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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第35話

ルーク達が街に戻ると異変―――ルーク達の知り合いであるルック自身やエリッサの母親等数人の市民達が昏睡状態に陥るという大事件が起こった。



幸いにも昏睡した市民達は唯の睡眠状態であり、ルーク達は手分けして昏睡状態に陥った市民達の家族に事情を聞いた。



そして共通している部分は市民達が昏睡した瞬間を霧の影響で誰も見ていない事、気になった事は昏睡する直前に昏睡状態に陥った市民達の家族が聞いた鈴の音や黒衣の女性を見かけたという情報であり、ルーク達はこれ以上被害者を出さない為や黒衣の女性を見つける為に仮眠を取りながら交代でパトロールを行った。



パトロールの甲斐があったのか、被害者は増える事はなかったが昏睡状態に陥った市民達は未だ目を覚まさず、更にロレント地方を覆う霧の濃度が上がると共に範囲が更に広くなったという状況であった。



~遊撃士協会・ロレント支部~



「そう……霧の範囲が一晩でそこまで広がったの……」

街道の状況を見てきたルーク達の報告を聞いたアイナは考え込み

「更にマルガ山道に至ってはほぼ全域が霧に閉ざされていたわ。」

「行きも帰りも大変でしたよ~。」

山道方面を見てきたシェラザードとアネラスはそれぞれ報告した。

「かなり洒落にならない状況だが……軍はまだ動かないのか?」

その時ある事を疑問に思っていたフレンはアイナを見つめて尋ね

「いえ、こちらの報告を受けた軍が状況を重く見たのか、ロレントの警備の為に部隊の派遣を決定しました。」

「ほんとですか!?」

「ようやく軍も動き出したか……」

「街を軍に任せられるから、レン達も自由に動けるわね。」

ようやく来る援軍の存在にアネラスは明るい表情をし、ルークとレンはそれぞれ口元に笑みを浮かべていた。



「ええ、すでにヴェルテ橋方面から2個小隊がこちらに向かっているわ。」

「それでアイナ。俺達はこれから何をした方がいい?」

「それなんだけど……。まずは民間人の避難を手伝ってくれないかしら。」

「民間人の避難?」

アイナの依頼を聞き、意味がわからなかったアネラスは首を傾げた。

「昏睡事件は霧の発生範囲で起こされている可能性が高いわ。そして今朝、その発生範囲はさらに広がってしまった……。パーゼル農園やマルガ鉱山が覆われてしまうくらいにね。」

「なるほど、そういう事か。」

「ママやティオ達みたいにロレントの外に住んでいる人達の避難ね?」

「後は鉱山で働いている鉱員達の避難か……」

説明を聞き、察したルークやレン、フレンはそれぞれ答えた。

「ええ。郊外の一軒家に住んでいるレナさん、パーゼル農園の一家と、鉱員達の安全を頼んでもいいかしら?」

「わかったわ。それじゃあ迅速に避難を終わらせる為にも3手に分かれた方がいいわね。」

アイナの指示を聞いた後シェラザードは提案した。



「組み合わせや担当地はどうしますか?5人だと、どうしても一人だけのチームになってしまいますが……」

「一人のチームは母さんの護衛でいいんじゃねえか?ブライト家はロレント市からすぐの距離だし。」

アネラスの疑問を聞いたルークは提案し

「そうね……それじゃあクジで手っ取り早く決めてしまいましょう。」

ルークの提案にシェラザードは頷いた。

「ん?そう言えばお前は真っ先に母親の護衛を買って出ないんだな?」

母親が大好きな性格をしているレンの事を知っていたフレンはレンがレナの護衛に申し出なかった事に疑問に思って口に出し

「”仕事”なんだから、レンの私情で動く訳にはいかないもの。それにこの5人なら、誰が行ってもロレントに無事届けられるって確信しているしね。」

「お、さすがは正遊撃士になっただけあって、一人前な発言をするじゃねえか。」

「はあ、エステルにレンの爪を煎じて飲ませてやりたいわ……」

レンの答えを聞いたルークは感心し、シェラザードは疲れた表情で溜息を吐いた。その後クジの結果ルークとフレンが鉱員達の保護に、シェラザードとレンが農園に住む人々の保護に、そしてアネラスがレナの保護に向かう事となり、それぞれ3手に分かれてそれぞれが保護する人々がいる場所へと向かった。



~マルガ山道~



鉱山に到着したルークとフレンは鉱山長に事情を話し、多くの鉱員達と共にロレント市に向かっていた。

「!………」

「チッ、嫌な気配だぜ……」

先頭に立って鉱員達を先導していたルークとフレンは何かの気配を感じて武器を構えて警戒の表情をした。

「何だ?どうして立ち止まったんだ?前は何もねえ―――」

そしてルーク達の様子に首を傾げた鉱山長が話しかけたその時、霧のような魔獣が一体現れた!

「ひ、ひえええっ!?」

「ま、魔獣!?」

魔獣を見た鉱員達は悲鳴を上げ

「みんな、落ち着いてくれ!」

「すぐに片付ける!あんた達は下がってな!」

ルークとフレンは警告を出した後戦闘を開始した!



「スタンブレイク!!」

フレンは魔獣に詰め寄って電撃を流し込んだトンファーを叩き込んだが

「なっ!?グッ!?」

フレンのトンファーはすり抜け、その事にフレンが驚いた瞬間魔獣は体当たりをしてフレンにダメージを与え、フレンはすぐさま後ろへと跳躍した。

「フレアアロー!!」

フレンが後ろへと跳躍した瞬間、ルークは駆動を終えたオーブメントでアーツを発動した。すると上空から炎の矢が魔獣に襲い掛かり、炎の矢を受けた敵は全身を炎に包まれていたが、炎に包まれていた魔獣はガスらしき煙を出してルークに放った。

「烈!魔神拳!!」

その時闘気を纏った拳をルークが振るうと衝撃波がガスを吹き飛ばし、魔獣を襲ったが攻撃はすり抜けた!



「ハアッ!?攻撃がすり抜けちまったぞ!?」

「チッ、霧系だから物理は通しにくいのか!だったら……!」

目の前の魔獣が物理攻撃が効きにくいと判断した二人はすぐさまオーブメントの駆動を開始し、その様子を見た魔獣は二人に向かってそれぞれガスを放ったが二人は軽やかに回避し

「アースランス!!」

フレンが発動したアーツによって発生した大地の槍で身体を貫かれ

「ストーンインパクト!!」

更にルークのアーツによって止めを刺され、止めを刺された魔獣は霧散した!

「仕留めたか。しかし……何だったんだ、今の奴は?」

「今まで見た事のないタイプの魔獣だったな。―――とりあえずまずは護衛に専念して、さっきの魔獣の事は後でアイナに報告しようぜ。」

フレンの疑問に答えたルークは提案し、二人はその後鉱員達を無事、ロレント市まで護衛した。



~エリーズ街道~



「!………下がって下さい、レナさん。」

一方レナを護衛していたアネラスは何かの気配に気付いて立ち止まって真剣な表情でレナに警告し

「もしかして魔獣ですか……?この辺りは出ないのに……」

警告を聞いたレナは戸惑っていた。するとその時霧のような魔獣が一体現れた!

「霧の魔獣!?悪いけど……すぐに終わらさせてもらうよ!」

そしてアネラスは戦闘を開始した!

「蒼波刃!!」

アネラスは剣を振るって風の刃を放ったが風の刃は霧の魔獣をすり抜け、対する魔獣はガスのような煙を吐き出してアネラスに放った!

「えいっ!物理が効きにくいタイプか~。ちょっと面倒な相手だな~。」

襲い掛かる煙を剣を振るって霧散させたアネラスはオーブメントに付与されているクオーツに指でなぞり、アーツを発動しようとしていた。



「……………」

アネラスの行動を見た魔獣はアネラスに近づきながらガスを放ったが

「無駄だよっ!」

アネラスは剣を振るって次々と霧を霧散させ

「それっ!ダイヤモンドダスト!!」

駆動を終えたオーブメントでアーツを発動した。すると魔獣の周囲に冷気が包み込んだ後氷の塊が落下して魔獣にダメージを与え、冷気を受けた影響で魔獣の身体は所々凍結し

「二の型――――疾風!!」

その瞬間を狙ったかのようにアネラスが電光石火の速さで強襲すると魔獣は一刀両断され、霧散した!



「フウ。レナさん、怪我はありませんか?」

「ええ、大丈夫です。それにしても今のような魔獣、今まで見た事がないのですが……」

「………後でギルドに報告しておきます。さあ、新手が現れない内に急いでロレントに向かいましょう。」

そしてアネラスはレナの護衛を再開し、レナを無事ロレント市に送り届けた。



~パーゼル農園~



「ティオ達の家、かなり深い霧に覆われているわね。もしこの状態で街道の魔獣が迷い込んできたら危険じゃないかしら?」

農園に到着したレンは農園全体を覆う濃い霧を見て呟き

「そうね。速やかに避難してもらう為にもまずはご主人に事情を説明するわよ。」

レンの意見にシェラザードは真剣な表情で頷いた。するとその時!



チリーン…………



辺りに響く程の透き通った鈴の音が聞こえて来た!

「鈴の音……!?」

「……まさか……!」

農園に響き渡る鈴の音を聞いたレンとシェラザードが血相を変えたその時、霧型の魔獣が2体、二人の目の前に現れた!

「霧の魔物……!?まさか”黒衣の女”の仕業!?」

「今は考えているヒマはないわ!撃破するわよ!」

そしてシェラザードとレンは戦闘を開始した!



「二の型・改――――疾風追連!!」

レンは電光石火の速さで魔獣達に詰め寄ると共に二振りの小太刀を抜刀して駆け抜け、元の位置に戻ったが

「(手応えがない!?)―――!!」

「ハッ!」

すぐに手応えが無い事に気付いた瞬間、霧の魔獣が放った何かのガスがレンとシェラザードを襲い、二人はそれぞれ側面に跳躍して回避した。

「物理攻撃が効かないんだったら……!」

回避に成功したシェラザードはオーブメントを駆動させ

「ミスティアーク!アクロバレット!!」

レンは双銃で銃撃を放って自分に注意を引き付けていた。

「それっ!スパイラルフレア!!」

駆動を終えたオーブメントでアーツが発動されると魔獣達の上空から炎の槍が次々と降り注いで魔獣達を怯ませ

「うふふ、遊びは終わりよ!」

そこに追撃するかのようにレンは怒涛の銃撃を魔獣達に叩き込み

「ジャックポット!!」

最後に双銃をクロスさせて赤と青、それぞれの強力なエネルギー球を放ち、二つのエネルギー球は魔獣に命中すると大爆発を起こし、爆発に飲み込まれた魔獣達は消滅した!



「シェラお姉さん!鈴の音が聞こえたという事はもしかして”黒衣の女性”がまだ近くに……!」

「ええ!レンは家の中にいる人達の安否の確認を!あたしは”黒衣の女性”を探すわ!」

「わかったわ!」

戦闘を終えた二人はそれぞれの行動に移った。



「あ………ティオ……それにチェル達も……」

レンが家の中に入ると自分の知人やその家族たちが意識を失った状態で倒れていた。

「眠っているだけね……やっぱり街の人達と同じ症状ね……」

「ダメね……まんまと逃げられたわ。あたしたちの動きを完全に読んでいたみたい。」

レンが一人一人の状態を調べていると犯人を逃がした事に悔しさを感じているシェラザードが家の中に入って来た。

「”黒衣の女性”、ね。とりあえずティオ達をベッドに運んだ方がいいのかしら?」

「ええ、あたしが運ぶからレンは部屋に案内して……」

その後二人は協力して農家に住む人々をベッドに寝かせた。



「何とかベッドに運んだわね。ふう……これからどうしたもんだか。」

ベッドに運び終えたシェラザードは溜息を吐いた後今後の対策を考え込んでいた。

「状況をギルドに報告して、できれば軍の人達をこっちに派遣してもらうべきだけど……この農園を護衛する人達が現れるまでレンかシェラお姉さん、どちらかが残っておいた方がいいのじゃないかしら?何だったらレンが今から報告しに行くわよ?シェラお姉さん、ティオ達を運んで、ちょっと疲れているでしょう?」

「そうね……。悪いけどお願いしようかしら。」

レンの提案にシェラザードが頷いたその時

「―――いえ、その必要はありません。」

なんとイオンがアリエッタと仮面をつけたシスターと共に部屋に入って来た!



「あら、お姉さん達は……」

「確かクーデター事件時に手伝って頂いた”星杯騎士”のアリエッタさん………という事は貴女達のどちらかがもしかしてアリエッタさんの?」

3人の登場にレンは目を丸くし、シェラザードは驚いた後イオンと仮面のシスターに視線を向けた。

「ええ、僕がアリエッタの上司―――イオン・ジュエと申します。クーデターの時は部下のアリエッタがお世話になりました。」

「フフ、お世話になったのはあたし達の方だけどね。―――それよりどうして七耀教会の裏組織がこんなちょうどいいタイミングでここに現れるのかしら?」

”星杯騎士”の登場のタイミングがあまりにも良すぎる事を疑ったシェラザードは真剣な表情でイオンを見つめて尋ねた。

「昨夜、デバイン教区長から昏睡事件についての報告が、王都の大聖堂に届けられ、ました。それで『星杯騎士』として、どのような状況なのかを確かめる為に、街道を越えて、ロレントに到着した後、たまたま鉱員達を連れたルーク達と出会い、状況を聞いた後、ここにきました。」

「あら、お兄様達は無事護衛を終えれたようね。」

「となると失敗したのはあたし達だけか……それよりさっきの『その必要はありません』って言ってたけど、あれはどういう意味かしら?」

アリエッタの説明を聞いたレンは目を丸くし、シェラザードは疲れた表情で溜息を吐いた後すぐに気を取り直して尋ねた。



「ああ、その話ですか。あれは僕達がここに残りますから、お二人がこの農園に残る必要はないという意味ですよ。」

「あら、いいの?」

「多分任務の関係でロレントに来ているだろうに、本当にいいのかしら?」

「これも聖職者としての、仕事の一つ、です。それに、アリエッタたち、医術の心得も、あります。」

イオンの申し出に驚いているレンとシェラザードを安心させるかのようにアリエッタは説明した。

「ふふ、それならありがたくお言葉に甘えさせてもらうわ。」

アリエッタの説明を聞いたシェラザードは微笑み

「あの、イオン様………私もお二人の手伝いをしてはいけないでしょうか?」

仮面のシスターは申し訳なさそうな表情でイオンを見つめて尋ねた。



「………わかりました。ですが、くれぐれも無理はしないで下さいね?」

「はい、ありがとうございます……!」

尋ねられたイオンは目を閉じて考え込んだ後やがて目を見開いて許可を口にした。

「ちょっと待って。そちらのシスターは何者なのかしら?貴女達と一緒にいるという事は恐らく彼女も”星杯騎士”だと思うのだけど……」

「うふふ、仮面をつけているシスターなんて普通に考えたら怪しすぎるシスターね♪(なるほどね……あの人がヨシュアのお姉さんね♪)」

勝手に話が進んでいる事に驚いたシェラザードは制止し、レンは意味ありげな笑みを浮かべて仮面のシスターを見つめた。



「ステラが仮面、付けているのは私達の任務に関係があるから、です。」

「”星杯騎士団”の任務に………?ちなみにその任務の内容とやらはどういうものなのかしら?」

アリエッタの答えを聞いて眉をひそめたシェラザードはイオンに訊ねた。

「申し訳ありませんがその任務は極秘の為教えられないのです。ですが彼女―――ステラの身分は僕達が保証しますので安心してもらって構いません。」

「……自己紹介が遅れましたね。私の名はステラ。ステラ・プレイスと申します。訳あってイオン様達と共に行動をしています。イオン様達が動けない代わりに微力ではありますが皆さんのお手伝いをさせて頂きたいのですが……」

仮面のシスター―――ステラは一歩前に出て自己紹介をした。



「ステラさん、だったかしら?手伝うって言ってるけど、具体的には何を手伝うつもりなのかしら?」

「それは勿論、皆さん―――遊撃士の方達と一緒にロレントで起こった昏睡事件の解決の為に共に行動しようと思っています。」

「共に行動って……下手したら昏睡事件を起こした”犯人”とも戦う事になるかもしれないのよ?」

ステラの話を聞いたシェラザードは目を丸くした後真剣な表情で尋ねた。

「大丈夫、です。ステラ、アリエッタ達が鍛えました、から。」

「……彼女の希望で自衛の手段として僕の知り合いが”騎士団”に伝わる独特の投擲武器の一つ――――”チャクラム”の使い方を教え、さらに僕達は”術”を教えていますし、魔獣との戦いも経験している上模擬戦ですが対人戦も経験しています。ステラも充分戦力になりますよ。」

「あら、じゃあその人もアリエッタお姉さんみたいに”法術”を使えるんだ。」

「それは助かるわね。アリエッタさんの法術もあのロランス少尉との戦いの時、非常に助かったし。後方支援ならあたし達が守ればいいだけだから、大丈夫ね。―――わかったわ、短い間になりますがよろしくお願いするわ、ステラさん。ただし戦闘時になれば、くれぐれも前に出ないように。」

「はい。」

こうしてステラを加えたシェラザードとレンはその場をイオンとアリエッタに任せ、ギルドに戻った……… 
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