英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第55話
”石切り場”に到着したリィン達はミリアムの機転によって行く手を阻む石の扉をアガートラムの一撃で破壊し、奥へと進むと怪しげな人物達が密会をしていた。
同日、14:00――――
~石切り場・最奥~
(あれか……!)
(いたいた……!)
怪しい人物達を見つけたリィンは気を引き締め、ミリアムは口元に笑みを浮かべた。
「おい、ここまでやればもう十分だろうが……!」
「とっとと残りの契約金も渡してくれよ!」
猟兵崩れは眼鏡の男に金の催促をしていた。
「フ……そうは行かない。契約内容は、帝国軍と共和国軍が戦闘を開始するまでだった筈だ。もし、膠着状態が続くようならもう一押ししてもらう必要がある。」
一方眼鏡の男は口元に笑みを浮かべて答えた。
「チッ……面倒だな。」
「だが、もう少し我慢すりゃ莫大なミラが……」
「しかし”G”と言ったか。どうしてアンタらはそんなに羽振りがいいんだ?」
「前金だけで500万ミラ……どんな大金持ちのスポンサーを味方につけやがったんだ?」
「我々の詮索をしないことも契約条件に入っていた筈だ。何だったらこの場で契約を打ち切っても構わないが……?」
猟兵崩れ達の疑問を聞いた眼鏡の男は猟兵崩れ達を睨んだ。
「ちょ、ちょっと待てって!」
「ミラさえ出してくれりゃあこっちは大人しく働くっての!」
「それに、アンタらのアシ無しでどうやって帰りゃあいいんだよ!?」
男の返事を聞いた猟兵崩れ達は慌て出し
「フフ、わかったのなら大人しく待機しておきたまえ。なに……じきに戦端は開かれ、この地の平穏も破られるだろう。そこまで行けば―――」
猟兵崩れ達の様子を見た男は満足げな笑みを浮かべた。
「―――させるかっ!」
その時ガイウスの声が聞こえ、声を聞いた男達が振り向くと武器を構えたリィン達が男達に駆け寄った。
「な……!?」
「なんだ、このガキどもは!?」
「トールズ士官学院、”Ⅶ組”の者だ!監視塔、共和国軍基地攻撃の疑いでアンタたちを拘束する!」
自分達の存在に驚いている猟兵崩れにリィンは宣言し
「どうやら、下郎どもを使って大それた事を狙っているらしいが……その薄汚い思惑、叩き潰してやろう。」
ユーシスは目を細めて眼鏡の男を睨んだ。
「な、なんだと!?」
「下郎って……ブッ殺すぞ、ガキどもが!」
「お前達は……フン、そうか。ケルディックでの仕込みを邪魔してくれた学生どもだな?」
ユーシスの挑発に猟兵崩れが怒っている中、リィン達を見回した眼鏡の男は鼻を鳴らした後リィン達を睨んだ。
「……まさか…………」
「あ、あの野盗たちを影で雇っていたのは……!?」
男が呟いた言葉を聞いたリィンとアリサは驚き
「フフ、領邦軍ではなくこの私だったというわけさ。まさかあそこでメンフィルが介入した挙句領邦軍を捕えた上、ケルディックまで奪い取るとは完全に計算外だったがな。ユーゲント皇帝も”姫君の中の姫君”達に余計な権限を与えてくれたものだ。」
「………………」
男の口から出た話を聞いたユーシスは目を細めて男を睨んだ。
「我が名はギデオン―――それだけ覚えておいてもらおう。もっとも同志たちからは”G”とだけ呼ばれているがね。」
「ど、同志……?」
「フン、何がしかの組織に所属しているようだが……」
男―――ギデオンが名乗るとエマは困惑し、ユーシスは鼻を鳴らして男を睨み
「―――問答は無用だ。この地に仇なすならば全力をもって阻止させてもらう。」
「この緑溢れた地を戦場にしようとする愚行……精霊女王として裁きを与えてやりますわ!」
「歴史ある自然を汚そうとした事、この我も許さんぞ!」
「覚悟してもらうよ!」
十字槍を突きつけたガイウスに続くようにプリネの使い魔達もそれぞれギデオンたちを睨み
「うんうん♪イチモウダジンってやつだね。」
ミリアムは勝ち誇った笑みを浮かべて頷いた。
「面白ぇ……」
「なんか変なガキや訳のわからない連中まで混じってるみてぇだが……」
「……オイ。やっちまってもいいんだな?」
「ああ、学生相手に可哀想だが仕方あるまい。―――知られた以上、生かして帰るわけにはいかん。遠き異郷の地で若き命を散らせてもらおうか。」
「こいつら……」
「……手加減は無用みたいですね。」
自分達を殺すつもりでいるギデオン達をアリサとエマは睨み
「――――Ⅶ組A班、武装集団の制圧を開始する!」
リィンの号令を合図に戦闘を開始した。7人いる猟兵崩れに加えてギデオンの銃撃やアーツは厄介だったが、歴戦の戦士達であるペルル達には敵わず、ペルルの空からの強襲に翻弄され、フィニリィとアムドシアスの魔術や技によって圧倒された事に加え、リィン達の活躍もあり、リィン達は余裕でギデオン達を戦闘不能に追い込んだ。
「ば、馬鹿な……」
「百戦錬磨の俺達がこんなガキ共に……」
「クソ……異種族と魔術が厄介すぎる……」
戦闘不能に陥った猟兵崩れ達は自分達の敗北に信じられない表情をし
「傭兵部隊”バグヘアー”……あちこちの猟兵団からのドロップアウト組だったっけ?今回の仕事で、晴れて猟兵団として名乗りを上げるつもりだったのかな?」
ミリアムは猟兵崩れ達を見つめて問いかけた。
「な、なんでそれを……!?」
「学生共と異種族共はともかく何なんだ、このガキは!?」
「え、得体の知れない化物まで使いやがって……」
ミリアムの問いかけに猟兵崩れ達は信じられない表情をし
「む、化物なんてヒドいなぁ。ね、ガーちゃn?」
「―――――」
猟兵崩れ達の言葉に頬を膨らませたミリアムはアガートラムに微笑んだ。
(本当にあの子……いったい何者なの……?)
(ああ、何となく背景は掴めてきた気がするが……)
ミリアムの正体が気になったアリサは疲れた表情をし、リィンは真剣な表情でミリアムを見つめ
「クク―――なるほどな。どうやら”子供たち”の一人だったというわけか。銀色の傀儡使い……通称”白兎”だな?」
ギデオンは不敵な笑みを浮かべてミリアムを見つめた。
「へー。ボクのこと知ってるんだ?」
「ああ、貴様がここにいるのなら絶好の機会というものだ……―――この場にいる全員ごとあの世に行ってもらおうかッ!」
ミリアムの問いかけに憎々しげに答えたギデオンは懐から笛を取り出して吹き始めた。
「”笛”……!?」
「何のつもりだ……!?」
ギデオンの行動にエマは驚き、ユーシスは警戒し
「フン、下手としかいいようがないな。」
「そういう問題ではありませんわ。それよりあの笛から感じる魔気は……!」
鼻を鳴らしたアムドシアスの言葉に呆れたフィニリィは警戒の表情でギデオンを睨んだ。
「―――上だ、気を付けろ!」
「え……」
「っ……!」
「わわっ、何あれ~!?」
何かに気付いたガイウスの警告にアリサは呆け、リィンは気を引き締め、ガイウス達と共に上を見つめて何かを見つけたペルルは驚いた。すると巨大な穴がある天井から巨大な蜘蛛の魔獣が3体飛び降りた!
「なあっ……!」
「なんだあッ……!?」
巨大魔獣の登場に猟兵崩れが驚いたその時魔獣達は口から糸を吐いてそれぞれ一人ずつ猟兵崩れを糸で拘束して近づき
「や、やめろ―――」
「た、助けて―――」
「め、女神様――――」
「「「ぎゃあああああっ…………!」」」
なんと糸で拘束した猟兵崩れ達を喰い殺した!
「ひいっ!?」
「く、喰われた……!?」
仲間達の末路を見た猟兵崩れ達は悲鳴を上げ
「クッ、まさか言い伝えの”悪しき精霊”……!?」
「この石切り場のヌシということか……!」
ガイウスとリィンは魔獣達を警戒し
「あんな野蛮な奴等と私達を一緒にしないでほしいですわ!」
「ええ。言い伝えでそのような魔物が精霊として伝えられているなんて、その魔物達は万死に値します。」
怒りの表情のフィニリィの言葉に同意するかのようにリィンの傍に静かな怒りを纏ったリザイラが現れて殺気を魔獣達に向けていた。
「クク、どうやら太古から生き残っていた魔獣らしいな。目覚めたばかりで空腹らしいから全員エサになってやりたまえ。それでは―――よき死出の旅を。」
そしてギデオンはリィン達に背を向けて穴へ飛び込んでワイヤーで降り始め
「あ、逃げた。」
「ワ、ワイヤーロープ!?」
ギデオンの行動にミリアムは目を丸くし、アリサは驚き
「そう易々と逃がすと思うな!?ハッ!」
アムドシアスが矢を放ってワイヤーロープを切り
「な―――うああああああっ!?ぐあっ!?」
穴の底からギデオンの悲鳴と呻き声が聞こえてきた。
「た、助けて……!」
「死にたくない!……死にたくないよう!」
一方魔獣達に睨まれた猟兵崩れ達は悲鳴を上げ
「くっ……今は後回しだ!」
「ええ……!さすがに見過ごせません!」
ユーシスとエマは戦争回避の証拠となる猟兵崩れ達を殺させない為に魔獣達の撃破を決意した。
「―――ミルモ、手伝って!」
「頼む、ベルフェゴール!――――A班、戦闘準備!3体の巨大蜘蛛の迎撃を開始する!」
「おおっ!」
そしてアリサはミルモを召喚し、リィンはベルフェゴールを召喚した後号令をかけて仲間達と共に戦闘を開始した!
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