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豚とトリュフ

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2部分:第二章


第二章

 その日トリュフは一つも見つからなかった。人間達はこのことに疲れ果てた顔になった。何しろ一日中森の中を歩き回っても一つも見つからなかったからだ。
「一個も見つからないな」
「ああ」
「こんな日もあるか?」
 彼等はその疲れ果てた顔で話していた。
「一つも見つからないっていうのもな」
「たまにはあるか」
「ああ、明日だよ」
 明日は絶対に見つかる、誰かが言った。
「明日見つければいいさ」
「そうだな。今日のことは忘れて」
「また明日だな」
 こう言い合い明日に望みをかけた。しかしその明日も同じでその次の日もだった。彼等はトリュフを一個も見つけられなくなった。
 いい加減このことに焦りだす人間達だった。何日も一つも見つからずそのことに焦ることしきりだった。その理由を考えてもみた。
「もうあの森にトリュフはないんじゃないのか?」
「いや、ある筈だよ」
「そうだよな」
「それは間違いないよな」
 このことは多くの者がわかっていた。
「絶対にあるぞ、あの森にはまだな」
「あるのか」
「あの森は半端な森じゃないんだ」
 こう話されるのであった。
「絶対にある」
「絶対か」
「まだまだあるのは間違いないんだ」
 一人が断言さえしていた。
「その証拠に最後にトリュフが採れた日豚達は帰ろうという時も帰る時もいつもみたいに周りを見回していただろ」
「ああ」
「そういえばそうだな」
 言われてそのことを思い出した彼等だった。
「だから間違いない。トリュフはまだ森に一杯あるぞ」
「一杯か」
「それは確かなんだ」
 また言われるのだった。
「けれどな。見つからないんだ」
「どうしてなんだ?あるのに見つからないのは」
「それだよな」
 彼等はここでそのことについて考えだした。
「何で見つからなかったのか」
「それだな」
「森に問題ないとするとだ」
「問題があるとすれば」
「あいつ等か?」
 彼等は考えているうちに気付いたのだった。
「あいつ等に問題があるのか」
「ああ、豚か」
「あの連中か」
 そしてそこに考えが至ったのであった。
「豚にか」
「あいつ等に問題があるのか」
「鼻がおかしくなったのか?」
 最初はこう考えられた。
「連中の鼻が。だからか?」
「いや、それにしちゃおかしいだろ」
 しかしその可能性はすぐに否定された。
「鼻にしちゃな。豚が全部鼻がおかしくなったのか?」
「いや、それはかなり」
「有り得ないだろ」
 その可能性はすぐに否定されたのだった。
「幾ら何でもな」
「どの豚の鼻もおかしくなったなんてな」
「幾ら何でもそこまで酷くはなってない筈だぜ」
「じゃあ何だ?」
 それについてもわかってだった。それで話が解決したわけではない。むしろ何一つとして解決していないと言うべき状況であった。
「あの連中に問題があるとすればだ」
「だよな。一体」
「何なんだ?」
「こうなったらな」 
 ここで一人が言うのだった。
「豚に直接聞いてみるか」
「豚に!?」
「話を聞くって?」
「ああ、そうするか?」 
 こう皆に対して言うのである。
 
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