英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第27話
~封印区画・最下層・最深部~
「みんな、行くわよっ!!」
「全員、一気に行くぜっ!!」
強敵との戦闘を開始したエステルとフレンはそれぞれ号令をかけて仲間達の闘志を高め
「力がみなぎる!剛将来!!」
「ハァァァァ………オォォォォ――――――ッ!!」
ルークとバダックはそれぞれ気功技や咆哮で自らの筋力を大幅に上昇させ
「……………」
アリエッタは両手に持つぬいぐるみに魔力を溜め込んでエステル達にはわからない謎の言葉で詠唱を開始し
「それっ!」
ヨシュアはアーツを放つ為にオーブメントを駆動させた。しかしその時オーブメントの駆動に反応するかのようにトロイメライが片手を天へと掲げると光の槍がルーク達に降り注ぎ、その際の衝撃によってオーブメントの駆動が止まった!
「いった~!?何なのよ、今のは!?」
「!!さっき駆動させていたオーブメントの駆動が止まっている!」
「チッ、アーツを撃たせない為の妨害機能か!」
オーブメントの駆動の妨害技である事に気付いたフレンは舌打ちをし
「ったく、アーツにあんまり頼れねえのが痛いな……!」
「フン、例えアーツに頼れなくてもいくらでも対処法はある!」
ルークとバダックは左右に散開してトロイメライに向かって突撃した。
散開して向かって来る二人をセンサーで捉えたトロイメライはバダックと比べると細身のルークが撃破しやすいと判断し、ルークの方へ振り向いて銃口から怒涛の光のエネルギーを放った!
「おわっ!?」
襲い掛かって来るエネルギーを見たルークは後ろに跳躍して回避し
「―――クリムゾンフレア!!」
詠唱を終えたアリエッタがぬいぐるみを掲げると巨大な火球がトロイメライを襲い、灼熱の大爆発を起こし、そこにバダックが詰め寄り
「地龍―――」
大鎌で薙ぎ払い攻撃を行った後大鎌を叩きつけ
「吼破!!」
タイルを破壊しながら衝撃波を発生させて追撃した!
「……………」
「ムッ!?」
しかしその時トロイメライが片腕を叩きつけて攻撃し、バダックは武器でガードしたがトロイメライが横薙ぎに振るったもう片方の腕がバダックを襲った!
「バリアー!!」
「グッ!?」
アリエッタの声が広間に響いた瞬間、バダックに淡い光が纏い、トロイメライの腕をその身に受けた際に伝わって来る衝撃を和らげ、バダックはトロイメライの重い攻撃を受けたにも関わらずその場で立って耐えきった。
「瞬迅爪!!」
「朧!!」
「スタンブレイク!!」
その時エステル、ヨシュア、フレンがそれぞれ移動攻撃技で攻撃を仕掛け
「はぁぁぁぁぁぁぁ――――ッ!!」
エステルはその場でコマのように回転しながら棒を振るう技――――旋風輪で追撃し
「ハァァァァ………重裂破!!」
「オォォォ………ゼロ・ブレイク!!」
ヨシュアとフレンは同時に強烈な一撃をトロイメライに叩き込み、トロイメライの装甲の一部をへこませ
「空破!絶風撃!!」
その瞬間を狙ったかのようにトロイメライから距離を取っていたルークが一気に詰め寄って強烈な突きでへこませた装甲の部分を攻撃した後剣を大きく振りかぶって闘気による炎を纏わせ
「燃えちまえっ!龍炎撃!!」
そのまま剣を振り下ろして強烈な一撃を叩きつけた!
「…………………」
総攻撃を受け続けていたトロイメライは銃口から無数のエネルギーを放ってルーク達にダメージを与えると共に怯ませたが
「命を照らす光よ、ここに来たれ!ハートレスサークル!!」
傷ついたルーク達には後方にいるアリエッタが発動した譜術による癒しの光が降り注いで傷を回復し
「火竜爪!まだだっ!獅吼!爆砕陣!!」
バダックがルーク達とは別の方向から強烈な攻撃を次々と加え続け
「散沙雨!三散華!そこっ!兎迅衝!!」
「双連撃!鳴時雨!虎牙破斬!!」
「行くぜっ!はっ、せいっ、そこだっ!まだだっ!うおおおおおおっ!!」
「雷神剣!斬魔飛影斬!崩襲脚!翔破!裂光閃!!」
アリエッタの治癒譜術によって立ち直ったエステル達も次々と攻撃を加えて5人でトロイメライを包囲して集中攻撃をし
「―――聖なる雨よ、降り注げ!ホーリィレイン!!」
エステル達が総攻撃を仕掛けている間に長い詠唱を終わらせた上級譜術を発動し、発動した譜術によって天井に無数の光の弾丸が戦場全体に降り注ぐと共にトロイメライの全身に降り注いでトロイメライの全身の装甲に傷をつけた。
「……………
ルーク達の総攻撃を受け続けていたトロイメライは両腕を広げ、合体させていた浮遊兵器でルーク達を包囲し、背中にエネルギーをチャージした後腕からエネルギーを浮遊兵器に送り、浮遊兵器はそのエネルギーを囲んでいる全体に放った。
――――ジェノサイド
放たれたエネルギーは大爆音を立てながらルーク達を襲い、ルーク達の悲鳴をも呑みこみ、爆発による煙が晴れるとそこには全身に重傷を負ったルーク達がそれぞれ地面に膝をついていたり武器を支えに立っていた。重傷を負ったルーク達にトロイメライは止めを刺すかと思われたが
――――各部冷却開始
コアの部分をショートさせた後、背中から煙を吐いて動きが鈍くなった身体で剛腕を振るった。
「この『獅子王』を舐めるなぁっ!!」
その時重傷を負いながらも弱った様子を一切見せないかのようにバダックは大鎌を振るって自分達に向けて振るわれた剛腕を跳ね返し
「へっ、この程度で倒れると思ったら大間違いだぜ!――――スタンブレイク!まだだっ!ゼロ・ブレイク!!」
「大雪斬!駆けろ地の牙!魔王地顎陣!!」
フレンとルークもトロイメライに向かって次々と攻撃を加えていた。
「クッ、こんな所で倒れないんだから……!」
「とにかく回復を……!」
一方エステルとヨシュアはそれぞれ懐から希少な完全回復薬―――ゼラムカプセルを取り出して呑みこんだ。すると二人が負った傷はみるみる回復し始め
「祝福の羽よ、踊れ!―――ナース!!」
更に傷ついた身体で表情を歪めながらぬいぐるみに魔力を溜め込んだアリエッタがぬいぐるみを掲げると天井から癒しの光が降り注ぎ、ルーク達が負った傷を癒し、傷が完全に回復したエステルとヨシュアもそれぞれ反撃を開始した。
「……………」
ルーク達の総攻撃を再び受け始めたトロイメライは再び両腕を広げたが
「2度も同じ手は喰らわん!覇道!滅封!!」
「!?」
バダックが大鎌に溜め込んだ膨大な闘気エネルギーを放ち、トロイメライの片腕を地面に叩き落とし、攻撃を中断させた!
「――――みんな、離れて!」
その時ぬいぐるみに膨大な魔力を溜め込み、足元には巨大な魔法陣を錬成したアリエッタが警告するとルーク達は後ろに跳躍してトロイメライから距離を取った。するとその瞬間アリエッタはぬいぐるみを天へと掲げた!
「アリエッタとイオン様の敵……みんな、裁いちゃうんだから!」
アリエッタの叫びに応えるかのように天井から膨大な雷を纏った巨大な剣が異空間から現れた後降り注いでトロイメライの全身を貫き
「インディグネイト・ジャッジメント!!」
全身を貫いた大剣は上空から落ちてきた凄まじい雷と共に放電した!
「――――――――!!??」
アリエッタが放った大技を受けたトロイメライは怯み
「みんな、今よ!ハァァァァァァ!烈波!無双撃!!」
「ふん!はっ……はっ………隠技、断骨剣!!」
「だぁぁぁぁぁあっ!タイガー………チャージ!!」
「これで終わりだっ!奥義!火龍炎舞!!」
トロイメライの様子を見て好機と判断したエステル達はそれぞれ大技をトロイメライに叩き込み、エステル達が大技を叩きこむとルークがトロイメライの真正面に飛び込み
「やってやる!うおおおおおお―――――っ!レイディアント………」
内に秘めたる”超振動”の力を解放して自分の周囲に衝撃波を発生させて両手をトロイメライの真正面にかざして超振動の光を溜め込み
「ハウルッ!!」
溜め込んだ超振動の光を解放した!
「―――――――――――――――――!!!??」
全身に今までとは比べ物にならない強烈な衝撃を受けたトロイメライはついに音をたてて崩れた!
「はあはあ……。な、何とか倒せた……?」
「う、うん……。動けなくはしたみたいだ……」
トロイメライが崩れ落ちるのを見たエステルとヨシュアは安堵や疲労によって地面に膝をつき
「ぜえ、ぜえ………さすがにもう動けねえだろ……」
「ああ………それに”アレ”を叩きこんでやったんだから、もう動けないはずだ……!」
息を切らせているフレンの言葉にルークは疲れた表情で頷き
「久しぶりの強敵だったな……」
「やっぱりディストが、作ったのより、何倍も強かった、です。」
バダックとアリエッタはそれぞれ真剣な表情で崩れ落ちたトロイメライを見つめていた。
「『環の守護者』か……。どうやら、そいつの目的は『輝く環』を封印していたこの施設の破壊だったようだな……。そして、『輝く環』の封印と同時に扉の中で機能を停止したのか……。『輝く環』をめぐって古代人同士が対立していたのかあるいは……。しかし……肝心の『輝く環』はどこに……」
ルーク達との戦いから時間が経ち、既に回復していたリシャール大佐は考え込んでいた。するとその時崩れていたはずのトロイメライの手が動き始め
「なんと……まだ動けるのか!?」
その事に気付いたリシャール大佐が驚いたその時、トロイメライは立ち上がってエステルをめがけて残された片腕を振りかぶった!
「ヨ、ヨシュア……!」
「エステルッ……!」
エステルを庇う為にヨシュアは疲労している身体に耐えながら立ち上がってエステルの前に出て双剣で防御の構えをした。しかしその時別方向から斬撃が次々とトロイメライに叩き込まれ、攻撃を叩きこまれたトロイメライが振り向くとそこには刀を収めている鞘に手をかけているリシャール大佐がトロイメライを睨んでいた!
「……させんっ!」
「え……」
「た、大佐……!?」
先程まで自分達が戦っていた相手の援護にエステルとヨシュアは驚き
「こいつは私が何とかする!早くここから逃げたまえ!」
リシャール大佐はトロイメライから決して目を離さず、自分が犠牲になってでも恩師が大切にしている子供達であるエステル達を逃がす為に警告した。
「で、でも……!」
「君たちは今しがたこいつと死闘したばかりだ!私の方はもう動けるようになった!時間を稼ぐことくらいはできる!」
リシャール大佐はたった一人で無謀とも思われる戦いながらも優勢に戦い続けていた。
「す、凄い……!」
「さすが、父さんの剣技を継いだだけはあるね……」
「へっ、やるじゃねえか。」
「ほう?ヴァン程ではないが、中々良い腕だ。」
「でも、あのままではあの人、死んじゃいます………」
「ああ………………」
リシャール大佐の奮闘ぶりにエステル達が感心している中、アリエッタの予想にルークは不安そうな表情で頷いた。
「何をしている!早く行け!!」
再びエステル達に警告したリシャール大佐は戦闘を再開したが、戦いの最中に刀は真っ二つに折れ、その事に気付いて無防備になった瞬間、トロイメライの巨大な片腕に捕えられた!
「う、うおおおおおおっ!?」
「た、大佐!?」
「く……どうしたら!?」
「い、いいから行きたまえ!君たちとの勝負に敗れた時……私の命運は……尽きていたのだ!」
「そ、そんな……」
自分の命を諦めているリシャール大佐にエステルは悲痛な表情で呟き
「だから……気にすることはない……。私の計画は失敗に終わったが……。最後に君たちを助けられれば後悔だけは……せずにすむ……」
自らが死んでも、恩師の子供達の命だけは助けられる事にリシャール大佐は満足していた。するとその時
「やれやれ……。諦めなければ必ずや勝機は見える。そう教えたことを忘れたか?」
その場にいる全員にとって聞き覚えのある男性の声が聞こえた後、棒を装備した男性が残像を残しながらトロイメライに詰め寄り
「せいっ!」
強烈な一撃でリシャール大佐を掴んでいるトロイメライの片腕を叩き落とした!
「え……!」
「まさか……!」
「父さん……!」
男性―――カシウスの姿を見たエステル達が驚いたその時
「今だ!止めを刺せ!!」
カシウスの号令を合図にエステル達は総攻撃を仕掛けた!
「業火に飲まれろ!紅蓮旋衝嵐!!」
膨大な闘気によって発生した灼熱の炎を大鎌に纏わせたバダックが大鎌をトロイメライに叩きつけると天井に易々と届くほどの炎の渦がトロイメライの全身を焦がし
「これで終わりだ……はっ!!」
「これで決めるっ!桜花!無双撃!はぁぁぁぁぁぁぁぁ!せぃ、やっ!たぁぁぁ!!」
ヨシュアの奥義―――漆黒の牙とエステルの奥義―――桜花無双撃を受けたトロイメライの頭部やコア部分には罅が入り
「これが俺の全力だ!メテオ………ブレイカ――――――ッ!!」
天井近くへと跳躍し、闘気の塊となったフレンがトロイメライに突撃するとトロイメライは大きく後ろへと吹っ飛ばされ
「始まりの時を再び刻め…………倒れて!――――ビッグバン!!」
アリエッタが発動した大譜術によって背後から発生した創世の光の大爆発をその身に受けたトロイメライの全身の到る所には罅が入った。そこに超振動の光を”ローレライの鍵”に纏わせたルークが詰め寄り
「やってやるぜっ!響け!集え!全てを滅する刃と化せッ!」
超振動の光を纏うローレライの鍵で次々と斬撃をトロイメライに叩き込み
「ロスト・フォン……ドライブ!!」
最後に自分のみが扱える力―――第2超振動のエネルギーを解き放った!
度重なる戦闘とルーク達による強力な総攻撃を受けた古代の装甲も耐えられず、トロイメライの身体全体に爆発が連続で起こった後、トロイメライは腕が爆発によって破壊され、完全にバラバラになった!
「か、勝ったぁ~~っ……」
バラバラになって完全に沈黙したトロイメライを見たエステルは安堵の溜息を吐いた。
「……みんな、ご苦労だったな。」
そこにカシウスが近づいてきた。
「ただいま。エステル、ヨシュア。ルーク。ずいぶん久しぶりだな。」
「と、と、と……父さん!?」
「まだまだ詰めは甘いが一応、修行の成果は出たようだな。今回は合格点をやろう。」
自分の登場にエステルが混乱している中、カシウスは口元をニヤリとさせて答えた。
「ご、合格点じゃないわよ!なによ、父さん!なんでこんな所にいるの!?」
「なんでって言われても……まあ、成り行きってやつ?」
「ど、どんな成り行きよっ!」
「はは、父さんも相変わらず元気そうだね。」
エステルといつものやり取りを始めたカシウスにヨシュアは苦笑しながら話しかけた。
「まあ、それなりにね。でも、それと同じくらい僕もエステルに助けられたから。だからおあいこってところかな」
「そうか……。いい旅をしてきたみたいだな。」
「ルーク。レナやアガットの件はご苦労だったな。」
「ハハ、まあ実際に役に立てたのは母さんを守れた時ぐらいだけどな。」
「そうか、これからも精進しろよ。」
「ああ。」
家族を労ったカシウスは子供達に手を貸してくれた同行者達に視線を向けた。
「フレン、アーシアと共にレナを陰ながら守ってくれた事……感謝する。」
「いいって。俺やアーシアもあんたには何度か世話になった事があるからな。お互い様だよ。」
「そうか………―――バダック殿も今回の件に力を貸してもらい、すまないな。貴方ほどの方を共和国から呼ぶのは申し訳ないと思ったのだが……どうも嫌な予感がして、手紙を送らせてもらったのだ。」
「気にするな。お前にある”借り”を少しでも返せる良い機会の上、お前の子供達の腕前も見せてもらった。色々と楽しませてもらったぞ。なんせ、武術大会ではジンと共にこの俺を破ったのだからな。」
「ほう、ジンがいるとは言え、エステル達がそこまで成長するとは……………」
バダックからエステル達の成長ぶりを聞かされたカシウスは目を丸くした後アリエッタに気付いて不思議そうな表情で尋ねた。
「貴女は数年前の事件を解決する作戦時に参加した”星杯騎士”………確かアリエッタ殿だったな?一体何故”星杯騎士”が今回の事件の解決に力を貸してくれたのだ?」
「イオン様と任務の関係で、ロレントに訪れた時、ルーク達に、会いました。それでルークと仲良しのイオン様の希望で、今回ルーク達と一緒に、戦いました。後は情報部が、古代遺物を利用しようとしていた疑いも、ありました、ので。」
「なるほど………それにしてもルーク。まさかお前が”星杯騎士”と親しいとは驚いたぞ。この俺にも隠し通すとは、やるじゃないか。」
アリエッタの説明を聞いて納得した様子で頷いたカシウスは自分をも隠し通したルークに感心し
「ハハ……」
感心されたルークは苦笑いで答えを誤魔化した。
「な、和やかに会話している場合じゃないってば!まったく、帰ってくるなり見せ場をかっさらって……もしかして出てくる瞬間を狙っていたんじゃないでしょうね……?」
そしてエステルがジト目でカシウスを睨んだその時
「やれやれ……。どうやら片づいたようじゃの。」
中継地点で仲間達と共に待機していたラッセル博士が仲間達と共に広間に入って来た。
「おや、博士。ずいぶん遅い到着ですな。」
「お前さんが先行した後、人形の群れに囲まれてな。何とか撃退してからようやくたどり着いたが……。どうやら……全て片づいたみたいじゃな。」
「ええ……。色々と課題は残ったがとりあえず一件落着でしょう。」
「で、でも……。情報部に操られた大部隊がお城に迫ってるんでしょ。女王様、大丈夫かな………?」
「確かに……。警備艇も来ていたみたいだし。父さんが来た時、地上の様子はどうだった?」
地上の様子が気になったエステルとヨシュアはそれぞれ不安な気持ちを抱えていたが
「ああ。その事ならもう心配ないぞ。モルガン将軍に頼んで事態を収拾してもらっている。シードにも動いてもらったからじきに騒ぎは沈静化するだろう。」
「あ、あんですって~っ!?」
「ハハ、さすがは父さんだよ。」
カシウスの手際の良さにエステルは声を上げ、ヨシュアは苦笑していた。
「ふふ……なるほどな……。ここに来るまでに仕込みをしていたわけか……」
その時地面に膝をついているリシャール大佐は自嘲気味に笑い
「……目を覚ましたか。」
カシウスは真剣な表情でリシャール大佐に視線を向けた。
「モルガン将軍には厳重な監視をつけていた……。シードも家族を人質にとって逆らえないようにしていた……。どちらもあなたによって自由の身になったわけですか……」
「まあ、そんなところだ。だがな、リシャール。俺がしたのはその程度のことさ。別におれがいなくたって彼らは自分で何とかしたはずだ。」
「いや……違う。やはりあなたは英雄ですよ……。あなたが軍を去ってから私は……不安で仕方なかった……。今度、侵略を受けてしまったら勝てるとは思えなかったから……。だから……頼れる存在を他に探した。あなたさえ軍に残ってくれたら私もこんな事をしなかったものを……」
「………………………………」
リシャール大佐の本音を聞いたカシウスは何も語らず黙ってリシャール大佐に近づいて拳を振るってリシャール大佐を殴り倒した!
「ぐっ……!」
「甘ったれるな、リシャール!貴様の間違いは、いつまでも俺という幻想から解き放たれなかったことだ!それほどの才能を持ちながら、なぜ自分の足で立たなかった!?俺はお前がいたから安心して軍を辞めることができたのだぞ!?」
「た、大佐……」
カシウスの口から出た真実を聞いたリシャール大佐は信じられない表情をし
「俺は……そんなに大層な男じゃない。10年前も、将軍やお前たちが助けてくれたから勝つことができた。そして、肝心な時に大切なものを自分で守れず人任せにしてしまい、二度とその過ちをしないために現実から逃げてしまった男にすぎん。」
「……父さん……」
「だがな……もう二度と逃げるつもりはない。だから、リシャール。お前もこれ以上逃げるのはよせ。罪を償いながら、自分に何が足りなかったのかを考えるがいい。」
肝心な時に大切な物を守れなかった事に後悔している事を知り、心配そうな表情をしているエステルや、そしてリシャール大佐の為にも決意の表情である決意をして、リシャール大佐を見つめた。
こうして、情報部によるクーデター計画は幕を閉じた。モルガン将軍とシード少佐によって王国軍部隊の混乱は収拾され……計画に荷担していた情報部の人間は各地で次々と逮捕されていった。そして数日後………
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