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第三章

「はじめて観ました」
「そう言われると何か得した気分ですね」
「ここに来て」
「いや、いいですね」
「来てよかったです」
「私もそう言ってもらえると有り難いです、それでは」
 そのオーロラをだ、防寒対策を完全にした服を着て雪と氷の世界の中で観ていた。そしてその中でだった。
 ガイドはツアーの参加者達にだ、今度はこう言った。
「お買いものもしましょう」
「ここで、ですか?」
「買いものが出来るんですか?」
 吾朗と慎吾は怪訝な顔になってガイドに尋ねた。
「街ないですけれど」
「人もいないですよ」
「近くにもないですよね」
「民家さえ」
「人が来ます」
 今はいないがというのだ。
「もうすぐこちらに」
「あれっ、ひょっとして」
 ここでだ、慎吾はガイドがその手に携帯電話を出していることに気付いた。そしてそれで連絡を取ったことがわかった。
「それで今」
「はい、そうです」
「やっぱりそうですか」
「ですからもうすぐ来てくれますよ」
「といいますと」
 今度は吾朗が言った。
「ここの現地の人達ですか」
「はい、そうした人達です」
「イヌイットみたいな人達ですか」 
 吾朗はここが極北の地なので北米にいる彼等のことを思い出して話に出した。
「となりますと」
「いえ、あの人達とはまた違います」
「イヌイットの人達じゃないんですか」
「また違う人達です、ですが」
「それでもですか」
「あの人達と同じで寒い場所に住んでいる人達です」
 このことは変わらないというのだ。
「サーメ人といいまして」
「サーメ人ですか」
「そうです、ここにずっと住んでいる人達です」
「その人達がここに来てくれて」
「特産品といいますかそれを売ってくれます」
「日本語わからないですよね」
「ですからこの人がいます」
「どうも」 
 ガイドと一緒にいる通訳、現地のその人が話してくれた。
「北欧各国の言葉なら任せて下さい」
「そうなんですか」
「日本語もです」
 それもというのだ。
「ですから」
「それで、ですか」
「はい、サーメ語もわかります」
「それがサーメ人の言葉ですか」
「そうです、私が通訳をしますので」
「それならですね」
「お話は任せて下さい」
 こう吾朗にも言うのだった。
「是非」
「わかりました、それでは」
「はい、宜しくお願いします」
 話のことは決まった、そしてだった。
 暫くしてそのサーメ人達が来た、彼等はというと。
 基本はコーカロイドの顔だが肌は幾分黄色かった、吾朗はその彼等の顔立ちを見てそのうえで言ったのだった。
「フィンランドの人もな」
「あそこか?」
 慎吾はその吾朗に応えた。 
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