英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第62話
~数時間後・グロリアス・監禁室~
「交替の時間だぞ。小娘の様子はどうだ?」
一方エステルの監禁室を見張っていた猟兵の所に交代の猟兵が来て尋ねた。
「はは、大人しいもんだ。いくら遊撃士とはいえ、所詮は子どもということだな。恐くてベッドで震えているんだろうさ。」
「フン……。ガキの見張りで留守番とはな。まったく、つまらん任務だ。俺も機動作戦に参加したかったぜ。」
「そうボヤくなよ。レオンハルト様の命令なんだから。」
猟兵達が笑い合っていたその時、部屋から何かを叩く音が聞こえた!
「……ん?」
「なんだ、この音は?」
音に気付いた猟兵達はドアを見た。
「おい!いったい何をしている!?」
猟兵がドアを叩いたその時、ガラスが割れるような音が響いた!
「おい、まさか……」
「脱走か!?」
2人は急いで部屋に入った!
「や、やられた……」
「ば、馬鹿な!ここをどこだと思っている!あの娘、自殺でもするつもりか!?」
部屋に入るとエステルの姿はなく、窓のガラスだけが割れていた。
「………………………………。駄目だ、落ちたかもしれん……」
「おいおい、勘弁してくれよ……。レオンハルト様になんて言い訳をすりゃいいんだ?あのクソガキが……余計な面倒を起こしやがって!」
そして猟兵が嘆いたその時
「だ~れがクソガキですって?」
エステルが窓の上から現れ、猟兵の1人を足で吹っ飛ばした!
「き、貴様っ!?」
もう一人の無事だった猟兵はエステルに銃弾を放った!
「甘いわよ、オジサン!」
しかしエステルは銃弾をかわし、棒を振るって猟兵を壁まで吹っ飛ばした!
「ぐはっ、ゲホゲホ……」
「ふふん。遊撃士をナメないでよね。だいいち、失礼が過ぎるわよ?乙女をクソガキ呼ばわりなんて。」
「ひ、人違いだ……。俺はそんな風に呼んでないぞ……」
「あれ、そうだったっけ?まあいいや、オジサンも同罪。しばらくオネンネしてなさいよね。」
そしてエステルは猟兵の頭を棒で思いっきり叩きつけた!
「……う~ん…………」
「さ~てと……。すぐに増援が来るだろうし、とっとと逃げるとしますか。何とか脱出方法を見つけないと……(あたしは諦めない……。もう一度ヨシュアに……あのバカに会うまでは……絶対に諦めないんだから!)」
猟兵達を無力化したエステルは一人で”グロリアス”からの脱出を始め、”グロリアス”内に漂う警戒用の人形兵器を倒したり、自分の行く先を阻む機械の壁が現れた時は回り道をし、甲板に出た。
~グロリアス・甲板~
「ああっ……!マズったなぁ……。つい甲板に出ちゃったみたい。それにしても……馬鹿馬鹿しいほどの大きさね。」
甲板に出たエステルは改めてグロリアスの大きさを確認し、溜息を吐いた。
「脱出するためにはパラシュートを探すか飛行艇を乗っ取るしかない……。とにかく先に進まなくちゃ!」
そしてエステル達は先に進もうとしたが、甲板の下の階から数人の猟兵達がやってきた!
「いたぞ!」
「しまった……!」
猟兵達を見たエステルは反対方向へと引き返そうとしたが、既に反対方向からも猟兵達が現れ、エステルは包囲された。
「くっ………」
「フッ……ここまでのようだな。」
「さすがはS級遊撃士”剣聖”カシウスの娘か。こんな状況で脱走とは恐れ入る。」
「…………………」
「抵抗しても無駄なことは分かっているはずだ。大人しく投降するがいい。」
「はは、無様だな。エステル・ブライト。」
猟兵達に好き勝手に言われて黙っているエステルを嘲笑するような声がした後、新手の猟兵がやってきた。
「……?」
「フッ、この状態では僕のことが分からないか。仕方ない。特別に顔を見せてあげよう。」
自分を見て首を傾げているエステルを見た猟兵は仮面をとって顔を露わにした。
「えっと………見覚えはあるんだけど……ダルモア市長の秘書だった人だっけ……?」
見覚えのある顔の猟兵を見たエステルは首を傾げながら尋ね
「何でそんなに自信が無さそうなんだ!そう、ダルモア市長の元秘書ギルバートだ!自分が逮捕した人間くらいちゃんと覚えていたまえ!」
エステルの態度に怒った兵――ギルバートは怒りながら答えた。
「だ、だって意外過ぎるわよ!第一あんた、王国軍に引き渡されたはずでしょ!?なんでこんな所にいるわけ!?」
「フッ、クーデター事件の時、混乱のスキを突いて脱走してね。その後、”結社”に拾われて忠誠を誓うことになったのさ。」
「た、たくましいというか諦めが悪いというか……。そんな格好してるけど、まさか戦ったりするわけ?」
かつて対峙した時のギルバートの情けなさを思い出したエステルは呆れた様子で尋ねた。
「僕が戦ったらおかしいか?フッ、秀才の僕ではあるが、これでも文武両道なのでね。」
「でも灯台で、特務兵に撃たれてものすごい悲鳴を上げてたし……。あんまり戦いとかには向いてないんじゃないかなって。」
「う、うるさいッ!”結社”に加わってから僕は戦闘強化プログラムを受けた!身体能力は大幅に強化され、最高レベルの戦闘技術も習得した!遊撃士風情が勝てると思うなよ!」
エステルの指摘に焦ったギルバートは銃を構え
「やれやれ……」
「仕方ない……少し付き合うとするか。」
ギルバートの様子に呆れながらも猟兵達は続くように武器を構えた。
「さあ……エステル・ブライト。跪いて許しを乞うがいい。そうすれば許してやらないこともないぞ?」
「そりゃどうも。嬉しくって涙が出てきちゃう。でも悪いんだけどあたし、諦めが悪いのよね。」
ギルバートの提案に不敵な笑みを浮かべて、棒を一振りした!
「う……」
「”執行者”ならともかく雑魚なんかに負けるもんですか。さあ―――かかって来なさいよっ!」
そしてエステルはギルバート達との戦闘を開始した!
「そらぁっ!!」
戦闘開始早々猟兵はエステルを怯ませる為に手榴弾をエステルに向けて投擲したが
「はっ!!」
エステルは棒を一振りして発生させた衝撃波の弾丸を命中させて空中で爆発させた。
「「「喰らえっ!!」」」
その時他の猟兵達がエステル目がけて突撃し
「翔舞煌爆破!!」
「「「ガッ!?」」」
エステルはその場で跳躍して棒を地面に叩き付けて衝撃波を発生させて猟兵達をひるませ
「ハァァァァァ……ッ!!」
「「「グッ!?」」」
地面に着地すると続けてその場でコマのように回転して猟兵達をふっ飛ばした。
「この……喰らえ!」
「遅いっての!鳳凰天駆!!」
「うわっ!?」
ギルバートの銃撃に対してエステルはその場で棒を回転させて銃弾をはじいた後跳躍して全身に闘気によって発生した炎の鳥で突撃してギルバートに反撃し、他の猟兵達はエステルに一斉に突撃をした。
「これで決める!緋凰―――――絶炎衝!!」
「うわあああああああっ!?」
「「「「グアアアアアアアッ!?」」」」
しかしエステルは着地した瞬間敵陣を駆け抜けて凄まじい炎を発生させ、それを受けたギルバート達は全員戦闘不能になって地面に跪いた!
「バ、バカな……。これだけの人数を相手に……………!」
「はあはあ……遊撃士の力、思い知った!?」
「さすが”剣聖”の娘……。少々見くびっていたようだ。」
「……どうやらリミッターを解除する必要がありそうだな。」
「嘘っ!?」
戦闘不能にしたはずの猟兵達が次々と起き上がるのを見たエステルは驚いた。
「はは、驚いたかい?我々は”結社”の技術力で身体能力を強化されていてね。常人より遥かにタフなのだよ。」
一方ギルバートも得意げに笑いながら立ち上がった!
「くっ…………」
「……間に合ったか!」
猟兵達がじりじりとエステルに距離を詰めていると新手の猟兵がその場に現れた。
「苦戦しているようだな。俺も助太刀させてもらうぞ。」
「はは、その必要はないさ。しぶとい小娘だが屈服するのは時間の問題だ。君はそこで眺めていたまえ。」
猟兵の申し出にギルバートは得意げに笑って答えたが
「……あなたに言ったんじゃないよ。」
「へ……」
猟兵の言葉にギルバートは呆けた。そして猟兵は双剣を構えた!猟兵の突然の行動に他の猟兵達は驚いた後迎撃しようとしたが
「……遅い。」
猟兵は目にも止まらぬ速さで強襲し、猟兵達を一瞬で無力化した!
「な、な、なんだああっ!?」
「…………え………………」
猟兵の行動にギルバートは焦りながら後退し、一方エステルは信じられない表情で猟兵を見つめた。
「な、なんだよお前!?どういうつもりなんだ!?」
「悪いけどあなた……向いてないと思うよ。」
「ぶぎゃ!」
そして謎の猟兵は焦っているギルバートを思い切り殴り飛ばし、ギルバートを気絶させた!
「………………………………」
「……まったく。どういうつもりなんだ。」
呆けた表情で自分を見ているエステルに猟兵は呆れた口調で言った後、仮面をとった!すると、猟兵は黒髪と琥珀の瞳を持つ少年――ヨシュアだった!
「正遊撃士になったのに相変わらず無鉄砲とはね……。あの場で意地を張るメリットが一体どこにあるっていうんだ。」
「……あ…………。あはは……ヨシュアだ……。えっと……夢じゃないよね?」
呆れた様子で語るヨシュアにエステルはずっと探していた人物と敵地で出会えた事に信じられない思いを抱えて乾いた笑いをしながら尋ねた。
「夢だったらどんなに気楽でいいだろうけどね……。……どうやらそんなに都合よくは行かないみたいだ。」
「え……」
しかしヨシュアの言葉にエステルが呆けたその時
「フフ……ようやく姿を現したか。」
なんと、エステルが現れた所からレーヴェが現れた!
「……久しぶり、レーヴェ。僕が潜入していたことを予想していたみたいだね。」
「お前の能力を考えれば充分ありえる話だからな。一体、どんな手段を使った?」
「この船が来る直前に航路確保の偵察艇を狙った。”執行者”もいなかったからわりと簡単に潜入できたよ。」
レーヴェの疑問にヨシュアは静かに答えた。
「……教授が方舟を呼び寄せることまで読んだか。”執行者”としてのカンは完全に取り戻せたようだな。」
「おかげさまでね。いつレーヴェたちに発見されるかヒヤヒヤさせられたけど。」
「フッ、お前の隠形を見破れる者はそうはいない。だが、隠形というものは一度認識されたら終わりだ。」
ヨシュアの話を聞いたレーヴェは不敵な笑みを浮かべた後、剣を構えた!
「お前は最大の武器を失った。この”剣帝”相手にいったい何をするつもりだ?」
「………………………………」
「ちょ、ちょっと……!念のために言っておくけどあたしだって動けるんだから!いくらあなたが強くったってそう簡単には……」
レーヴェの問いかけにヨシュアは黙り、エステルは棒を構えて、レーヴェを睨んで言ったが
「……下がって、エステル。レーヴェは強い。僕と君を合わせたよりも。」
「う……」
ヨシュアの警告を聞いてかつてクーデターの時女王宮でレーヴェ相手に5人で向かってようやく勝てた事を思い出して黙り込んだ。
「それが分かっていながらお前はこの場に現れたわけだ。別にその事を甘いと言うつもりはないが……。ならば、どうしてお前はその娘の前から姿を消した?」
「………っ…………」
「あ……」
レーヴェの言葉を聞いたヨシュアはわずかに顔をしかめ、エステルは空中庭園の件を思い出した。
「守るなら守る。切り捨てるなら切り捨てる。そう徹底しろと俺はお前に教えたはずだな?」
「うん……そうだね。教授の調整が終わった直後……初めての訓練で教えてくれた。」
「本当にその娘が大事なら、お前は消えるべきではなかった。罪悪感に苛まれながらもそばに居続けるべきだった。お前がそうしなかったのはただの逃避―――欺瞞にすぎん。」
「分かってる……。レーヴェに言われなくてもそんなの分かっているさ……」
「……………………」
「…………ヨシュア……」
レーヴェの言葉にヨシュアは皮肉気に笑って答え、ヨシュアの答えを聞いたレーヴェは静かにヨシュアを見つめ、エステルは心配そうな表情でヨシュアを見つめていた。
「でも……だったらレーヴェはどうなの……?本当なら、僕だけが払うべき代償だったはず……。なのに”結社”に入って”剣帝”なんて呼ばれて……。どうして今も教授なんかに協力しているのさ……!」
そしてレーヴェに言い返すかのようにヨシュアは辛そうな表情でレーヴェを睨んで叫んだ。
「………………………………。俺が教授に協力するのはお前の件とは一切関係ない。あくまで俺自身の望みのためだ。」
「レーヴェの望み……。それってやっぱりカリン姉さんの……?」
「復讐してもカリンが戻ってくるわけではない。だから俺は……この世を試すことにした。それが教授に協力する理由だ。」
「この世を試す……」
「さて……お喋りはここまでだ。お前の選択肢は3つある。娘と共に投降するか。娘を守ってここで果てるか。娘を見捨てて一人逃れるか。さあ―――選ぶがいい。」
そしてレーヴェは剣の切っ先をヨシュアに向けてヨシュアに選択を迫った!
「………………………………。悪いけど4つ目の選択肢を選ばせてもらうよ。」
「なに……」
ヨシュアの答えを聞いてレーヴェが驚いたその時、突然、”グロリアス”が大きく揺れた!
「なっ!?」
「これは……」
「……導力機関に細工させてもらった。放っておいたらこの船は海の藻屑と化すだろうね。」
「あ、あんですって~!?」
「……やってくれたな。まさか認証が必要な機関部に侵入するとは……」
ヨシュアの破壊工作を知ったエステルは驚き、レーヴェはヨシュアを睨んだ。
「22基のエンジン全てに異なる仕掛けを施している……。教授達がいない今、解除できるのはレーヴェだけだ。」
「計画を阻止するための最後の切り札というわけか……。それをこのタイミングで切ってしまうという意味……。その欺瞞からいつまで逃げるつもりだ?」
「………っ…………」
「フフ、今度会う時までに答えを用意しておくがいい。楽しみにしているぞ。」
図星を突かれた事で表情を歪めているヨシュアを背にしたレーヴェはその場から去って行った。
「………………………………」
「あの、ヨシュア……。あたし……あたし……」
「……話は後だ。脱出用の飛行艇を一隻確保しておいた。この先の階段を降りて船倉の格納庫を目指そう。」
「あ……。うん……分かった。」
こうして……予想外の場所でヨシュアと再会したエステルはヨシュアと共に脱出用の飛行艇がある格納庫に向かった…………
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