究極変態スナイパーブリーフ13
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
10部分:第十章
第十章
「ターゲットに。あのような殺し方は」
「言いたいことはわかっている」
長官は彼の言葉を聞いたうえで落ち着いた声で述べるのだった。
「それはな」
「では何故」
「仕事のやり方は一つではない」
「一つではない」
「そうだ、一つではないのだ」
こう若い男に話すのだった。
「一つではな」
「ではあのやり方もその方法のうちの一つなのですか」
「そういうことだ。彼の仕事の仕方には確かに異論も多い」
長官もそれは否定できなかった。
「しかしだ。それでも迅速かつ的確にこなしてくれる」
「だからいいのですか」
「今地球上で最も確実に様々な仕事をこなしてくれる男だ」
最早手放しの絶賛であった。
「それは否定できない」
「だからこそ今回は」
「そうだ、頼んだのだ」
また述べるのだった。
「だからこそな」
「目的の為には依頼する相手を選んではいけないのですか」
「まあそうだ。依頼者が確実に仕事をしてくれればそれでいい」
「例え彼であっても」
「彼でなければならない」
若い男と長官の言葉は完全に食い違っていた。
「そういった仕事があるのだ」
「わかりました」
若い男は観念した顔になり首を縦に動かした。
「それでは」
「うむ、わかってくれて有り難く思う」
「国家の為には個人の感情は別なのですね」
「個人的感情で国家を運営することはできない」
長官の言葉が厳しいものになった。
「決してな」
「はい、それはわかっています」
若い男もその言葉を真剣なものにさせた。
「それもよく」
「それをしたならばその国は独裁国家になってしまう」
「しかも完全な」
「その通りだ。だからそれは避けなければならない」
「それに大きく国益を損なってしまいます」
それに加えてだった。日本にとって独裁国家になることも国益を損なうこともどちらも何としても避けなければならないことである。だからこその言葉であるのだ。
「ですから。それだけは」
「わかってくれて何よりだ。それでは」
「はい」
ここで話が変わってきた。
「仕事を終えたブリーフ13だが」
「既に残りの報酬もスイス銀行に振り込みました」
「いや、違う」
だが長官はそうではないと言う。
「報酬の話ではない」
「では一体何のことですか?」
「彼はまだ日本にいるのか?」
問うのはこのことについてであった。
「もう日本を経ったのか。どうなのか」
「まだ日本にいます」
若い男はすぐに述べてきた。
「まだこの国に」
「そうか、よくそれがわかったな」
「留置所にいますので」
そして話が妙な方向に移ってきた。
「それはすぐにわかりました」
「留置所にいる?」
「そうなのです。実は仕事の後ススキノに行き」
「あそこにか」
言わずと知れた札幌、そして北海道最大の歓楽街である。そうした店が多く並んでいることでも全国的に有名になっているスポットである。
「そこで通りすがりの酔っ払いが後ろに来まして」
「うむ」
「その瞬間にその酔っ払いに対していきなりスカンクをも遥かに凌駕する放屁による殺人未遂を働いたとのことです」
「それでか」
「しかも。格好が格好でしたので」
言わずと知れた洗濯なぞしていない白ブリーフにネクタイ姿である。尚且つその身体は鍛え上げられ贅肉一つなく毛が密集していて傷だらけである。
「すぐに警官に拘束されて留置所に入れられました」
「そういうことだったのか」
「はい、留置所でもブリーフ一枚だそうです」
「北海道でも己のポリシーを貫くのか」
「もっともすぐに釈放されるとのことですが」
しかし彼はこうも報告するのだった。
「保釈金に被害者への賠償金も支払いましたので」
「そうか。それではすぐだな」
「後はすぐに行方知れずになるのですね」
「誰も彼の素性は知らない」
しかも素性も知られていないのであった。
「わかっていることはブリーフ13というコードネームとスナイパーであることと」
「あの格好だけですか」
「他には何もわかっていない」
また言う長官だった。
「そう、何もな」
「そして知ろうとした者はということですが」
「例外なく死ぬ」
返答はこれであった。
ページ上へ戻る