英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第61話
その後エステル達はダルモアの件を報告するためにギルドに戻った。
~遊撃士協会・ルーアン支部~
そこには事件解決の報を聞いて戻って来たプリネとリウイ達を見送りに行ったリフィア達も戻って来ていた。
「は~、まさか王都の親衛隊がやって来るとはね。しかも噂の最新鋭艦、『アルセイユ』のお出ましとは。僕も受付の仕事が無かったら見に行きたかったんだけどなあ。」
エステル達の報告を聞いてジャンは残念そうな表情で言った。
「ジャンさんって意外にミーハーだったのね。でも、ジャンさんが連絡したのはリシャール大佐だったんでしょ?」
「ああ、レイストン要塞に彼がいたもんだからね。どうして親衛隊が駆けつけたのかは判らないが……。まあ、軍の連絡系統にも色々あるってことなんだろうね。」
「通常の正規軍に加えて、国境師団、情報部、王室親衛隊……。確かに複雑そうですよね。」
「うむ。それはどの国に対しても変わらないな。」
ヨシュアの言葉にリフィアは頷きながら答えた。
「へ~……メンフィル軍もいろんな部隊があるの?」
リフィアの言葉が気になったエステルは尋ねた。
「ええ。正規軍はもちろんの事、ファーミシルス大将軍率いる親衛隊、シェラ軍団長率いる機工軍団。他には斥候部隊や魔道軍団があります。」
「魔道軍団?何ソレ??」
プリネの説明にエステルは疑問を抱き、尋ねた。
「魔道軍団とはその名の通り、”魔術”を使える者達で構成された軍団の事です。戦になればさまざまな魔術を使って敵を葬るメンフィルの主力軍団の一つです。」
「……魔術を軍団で撃てば威力はもちろんの事、相手に対してかなりの被害を出すだろうね……」
「ええ。他には竜騎士で結成されている竜騎士軍団、水竜騎士で結成されている水竜騎士軍団、また各地の王公領にもメンフィルが帝国化した際、それぞれの王公領の軍団が正規軍化し、そのままそれぞれの王公領を守っています。」
「ふえ~相変わらずメンフィルって凄いわね……そう言えば、エヴリーヌは客将って言ってたけど、エヴリーヌも軍人なの?」
メンフィルの凄さに改めて知ったエステルは驚いた後、モルガンとリフィア達の会話で思い出したエヴリーヌが名乗った時の身分を思い出してエヴリーヌに聞いた。
「ううん。エヴリーヌは基本お兄ちゃん達の傍で戦うだけ。一応”魔神部隊”っていう部隊に所属している事になっているけどね。」
「”魔神部隊”………その言い方だとエヴリーヌ以外にも”魔神”がいるのかい?」
エヴリーヌの言葉が気になったヨシュアは尋ねた。
「うん。ゼフィラとカファルーっていう2人だよ。」
「2人ともエヴリーヌみたいに強いの?」
「ん~……ゼフィラはイマイチかもしれないけど、カファルーは結構強いよ。」
エステルの疑問にエヴリーヌは首を傾げて答えた。
「でも、今回の事件は事後処理が大変そうですね……。今後、ルーアン地方の行政はどうなってしまうんでしょうか?」
「あ。そうか……。市長が逮捕されちゃったし。」
「とりあえずは王都から市長代理が派遣されると思う。市長の有罪が確定すればいずれ選挙が行われるだろうね。そうそう、孤児院については正式な補償が行われると思うよ。」
「そうですか……良かった。これもみんなエステルさんたちのおかげです。本当に……ありがとうございます。」
ジャンの説明にクローゼは胸をなでおろしてエステル達に感謝した。
「や、やだな。水くさいこと言わないでよ。」
「そうだね。当然のことをしただけさ。それに僕たちだけじゃなくてアガットさんやペルル達の協力も大きかったしね。」
「そ、そういえば!ね、ねえ、ジャンさん!アガットから何か連絡はあった!?」
ヨシュアからアガットの名前が出て、黒装束達を追って行ったアガットの事を思い出したエステルはジャンに尋ねた。
「ああ、それなんだが……。残念ながら、黒装束の連中は取り逃がしてしまったらしい。他にも仲間がいたみたいでね。待ち伏せの襲撃にあったそうだよ。」
「ええっ!?」
「大丈夫だったんですか?」
ジャンの報告にアガットの強さを知っているエステルやヨシュアは驚いた。
「ああ、何とか切り抜けたらしい。そのまま連中を追ってツァイス地方に向かうそうだ。今頃は、ルーアン地方から離れている頃じゃないかな」
「な、なんか……ハードなことやってるわね。……そういえばプリネ。」
「はい、何でしょうか?」
「あの後、ペルルがリフィア達に知らせて先回りしてもらうって言ってたけど、リフィア達は行かなかったの?」
「なぬ?初耳だぞ、それは。」
エステルの疑問にリフィアは首を傾げた。
「あ、はい。その事なんですが……話に聞くとお姉様達がいるルーアンに向かっている途中でリウイ陛下を見かけたそうで、事情を話したところ陛下自らがアガットさん達を追ったそうです。」
「リウイ皇帝陛下が……それで、どうなったんだい?」
プリネの説明にジャンは驚き、続きを促した。
「さあ……特に何も聞いておりません。お姉様方は陛下達がルーアンを去る際、何か言ってませんでしたか?」
「うん、プリネが参加してた劇が中々よかったぐらいしか言わなかったよ。」
「うむ。……それにしてもなぜリウイに報告した後、ペルルは余に報告しなかったのだ?」
「陛下が言うにはお姉様達だと、その……手加減を忘れて殺してしまうからと……だからお姉様達と賊達と会わせたくなかったそうなので、ペルルを私の所に戻るよう言ったそうです。」
「む、失礼な……いくら許せん相手とはいえ、加減を忘れることは余はないぞ。」
「あはは……でも何の連絡もないという事は、アガットみたいに取り逃がしたのかな?」
リフィアの発言に苦笑したエステルはリフィア達に尋ねた。
「リウイに限ってそれはないと思うぞ。……時間があれば後で大使館に問い合わせて聞いて、お前達にも情報をやろう。」
「期待して待っているよ。ちなみに、しばらく前からアガットはあの連中を追いかけているんだ。どうやら、君たちのお父さんに頼まれた仕事らしいけどね。」
「と、父さんが!?」
「どうしてそういう事に?」
ジャンの言葉にエステルとヨシュアは驚いて尋ねた。
「ふふ、『レイヴン』にいたアガットを更正させたのは他ならぬカシウスさんだからね。何だかんだ言ってあの人には頭が上がらないのさ。」
「ええっ、そうだったの!?」
アガットの過去にエステルは驚いた。
「なるほど……。僕たちに対する厳しい態度もそれが原因かもしれないですね。」
「すごくそれっぽいわね~。って、やっぱり父さんのとばっちりじゃなのよっ!」
「くすくす……。あ、エステルさんたちのお父様といえば確か……」
「え、どうしたの?」
クローゼの意味深な言葉にエステルは首を傾げた。
「あの、市長邸で黒い光が溢れた時に……」
「あ、それがあったか!」
クローゼの言葉で思い出したエステルは懐から黒いオーブメントを出した。
「色々ありすぎて、つい忘れちゃってたけど……。コレ、いったい何なのかしら……」
「それのおかげで助かったけど、少し不気味な感じはするね……」
(お姉様、先ほどエステルさん達がアーティファクトの効果がいつの間にか消えたと言っていましたけど……)
(……恐らくあの黒いオーブメントが原因だな。……しかし、アーティファクトの効果を打ち消すか……アーティファクトの力の源は導力。それを消すという事は……)
(導力を消滅させるオーブメントのような物という事ですね……そのような物、一体どこから手に入れたんでしょう……)
エステル達の話を聞いたリフィアやプリネは黒いオーブメントの出所を怪しがった。
「珍しい色のオーブメントだね。どういった由来の物なんだい?」
「それが……」
黒いオーブメントの出所を尋ねたジャンにエステルとヨシュアは手に入れた経緯を説明した。
「まあ……」
「ふーむ、R博士にKか……。ひょっとしたら……」
エステル達の説明にクローゼは驚き、ジャンは手を顎にあてて唸った。
「え、知ってるの!?」
「いや、心当たりというほどじゃないんだが……。それを調べたければツァイス地方に向かった方がいいかもしれない。」
「ツァイス地方?」
「知っての通り、ツァイス市はオーブメント生産で有名な場所だ。『工房都市』とも言われており、博士の肩書を持っている人も多い。」
「なるほど……。たとえ博士が見つからなくても、その黒いオーブメントの正体が判るかも知れませんね。」
「うーん、でもあたしたちここで修行する必要もあるし。」
ジャンの説明でヨシュアは納得し、黒いオーブメントの正体がわかるかもしれないとわかったエステルだったが、今の状況を思い出して肩を落とした。
「ふふ、こんな事もあろうかとちゃあんと用意しておいたのさ。」
エステルの様子を見た後、ジャンは正遊撃士資格の推薦状をエステルとヨシュアに渡した。
「ええっ……!」
「いいんですか?」
2人は驚きながら受け取った。
「はは、空賊事件の時と同じさ。これだけの大事件を解決されちゃ渡さないわけにはいかないからね。査定も報酬も用意してあるよ。」
「うわ~……学園祭の出演料まである……」
推薦状と同時に渡された報酬とその詳細を見たエステルは呟いた。
「何から何まで済みません。」
「なあに、正当な報酬さ。僕も、君たちには一刻も早く正遊撃士になってもらいたい。その方が、君たちの力をもっと活かせると思うからね。」
「えへへ……。ありがとう、ジャンさん。」
「期待に応えられるよう頑張ります。」
「おめでとうございます、2人とも。」
「おめでとう。」
「うむ!こんな短期間で半分以上の推薦状を貰うとはさすがはエステルとヨシュアだな!」
「えへへ、ありがとう。」
エステルとヨシュアが推薦状を貰った事にプリネ達はそれぞれ祝福して、それを聞いたエステルは照れた。
「良かったですね。エステルさん、ヨシュアさん。……ちょっと寂しくなってしまいますけど……」
「クローゼ……」
「……そうだね。僕たちも名残惜しいよ。」
同じようにエステル達を祝福したクローゼだったがもうすぐエステル達が旅立つ事に寂しそうな表情になった。それを見た2人も寂しそうな表情をした。
「あは……。わがまま言ってごめんなさい。出発の日が決まったら私にも教えて頂けませんか?エア=レッテンの関所まで見送らせていただきますから……」
クローゼは寂しそうに笑って答えた。
「………エステルさん。」
「何、プリネ?」
「ルーアンを出るというのでしたら、あの子達を連れて行かないと……」
「………そうね。」
「あ………」
プリネとエステルの会話から察したクロ―ゼは表情を暗くした。
「クラム達には悪いと思うけど………迎えに行こう。」
「ええ。」
そしてエステル達はミントとツーヤを迎えにマノリア村に向かった………
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