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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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外伝~人と精霊王女の契約~

~精霊領域・リスレドネー~



リィン達との戦闘によってぐらりとよろめき、地面に膝をついたリザイラは呆けたような顔で呟いた。

「あら……負けてしまいましたか…………」

未だ戦闘が続行な様子を見せながらもリィン達に押し切られた事でリザイラは自身の敗北を認め、リザイラの自身の敗北を認める言葉を聞いたベルフェゴールやフィニリィ、プリネを除いた全員は疲労によって地面に膝をついた!

「ハア……ハア……か、勝ったのか……!?」

「ハア……ハア…………どうやら……そのようですね…………」

息を切らせているリィンの言葉にエマは疲労によって表情を青ざめさせた状態で答え

「ハア……ハア……精霊の王女様に勝ったなんて…………しょ、正直……実感が湧かないわ…………」

「ハア……ハア……というか奴自身はまだ……余力があるように………見えるぞ……」

「……さすがは自然と共に生きる精霊を………統べる方だな…………」

アリサ、ユーシス、ガイウスもそれぞれ息を切らせてリザイラを見つめていた。

「フウ………さすがに今回の戦いは厳しかったですね……」

「フフッ、この私がいるのですから、勝って当然ですわ!」

「フフ、久しぶりに熱い戦いだったわ♪」

プリネは疲れた表情で溜息を吐き、フィニリィとベルフェゴールは勝ち誇った笑みを浮かべた後二人はそれぞれの主の身体に戻った。



「―――風の精霊達よ、戦士達に祝福を。癒しの風!!」

そしてリザイラはリィン達に治癒魔術を放ってリィン達の傷と共に自分が受けた傷を回復し

「あたたかい……」

「ああ……全てを包み込むような暖かい風……このような風を感じるのは初めてだ……」

「どうやら私達に治癒魔術をかけてくれたようですね。」

「フン、負けたら随分と殊勝だな」

リザイラの治癒魔術を受けたアリサとガイウス、エマは静かな笑みを浮かべ、ユーシスは鼻を鳴らして呟き

「――――リザイラ様。これで約束通り、侵攻を中止してくださるのですね?」

リィンは静かな表情でリザイラを見つめて尋ねた。



「不本意ではありますが、人間が共存の可能性を提示してきたのは、大きな進歩です。貴方達のような力を持つ者達が、人の道を示し、多くの民がそれに追従することを、大いに期待します。――――ただし、同じような問題が再び降りかかったときには、また我々は、動き出すことをお忘れなきよう……」

そしてリザイラは静かな笑みを浮かべてリィンを見つめて答えた後すぐに表情を戻して忠告し

「……はい。ですがその時はきっと俺達と同じ考えを持つ人達が現れてくれると信じています……!」

リザイラの忠告に頷いたリィンは決意の表情でリザイラを見つめた。



「ふふふ、不透明な答えで信頼性に欠けますが、まあいいでしょう。そんな不安定ながらも心には熱き思いを秘める貴方だからこそ、放っておけないと思う仲間が集うのかもしれませんね。」

リィンの答えを聞いたリザイラはおかしそうに笑った後リィンに微笑み

「フフ、確かにそうね。」

「リィンさんとアリサさん……ユーシスさんとマキアスさん……それぞれの仲違いが治ったきっかけは全てリィンさんですしね。」

「ええ……私達”Ⅶ組”はリィンさんがきっかけで、一丸となりかけていますしね。」

「ああ……リィンには善き風の導きがあるように思える。」

「フッ、まさか伝承上の存在も俺達と同じ考えをしていたとはな……」

リザイラの答えを聞いたアリサやプリネ、エマは微笑み、ガイウスとユーシスは静かな笑みを浮かべ

「は、はあ……?(褒められているんだよな……?)」

リィンは戸惑いの表情で頷いた。



「貴方は面白い人。いいえ、本当は人ではない、のかしら?」

「……人間です。少なくても俺はそう思っています。」

リザイラの問いかけにリィンは一瞬の間考え込んだ後静かな表情で答え

(リィンって、どこからどう見ても人なのに、どうしてあんな問いかけをするのかしら?)

(まあ、魔神であるベルフェゴール様を従えているのですから、信じられないのも無理はないかと……)

首を傾げたアリサの言葉にプリネは苦笑しながら答え

「………………」

エマは複雑そうな表情でリィンから視線を外して黙り込んでいた。



「私、貴方のことがとても気になっています。」

「へ。」

そしてリザイラの言葉を聞いたリィンは呆け

「もしよろしければ、貴方の戦いに、私も連れて行っては頂けないでしょうか?」

「……………………」

(あら♪)

リザイラの口から出た驚くべき申し出に石化したかのように固まり、ベルフェゴールは興味ありげな表情をし

「え、えっと、それってもしかして……」

「ベルフェゴールのようにリィンの使い魔になる――――そういう事なのか?」

アリサは信じられない表情をし、ユーシスはリザイラを見つめて尋ねた。



「ええ。」

ユーシスの質問にリザイラが頷いたその時

「えええええええええええええええっ!?ちょ、ちょっと待ってください!貴女はこの地の指導者なのに勝手に出て行っていいんですか!?」

我に返ったリィンが大声を上げて驚いた後、混乱した様子でリザイラを見つめて尋ねた。

「精霊は気が長いですからね。僅かばかりこの地を離れたところで、何の影響もありません。」

「………………」

リザイラの答えを聞いたリィンは口をパクパクさせ

「その”僅か”は一体どれほどの年月になるのだろうな?」

「フフ、相手は精霊なのですから、きっとリィンさんの寿命がつきるまで程度の年月も”僅か”になると思いますよ?」

首を傾げたガイウスの疑問にプリネは苦笑しながら答え



「精霊の時間感覚って一体どうなっているのよ……」

「…………?」

冷や汗をかいて疲れた表情で自分を見つめるアリサの様子にミルモは首を傾げ

「フッ、異種族……それも”王族”の奴ばかりに好かれるとはリィンは何か特殊な体質をしているのかもしれんな。」

「そ、そうかもしれませんね……………ア、アハハ……………」

口元に笑みを浮かべるユーシスの言葉に苦笑しながら答えたエマは戸惑いの表情でリザイラとリィンを見比べていた。



「それで、どうしますか?私を連れて行っていただけますか?」

「え、えっと……じゃあ是非お願いします。」

リザイラに答えを促されたリィンは頷き

「私への敬意は不要です。今から私は貴方に力を貸す存在なのですから。」

「あ、ああ。」

穏やかな表情のリザイラの指摘に戸惑いの表情で頷いた。

「ふふふ、ならば今から契約の儀式を始めましょう……貴方達は私達が戻ってくるまで、ここで好きにくつろいでもらって構いませんよ。」

そしてリザイラはアリサ達に一言告げた後転移魔術でその場からリィンと共に消えた。



「リ、リィン!?」

二人が突然消えた事にアリサは驚いたが

「恐らくリザイラ様はリィンさんと”契約”する”儀式”の為に一時的にこの場から離れただけですから、終わればすぐに戻ってきますよ。」

「そ、そうなの?というか、ミルモと契約した時はすぐに終わったけど。」

プリネの答えを聞いて納得したが自分とミルモが契約した時の事を思い出して首を傾げた。

「え、えっと……恐らく同じ精霊でも種類が違いますから、契約方法も違うんだと思います。ア、アハハ……」

「そうなんだ。確かに相手は精霊の王女様なんだから、契約方法が違ってもおかしくないわね。」

「………………」

わざわざその場からいなくなった事から契約方法が十中八九、”性魔術”である事に気付いていたプリネは冷や汗をかいて苦笑しながら答え、プリネの様子に気付かないアリサはプリネの説明に納得し、エマは二人が消えた場所を見つめた後真剣な表情で考え込み

「ならオレ達は二人が戻ってくるまでリザイラの好意に甘えて今の内に休憩しておこう。……恐らくあの湖の水は飲めるだろう。」

「ああ。フッ、伝承上の存在達が住まう地の湖なのだから、何らかの祝福の効果があるかもしれないな。」

ガイウスの提案に頷いたユーシスは透き通って底まで見えるほどの綺麗な水が溜まる湖に視線を向けて口元に笑みを浮かべた。そして1時間程するとリィンとリザイラが転移魔術によって戻ってきた。



「あ、リィン。お帰りなさい。契約をする為の儀式みたいなのは終わったの?」

「あ、ああ…………何とかな……」

「フフ…………」

(フフ、すごい役得だったわね、ご主人様♪精霊王女の足や手、口の中をその身で味わった上、精霊王女の中にもたくさん出したんだから♪睡魔族の女王と精霊王女をいつでも抱ける人間なんて、ご主人様が世界初でしょうね♪)

アリサに尋ねられて疲れた表情で頷いたリィンの様子をリザイラは静かな笑みを浮かべて見つめ、ベルフェゴールはからかいの表情になり

「―――それにしてもまさか貴女がきっかけになるとは思いませんでしたよ、ミルモ。」

「…………♪」

ミルモに視線を向けて微笑み、ミルモは嬉しそうな表情でリザイラを見つめた。



「フフ、主に大切にしてもらっているようで何よりです。―――これは人間が共存の可能性を提示するきっかけを作った貴女へのご褒美です。」

そしてリザイラがミルモの頭上に両手をかざすとミルモは光に包まれ、風の中位精霊――――”ジルニー種”へと姿を変えた!

「なっ!?」

「これは一体……」

姿が変わったミルモを見たリィンは驚き、ガイウスは目を丸くし

「―――”昇格”です。一定の経験を得た異種族はその異種族の王族の力か、”昇格”する事ができる古の紋章を使う事でさらなる”力”を得る事ができるのです。」

「しょ、正直信じられない話ですね……」

「ああ……この目で見てもあまりにも非現実的としか言いようがないぞ。」

プリネの説明を聞いたエマとユーシスは信じられない表情でミルモを見つめた。



「え、えっと……ミルモ……なのよね?」

その時アリサがおずおずとミルモに話しかけ

「うん!姿が変わっても私は私だよ、アリサ!」

「!?ミ、ミルモ、貴女……!」

「しゃ、しゃべった……」

嬉しそうな表情で答えたミルモの言葉を聞いたアリサは驚き、リィンは呆けた。



「リザイラ様、ありがとう!これからアリサといっぱいおしゃべりができるよ!」

「フフ、私は貴女が為した偉業に対する当然の報酬を支払ったまでですよ。」

ミルモに微笑まれたリザイラは静かな笑みを浮かべ

「これから一杯色々な事を話そうね、アリサ!」

「ええ……!ミルモとはいつかおしゃべりをしたいと思っていたし、それに子供サイズにまで大きくなったんだからミルモに似合う服やアクセサリーも買わないとね……!」

ミルモの言葉にアリサは嬉しそうな表情でミルモを見つめて頷いた。

「服やアクセサリーって……そこまでするか?」

「フフ、一人っ子のアリサさんにとっては妹ができたようにも感じるからだと思いますよ。」

アリサの言葉に呆れたリィンにエマはアリサとミルモを微笑ましそうに見つめながら推測した。その後リィン達はリザイラの力で精霊領域を一瞬で抜けてノルド高原に到着し、リザイラは亀裂を自分の力で封印した後リィンの身体に戻った。



~ノルド高原~



「はあ~、何とか無事に戻ってこられたわね……」

「リザイラ様を説得できて本当によかったです……」

「ええ……それに私達”人間”が自然や精霊の気持ちを知るよいきっかけになりましたね……」

「フッ、精霊を統べる存在と戦った等B班の連中が知ったらさぞ驚くだろうな。」

アリサとプリネは安堵の溜息を吐き、エマは静かな表情で頷いた後真剣な表情で亀裂があった場所を見つめ、ユーシスは静かな笑みを浮かべ

「………?」

「どうしたんだ、ガイウス?」

空を見上げて首を傾げているガイウスの様子に気付いたリィンは尋ねた。



「ああ……オレの記憶が確かならオレ達が先程の”領域”に入る前と比べて、太陽の位置がほとんど変わっていない。―――つまりオレ達が”領域”に入る前と比べると時間はそれほど経っていないと思う。」

「ええっ!?」

「もしかしたら先程の精霊領域とこちらの時間の流れが違うかもしれませんね。」

ガイウスの答えを聞いたアリサは驚き、プリネは真剣な表情で推測し

(どうなんだ、リザイラ?)

(ええ、その通りです。精霊領域はこちらの世界と比べると時間の流れが緩やかですよ。)

「(そうか……)リザイラの話では、プリネさんの推測通りこちらの世界と比べるとさっきの領域の時間の流れは緩やからしい。」

リザイラに答えを聞いたリィンはアリサ達に教えた。



「そ、そうなんだ……」

「世界の”理”が異なる場所でしたから、時間の流れが緩やかになっていてもおかしくありませんね。」

リィンの説明を聞いたアリサは目を丸くし、エマは静かな表情で答え

「ならばこのまま”特別実習”を続けても問題はなさそうだな。」

「ああ……まずは中将に魔獣を退治した報告をしにゼンダー門に向かおう。」

ユーシスの提案にガイウスは頷いた。その後リィン達は再び馬を走らせてゼンダー門に向かい、ゼクス中将に報告をした後他の依頼の消化を始めた。



こうしてリィンは新たなる心強き仲間を手に入れた…………! 
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