マルシュキニアイ
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第四章
「楽しみだね」
「そうだね、じゃあその娘にね」
「まさかと思うけれど」
「うん、丁度彼女もいないし」
それでというのだ。
「誘いをかけようかな」
「おいおい、僕の兄貴の奥さんの妹だぞ」
「結婚したら君の親戚になるってことだね」
「それでもいいのかい?」
「そんなことは気にしないさ」
笑ってだ、ワイダは答えた。
「じゃあ早くその娘に会いたいね」
「是非だね」
「うん、そうしたいね」
「では僕もですね」
ここでまた言ったウェイターだった。
「彼女と楽しんできますね」
「君もだね」
「マルシュニキアイを着た彼女と」
こうワイダに答えた。
「そうさせてもらいます」
「そうだね、じゃあ僕も今回はね」
「その方とですね」
「彼に紹介してもらって」
マリノフスキを見てだ、ワイダはウェイターに話した。
「それでいよいよだね」
「まあ紹介はするよ」
いささか冷めてだ、マリノフスキはワイダに答えた。
「けれど振られても落ち込まない様にね」
「そこでそう言うんだ」
「恋愛には常だからね」
失恋、この要素はというのだ。
「そのことは覚悟しておいてくれよ」
「失恋が怖くてそうしたことはしないよ」
「君も強いね」
「ははは、ポーランド人だからね」
しかもリトアニアにいるからだ。
「幾ら叩かれても踏まれてもね」
「平気なんだね」
「ドイツに踏まれてもロシアに殴られても」
具体的な国の名前も出す。
「何度でも蘇るよ」
「それ僕達の国だよ」
「はい、我が国も同じですよ」
マリノフスキだけでなくウェイターも言う。
「まあ君もそのつもりならね」
「頑張って下さい」
「そうさせてもらうよ」
笑って言うワイダだった、そうした話をしてだった。
二人はまずはワイダの馴染みのこの喫茶店でコーヒーを楽しんでだ、そのうえで。
共に祭典に出た、夕方から夜になろうとしているリガの中でだ。
二人はポルカが聞こえてくる中を歩いていた、出店も多く出ていて多くの者が民族衣装を着ている。その中を歩きつつ。
ワイダにだ、マリノフスキは言った。
「彼女はね」
「うん、いよいよだね」
「そう、時計台の前にいるから」
その時計台が丁度二人の前にあった。
「今携帯のメールに連絡が来たよ」
「そうなんだね」
「楽しみにしていてね」
「うん、実際に楽しみだよ」
ワイダは満面の笑顔で答えた。
「これからね」
「そうだね、民族衣装着てるらしいよ」
「皆そうだね」
街ゆく者は誰もがそうだ、特に若い女の子はだ。
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