英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第62話
翌日エステル達は待ち合わせの場所であるラングランド大橋でクロ―ゼを待っていた。
~ルーアン市内・ラングランド大橋~
「……やっぱりまだ来てないみたいね。早く来すぎちゃったかな?」
「そうだね、酒場で時間を潰そうか?」
「ううん、風も気持ちいいし、ここで待ってることにしましょ。川の流れを見ているだけでも、なんか飽きない気がするし。」
ヨシュアの提案をエステルは首を振って答えて、橋の手すりに手をかけて川の流れを見た。
「しっかし、ルーアンもようやく落ち着きを取り戻した感じよね。ダルモア市長が逮捕されて一時は大騒ぎになったけど……」
「現職の市長の逮捕なんて前代未聞の出来事だからね。ロレントでいえばクラウス市長が捕まったのと同じことなわけだし。」
「うわ、それは確かにショックすぎるかも……。でも、そう考えてみるとルーアン市の人は冷静よね。驚いてはいたみたいだけどショックは受けてないみたい。」
「まあ、ルーアン市は伝統的にダルモア家の当主が選ばれていたみたいだから。市長本人を慕っていたわけじゃなかったのかもしれないね。」
「……民の幸せを考えず何の努力もせず、血筋のみで権力者になる者等ろくな奴はおらんからな。」
ヨシュアの言葉に頷くようにリフィアは意見を言った。
「次期皇帝のリフィアが言うと重みがあるわね~……やっぱり、リフィアも皇帝になる努力とかしたの?」
リフィアの意見を聞いたエステルは感心した後尋ねた。
「当然だ。幼い頃より帝王学や護身術、他には戦術や兵達の指揮の仕方等を余は学び、それらを自分の知識とした。」
「凄いね……プリネもそうなのかい?」
幼少の頃から皇帝として努力しているリフィアに驚いたヨシュアはプリネに尋ねた。
「ええ。私もリフィアお姉様と同じように王が必要とする知識は一通り学んで、自分の知識としました。私だけに限らず他の腹違いのお兄様やお姉様達はみんな同じ教育を受けています。ただ、リフィアお姉様は他の方達と違って皇帝になりますから、私達以上の教育を受けたと聞いています。」
「ふえ~………あれ?ってことはティアさんもそうなの!?」
「そうですね。ティアお姉様も大体は学んでいますが、戦闘に関しての知識は一切学んでいません。」
「なんで?」
「ティアお姉様の生みの親であるティナ様の意向だそうです。イーリュンの信徒であったティナ様は自分の娘に人を傷つける術を知ってほしくなかったのでお父様に嘆願して、ティアお姉様には最低限の護身以外教えないようにしてもらっていたんです。」
「そうなんだ………ねえ、リフィア、プリネ。」
「ん?」
「どうかしましたか?」
エステルはダルモアが市民にあまり慕われていなかった事である事が気になり、リフィア達に尋ねた。
「プリネのお父さん……リウイって人はみんなに慕われていたの?」
「お父様ですか?ええ、とても慕われていたと聞きます。」
「慕われていた?まるで過去の言い方だけど今はどうなんだい?」
プリネの答えにヨシュアは首を傾げた尋ねた。そしてヨシュアの答えにリフィアが答えた。
「父――シルヴァンに帝位を譲った後リウイは表舞台から姿を消し、それ以降民は今の皇帝は父であると認識し、リウイの事は民の間では過去にいた伝説上の王となっているからだ。」
「伝説って……あのリウイって人、本当に凄い王様だったんだ……」
「ちなみにお父様と結ばれた側室の方々も後に伝説化し、メンフィル国内の歴史で語られている有名な方達ばかりですよ。……ティアお姉様は母親であるティナ様があまり有名ではないとおっしゃいますが、そんな事はありません。ティナ様は『慈愛聖女』と称されるほど、民達からとても慕われていました。またティナ
様はそれとは別に違った意味で民達からとても慕われていました。」
「それは何なんだい?」
プリネの説明の先が気になったヨシュアは先を促した。
「それはティナ様が元々”平民”であった事です。他の側室の方々は王族、神格者等民からすれば遠い存在でしたがティナ様だけは生粋の平民です。ですから民も自分達と同じ立場であったティナ様の事を身近に感じ、とても慕っていたそうです。それにティナ様自身、王都内でイーリュンの信徒として民によく接し、民の悩み等を聞いていましたからその事もありましたね。」
「ふえ~……つくづくメンフィルの人達って凄いわね。」
「うむ!余はそんなリウイ達を尊敬しているのじゃ!」
「はは……さすがはリフィアだね。普通それだけ凄い人が家族にいたら重荷になると思うんだけど、2人とも全然そんな風に見えないね。」
自身満々にリウイ達の事を自慢するリフィアにヨシュアは苦笑して呟いた。
「リウイ達が重荷?余は一度もそんな事を思った事がないな。余にとってリウイは目指すべき”王”だ。」
「私にとってもそうです。私もいつかはお父様達のような人になりたいと思っていますから。」
「2人とも凄いわね~……それに比べてあたしの父さんときたら……はぁ、父さんもプリネ達のお父さん達を見習ってほしいものだわ。」
(そんな事を言えるのは父さんの事を知らない君だけだよ……まあ、エステルらしいといえばエステルらしいかな。そういう点で言えばエステルはリフィア達と似ているな……)
カシウスの功績も知らず溜息をついているエステルを見て、ヨシュアは苦笑した。
「ふわあ~……プリネさん達ってお姫様だったんだ!凄いね、ツーヤちゃん!」
「うん。あたしも最初、その事を聞いてとても驚いたよ。」
一方リフィア達の身分を知ったミントは驚き、プリネのパートナーとなったツーヤと話した。
(ねえ、リフィア。)
(ん?どうした、エヴリーヌ。)
(あのツーヤって竜、お兄ちゃん達の所に帰ったらどうするの?)
(ふむ、それはどういう意味だ?)
小声で話しかけられたエヴリーヌの疑問の意味がわからず、リフィアは首を傾げて尋ねた。
(立場。プリネの傍にいるのならそれなりの立場がいると思うけど。)
(ああ、その事か。まあしばらくは侍女見習い、淑女、他には戦い方を教育した後、周囲が認める強さを持ち、然るべき時がくればリウイの側室の名前で現在誰も襲名していない名をやり、プリネ専属の侍女か騎士にする事をリウイや父に提案するつもりだ。)
(ふ~ん。リフィアもあの竜の事、考えてあげているんだね。)
(当然だ!大事な妹を護る者になるのだから、姉としては重用してやらないとな。)
(それで?どんな名前にするの?)
(……現在誰も名乗っていない名は父が帝位を継いだ事によって誰も名乗らなくなったルーハンス。現ミレティア領主に嫁いだため誰も名乗らなくなったルクセンベール。どちらがいいかの……?)
その時、橋の上から聞き覚えのある鳥の声が聞こえた。
「ピューイ!」
「あ、ジーク!」
ジークは橋の上空から降りて来て橋の手すりに留まった。さらに続くようにクローゼがエステル達の元に走って来た。
「みなさん!」
さらに続くようにクローゼがエステル達の元に走って来た。
「はあはあ……。ごめんなさい、遅れてしまって。」
エステル達の元に来たクローゼは息を切らせていた。
「いや、僕たちもちょうど来たところだよ。」
「も、もしかしてわざわざ走って来たの?そんなに慌てることないのに。」
「いえ、お見送りをするのに遅れるわけにはいきませんから。教えてくれてどうもありがとうございました。」
「も~、クローゼってば。お礼を言うのはこっちだよ。ジークも……見送りに来てくれてありがと♪」
「ピューイ♪」
「はは、それじゃあ……さっそく出発するとしようか?」
「オッケー!」
「「「はい。」」」
「うむ!」
「ん。」
「はーい!」
そしてエステル達はクローゼと共にルーアン市を出発した………
ページ上へ戻る