英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第39話
グランセルに到着したエステル達は王国軍から何かの依頼を頼まれようとしていた所、エルベ離宮から迷子の通報が入り、エステル達はひとまず迷子の子供を保護し、保護者を探すためにエルベ離宮に向かうと執事より迷子の子供が突如かくれんぼを始めた為その場に迷子の子供がいなかったので、エステル達は迷子の子供を探す申し出をし、離宮内に隠れていると思われる迷子の子供を探してある客室に入った。
~エルベ離宮・客室~
エステル達が部屋に入る直前、豪華な衣装を着た男性――デュナン公爵が部屋をせわしなく歩いていた。
「遅い!遅すぎる!フィリップめ……。雑誌とドーナツを買うのにどれだけ時間をかけているのだ!」
その時扉が開く音がし、デュナン公爵は振り返った。
「これ、フィリップ!私をどれだけ待たせれば……」
デュナン公爵は部屋に入って来た人物を自分の執事――フィリップと思い、注意をしたが
「へ……」
「あ……」
入って来たのはエステル達だった。デュナン公爵を見たエステルとクロ―ゼは唖然とし
「そ、そ、そ……そなたたちはああ~っ!?」
一方エステル達を見たデュナン公爵は信じられない表情で声を上げた。
「なんだぁ?この変なオッサンは。」
デュナン公爵の事を知らないアガットは首を傾げた。
「デュナン公爵……。こんな場所にいたんだ。」
「小父様……。その、お元気ですか?」
デュナン公爵と意外な所で再会した事にエステルは目を丸くし、クロ―ゼは言いにくそうな表情で尋ねた。
「ええい、白々しい!そなたたちのせいで、そなたたちのせいでな……。私はこんな場所で謹慎生活を強いられているのだぞっ!」
「うーん、あたしたちのせいって言われてもねぇ……。リシャール大佐の口車に乗った公爵さんの自業自得だと思うんだけど。」
「まあ、謹慎程度で済んで幸運だったと思うべきですよ。他の国なら、いくら王族と言えど実刑は免れなかったでしょうし。」
「くっ……。フ、フン……。確かに陛下を幽閉したことがやり過ぎであったことは認めよう。リシャールに唆されたとはいえ、それだけは思い止まるべきだった。」
エステルとアーシアの指摘を受けたデュナン公爵は反論がなく、意外にも殊勝な態度で答えた。
「あれ、なんだか殊勝な台詞ね?」
デュナン公爵の態度にエステルは意外そうな表情で尋ねた。
「フン、勘違いするな。私は陛下のことは敬愛しておる。君主としても伯母上としても非の打ちどころのない人物だ。」
エステルの疑問にデュナン公爵は胸を張って答えたが、すぐにクロ―ゼを睨んで言った。
「だが、クローディア!そなたのような小娘を次期国王に指名しようとしていたのはどうしても納得がいかなかったのだ!」
「………………………………」
デュナン公爵に睨まれたクロ―ゼは何も返さず黙っていた。
「ちょ、ちょっと!聞き捨てならないわね!クローゼは頭が良くて勉強家だし、人を引き付ける器量だってあるわ!公爵さんに、小娘とか言われる筋合いなんて……」
「……エステルさん、いいんです。」
自分の代わりに怒っているエステルをクローゼは制した。
「前にも言ったように私は……王位を継ぐ覚悟ができていません。小父様が不快に思われるのも当然と言えば当然だと思います。」
「クローゼ……」
「ふん、殊勝なことを。昔からそなたは、レイシス同様公式行事にもなかなか顔を出そうとしなかった。知名度でいうなら、私の方が遥かに国民に知れ渡っているだろう。すなわちそれは、そなたやレイシスに上に立つ覚悟がないということの現れだ。」
「………………………………」
デュナン公爵の厳しい言葉にクロ―ゼは何も返さず黙っていた。
「聞けばそなた、身分を隠して学生生活を送っているそうだな。おまけに孤児院などに入り浸っているそうではないか。そしてレイシスはレイシスで”社会勉強”という名目で世界各国を放浪していると聞く……そんなことよりも、公式行事に出て広く国民に存在を知らしめること……。それこそが王族の役目であろう!」
「……それは………」
デュナン公爵の指摘にクロ―ゼは辛そうな表情をした。
「………………………………。あたしは王族の役目とかぜんぜん詳しくないから……。ひょっとしたら公爵さんの言うことも一理あるかもしれない。」
「わはは、当然だ。」
唐突に言い出したエステルの言葉を聞いたデュナン公爵は笑いながら胸をはった。
「でも、これだけは言えるわ。クローゼは今、悩みながらも答えを出そうと頑張っている。少なくとも、謹慎を理由に何もしてない公爵さんよりもね!」
「な、なにィ!?」
しかしエステルの言葉を聞いたデュナン公爵は驚いた。
「エステルさん……。……あの、デュナン小父様。私は今、エステルさんのお手伝いをさせて頂くことで自らの道を見出そうとしています。私に女王としての資格が真実、あるのかどうなのか……。近いうちに、その答えを小父様にもお見せできると思います。ですからそれまで……待っていただけないでしょうか?」
自分を庇うエステルを見てクロ―ゼは凛とした表情でデュナン公爵を見て言った。
「ぐっ……。ふ、ふん、馬鹿馬鹿しい。ええい、不愉快だ!とっとと部屋から出ていけ!」
「言われなくても!」
デュナン公爵の言葉を聞き鼻を鳴らしたエステルは仲間達と共に部屋を出ようとしたが振り返ってデュナン公爵に尋ねた。
「……あ、その前に。ここに白いドレスを着て眼鏡をかけた女の子がたずねてこなかった?」
「なんだそれは……。わたしはここにずっとおる!そんな小娘など知らんわ!」
「あっそ、お邪魔しました。」
「……失礼しました。」
そしてエステル達はデュナン公爵がいる客室を出た。
「まったく……。なんなのよ、あの公爵は!自分のことは棚に上げてクローゼをけなしてさ!」
「いえ、小父様の非難も当然と言えば当然だと思います。王族としての義務……それは確かに存在しますから。」
デュナン公爵の部屋を出た後、憤っているエステルをクロ―ゼは宥めた。
「……アルテリアでは法王猊下が選ばれる方法は少々特殊だから王族の義務というのは私にはわからないけど……でも、あの公爵閣下の場合、悪い知名度が高まってしまったわ。もはや、彼が貴女よりも次期国王にふさわしいと考える者はリベールには存在しないでしょうね。」
「それは……確かにそうなのかもしれません。ですが、私の覚悟については小父様のおっしゃる通りです。」
アーシアの言葉に頷いたクロ―ゼだったが、すぐに辛そうな表情に変えて答えた。
「クローゼ……」
「私、ここで小父様とお会いできて良かったです。改めて、私に足りない部分について気付かせていただきました。」
「そっか……。あ、そう言えばさっき公爵さんがクローゼと一緒にレイシスって人の事を責めていたけどレイシスって誰??」
デュナン公爵との会話で聞き覚えのない人物の名前を思い出したエステルはクローゼに訊ねた。
「あ……そう言えばエステルさん達にはレイシスお兄様の事を話した事がありませんでしたね。レイシスお兄様は私の兄なんです。」
「ええっ!?ク、クローゼにお兄さんがいたんだ……あれ?でも以前のクーデターの件で王位継承の件であの公爵さんとクローゼしか話に出てこなかったけど、何で??」
「それは………………」
エステルの疑問を聞いたクローゼは辛そうな表情で言葉を濁したその時
「……レイシス王子殿下は”庶子”の為、王位継承権がないのよ。」
アーシアが静かな表情でクローゼの代わりに答えた。
「”庶子”?」
「え……アーシアさんはレイシスお兄様の事をご存知なのですか?」
「ええ。それでその”庶子”なのだけど、”庶子”とは上流階級の正当な血筋でない子供の事を言うの。わかりやすく言えば隠し子ね。」
「か、”隠し子”!?それってクローゼのお父さんが浮気してできた子供って事じゃない!……って、ごめん、クローゼ。」
アーシアの説明を聞いてあることを察したエステルは驚きの表情で声をあげたがクローゼに気づくと申し訳なさそうな表情で謝罪した。
「いえ、私は気にしていませんので大丈夫です。」
「ちなみにそのレイシスって王子は今どこで何をしているんだ?以前のクーデターじゃ姿も見てない上、名前すらも聞いた事がなかったぞ。」
「レイシスお兄様はご自身の見聞を広めて将来リベールの王となる私かデュナン小父様を支える為に世界各国を放浪していらっしゃっているのです。」
「そうなんだ……ちなみにどんな人なの?」
まだ見ぬリベールの王子が気になったエステルは興味ありげな様子でクローゼに訊ねた。
「王族としての物腰や振る舞いが完璧な方で、それでいて気さくな方でもあります。母は違いますがお兄様には幼い頃から血が繋がった本当の妹のように可愛がってもらいました。ちなみに剣術は相当な腕前でユリアさんどころかリシャール大佐もお兄様には一度も勝てなかったんですよ。」
「ええっ!?ユ、ユリア大尉どころかリシャール大佐でも勝てないって、滅茶苦茶強いじゃない!」
「おいおい……あの大佐より格上とか下手したらカシウスのオッサンともまともに渡り合えるんじゃねぇのか!?」
クローゼの口から語られたクローゼの兄の圧倒的な強さを知ったエステルは驚き、アガットは信じられない表情をした。
「フフ、私は直接見ていませんがユリアさん達の話ですとまだ剣を使っていた頃のカシウスさんに一本だけ取った事があったそうですよ。」
「まあ……本来の得物である剣を使った”剣聖”相手に一本取った事があるなんて、相当な腕前ね。」
「………………」
「あ、ありえねえ…………」
驚愕の事実にアーシアは目を丸くし、エステルは口をパクパクさせ、アガットは呆然とした表情をしていた。
「ふふっ、それにお兄様はとても聡明な方でジェニス王立学園を主席で卒業されたのです。」
「しゅ、”主席”~~!?それってその学園で一番賢い生徒って事じゃない!」
「フフ、まさに”文武両道”ね。」
クローゼの説明を聞いたエステルは驚き、アーシアは微笑んでいた。
「ま、まさかクローゼにそんなすごいお兄さんがいたなんて……」
「フフ、私がずっと尊敬している自慢の兄です。……だからこそ、時々思うのです。私ではなくレイシスお兄様の方がお祖母様の跡継ぎに相応しいのではないかと。」
驚きのあまり口をパクパクさせているエステルに微笑みながら答えたクローゼだったがすぐに辛そうな表情になったが
「クローゼ…………元気出して!さっき公爵さんにも言ったでしょう?近い内クローゼが将来どうするか公爵さんに証明するって!それにそんな凄いお兄さんもクローゼがリベールの女王になると思って、将来クローゼを支える為に旅をしているんでしょう?そのお兄さんの為にもクローゼは今は悩んで、いつか答えを出すべきよ!」
「エステルさん……はい!」
エステルに元気付けられると笑顔で頷いた。
「それじゃ迷子探し、再開しようか?」
「はい。」
そして気を取り直したエステル達は迷子の捜索を再開した…………
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