英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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外伝~漆黒の剣士、ジューダスの軌跡~
~遊撃士協会・ボース支部~
「あ、貴方は……!」
「あ、ジューダス。」
「お主がソフィとヨシュアと共にバルバトスという男を撃退したもう一人の異世界の者か……」
「うふふ、現れるタイミングが廃坑で現れた時同様絶妙ね♪一体どうやって狙って登場しているのでしょうね♪」
「大方ギルドの外で俺達の会話を聞いて現れたんだろうよ、このストーカー小僧は。」
ジューダスの登場にメイベル市長は驚き、ソフィは呆けた表情で呟き、ルグランは興味ありげな表情をし、小悪魔な笑みを浮かべているレンの疑問に答えたアガットはジューダスを睨んだ。
「誰がストーカーだ!?」
「今までのあんたの行動を考えたらそう呼ばれてもおかしくないでしょうが。……って、今はそんな事よりマリアンさん、ジューダスがマリアンさんが探していた人――――リオン・マグナスでいいのよね!?」
アガットを睨んで怒鳴ったジューダスにジト目で指摘したエステルはマリアンに視線を向けて訊ねた。
「はい……!エミリオ……!ああっ!生きて貴方と会えるなんて、夢みたい……!生きていて本当によかった……!」
マリアンは涙を流して嬉しそうな表情でジューダスを抱きしめ
「…………―――マリアン。先程のマリアンの話―――僕がスタン達を裏切って死んだ話に続きがある。」
抱きしめられたジューダスは静かな表情でマリアンを見つめた後やがて意を決したかのような表情になって口を開いた。
「え………?」
ジューダスの口から出た予想外の言葉にマリアンは呆けた表情でジューダスを見つめた。
「まず僕がスタン達に敗れた後……何を血迷ったか、スタンの馬鹿は自分達を裏切った僕を一切責めずに、それどころか未だに僕を”友達”と呼び、手を差し出してきた。――――『もう一度力を合わせて全て―――”神の眼”やマリアンをヒューゴから全て取り戻そう』とな。」
「え…………ス、スタンさんが!?」
「僕はあいつが差し出してきた手を握ろうとしたその時――――ヒューゴが僕ごとスタン達を生き埋めにする為に洞窟内の到る所に設置していた爆薬を一斉に起動させた。」
「!!そんな……ヒューゴ様が………自分の息子を殺してまで、そんな事を……!?」
ジューダスの口から語られた真実の一部を知ったマリアンは目を見開いた後信じられない表情をした。
「そして洞窟が崩れ始めた所に海水まで流れ込み………――――僕は非常用のリフトにスタン達が全員乗り込むのを確認した後、スタン達にマリアンを含めた全てを任せる為に……僕が残ってリフトを動かすレバーを操作してスタン達を地上へと送り届け………――――洞窟を埋め尽くす海水に呑まれ、”一度目の死”を迎えた。」
「!!!……………え?い、”一度目の死”………?」
ジューダスの話に目を見開いて驚いたマリアンだったが、”一度目の死”という訳のわからない話を聞いて戸惑った。
そしてジューダスはマリアンに決して誰にも知られていない自分の”真実”を語り始めた。
リオンが死に、リオンが”友”と認めた男スタン・エルロンを始めとした『ソーディアン』の”素質”を持つ者達――――『ソーディアンマスター』と彼らに同行して力を貸していた仲間達によって世界が救われて数十年後、レンズに蓄積された人々の『幸福になりたい』という思念によって、具現化された神――――フォルトゥナが降臨した。
しかしフォルトゥナは完全な降臨ができなかった為己の分身たる存在を作り、レンズを集めさせて完全な降臨をしようとしていた。
そして分身の一人であり、リオン達の世界の宗教団体では”聖女”と崇められている女性――――エルレインの力によって、リオンは蘇らせられ、協力するように要請されたがリオンは一切協力はせず、世界を放浪していた。
そんなある日、リオンは自分が”友”と認めた男であり、バルバトスによって暗殺されたスタン・エルロンとその妻であり、リオンの実の姉でもあるルーティ・カトレットの息子―――カイル・デュナミス、そして一人残されたルーティが経営している”デュナミス孤児院”の出身でカイルと血の繋がった兄弟も同然の家族関係であるロニ・デュナミスと出会い、カイルには名を名乗らない自分に『ジューダス』という名を名付けられ、カイルに名付けられたその時から『ジューダス』としてスタン達の意志を継ぐカイルとロニを見守る事を決めた。
最初は陰でカイル達を見守っていたジューダスだったが、様々な偶然が重なりカイル達の仲間となった。
カイル達の仲間となったジューダスは後に人々を救う為に歴史をも改変しようとするエルレインの野望を阻止する為にカイルや自分と同時にカイルとロニの仲間になったもう一人のフォルトゥナの分身体である”聖女”リアラ、リアラの力で時代を超え、様々な事情により仲間になったナナリー・フレッチ、ハロルド・ベルセリオスと共に未来、改変、過去と時を超えた戦いを幾度も続け、最後にはエルレインを倒し、更には完全な降臨を果たし、カイル達との戦いに敗れて消滅したエルレインの”歴史をやり直す為に一度世界を滅ぼす”という意志に同意して世界を滅ぼそうとしたフォルトゥナを倒し、カイルがフォルトゥナを生み出す元となったレンズを破壊した事によってエルレイン同様フォルトゥナと同一の存在であったリアラは消滅して歴史が修正され、その際にエルレインによって蘇らせられたジューダスは歪められた歴史から消えた。時空間を永遠に彷徨うか”リオン・マグナスとして2度目の死を迎える”事を予想していたジューダスだったが、気が付いたらゼムリア大陸にいた事を説明した。
「そんな事………が……………」
(僕がいなくなってから、そんな事があったなんて……でも……坊ちゃんは最後までカイル達と共に戦い抜いて勝ったんですね……よかった……ううっ………)
ジューダスが語った決して歴史には語られる事はない”ジューダスの軌跡”を知ったマリアンは驚きの表情でジューダスを見つめ、シャルティエは泣きはじめ
「……………」
「お、おい、ちょっと待て!?今の話が本当だとすれば、お前、そのカイルって奴等と一緒に自分達の世界の神を殺したって事になるじゃねぇか!?」
「”神殺し”……」
エステルは驚きのあまり口をパクパクさせ、ルークは信じられない表情でジューダスを見つめて声をあげ、アーシアはジューダスを呆けた表情で見つめて呟いた。
「フン、僕達の世界に神は必要ない。―――ましてや神である自分による救済こそが絶対と信じ、自分を否定したからといって人々が紡いできた歴史を”失敗作”と決めつけて丸ごと消し去るような神等、消し去るべきだ。」
「……確かにその通りだね。歴史はそんな軽い物ではない。幾ら神だからといって、人々が紡いで来た歴史を否定し、消し去るのは許されない事だ。」
「レイシスお兄様……」
(フッ、”神を殺した”、か。俺達の世界で言えばローレライを殺すようなものだな。)
「うふふ、レン達の世界の神様――――”空の女神”はそんな自分勝手な神様じゃないといいのだけどね?」
「レ、レンちゃ~ん……」
「どんな理由であれ、神を殺したなんて話、神父やシスターには間違いなく聞かせられない話だな……」
「……貴方も私のように大切な友達の為にその人達と一緒に神を倒したんだね……」
「彼もそうだが、彼と共に世界を破壊しようとしたその神を殺した人たちは決して歴史に語られる事はない”影の英雄”だね……」
ジューダスの意見に頷いたレイスをクローゼは驚きの表情で見つめ、バダックは静かな笑みを浮かべ、口元に笑みを浮かべて呟いたレンの言葉を聞いたティータは脱力し、フレンは苦笑しながらアーシアを見つめ、ソフィとオリビエは静かな表情でジューダスを見つめていた。
「なるほどな……今の話を聞けば”剣帝”を圧倒し、あのヴァルターを圧倒したという男―――バルバトスを撃退できた強さにも納得できるな。」
「ええ……何せ”神”を殺しているものね。幾ら化け物じみた強さの連中だからといって、さすがに”神”とは比べ物にならないでしょうしね。」
「ですが今の話ですとジューダスさ―――いえ、リオンさんは”2度目の死”を迎えた上リオンさんを甦らせる事ができたエルレインやフォルトゥナという方達も滅んだというのに、何故私達の世界で甦ったのでしょう……?」
「フン、それは僕が聞きたいくらいだ。」
重々しい様子を纏って呟いたジンの言葉にシェラザードは苦笑しながら頷き、クローゼの疑問を聞いたジューダスは鼻を鳴らした。
「……どうして貴方ばかり、そんな辛い目に………”2度”も死を迎えるなんて……やっぱり全て私のせいね……」
「マリアン………」
するとその時壮絶な軌跡を描いたジューダスの一番の原因が自分である事に気付いて辛そうな表情で顔を俯かせているマリアンをメイベル市長は心配そうな表情で見つめた。
「……………いや。君のせいじゃない、マリアン。全て僕が選んだ”道”だ。」
「でもっ!貴方がそんな道を選ぶ事になった一番の原因は………!」
ジューダスの言葉を聞いたマリアンは涙を流した顔を上げて悲しそうな表情でジューダスを見つめたその時
「―――マリアン。僕はスタン達を裏切り、死を選んだ事……その事に後悔はしていないし、僕は僕の信念を貫き通した。何度同じ選択を迫られようと答えは変わらない。」
ジューダスは静かな表情でマリアンを見つめた。
「どう……して……私の為に………そこまで……」
「………………………」
涙を流すマリアンに見つめられたジューダスは目を伏せて黙り込み、マリアンの問いかけに答えず話を続けた。
「それに『ジューダス』として生きた僕は”幸せ”だった。カイル達との旅でのやり取り……僕がスタン達を裏切った『リオン・マグナス』であると知ってもなお、カイル達は僕を『ジューダス』として……仲間の一人として受け入れてくれ……僕は『ジューダス』としてカイル達と共に最後まで戦えた。裏切り者である僕が手にするには大きすぎる幸せだ。それが手に入ったんだ。悔いはない。」
「エミ……リオ……………」
「―――だから僕の人生に君が罪悪感を持つ事はない、マリアン。」
そしてジューダスが優しげな微笑みを浮かべてマリアンを見つめたその時
「……うう………ああっ……………うああああああっ……………!」
ジューダスの微笑みで自分が背負った一生許される事のないはずの罪を許されたかのように感じたマリアンはジューダスの胸の中で涙を流して大声で泣き続けた。
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