこの世界から封印しましたの。それとユマ湖に住む水精や土精達から湖を守っていた幻獣がひずみが出来た際、その中に入ってしまったと聞きましてね……探す義理はないのですが、元の世界に帰るついでにその幻獣を探して世界中を廻っていたのですわ。」
「なるほど……それで探し人は見つかったのですか?」
「いいえ。ま、精霊である私と違って異世界でも平気でいられる幻獣ですから、どこかで無事でいるでしょう。それに巨大な体をしていますからこちらで誰かに見つかれば噂になりますわ。その内見つかるでしょう。」
「そうですか……それで貴女はこれからどうするのですか?よければ、私が元の世界に帰れるよう手配をしますが。」
「そうですわね……」
プリネの提案にフィニリィはその場で考えた後、以外な事を申し出た。
「貴女、私と契約をする気はない?」
「え……それはありがたいのですが、いいのですか?」
フィニリィの申し出に驚いたプリネは再度確認した。
「ええ。助けて貰った恩を返さずに去るのは精霊の中でも王族種であるこの私の誇りが許しませんわ。それにユイドラに戻った所でする事もなく、無駄な時間を過ごしているだけですわ。それに貴女は皇女ですから、精霊王女であるこの私と釣り合ってちょうどいいでしょう。……というかこれは命令です。私と契約をしなさい。」
「は、はぁ……では……」
強引に契約を迫るフィニリィにプリネは戸惑いながら頷いた後、両手を出した。そしてフィニリィは槍を虚空に仕舞った後、小さな手でプリネの両手を握った後プリネの魔力に溶け込むようにその場から消えた。
「あの、ご主人様。さっきの妖精の方はどちらに?」
一連の流れを見たツーヤは消えたフィニリィの事を聞いた。
「フフ、今呼びますね……フィニリィ!」
プリネが呼ぶと、プリネの身体から光の玉が出て来て、やがてその中からフィニリィが現れた。
「これからよろしくお願いしますね、フィニリィ。」
「フフ、この私が力を貸す事、光栄に思いなさい。」
フィニリィは小さな身体ながらも豊かな胸を張って答えた。
こうしてプリネは新たな仲間、精霊王女フィニリィと契約した。そしてツーヤと共にエルモ村に戻った………
ページ上へ戻る