英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第24話
宝物庫に到着するとヨシュアは扉を調べ始め、ルーク達は扉の周囲を調べた。
~グランセル城・地下宝物庫~
「間違いありません……。つい最近、ここを頻繁に出入りしたような跡があります。」
「……それだけじゃないわ。かなり重量のある物が運び込まれたような跡もある。」
「おそらく、予備の鍵を使って中で何かをしていたのでしょう。調べてみる必要がありそうですね。」
ヨシュアとシェラザードの話を聞いたアリシア女王は懐から鍵を出して宝物庫を開け、ルーク達と共に宝物庫に入るとそこには巨大なエレベーターが建造されていた。
「こ、こんな場所にエレベーターが……。こんな物、無かったはずなのに!」
「わざわざ大佐が建造させたということか……。とすると、このエレベーターで『輝く環』が封じられた場所に降りることができるわけですな。」
エレベーターを見たユリア中尉は驚きの表情で声を上げ、ジンは真剣な表情で推測し
「問題は情報部の連中がどこまで進んでいるかだな………」
「奴等が最奥に到着するまでに追いつければいいのだが……」
「…………………」
フレンとバダックがそれぞれ真剣な表情で話し合っている中、アリエッタは真剣な表情でエレベーターを見つめていた。
「恐らく、これこそが今回のクーデターを起こした真の目的だったのかもしれません。王城を占領でもしない限り、こんなものを造るのは不可能ですから。」
「ま、まさかそんな……」
「ふむ、ありうるかもしれない。どこの国でもそうだが、王権が守る聖域とは不可侵のものだ。それを破るとなれば、よほど思い切った強行手段に出る必要があるだろうね。」
「うふふ、一体何が隠されているのか楽しみね。」
アリシア女王の推測を聞いたエステルが信じられない表情をしている中、オリビエは納得した様子で頷き、レンは小悪魔な笑みを浮かべ
「これでカノーネ大尉達がイオンやアリエッタの介入を厄介と思った理由がわかったな。」
「そう、ですね。こんな事を”私達”が知れば、私とイオン様だけでなく、多くの騎士達を投入して本格的な介入をした、でしょうし。」
ルークに視線を向けられたアリエッタは静かな表情で頷いた。
「いずれにせよ、これを使って地下に降りる必要がありますね。まずは動かしてみましょう………っ!!!」
エレベーターを動かす為にパネルを操作し始めたヨシュアだったがある事に気付いて手を止めて血相を変えた。
「どうしたの、ヨシュア?」
「これは……導力的な方法でロックされている。特殊な結晶回路を組み込んだ鍵を使わないと動かせないみたいだ。」
「あ、あんですって~!?」
「そんな、ここまで来て……」
先に進めない事にエステルは声を上げ、クローゼは不安な気持ちで何とか状況を打破する方法を考え込んでいた。
「――――そうだ!拘束した特務兵達がいるぜ!そいつらに聞けばわかるんじゃないか!?」
「確かに彼らなら何か知っているかもしれん………今すぐ、拘束してある特務兵を締め上げて聞いてやります!どこかに鍵があるかもしれません!」
「ええ……そうした方がよさそうですね。」
ルークの提案にユリア中尉とアリシア女王は頷き
「だが、問題は奴等がそう簡単に口を割ってくれるかだな。」
「連中のあの様子だと、尋問程度で口を割らせるのは相当時間がかかると思うぞ?」
「うふふ、だったら”拷問”すればいいんじゃないの?」
「その提案に賛成、です。時間がもったいない、です。」
厳しい表情で考え込んだバダックとフレンの話を聞いて凶悪な笑みを浮かべたレンの提案を聞いたアリエッタは頷いた。
「ご、”拷問”って……いくらなんでもやりすぎじゃないかしら?」
「あら、相手はクーデターを企んだ”反逆者”でしょう?王族どころか”国”に逆らった”反逆者”には重罪が科せられるのは当然の事じゃないのかしら?」
「確かにクーデターなんておこしちまったら”死刑”になってもおかしくないけど………」
「だからと言って、安易に拷問に走れば後で色々と問題が出てくると思うぜ?」
「下手をすれば周辺国家のアリシア女王……――――いや、リベール王国の印象が大きく変わるだろうな。」
戸惑いの表情のエステルに指摘されたレンは小悪魔な笑みを浮かべて不安そうな表情をしているルークや複雑そうな表情をするフレン、重々しい様子を纏い、真剣な表情をしたバダックと共にアリシア女王達に視線を向け
「そ、それは………」
「………………………」
「陛下………」
”拷問”という残酷な手段を考えた事もないクローゼは表情を青褪めさせ、”国家”の行方とクーデターを起こしたとはいえ、リベールの”民”である特務兵達を傷つけたくないという良心を天秤にかけたアリシア女王は辛そうな表情で考え込み、その様子をユリア中尉は辛そうな表情で見つめていた。
「いや、それには及びませんぞ。」
その時アリシア女王達の背後からラッセル博士が姿を現した。
「え……!」
「まさか……!」
「まあ……ラッセル博士!?」
潜伏して姿を消していたラッセル博士の登場にその場にいる全員は驚いた。
「アリシア様。ご無沙汰しておりましたな。エステルとヨシュア、ルークにレンも元気そうで何よりじゃ。」
「ちょ、ちょっと……。なんで博士がここにいるのよ!」
「情報部に追われているのに、よくここまで来れたわね?」
「それに、博士がここに来ているということは……」
ラッセル博士の登場にエステルは戸惑い、レンは首を傾げ、ラッセル博士の同行者達の事に気付いたヨシュアが言いかけたその時
「お、おじいちゃあ~ん。どこに行っちゃったのぉ!?」
「こら、チョロチョロと動き回ってるんじゃねえよ。爺さんもそうだが、落ち着きのない一家だな。」
「だ、だってアガットさん……。あ……!」
ラッセル博士と共にリベール国内に潜伏していた筈のティータとアガットも姿を現した。
「ティータ!?」
「やっぱり……」
「無事で何よりよ、ティータ。」
「レンちゃんにエステルお姉ちゃん!それにヨシュアお兄ちゃんにルークさんも!」
エステル達の姿を見たティータは嬉しそうな表情でエステルに抱き付いた。
「わわ、ティータ……」
「ティータったら、甘えん坊ね♪」
「よ、よかったぁ。また会うことができて~。ギルドで聞いたらレンちゃんやお姉ちゃんたちがお城で戦っているって聞いて。うう、無事で良かったよう~!」
「ティータ……」
「うふふ、心配してくれてありがとう。でも、大丈夫に決まっているじゃない。レン達は強いんだから♪」
狙われている立場でありながら自分達の身を案じてくれたティータにエステルは感動し、レンは微笑んだ。
「ありがとう……。心配してくれたみたいだね。アガットさんも……よくご無事でしたね。どうして王都にいるんですか?」
「いや、ひょんなところで王都行きの貨物船を見つけてな。灯台下暗しを狙って来てみたら騒ぎが起こってるじゃねえか。で、エルナンに事情を聞いてわざわざ来てみたってまけだ。おっと、ヤツからの預り物もあるぜ。」
ヨシュアの疑問に答えたアガットはエステル、ヨシュア、ルーク、レンにそれぞれエルナンから預かっていたミラを渡した。
「おっと……悪いな、アガット。」
「うふふ、今回はお礼を言っておくわ。」
「ありがとうございます、アガットさん。」
「い、いいのかな……。ちゃんと報告してないのに。」
ルーク達がお礼を言っている中、依頼完了の報告をしていない事に不安を抱いたエステルは戸惑った。
「親衛隊の伝令から大体の事は聞いたみたいだぜ。しかし、こんな所でガン首揃えてどうしたんだよ?てっきり残りの特務兵どもをブチのめせるかと思ってきたんだが。ん、あんたは……」
「お久しぶりです、アガットさん。灯台ではありがとうございました。」
「たしか、クローゼと言ったな?どうして、あんたみたいな学生がこんな場所にいやがるんだ?」
クローゼの正体がわからないアガットは学生であるクローゼがいる事に首を傾げ
「どうやら、孫娘がお世話になったようですね。わたくしからもお礼を言わせてください。」
「ああ、気にすんなって。単なる仕事のついでだからな。ところで婆さんはこの城の関係者か何かかい?」
アリシア女王から話しかけられると意識をアリシア女王に向けて尋ねた。
「ぶ、無礼者!この方をどなたと心得る!我がリベール国主たるアリシア女王陛下であるぞ!」
「へっ……。そ、そういえばどっかで見たような気が……」
そして怒りの表情のユリア中尉の言葉を聞いたアガットは目を丸くしてアリシア女王を見つめた。
「やれやれ。相変わらず未熟者じゃのう。」
「んだとう!」
「全く、相変わらず無礼で失礼な人ね。ねえ、お兄様?」
「ま、まあアガットも知らなかったみたいだから許してやれよ、ハハハ……(言えねえ。昔の俺はこれ以上の酷さだったなんて、口が裂けても絶対に言えねえ……!)」
「クク…………」
「……………」
アガットの無礼ぶりに呆れているレンに話しかけられたルークはかつての自分を思い出して冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、その様子に気付いたバダックは口元に笑みを浮かべ、アリエッタは黙り込んでいた。
「じょ、女王さま!?そ、それじゃあ……こっちのお姉ちゃんは……」
「女王陛下の孫娘のクローディア姫殿下だよ。僕たちはクローゼって呼んでるけどね。」
一方目の前の老婦人が祖国の女王である事を知って驚いているティータにヨシュアが説明し
「クローゼ。この子が博士の孫のティータよ。あたしたちの妹同然の子なの。」
「そうですか……。初めまして、ティータちゃん。私のことはクローゼって呼んでくれると嬉しいです。」
「は、はいぃ……。ク、クローゼさん……」
祖国の王女であるクローゼに微笑みを向けられると緊張した様子で答えた。
「あらやだ。この子、なんか可愛いわねぇ。あたしはシェラザード。エステルとヨシュアの先輩よ。シェラって呼んでちょうだい♪」
「は、はい、シェラさん……」
「それじゃあボクは『オリビエおにいちゃん』って……」
「あんたはやめい、あんたは。」
(兄………か。ロイドの奴、今頃何をしているんだろうな……?)
どさくさに紛れてティータに変な呼び方をさせようとするオリビエをエステルはジト目で睨み、その様子を見ていたフレンは懐かしそうな表情をしていた。
「ん?何で教会のシスターがこんな所にいるんだ?」
その時アリエッタに気付いたアガットは首を傾げ
「そいつはアリエッタって名前で七耀教会の裏組織―――”星杯騎士団”に所属する騎士だ。訳あって俺達に力を貸してくれているんだ。」
「へ……」
「ふえええっ!?し、七耀教会に騎士さん達がいるんですか!?」
「ほう?それは初耳じゃな。」
ルークの説明を聞いたアガットは呆け、ティータは驚き、ラッセル博士は興味深そうな表情でアリエッタを見つめた。
「まあ………あのロランス少尉の言葉から察してはいましたが、やはり”星杯騎士”の方でしたか。」
「お、お祖母さまは”星杯騎士”を知っていらしたのですか!?」
そしてあまり驚いていない様子のアリシア女王にクローゼは驚いて尋ね
「ええ……リベール王家と”星杯騎士団”はリベールの建国時から極秘になりますがある”盟約”を結んでいるのです。貴女にもいずれ話そうとは思っていました。」
「そ、そうだったんですか………」
リベール王家と”星杯騎士団”の関係を知らされ、驚きの表情でアリエッタを見つめていた。
「ふむ……その話も気になるが、今はエレベーターの件じゃな。そのエレベーターが動かなくて困っておるようじゃな。いったいどういう事情なのかね?」
「実は……」
ルーク達はラッセル博士達にリシャール大佐の最終目的やエレベーターの行き先を説明した。
「おいおい、マジかよ……。シャレになってねえぞ。」
「そんなものがこの下に埋まってるなんて……」
「ふむ……やはりわしが恐れていた通りじゃったか。このエレベーターを使えばその場所に降りられるようじゃな?………どれ、見てみるか。」
話を聞いた二人が驚いている中、ラッセル博士は納得した様子でエレベーターのパネルに近づいて調べ始めた。
「これはわしが開発したカードキーを応用したものじゃな。同一の結晶回路を持つカードを差し込まないとロックは解除されん。じゃが、この手の初期型にはプロテクトが実装されておらん。こうして、導力圧を調整して回路に負荷を流し込めば……」
そしてラッセル博士が小型の装置を出して操作するとエレベーターの電源が入った。
「やった、さすが博士!」
「……お見それしました。」
「ふふ……さすがですね。それではさっそく地下に降りてみるとしましょうか。」
エステル達と共に地下に降りようとしたアリシア女王だったが、そこに親衛隊員が慌てた様子で驚くべき報告を持ってきた。
「た、大変です!王都の大門に正規軍の一個師団が到着!情報部の士官によって率いられている模様です!」
「なに、もう来たのか!?」
「さらに湖上から3隻の軍用警備艇が接近中!い、いかがいたしましょうか!?」
「ええい、この大変な時に!」
「……どうやら、わたくしが説得に出た方がよさそうですね。」
親衛隊員の報告にユリア中尉が慌てている中、アリシア女王は静かに歩み出た。
「お、お祖母さま……!?」
「屋上のテラスに出て到着した部隊に声をかけます。ユリア中尉、用意してください。」
「で、ですが……万が一攻撃されてしまったら!」
「わたくしは彼らを信じます。誤解があったとはいえ、彼らもリベールの民……。わたくしの姿を見て、声を聞いてなぜ攻撃することがありましょう。」
「陛下………」
アリシア女王の優しさにユリア中尉は反論できず、複雑そうな表情で黙り込んだ。
「エステルさん、皆さん……。こんな事を頼むのは非常に心苦しいのですが……」
「女王様……。それ以上は仰らないでください。リシャール大佐の野望はあたしたちが食い止めます!」
「どうかお任せください。」
そしてアリシア女王の依頼を受けたエステル達はエレベーターで地下に降りた後、メンバーを厳選して探索を始めた。
ルーク、フレン、バダック、アリエッタを探索メンバーに加えたエステルとヨシュアは途中の道を阻んだカノーネ大尉とカノーネ大尉が操る古代の人形兵器を撃退した後探索を続け、最奥に到着した……………
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