見習い悪魔
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3部分:第三章
第三章
「荒木ファインプレイ!」
「これでよし」
ミザルはそれを見て笑うのであった。
「勝ったわ」
こんなことをして二人はそれぞれ阪神と中日を勝たせていた。戦いは彼等にとってはまさに神と悪魔の戦いであった。彼等以外の誰も知らないがだ。
とりわけ直接対決の時はだ。二人は激しく伊いがみ合った。
取っ組み合い寸前になってだ。そのうえで言い合うのであった。
「今度は阪神が勝つからな!」
「また中日が勝つわ!」
お互いこう言って引かない。
「絶対に勝つ!」
「見ていなさい!」
こうしてそれぞれのチームのベンチの上に陣取り力を尽くす。選手を、そしてボールを操り戦うのであった。とはいっても彼等は選手、そしてチームの手助け程度しかできない。それだけの力しかないのだ。
しかしそれでも彼等はそれぞれの力を尽くす。外野フライがあがれば。
「フライになれ!」
「ヒットになれ!」
すぐにそれぞれ力を出すのであった。二つの力が激突する。
二人の力が炸裂し打ち合う。ボールよりも先に、であった。
「邪魔するな!」
「それはこちらの台詞よ!」
すぐに言い合う二人であった。
「おのれ、よくも」
「私の邪魔を」
そんなことを言っている間にボールは落ちる。そしてセンターフライになって終わりであった。
それを見たミザルは。しまったという顔になって言うのであった。
「参ったわね、これは」
「ははは、ざまみろ」
チブスはそんな彼女を指差して楽しそうに笑ってみせた。
「おいらに気を取られてるからだ」
「これで試合終了って」
「サヨナラのチャンスが不意になったな」
「次よ」
しかしミザルも諦めない。こう言うのだ。
「次は中日が勝つからね」
「次も阪神だよ。おいらがついてる限り阪神に負けはないさ」
「何よ、阪神なんて百年に一回優勝すればいいのよ」
ミザルはムキになった顔で言い返す。
「それだけでね」
「そっちこそ何十年も日本一になってないじゃないか」
「何なら杉下茂若返らせてあげるわよ」
「じゃあこっちは村山実復活させてやろうか」
二人はとんでもないことを言い出した。
「まさに中日の為に生まれた英雄をね」
「今も甲子園のマウンドで阪神を見守る英霊なんだぞ」
「悪魔が英霊を蘇らせるっていうの?」
「宗教が違うからいいんだよ」
チブスも無茶を言う。
「何なら小山正明を蘇らせてやるぞ」
「じゃあこっちは星野仙一よ」
「今星野はこっちにいるだろうがよ」
「くっ、そうだったわ」
ミザルはチブスの今の言葉に殺人未遂者の顔になった。
「星野、裏切ったわね」
「阪神の魅力に惹かれたんだよ」
「裏切り者は許さないわ」
今度は秘密警察の人間の顔になるミザルであった。
「見てらっしゃい、天誅を加えてあげるわ」
「やれるものならやってみな。おいらが絶対に邪魔してやるからな」
「ふん、まずは中日を優勝させてみせるわ」
だがミザルは今はそちらでの対決は避けるのであった。
「何があってもね」
「やるってんだな」
「そうよ、やってやるわ」
チブスもそうだがミザルもムキになっていた。
「天使の誇りにかけてね」
「おいらだって悪魔の誇りがあるんだ」
まさに売り言葉に買い言葉であった。
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