英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第69話
ツァイス市中の導力停止現象から一夜明け、博士は改めて黒のオーブメントを調べていたが温泉で有名なエルモ旅館から温泉を汲み上げる導力ポンプが故障し、女将が博士に直しに来てほしいと依頼したのだがオーブメントを調べている博士は忙しく、代わりにティータが行くことになりその護衛にエステル達がつくことになり8人はエルモ村へ足を向けた。
その後旅館である紅葉亭に向かったエステル達はポンプ小屋の鍵をもらい、行ったのだが現場を見て動き出したティータを見て自分達はいても邪魔だと思いその場をティータに任せて一端紅葉亭に戻ったのだが、観光客が一人で街道に出たという知らせを聞き、そんなに人数はいらないので今まで仕事を手伝ってくれているリフィア達には観光を楽しんでもらい、エステル、ヨシュア、ミントの3人は急いで観光客の保護に向かっていた。
~トラッド平原~
「まさか護衛もつけずに街道に出る人がいるとはね……会ったら注意してやるわ!」
「ママの言う通りだよ!ミントだって先生から『決して一人で街道を歩いてはダメよ」って言われてちゃんと守っているのに、ミントより大人な人がどうしてそんな事をするのかな?」
「まあまあ、エステル、ミント。そういう人も中にはいるよ。」
憤っているエステルとミントをヨシュアが宥めていた。
「ふえ~ん、やだやだ、助けて~」
街道の外れを探していたエステル達は助けを求める声を聞いた。
「今のは……」
「うん、近いね。」
「どうやらまだ魔獣んい襲われていないようだね、ママ。」
声に気付いた3人は声の発生源に近づこうとした時同じ声がまた聞こえてきた。
「エイドス様~!お父さん、お母さん~!ナイアルせんぱ~い、助けて下さいよ~!」
「こ、これって……」
「想像通りだと思けど……とにかく、急ごう!」
「??(ママとヨシュアさんが知っている人なのかな?)」
声に聞き覚えがあったエステルとヨシュアは苦い顔をし、唯一わからないミントはエステル達の様子に首を傾げながら求めている声の元に向かった。
そこには関所を襲った狼の魔獣に囲まれた女性――ドロシーがいた。
「ワ、ワンちゃんたち……。とりあえず話し合いましょ~?わたしなんか食べたって美味しくないと思うのですよ~。毎日12時間以上寝てお野菜もしっかり食べてるからお肌もツルツルだしぃ……。……って、なにげにヘルシーで美味しそう!?」
「「「「グルルルル……」」」」
ドロシーの意味不明な命乞いと自爆を理解しない魔獣達はドロシーに近寄った。
「ひぃ~ん、こんな事なら給料前借して、おいしい物いっぱい食べておくんだった~」
「オン!」
「きゃあ!」
ドロシーの後悔も聞かず魔獣達の一匹が襲いかかった。
「せいっ!」
「ハッ!」
「燃えちゃえ~っ!ファイアシュート!」
その時エステル達が飛び込んで襲いかかろうとした魔獣の一匹にエステルやヨシュアが致命傷を与えて、ミントは魔術で止めを刺した。
「ハッ……あ、あなたたちは~!」
ドロシーはエステル達を見て驚いた。
「ふう……やっぱり思った通りね。」
「ドロシーさん、もう心配ありませんよ。」
「眼鏡のお姉さん、下がってて!ミント達が魔獣をやっつけるから!」
エステル達はドロシーを庇うように、ドロシーの前に出たが
「………どちらさま、でしたっけ?」
「ガクッ……」
「ほえっ?」
「遊撃士協会のエステルとヨシュアです。」
ドロシーの言葉にエステルとヨシュアは脱力し、ミントは首を傾げた。
「うふふ、冗談だってばぁ。エステルちゃん、ヨシュア君。こんな所で会うなんて奇遇ねぇ。そっちの女の子とは初めてだよね?リベール通信のドロシーだよ~。よろしくね~。」
「え、えっと……ミントだよ。よろしく………でいいのかな?」
緊急事態にも関わらず自己紹介をするドロシーにミントは戸惑いながら答えた。
「は、激しくやる気が……ミントもわざわざ、ドロシーに合わせて答えなくていいから。」
「エステル、ミント、来るよ!」
ヨシュアの警告の声と同時に魔獣が飛び掛ってきたのを見て、エステルとミントは気を引き締めて魔獣達と戦い始めた!
「行くよ……せいっ!はっ!」
「ギャン!?」
戦闘開始早々、身のこなしが速いヨシュアは先制攻撃代わりにクラフト――双連撃で一匹の魔獣にダメージを与えてのけ反らせたところを
「やぁっ!えいっ!」
ミントがすかさずクラフト――アッパーファングで止めを刺した。
「オン!」
クラフトによって自分も飛び上がったため着地した瞬間隙があり、その隙を魔獣がミントの背中を狙って襲ったが
「とりゃっ!」
「ギャン!?」
ミントを守るかのようにエステルがミントの背中を守り、棒で襲って来た魔獣を吹き飛ばした。
「貫いちゃえ!……アイスニードル!」
「はっ、せいっ!」
吹き飛ばした魔獣にミントが目標の足元から氷を出す魔術で串刺しにしたところをヨシュアが急所をつくクラフト――朧で魔獣の息の根を止めた。
「大丈夫!?ミント!」
「うん!ありがとう、ママ!」
「2人とも油断はしないで!……出でよ、竜巻!エアリアル!!」
戦闘中お互いの無事を確認し合っているエステルとミントに警告したヨシュアはアーツを発動させて、残りの魔獣達を一気に攻撃した。
「降り注げ、炎の槍!………スパイラルフレア!!」
「当ったれ~……!ストーンフォール!」
さらにエステルがアーツを、ミントが魔術を使って、ヨシュアのアーツによって傷ついた魔獣達に止めを刺した。そして、残りは唯一アーツの攻撃範囲外にいて無事だった魔獣が唸りながらエステル達を警戒した。
「グルルルル……」
「せいっ!」
「そこだっ……絶影!」
「ギャン!?」
警戒している残りの魔獣にエステルが衝撃波を放つクラフト――捻糸棍でダメージを与え、ヨシュアが一瞬で魔獣の横を駆け抜けて致命傷を与えた。そしてミントが止めにSクラフトを放った!
「ミントのとっておき、見せて上げる!ソードファング!!」
ミントは何度も駆け抜けて魔獣を攻撃し、駆け抜けるスピードはじょじょに速まり、スピードが上がると同時に攻撃の勢いも増して威力が高くなった。そしてミントのSクラフトが終わった時、魔獣は消滅した。
「わーい、勝った!」
最後の魔獣に止めを刺したミントは勝利のセリフを言った。
「はあ……。なんとか追っ払えたわね。」
「うん。みんな怪我がなくてよかったね。」
戦闘が終わり、エステルやミントは安堵の溜息をついた。そこにヨシュアがエステルに話しかけた。
「エステル……気付いたかい?」
「うん……。峠の関所を襲った魔獣ね。どうしてこんな所まで……」
「ねえ、ママ。何のお話?」
「ちょっとね……前にもこの魔獣と会った事があるのよ。」
「ふーん、そうなんだ?」
「わ~、スゴイスゴイ。さっすが遊撃士だねぇ。しばらくぶりねぇ。エステルちゃん、ヨシュア君。まさか、こんなところで会えるとは思わなかったよ~。はっ、これってもしかして運命の出会いっていうやつ!?」
倒した魔獣について話し合っているエステル達のところに後ろで戦いを見ていたドロシーがエステル達に近付いた。
「なんの運命よ、なんの……」
ドロシーの言葉にエステルは脱力した。
「それにしても、エステルちゃんとヨシュア君ったらいつの間にこんな大きな子供が出来たの?」
「なっ……!違うわよ!」
脱力していたエステルだったがドロシーのとんでもない言葉に驚いて、強く否定した。
「どうして?ミントちゃんったら、エステルちゃんの事、”ママ”って言ってるじゃない。」
「ミントはえ~と……そう!養子みたいなものよ!だからそんなとんでもない勘違いはやめてよね!?」
「ふ~ん、そうなんだ?」
エステルの言葉にドロシーはまだ納得がいかない表情で頷いた。
「ハハ……ところで、ドロシーさん。エルモの旅館に泊まっているお客さんって、あなたですか?」
エステルとドロシーの会話に苦笑したヨシュアはドロシーに確認した。
「そうだけど……。あれ~、なんで知ってるの?」
首を傾げているドロシーにエステル達はエルモの旅館の女将に宿泊客の保護を依頼されたことを説明した。
「あ、そうなんだ~。それは大変だったねぇ。」
「な~に他人事みたいに言ってんのよ。で、こんな街道の外れでいったい何をしていたわけ?」
呑気に答えるドロシーに呆れたエステルは何故一人で街道の外れにいたかを尋ねた。
「ちっちっち……。そんなことも分からないの~?くすくす、エステルちゃんもまだまだ洞察力が足りないなぁ。」
「あ、あんですって~!?」
ドロシーにからかわれたエステルは怒って声を上げた。
「正解は、今度の特集に使えそうな写真のネタを捜してた、でした~。あ、ちなみにナイアル先輩にやれって言われた宿題なんだけどね。」
「なるほど、仕事だったんですか。」
「だからって、こんな場所でネタ探しをしなくても……。ああもう、なんか戦い以外で激しく疲れたような気がする……」
ドロシーの答えにヨシュアは納得し、エステルは脱力した。
「大丈夫~、エステルちゃん?痛いの痛いの、とんでけー。」
「疲れさせた張本人がなにを抜かしとるかああっ!」
(エステルにここまで突っ込まれる人も珍しいな……)
「ママ、怖い……」
脱力させた張本人であるドロシーの言葉にエステルは怒り、その様子を見たミントは怖がった。
「あ!ごめんね、ミント。怖がらせちゃって……」
ミントの様子に気付いたエステルは慌てて、怖がっているミントをあやすようにミントを抱き上げて笑顔で頭を撫でた。
「えへへ………大好きだよ、ママ!」
エステルに抱きあげられ、撫でられて機嫌がよくなったミントは笑顔で言った。
「あ~もう!本当にミントったら、可愛いくて癒されるわ~!」
「えへへ、くすぐったいよ~ママ。」
ミントの笑顔に癒されたエステルはミントの頬と自分の頬をスリスリした。
「ねえ、エステル。とりあえずエルモに戻らない?そろそろポンプ修理も終わっているかもしれないし。」
一通りの出来事を見守ったヨシュアが声をかけた。
「そうね。そういうわけで……ドロシーも一緒に戻るわよ。」
ヨシュアの言葉に頷いたエステルはミントを降ろして、ドロシーに言った。
「え~、まだ写真撮りたいのに~。」
「戻・る・わ・よ。」
「エステルちゃん、コワイ……」
エステルの言葉に渋ったドロシーだったが、迫力のあるエステルの笑顔に気圧されて頷いた。そしてエステル達はドロシーを連れてエルモ村に戻った……
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