英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第4話
エリオットとガイウスと共に旧校舎を歩きはじめたリィンは少し歩くと数体の魔獣と出会い、戦闘を開始した。
~旧校舎~
「わわっ!」
「……見た事のない魔獣だな。」
魔獣を見たエリオットは驚き、ガイウスは静かに呟き
「トビネコだ!落ち着いて戦えば大丈夫だ!気を引き締めて行くぞっ!」
リィンは号令をかけた。
「う、うん……!それっ!!」
リィンの号令に頷いたエリオットは魔導杖を振るった。すると魔導杖から導力波による弾丸が魔獣達を襲ってダメージを与えた。
「行くぞ――――紅葉切りっ!!」
そこにリィンが魔獣達に近づいてすれ違い様に一閃すると共に魔獣達の背後にかけぬけた。すると斬撃が魔獣達を襲って追撃した。
「………………」
ダメージを受け続けた魔獣は1体はリィンに向かい、もう2体はガイウスとエリオットに向かい始め
「ハッ!!」
リィンは自分に向かってきた敵を刀で一刀両断して滅し
「ヤッ、ハッ!!」
ガイウスは十字槍で斬撃と突きを続けて放って一体を滅した。
「……………」
「グッ!?」
しかし唯一生き残った一体はガイウスに攻撃してダメージを与えた。
「頑張って、ガイウス!!」
ダメージを受けた様子のガイウスを見たエリオットは味方に障壁と自己回復能力を高めるクラフト―――エコーズビートを発動した。するとガイウスの傷が徐々に回復し始め
「ムンッ!!」
ガイウスは槍に纏わせた風の渦を解き放つクラフト――――ゲイルスティングを放った。
「……!?」
風の渦をその身に受けた魔獣は麻痺状態に陥ったのか、身体の動きが極端に悪くなり
「セイッ!!」
そこにリィンが近づいて刀を一閃して魔獣を真っ二つにして滅した!
「フウ………ううっ……今みたいなのが何匹もうろついてるのかな……」
魔獣達の全滅を確認したエリオットは武器を安堵の溜息を吐いて武器を収めた後不安そうな表情で呟き
「気配を感じる……間違いなさそうだ。」
ガイウスは周囲を見回して呟き
「とにかく、焦らず先に進もう。」
リィンは二人を促した。そして3人が少しの間歩いていると、また新たな魔獣達がリィン達の進路を塞いでいた。
「あの魔獣……武器の攻撃が効きづらそうだな。」
魔獣達を見たガイウスは静かな口調で2人に警告し
「そうだな、ああいう敵には積極的にアーツを使っていこう。」
ガイウスの警告にリィンは頷いた。
「うん、了解。ちなみにこの魔導杖……駆動時間なしでアーツを発動しているのと同じ効果らしいんだよね。だから、僕の攻撃はあの手の魔獣にも有効だと思う。
「そうなのか、それは心強いな。」
「頼りにさせてもらおう。」
「あはは……うん、頑張るね。」
そして3人は魔獣達に向かって戦闘を開始した!
「アークス、駆動…………」
戦闘開始早々ガイウスはオーブメントを駆動させ
「それっ!!」
エリオットは魔導杖を振るって導力波による弾丸を放ってダメージを与え
「(3体か………どこまで続いているかわからないが……今後の探索を考えて念の為にEPは節約しておくべきだな………)………………」
リィンはオーブメントを駆動させず口で詠唱を開始していた。
「リィン?」
リィンの様子を見たエリオットが首を傾げたその時
「エアストライク!!」
駆動を終わらせたガイウスがアーツで一体の敵を攻撃し
「火の風よ、焼き尽くせ!熱風!!」
リィンは魔術―――熱風を発動した。すると敵達の中心地に炎の竜巻が現れて敵達を焼き尽くし、炎の竜巻が消えると敵達は次々と消滅してセピスを落とした!
「す、凄い…………」
「……?今のは一体何なんだ?アーツではないようだが……」
魔術を見たリィンは驚き、ガイウスは不思議そうな表情で尋ねた。
「今のは魔術だよ。」
「ええっ!?ま、魔術って……あの噂の異世界の魔法!?」
「今のが…………という事はリィンは異世界からの留学生なのか?」
リィンの説明を聞いたエリオットは驚き、ガイウスは目を丸くした後リィンを見つめて尋ねた。
「えっと……あ、ああ。俺は異世界―――メンフィル帝国出身だよ。」
尋ねられたリィンは一瞬迷った後すぐに気を取り直して答えた。
「へー、じゃあリィンがあの”英雄王”が治める国の人なんだ……」
リィンの答えを聞いたエリオットは目を丸くしてリィンを見つめ
「ハハ……正確に言えばリウイ陛下は”前”メンフィル皇帝だから、今のメンフィルを治めているという訳じゃないんだ。」
エリオットの言葉を聞いたリィンは苦笑しながら答えた。
「?それじゃあ今のメンフィル皇帝は誰なんだ?」
リィンの話を聞いたガイウスは不思議そうな表情をして尋ねた。
「えっと……今のメンフィル皇帝は確か”英雄王”の息子―――シルヴァン皇帝だよね?」
ガイウスの質問を聞いたエリオットは考え込んだ後リィンを見つめて尋ね
「ああ。プリネ姫にとっては腹違いの兄に当たる方だよ。」
尋ねられたリィンは頷いて答えた。
「アハハ……他国の皇帝の家族がこのトールズ士官学院に通っているなんて今でも信じられない事だよね……もしかしてリィンはプリネ姫達の事を知っているの?」
「俺も噂程度しか知らないよ。プリネ姫とルクセンベール卿と顔を合わせたのは今回が初めてなんだし。」
「そっか。じゃあリィンもプリネ姫達の事は世間の噂程度しか知らないんだ。」
リィンの話を聞いたエリオットは頷き
「?あの二人はそんなに有名なのか?」
二人の会話を聞いていたガイウスは不思議そうな表情で尋ねた。
「うん。”姫君の中の姫君”プリネ姫と”蒼黒の薔薇”ルクセンベール卿の名前はとても有名でね。プリネ姫は両親が有名な事も勿論あるけど可憐な容姿に加えて性格も温厚な上、皇女なのに家事も完璧で、しかも剣術も達人クラスって言われていて、容姿端麗で文武両道なお姫様として有名なんだ。」
「そしてルクセンベール卿はプリネ姫が常に傍に置いている護衛であり、プリネ姫自身ルクセンベール卿に絶対の信頼を置く女性騎士として有名なんだ。」
「そうなのか…………しかし……そんなに驚く事なのか?トールズ士官学院は貴族の子女も通う所なのだから、皇族が来てもおかしくないと思うが……?」
エリオットとリィンの説明を聞いたガイウスは頷いた後不思議そうな表情で尋ねた。
「アハハ……さすがに他国の皇族がわざわざこの学院に通いに来るなんて普通に考えたらありえないと思うよ。しかも相手はかつて”百日戦役”で電撃的な速さかつ圧倒的な力でエレボニア帝国軍を殲滅し続けた上、エレボニア帝国が納めていた領地まで奪い取った相手―――いわば元敵国なんだし。」
ガイウスの疑問を聞いたエリオットは苦笑しながら答え
「そう言えば”百日戦役”でエレボニアはメンフィルに一方的に蹂躙されて、戦死者の数が相当出たと聞いた事があるな…………」
エリオットの答えを聞いたガイウスは静かな口調で呟き
「…………………………」
リィンは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「うん。その事からメンフィル帝国が”ゼムリア大陸真の覇者”って呼ばれ始めたんだ。エレボニア帝国はかつて”大陸最強”って呼ばれていたからね。」
「……なるほど。」
「……あ。ねえリィン。メンフィル帝国って実際どれくらい広いの?噂ではゼムリア大陸並みの国力だって話だけど……」
ガイウスに説明していたエリオットはある事に気付いてリィンに尋ね
「俺も詳しい事は知らないけど……確か大陸自体が全てメンフィルの治める土地の上、一部の内海全て、更にその先の大陸の一部もメンフィルの領地だって話は聞いたことがある。」
「ええっ!?メ、メンフィルの土地ってそんなに広いの!?」
「まさに圧倒的……としか言いようがないな。」
リィンの答えを聞いてガイウスと共に驚いた。
「ハハ…………(それどころか、他にも大陸がたくさんあって、さまざまな大国が存在している事を知ったらもっと驚くだろうな………)………そろそろ先に進まないか?もしかしたら先に行った人達と合流できるかもしれないし。」
二人の反応を見たリィンは苦笑した後気を取り直して促し
「うん。」
「ああ。」
促された二人はそれぞれ頷いてリィンと共に先に進み始めて何度も時折出会う魔獣を協力して撃退していた。
「はあぁ~っ………」
魔獣との戦闘を終えたエリオットは安堵の溜息吐いて地面に膝をつき
「エリオット、大丈夫か?」
「怪我はなさそうだが……」
エリオットの様子に気付いたリィンとガイウスはそれぞれ声をかけた。
「う、うん……緊張しっぱなしで気が抜けちゃったみたいで……二人とも凄いなぁ。ぜんぜん平気みたいだし……」
「まあ、慣れの違いだろう。」
「どうする、手を貸そうか?」
「ううん、大丈夫。ちょっとヨロけただけだから。よいしょっと……」
そしてエリオットが立ち上がろうとしたその時
「おい……!」
「エリオット!」
何かに気付いた二人は顔色を変えて警告した。
「へ……」
二人の警告を聞いたエリオットが呆けた後二人が見つめる方向―――自分の背後に振り向くと新たな魔獣がいつの間にかいた。
「っ……!?」
「くっ……!」
「しまった……!」
そして魔獣がエリオットに襲い掛かったその時、銃声が轟き、魔獣は吹っ飛ばされ
「せいっ!」
吹っ飛ばされた魔獣にリィンが近づいて刀を一閃させて滅した!
「……よかった。間に合ったみたいだな。」
するとその時先に行っていたはずのマキアスがリィン達の進路から姿を現した。
「あっ……!」
「確か――――マキアスと言ったか。」
「ああ……」
姿を現したマキアスはリィン達に近づき
「……その、さっきは身勝手な行動をしたと思ってね。いくら相手が傲慢な貴族とはいえ、冷静さを失うべきじゃなかった。すまない、謝らせて欲しい。」
申し訳なさそうな表情で答えた後頭を下げた。
「いや……気にすることはないさ。」
「うんうん、あんな状況だったしね。危ない所を助けてくれてありがとう。」
「いや、引き返したところに偶然行き合わせてよかった。君達は……3人だけみたいだな?」
リィン達を見回したマキアスは不思議そうな表情で尋ね
「ああ、他のメンバーはもっと先行していると思う。」
「最初の場所に戻ったとしても誰もいないだろう。」
「そうか…………その、もし良かったら僕も同行して構わないか?見ての通り、銃が使えるからそれなりに役に立つはずだ。」
リィンとガイウスの説明を聞いて考え込んだ後申し出た。
「ああ、喜んで。リィン・シュバルツァーだ。」
「エリオット・クレイグだよ。よろしくね。」
「ガイウス・ウォーゼル。よろしく頼む。」
そしてリィン達は武器を収めてそれぞれ自己紹介をした。
「マキアス・レーグニッツだ。改めてよろしく。……そういえば……身分を聞いても構わないか?」
マキアスも自己紹介をした後ある事に気付いてリィン達を見回して尋ね、尋ねられたリィン達はそれぞれ目を丸くした。
「その、含む所があるわけじゃないんだが……相手が貴族かどうかは念のため知っておきたくてね。」
「えっと……ウチは平民出身だけど。」
「同じく――――そもそも故郷に身分の違いは存在しないからな。」
「なるほど、留学生なのか。それで……君の方は?」
ガイウスの説明を聞いて頷いたマキアスはリィンに視線を向けた。
「ああ………――――少なくとも高貴な血は流れていない。そういう意味ではみんなと同じと言えるかな。」
視線を向けられたリィンは目を閉じて考え込んだ後答え
(……………?)
リィンの言葉を聞いたエリオットは不思議そうな表情をし
「そうか……安心したよ。」
マキアスは安堵の表情をした。
「見た所女子もいないし、先を急いだ方がよさそうだ。万が一、危険に陥っていたら僕達がフォローしないとな。」
「ああ、そうだな。」
「では、出発するか。」
そしてマキアスを加えたリィン達は先に進み始めた。その後リィン達は探索を再開し、分岐点の所まで進んだ。
「そなた達は……」
リィン達が分岐点に到着すると左側の道から青髪の女子、眼鏡の女子、何かの装飾が施されてある弓を持った金髪の女子が現れ
「っ……!」
リィンを見た金髪の女子は顔色を変えた。
「あ……」
「よかった、無事だったんだね。」
女子たちを見たリィンは呆け、エリオットは笑顔で女子たちを見つめ
「みなさんも……ご無事で何よりです。」
眼鏡の女子は安堵の表情でリィン達を見つめ
「ふむ、そちらの彼も少しは頭が冷えたようだな?」
「ぐっ……おかげさまでね。」
青髪の女子に尋ねられたマキアスは唸った後気を取り直して答えた。
「―――遅ればせながら名乗らせてもらおう。ラウラ・S・アルゼイド。レグラムの出身だ。以後、よろしく頼む。」
そして青髪の女子――――ラウラは自己紹介をし
「レグラム……」
「えっと、帝国の南東の外れにある場所だったっけ?」
リィンは考え込み、エリオットは尋ね
「うん、湖のほとりにある古めかしい町だ。列車も一応通っているが辺境と言っても過言ではないな。」
尋ねられたラウラは頷いて答えた。
「アルゼイド……そうか、思い出したぞ!たしかレグラムを治めている子爵家の名前じゃなかったか!?」
その時何かに気付いたマキアスは真剣な表情で声を上げ
「ああ、私の父がその子爵家の当主だが……何か問題でもあるのか?」
マキアスの言葉を聞いたラウラは頷いた後静かな表情でマキアスを見つめて尋ねた。
「い、いや…………………………」
ラウラに尋ねられたマキアスは口ごもった後複雑そうな表情で黙り込み
「ふむ、マキアスとやら。そなたの考え方はともかく、これまで、女神に恥じるような生き方をしてきたつもりはないぞ?私も――――たぶん私の父もな。」
「いや……すまない。他意があるわけじゃないんだ。そ、そちらの君は……?」
ラウラの答えを聞いて若干焦った様子で答えた後眼鏡の女子に視線を向けて尋ねた。
「エマです。エマ・ミルスティン。私も辺境出身で……奨学金頼りで入学しました。よろしくお願いしますね。」
マキアスに視線を向けられた眼鏡の女子―――エマは軽く頭を下げた後自己紹介をした。
「奨学金……そういえば教官が首席入学者と言ってたな。むむっ、まさか主席が女の子だったとは……」
エマの自己紹介を聞いたマキアスは考え込んだ後疲れた表情で呟き
「ふむ、随分優秀なんだな?」
ガイウスは静かな表情で尋ねた。
「あはは……その、たまたまですよ。必修の武術にも縁が無くて……こんなものを勧められたんですけど。」
二人の言葉を聞いたエマは苦笑した後魔導杖を取り出した。
「魔導杖……君もそうなんだ!でも、僕の持っているのと形が違うみたいだけど……」
魔導杖を見たエリオットは声を上げた後エマが持つ魔導杖を見つめて目を丸くし
「そうですね………どういう事なんでしょう?」
エリオットの言葉に頷いたエマは不思議そうな表情をしていた。
「………………」
一方金髪の女子は厳しい表情でリィンを睨み続け
(……ふう……何とか謝りたいんだが……)
睨まれ続けているリィンは疲れた表情で溜息を吐いた。
「?どうした?そなたも自己紹介くらいした方がいいのではないか?」
「………そうね。―――アリサ・R。ルーレ市からやって来たわ。よろしくしたくない人もいるけどまあ、それ以外はよろしく。」
そしてラウラに促された金髪の女子―――アリサは自己紹介をした後若干の怒気を纏いながら目を伏せ、アリサの言葉を聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいた。
「ア、アリサさん……」
「あはは……ルーレって、あのルーレだよね?」
「大陸最大の重工業メーカー、ラインフォルトの本社がある街か。」
「ええ…………まあ、そうね。」
マキアスの言葉を聞いたアリサは静かな表情で頷いた。
「そ、そう言えば……あのトランクの中身はその弓だったんだな?面白い造りをしているけど導力式なのか?」
そしてアリサとの出会いを思い出したリィンはアリサに尋ねたが
「――――その通りだけど、あなたとは何の関係が?」
「……うっ…………」
ジト目のアリサに見つめられて口ごもった。
「そ、そういえばこれからどうしようか?せっかく合流したんだしこのまま一緒に行動する?」
その様子を見ていたエリオットは話題を変えるかのように、ラウラたちに尋ね
「そうだな、そちらは女子だけだし安全のためにも――――」
エリオットの提案を聞いたマキアスも頷いた。
「いや、心配は無用だ。」
するとラウラが静かな表情で答えた後大剣を取り出して構え
「それは……」
ラウラの大剣を見たマキアスは目を見開いた。
「剣には少々自信がある。残りの4人を見つける為にも二手に分かれた方がいいだろう。」
「そうですね……あの銀髪の女の子もまだ見つかっていませんし。」
「……そういう事なら別行動で構わないだろう。お互い、出口を目指しつつ残りの4人も探して行く……それで構わないか?」
ラウラの話を聞いたエマは頷き、ガイウスも頷いた後確認した。
「うん、異存はないぞ。……まあ、プリネ姫―――いや、プリネとツーヤの2人に関しては心配は無用だと思うが。」
「アハハ……確かにそうだね。プリネ姫は剣術が達人クラスかつ”闇の聖女”譲りの魔術を扱えるって話だし、ルクセンベール卿はプリネ姫の親衛隊長だもんね。」
「…………………」
ラウラの言葉を聞いたエリオットは苦笑し、エリオットの話を聞いていたエマは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「―――アリサ、エマ。それでは行くとしようか。」
「……そうね。」
「また後で……それでは失礼します。」
そしてラウラ達はリィン達から去って行った。
「……はあ……」
ラウラ達が去るとリィンは疲れた表情で溜息を吐き
「えっと……その、ご愁傷様だったね。」
リィンの様子を見たエリオットは苦笑し
「不可抗力だったというのはこの際、関係ないんだろうな。―――まあ、それはともかくやっぱり女子だけなのは心配だな。誰か一人くらいは向こうに付いていった方がいいかもしれない。」
マキアスは疲れた表情で答えた後気を取り直して提案した。
「しかしあのラウラという娘……見たところ、尋常じゃない腕を持っていそうだったが。」
その時ガイウスはラウラ達が去った方向を見つめながら呟き
「まあ、とんでもない剣を持っていたのは確かだが……それでも女子の力だろう?」
「身長は僕より高かったけど……あんな剣、まともに振れるのかなぁ?プリネ姫やルクセンベール卿の剣だってあんな大きな剣じゃなかったし。」
マキアスとエリオットはそれぞれ考え込んだ。
「いや―――たぶん余裕だろう。」
その時気を取り直したリィンが答え
「レグラムの”アルゼイド流”……帝国に伝わる騎士剣術の総本山だ。彼女の父親、アルゼイド子爵は武の世界では”光の剣匠”と呼ばれ、帝国最高の剣士として知られている。恐らく新入生では最強クラスだろう。…………彼女に勝てる新入生はプリネ姫かルクセンベール卿くらいのはずだ。」
自分の知る知識をエリオット達に説明した。
「そ、そうなのか……」
「ふむ、そんな流派が帝国には存在しているのか。」
リィンの説明を聞いたマキアスは驚き、ガイウスは静かな表情で呟き
「へええ……詳しいんだね、リィン?メンフィル帝国の人なのにそこまで知っているなんて。」
エリオットは目を丸くして尋ねた。
「まあ、一応剣の道に関わっている端くれだからな。―――そろそろ俺達も行こう。アルバレア家の子息もそうだがあの銀髪の子も心配だ。」
「そうだな。」
「フン、あの傲慢なヤツは別にどうなっても構わないが……」
リィンの提案を聞いたガイウスは頷き、マキアスは鼻を鳴らし
「あはは、まあまあ。……でもプリネ姫達の事は心配しなくて大丈夫なの?もしプリネ姫達の身に何かあれば、この学院も不味い事態になる気がするのだけど……」
エリオットは苦笑した後ある事に気付いて不安そうな表情をした。
「―――いや、それは心配ない。この辺にいる魔獣ごときに2人が遅れを取るとはとても思えないしな。」
「……何故そこまで確信した答えが言えるんだ?実際二人が戦っている所を見た事もないのに。」
リィンの話を聞いたマキアスは不思議そうな表情をして尋ね
「―――二人はリベールの”異変”を解決した立役者でもあるからな。」
「ええっ!?」
「リベールの”異変”って言ったら、あの帝国南部の辺境の導力が停止した事件で、怪しげな組織がリベールで暗躍していたという話だろう!?」
「……俺もその話は軍人を務めている知り合いの人から聞いた事がある。確か当時はメンフィル帝国も積極的に協力して事件の解決へと導いたと聞いたが……」
リィンの話を聞いたエリオットとマキアスは驚きの表情で声を上げ、ガイウスは静かな表情で呟いた。
「ああ。当時プリネ姫達はあの”ブレイサーロード”達と協力して、怪しげな組織の構成員と剣を交えたらしいからな。ラウラと違って実戦経験もあるから心配は一切いらないと思う……というか逆に俺達が足手纏いになる気がするな。」
「ええっ!?ブ、”ブレイサーロード”って言ったらあの”蒼黒の薔薇”―――ルクセンベール卿と同じ平民から貴族へと成り上がった遊撃士だよね!?そんな凄い人達と行動していたんだ……」
リィンの説明を聞いたエリオットは驚きの表情で声を上げ
「!?エリオット、今の話は本当なのか……?」
エリオットの言葉を聞いたマキアスは目を見開いた後信じられない表情で尋ねた。
「へ……今の話って?」
「その……平民から貴族へと成り上がったという話だ。」
「うん。詳しい経緯は知らないけど、遊撃士の”ブレイサーロード”、”黄金の百合”、そしてルクセンベール卿は元平民でメンフィルに貴族の爵位を授けられたって言う話でそれなりに知られているよ。」
「そうか…………帝国ではとても考えられない事だな。」
エリオットの説明を聞いたマキアスは複雑そうな表情をし
「身分の事はよくわからないが……そうなのか?」
ガイウスは不思議そうな表情をしてリィンに尋ね
「………ああ。エレボニア帝国は”ブレイサーロード”達を貴族にしたメンフィル帝国と違ってその身に”高貴な血”が流れていない限り貴族として認めないしな。」
尋ねられたリィンは頷いて静かな表情で答え
「―――さてと。そろそろ行こうか。」
「うん。」
「ああ。」
「了解だ。」
そしてエリオット達を促し探索を再開した………………
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