英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第29話
~ル=ロックル・宿舎~
「装備はこれで完璧ね。」
自分が泊まっている部屋に向かったレンは長年使い続けている”剣仙”から授かった二振りの小太刀や特注の双銃や籠手を装備し、また防具や靴、装飾品も装備した後オーブメントのクオーツの並びも確認した。
いや………さすがは”あいつ”と双子だけあって、成長しても随分似ていると驚いただけだ。髪の色が同じであったら、”あいつ”と顔見知りの俺でも見分けが難しいだろう。
「…………………」
装備の点検をし終えたレンはふと女王宮で戦ったロランス少尉の自分に向けた言葉を思い出し
「まさかユウナが生きていたなんてね……てっきり”楽園”で死んじゃったかと思っていたけど。ま、”血の繋がった妹”が出てきたとしても今更”どうでもいい”けどね。でも……レンの邪魔をしようとしたり、レンがようやく手に入れた”幸せ”―――”本当の家族”を壊そうとするのなら、例え相手が”血が繋がっている妹であろうと”容赦しないわよ。」
全身に膨大な殺気を纏い、まだ見ぬ自分とそっくりの容姿をした橙色の髪の少女を思い浮かべながら射殺すような冷徹な視線で扉を見つめて呟いた後部屋を出て、たまたま自分と同時に部屋を出たエステルと共に一階に降り、玄関に向かうと食事をしていたテーブルにクルツとアネラスが向かい合わせに座っていた。
「来たか、エステル君、レン君。向かいの席についてくれ。」
クルツに言われた二人はそれぞれ空いている席に座った。
「本日の演習は遺跡探索だ。この宿舎の西にある『バルスタール水道』に入ってもらう。」
「『バルスタール水道』……。古めかしい名前だけどやっぱり訓練用の施設なの?」
「ああ。中世の遺跡を改築した施設でね。昔の仕掛けも残っているし、危険な魔獣も多く徘徊している。」
「うふふ、少しは歯ごたえがあるといいけどね♪」
「それじゃあ早速、その水道に出発するんですか?」
「いや、その前に……。3人とも、これを見てくれ。」
クルツは3人の前に見慣れぬ戦術オーブメントを出した。
「あれ、これって……」
「もしかして……戦術オーブメントですか?」
「ああ、その通りだ。導力魔法の使用を可能にする戦術オーブメントを造っているのは『エプスタイン財団』というが……。これは先月、財団から納入されたばかりの新型でね。スロットの数は1つ増えて7つ。今までのアーツに加えて新型のアーツも組むことができる。」
「へ~、凄いじゃない!」
「うんうん!かなり期待できそうだね。で、クルツ先輩。私たちも貰えるんですか?」
「ああ、希望するならギルドから無償で提供される。ただし……」
アネラスの希望にクルツが答えようとしたその時
「――――前に使っていたクオーツは使えない、でしょう?」
レンが続きを言った。
「ああ。しかし、よく気付いたね?」
「ええ。だって、構造も変わるのだから、互換性の問題で以前使っていたクオーツが使えなくなるのは当然の事でしょう?」
「ハハ、普通の人はそこまで気付かないよ。」
レンの鋭さにクルツは苦笑しながら答え
「ええ~っ!?そ、それってつまり……」
「今まで合成したクオーツが無駄になるってことですかっ!?」
エステルとアネラスは今まで使っていたクオーツが全て無駄になる事に不安そうな表情になった。
「残念ながらそうだ。面倒だろうが、また最初から1つずつ揃えてもらうしかないな。」
「そ、そりゃないわよ~。」
「ちょっとは使う側の事を考えて開発して欲しいわね。」
クルツの答えを聞いたエステルは肩を落とし、レンは頬を膨らませた。
「うーん……。確かに迷っちゃうよね。このまま今のオーブメントを使い続けたらダメなんですか?」
「ダメじゃないが、推奨はしない。新型オーブメントは、全ての面で以前のものより性能が高いんだ。最大EPも大幅にアップするし、最新型のクオーツにも対応できる。将来的には、さらなる身体能力の向上が期待できるということだ。それに何と言っても以前のオーブメントになかった新しいアーツが組めるのが大きい。……エステル君、レン君。ロランス少尉を覚えているか?」
「え!?う、うん。忘れるなんて出来っこない相手だけど……」
ロランス少尉の話がクルツの口から出てくるとエステルはヨシュアと関係しているかもしれない事に不安そうな表情で頷き
「なるほどね。その新型のオーブメントならロランス少尉が使った未知のアーツ―――確か『シルバーソーン』、だったかしら?そう言った今まで使えなかったアーツが使えるのね?」
「その通り。」
レンの推測にクルツは真剣な表情で頷き
「そ、それじゃあ……。あの赤い隊長さんは新型を使っていたんですね!?」
アネラスは不安そうな表情で尋ねた。
「その可能性は高そうだ。さて、君たちはどうする?」
クルツがエステル達に判断を促すとその場に静寂が訪れたが
「………………………………。あたしは……新型を使いこなしてみたいな。」
エステルが静寂を破り決意の表情で答えた。
「え?」
「あら。」
エステルの答えを聞いたアネラスは驚き、レンは目を丸くし
「あの時、あたしはあの銀髪男に全く歯が立たなかった。アリエッタさんのお陰で勝てたようなものだし………オーブメントを変えたからって自分が強くなるわけじゃないけど……。それでもあたし、より大きな力を使いこなせるようになってみたい。だから……」
「エステルちゃん……。……うん、確かにそうだね。クルツ先輩。私も新型、使わせてください!」
「それじゃあレンも新型をお願いするわ。後々の事を考えたら、そっちの方が役に立つでしょうし。」
やがて二人もそれぞれ新型のオーブメントを使う事に決めた。
「いいだろう。それでは受け取ってくれ。あと、これを渡しておこう。」
エステル達の返事を聞いたクルツはそれぞれに新型の戦術オーブメントを渡し、各属性のセピスも初級のクオーツが作れる数を渡した。
「それだけあれば基本的なクオーツは揃うだろう。演習に行く前に、そこの工房でロベルト君に合成してもらうといい。新しい結晶回路と導力魔法のリストはブレイサー手帳に追加しておいた。工房に行くときは自分たちで確認しておくように。」
「うん、了解です。」
「さらに……。今日の演習は長丁場になるはずだ。いざという時に備えて、食料も用意した方がいいだろう」
「うーん、食料ですか……。それはフィリスさんにお願いすればOKですよね?」
「ああ、そうだな。ロベルト君とフィリス管理人……2人に相談して準備を整えるように。………それでは自分は宿舎の出口で待っている。準備が終わったら来てくれ。」
アネラスに尋ねられ、答えたクルツは立ち上がって先に外に出て行った。
「それじゃあ、エステルちゃん、レンちゃん。早速、演習の準備を始めようか。」
「うん、フィリスさんとロベルトさんの所に行って話を聞いてみなくちゃね。」
「そうね。」
そしてエステル達は管理人から携帯食料を貰った後、オーブメントの調整をする整備士の所でクオーツを順番に合成し、レンの番になった。
「後はレンちゃん、君だけだよ。」
「はーい。ちなみにだけど、スロットの強化も勿論できるのよね?」
「ああ。」
「レン?そんなにセピスは残っていないわよ?」
レンの提案を聞いたエステルは首を傾げて尋ねた。
「うふふ、レンは”さっきクルツお兄さんからもらったセピスを使う”だなんて一言も言っていないわよ。」
するとその時レンは荷物の中から多くの各属性のセピスが入った袋を取り出して整備士の前に置いた。
「へっ!?」
「レ、レンちゃん!?一体どこでそんなにもたくさんのセピスを手に入れたの!?」
「ティータや博士から戦術オーブメントはいつか進化する可能性は非常に高く、その際前の戦術オーブメントとの互換性がなくなる可能性も非常に高いって話を聞いていてね……その時に備えて今までの戦いで手に入れたセピスは必要最低限だけ使って残りは貯めておいたのよ。(まあ、エプスタイン財団の新型戦術オーブメントの企画書を見た時点でわかっていたけどね♪)まあ、どこかの誰かさんはいざという時の事を考えもせず、全部クオーツへの合成やスロットの開封に使ったり、ミラへの換金に使っていたようだけねえ?」
「ハハ、ちゃっかりしている娘だなあ。」
驚いている二人にレンは口元に笑みを浮かべて答えた後エステルを見つめ、その様子を見守っていた整備士は苦笑していた。
「ちょっと!何でそこであたしを見るのよ!?」
「アハハ、私もちょっとはレンちゃんを見習わないといけないなあ。」
遠回しな言い方で自分の事を指摘された事にすぐに気付いたエステルはレンを睨み、その様子をアネラスは苦笑して見守っていた。その後レンは整備士にオーブメントのスロットの強化を全てしてもらい、クオーツも回復用の水属性クオーツと消費EPを少しでも減らすための空属性クオーツを合成してもらい、自分の真新しいオーブメントにつけた。
「はい、終わったよ。」
「ありがと、ロベルトお兄さん。わあ、EPがたっぷり増えたわ♪これなら下級アーツなら使い放題ね♪」
整備士から渡されたレンはオーブメントに表示されてあるMAXEPの値を見て可愛らしい微笑みを浮かべ
「どれどれ……って、さ、”399”!?」
「うわっ、レンちゃんのオーブメントって全連結だから元々EPは私達より高かったけど、強化されたらここまで増えるんだ……」
興味深そうな様子でレンの持つオーブメントのMAXEPを見たエステルは驚き、アネラスは目を丸くした。
「前衛なのに、全連結で無属性だなんて珍しいな。しかも全て無属性だからアーツの組み合わせも自由に組め、組み合わせにもよっては他の人達とは比べ物にならないくらい豊富なアーツを使えるだろうね。」
「しかもその娘が放つアーツの威力って何気にアーツの威力があたし達より高いクローゼやオリビエみたいに、滅茶苦茶高いのよね……」
興味深そうにレンを見つめる整備士の言葉に続くようにエステルは疲れた表情で答え
「うふふ、レンは”天才”なんだから当然の結果よ。」
「さすがはレンちゃん!可愛くて強い!まさに”可愛いものには正義がある”事を身を持って証明しているね!!」
悪びれもなく笑顔で答えたレンをアネラスは興奮した様子で見つめた。
その後クルツと合流したエステル達は訓練する場所へと向かった。
~バルスタール水道~
「ここが『バルスタール水道』……」
「へ~、結構大きな地下水道みたいですね。」
「王都の地下水道を思い出すわね。」
訓練場に到着したエステル達は珍しそうな様子で周囲の景色を見回し
「王都の地下水道ほどではないが、それなりの広さはあるだろう。本日の演習は、水道の最奥にあると思われる機密文書の回収だ。」
クルツはエステル達に課題を与えた。
「き、機密文書ぉ?」
「はは、あくまでもそういう想定での演習だよ。とにかく、水路の最奥まで行けばダミーの書類が見つかるはずだ。それを回収できたら演習終了さ。」
「うーん、話を聞いてる限りだと簡単そうに聞こえますけど……」
「うふふ、簡単すぎて逆に警戒しちゃうわね。」
「当然、演習というからには色々と用意してるのよね?」
3人を代表してエステルはクルツに質問した。
「まあ、ご想像にお任せするよ。ちなみに徘徊している魔獣がかなり手強いのは確かだ。……傷を負った場合には無理せず撤退するように。オーブメントの回復装置も念のために用意したからね。」
「あはは、さすがはクルツさん。何もかも準備万端ってわけ。」
「それじゃあエステルちゃん、レンちゃん。行こっか。」
「うん。」
「ええ。」
その後3人は仕掛けを解除したり、途中で出会う魔獣達を倒しながら奥に進んで行った。
~バルスタール水道・終点~
「やあ、ようやく来たか。」
エステル達が終点に到着するとそこにはなんと入口にいるはずのクルツがいた。
「あら。」
「ク、クルツ先輩!?」
「え、ちょっと待って……。入口の所にいたはずなのにどうして先回りしているわけ?」
「実は他に抜け道があってね。君たちが仕掛けを解除している間にまっすぐここに来させてもらったよ。」
「ガクッ……。せっかく苦労して仕掛けを解いてきたのに……」
「むう。レンとした事が謀られたわね。」
先回りできる道があった事を知ったエステルは肩を落として恨みがましそうにクルツを見つめ、レンは頬を膨らませた。
「そ、それはともかく……。やっぱりここが地下水路の最奥なんですよね?」
「ああ、その通りだが?」
「それじゃあ……回収する機密文書っていうのは?」
「ふふ……」
アネラスの言葉を聞いたクルツは不敵に笑った後、槍を構えた!
「へっ!?」
「や、やっぱり……」
「うふふ、そうこなくっちゃね♪」
槍を構えたクルツを見たエステルは驚き、アネラスは冷や汗をかき、レンは小悪魔な笑みを浮かべた。
「自分の役は、機密文書を強奪しに来た某国の武装工作員だと思ってくれ。当然、同じ目的を持った者たちは実力を持って排除させてもらうよ。」
「あ、あんですって~!?」
「機密文書は単なる口実……。本当の演習課題は、探索中の予想外の交戦ってわけですね!?」
「やっぱりレンの予想通りだったわね。」
「ふふ、そういうことだ。それでは……こちらから行かせてもらうぞ!」
そしてエステル達はクルツと戦闘を始めた!
「はあっ!せいっ!」
エステル達の前に飛び込んだクルツは槍で突きを3人にそれぞれ繰り出し、3人は武器でそれぞれ防御し
「ぬぅぅぅん!!」
更に連続攻撃を終えたクルツが槍で薙ぎ払うと同時にそれぞれ後ろに跳躍して回避した。
「はあっ!!」
クルツから距離をとったエステルは棒を振るって衝撃波の弾丸を放ち
「せいっ!」
クルツは襲い掛かる弾丸を槍で薙ぎ払い、そこにアネラスが詰め寄って剣を振るった。
「はい、はい、はぁいっ!!」
アネラスが剣を振るうたびに衝撃波の刃が発生し
「オォォォォッ!!」
自分に襲い掛かる刃――――剣風閃の刃をクルツは槍で怒涛の連続突きを放って打ち消していた。
「えいっ!ソウルブラー!!」
「ぐっ!?」
その時オーブメントの駆動を終えたレンがアーツによる時の刃をクルツに命中させて怯ませ
「たぁ!」
「ガッ!?」
アネラスはクルツを空中へと蹴りあげた!そしてクルツが落ちて来る瞬間を狙ってジャンプして、叩き落とし、その瞬間を狙ったかのようにエステルが突きの構えで突撃した!
「失礼します、先輩!」
「瞬迅爪!!」
「クッ!?」
アネラスの技―――落葉とエステルが突撃と同時に放った突きを同時に受けたクルツは後ろへと吹っ飛ばされたが空中で受け身を取って着地し
「方術………穏やかなること白波の如し!!」
傷ついた身体を”方術”で癒した。
「方術………貫けぬこと鋼の如し!」
そしてクルツが続けて精神統一して方術を放つとクルツの全身に淡い光が纏った。
「げっ、あの術って……!」
「二人とも、気を付けて!今の方術は身の守りを固くするクルツ先輩が得意としている方術だよ!」
クルツが使った方術名を聞き、武術大会での戦いを思い出したエステルは嫌そうな表情をし、アネラスは警告した。
「うふふ、だったらもっと凄い攻撃で防御を貫くかアーツ攻めをすればいいだけじゃない♪フゥゥゥゥ………ハッ!!」
「まだまだこれからだよっ!はぁい!」
レンが気功で自分を強化すると同時にアネラスは自らに”活”を入れて筋力を一時的に上昇させ
「さあ、行くわよっ!!」
エステルは掛け声をかけて自身の闘志を高めた。
「方術―――儚きこと夢幻の如し!!」
その時クルツは方術によって発生した自然の刃をレンに向けて放ち
「四の型・改――――紅葉散華っ!!」
レンは電光石火の速さでクルツに詰め寄って回避すると共に抜刀してクルツを攻撃したが
「むん!」
攻撃を見切ったクルツは槍で防御した。
「二の型―――疾風!!」
「グッ!?」
しかしその時アネラスが電光石火の速さで剣をクルツの脇腹に叩き込み、方術で強化した身体から伝わって来る衝撃にクルツが呻いたその時、棒を構えた状態で力を溜め込んでいるエステルが突撃し
「金剛撃!!」
クルツに近づき、棒を振るった。
「させん!」
しかしその時クルツが反応し、エステルの棒を受け止め
「発ッ!!」
「キャッ!?」
全身から闘気を解放し、エステルをアネラスの所へ吹っ飛ばした!
「覚悟!」
エステルを吹っ飛ばしたクルツは二人の目の前で地面に槍を刺し
「来たれ雷神!」
クルツが精神を集中させると雷が槍に落ち
「空と海の狭間より!!」
「「キャアアアアッ!?」」
そして槍は凄まじい電撃を放電し、二人に電気ショックを与えた!
「空破!絶掌撃!!」
「クッ!?」
その時レンが電光石火の速さで詰め寄って攻撃を連続で繰り出し、レンの電光石火の速さの攻撃によって地面に刺した槍を回収できなかったクルツは回避に専念し、その隙にレンは武器を双剣から双銃へと変えて戦術オーブメントに指を走らせてオーブメントを駆動させた後上空目がけて特殊な回復弾を撃った。
「助けてあげる♪ミラクルバレット!!」
すると空へ放たれた弾丸は癒しのエネルギーの光となって二人に降り注いで二人の傷を回復させ
「ラ・ティア!!」
更に攻撃前に駆動を始め、絶妙なタイミングで駆動を終えた範囲治癒アーツで二人の傷を癒した。
「ありがと、レンちゃん!今度は私達の番だね!風よ、我が剣に力を!ハァァァァァァ………!」
レンの援護を受け、回復したアネラスはその場で集中して剣に闘気を溜め込んだ。すると闘気による風がアネラスの剣に纏い
「―――奥義!風ノ太刀!!」
「ガアッ!?」
大きく前に踏み込んだ瞬間、クルツの背後へと駆け抜けて斬撃を叩きこむとクルツの周囲に鎌鼬が発生してクルツの全身を傷つけ、そこに棒を構えたエステルが跳躍し、棒をクルツの目の前の地面に叩きつけた!
「翔舞煌爆破!!」
するとクルツを中心とした場所に地面から衝撃波が発生し
「グッ!?不覚…………やれやれ……。手加減したつもりはなかったが。どうやら、自分の負けのようだな。」
衝撃波をその身に受けたクルツは地面に膝をつき、自分の敗北を宣言した!
「ふう………なんとか勝てた………」
「う、うん……。さすがは『方術使い』……。3人がかりでやっと勝てたね……」
「うふふ、さすがはA級正遊撃士ね。そう言えばアネラスお姉さん、レンと何度も手合せをしていたお蔭で覚えた剣技がようやく役に立ったわね♪」
二人が疲労による溜息を吐いている中、先程の戦いで気になった事を思い出したレンはアネラスに視線を向け
「アハハ……私も”八葉一刀流”の剣士の一人としていつかレンちゃんみたいにおじいちゃんから、”皆伝”を認めてもらえるように頑張らないと駄目だからね。」
アネラスは苦笑いをしながら答えた。
「さて……工作員が無力化したことで君たちは機密文書を回収した。今回の演習はこれで終了だ。」
「そ、それじゃあ今日の訓練は……」
「これで終わりとか……?」
「うふふ、そんな甘い話になる訳ないじゃない。」
クルツの答えを聞き、訓練の終了を期待している二人を見たレンは小悪魔な笑みを浮かべ
「―――その通り。宿舎に戻って昼食を取ったら南にある『サントクロワの森』に向かう。演習の反省点を見直す意味でもみっちり訓練を受けてもらおうか。」
レンの言葉にクルツは頷き、二人が聞きたくない話を口にした。
「ほらね♪」
「ひえ~……」
「クルツ先輩って……ホント、容赦ないですよねぇ。」
余裕そうな表情で微笑みを浮かべるレンとは逆にエステルとアネラスは悲鳴を上げて肩を落とし
「全く……最年少でありながらも厳しい訓練に泣き言を言うことなくこなしているレン君を少しは見習ったらどうだい?」
二人の様子を見たクルツは呆れた表情で溜息を吐いた。
その後訓練を終えたエステル達が宿舎に戻った頃には夜になっていた……………
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