FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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任せて!!
前書き
GWが終わってしまった・・・とか言いつつ休み明け一発目から朝一に投稿するというね。
九連休の後に月曜から出勤・・・そして眠れず朝から小説に没頭・・・体力持つかな?
「着いたよ」
「「「「「デカッ!!」」」」」
村の中で一際大きな建物へと案内された俺たち。他の家は人間が入るには窮屈な大きさに見えたが、ここだけは俺たちの家の大きさと遜色ないサイズになっている。
「いつ君たちが来てもいいようにって、シャゴット様が」
ナディにそう言われて納得する。シャルルやセシリーが村に来ると、必然的に俺やウェンディも付いてくる形になる。そうなった場合、あの大きさだとどうすることもできないから、こういう屋敷が必要になってくるのだろう。
そんなことを考えながら屋敷の中へと入っていくと、応接室のような場所へと案内される。そこには、客人をもてなせるようにと大きめのソファやらテーブルやらが置いてあった。
「ここで待ってて。ぼきゅはシャゴット様を呼んでくるから」
そう言うと部屋から出ていくナディ。俺たちは言われた通り、この中で座って待つことにした。
「おっ!!バナナ発見!!」
応接室に置いてある棚の中をガサゴソと漁っていたレオンが、入っていたバナナを一房取り出す。他にもお菓子やら飲み物やらが入っていたのを確認すると、それをソファの前に置いてあるテーブルの上へと持ってくる。
「レオン。勝手に食べちゃダメだと思うよ」
「大丈夫大丈夫。後で断るから」
シェリアが注意してもお構い無しに食べ始めるレオン。こいつは自由すぎるよな。もっと“氷の神”の異名を持った人間らしく、周りの手本になるべきだと思うんだが・・・
「女王様は元気かな?」
「さぁ、どうかしらね」
「もう女王様じゃないけどね~」
ウェンディがシャルルとセシリーと、これから会うかつてエクスタリアの女王だった、シャゴットについての話をしている。そういえば女王様って呼べばいいのかな?それとも名前でいいのかな?どっちで呼べばいいか迷いどころだ。
「ねぇねぇ!!あたしにも色々お話聞かせて!!」
「ラウもラウも!!」
「うん!!いいよ!!」
以前エクシードたちとどんなことがあったのか、気になって仕方がないといった感じのシェリアとラウル。ウェンディはそんな彼女たちに、嬉々としてエドラスでのことを話し始める。
「さっきのひょろ猫の態度・・・どう思う?」
ワイワイと盛り上がる少女たちの方を見ていると、片手にバナナとチョコレートを持っているレオンがボソッと耳打ちしてくる。
「わかんない。だけど、何かあったのは間違いないかな」
それに対し、まだ何も気付いていないウェンディたちに聞こえないように解答する。さっきの彼の表情は、少し困っているように感じる顔だった。その理由が何なのかはわからないけど、何かしら問題が起きていることには間違いないだろう。
ガチャッ
扉が開く音がする。そちらに意識を向けると、そこには真っ白な猫と黒いひょろ長い顔をした猫、そして、焦げ茶色の猫が部屋にやって来ていた。
「あ~!!おばさん久しぶり~!!」
「おばさんじゃなくてお姉さんって前も言ったでしょ~!!」
自分の母親(本人はいまだ気付いてないが)である焦げ茶の猫に手を振ったセシリー。それを受け彼女は、呼ばれ方が気に入らなかったようで、子供の前まで飛んでいくと、その顔をコネコネとして痛め付けていた。
「セリーヌ、あまりいじめちゃダメよ」
「はいは~い」
純白の猫、シャゴットが注意すると、両手をセシリーの顔から話すセリーヌ。その様子を見ていたシャルルは、彼女たちの関係に気づいたのか、口角を上げてうっすらと笑みを浮かべていた。
「久しぶり、シャルル」
「ちょっ!!」
シャルルの元へとやって来て、彼女をぎゅっと抱き締めるシャゴット。エドラスでの一件以来の再会だから、懐かしくって、愛しくて、人目も憚らずに抱き締めているのだろう。シャルルはいきなりのことで慌てていたけど、慣れてきたのか、大人しくしている辺りが可愛らしいな。
「何ニヤニヤしてんだよ」
「あれ?顔に出てた?」
どうやら親子の再会に顔が緩んでいたらしく、隣にいたレオンに突っ込まれる。でもそれも仕方がないことだよね、だって微笑ましい限りだし。
「あら?その子はもしかして・・・ラウラの娘さん?」
「息子です!!」
娘の温もりを感じていた母は、すぐそばに座っているラウルを見てそう言う。シャルルとセシリーが女の子だから間違えたのか、はたまたラウルが女性よりの顔なのか、娘と間違えている彼女にラウルが首を振りながら答える。
「あら。ごめんなさいね。ずいぶん似てたものだから」
「そうなの?」
謝罪する白猫と首をかしげるオレンジ猫。母親がどんなだったのかは見たことないからわからないけど、彼女がいうならその通りなんだろう。
しかし、感動の再会の最中、俺はある点が気になっている。たぶん、ウェンディもそれには気づいているようで、こちらにちょくちょく視線を送ってきている。
シャゴットの顔が、以前会った時よりもやつれているのだ。おまけに、目の下には隈ができており、疲労し切っているのが誰の目から見ても明らかだった。セリーヌもどこか疲弊しているようだし、大丈夫だろうか?
「あんた、少し痩せた?」
「あら?そうかしら?」
シャルルの問いにひきつり気味の笑顔で答えてみせるシャゴット。その隣で、セシリーがセリーヌに同じような質問をするが、彼女は苦笑いしながら隣の猫と同じような回答をしていた。
「セリーヌ」
「オッケ~」
すると、シャルルから手を離したシャゴットが、セリーヌの名前を呼ぶ。それを受けて彼女は、人差し指と親指で丸を作って彼女へと見せる。
「三人に見せたいものがあるんだけど~、見たい?」
ニヤニヤと笑いを必死に堪えているような表情を見せる茶色の猫。三人と言うのは、おそらくセシリーたちエクシードのことを言っているのだろう。指名された彼女たちは、顔を見合わせ首をかしげていた。
「見せたいものって?」
「何々~?」
「気になる!!」
誘い方とその後の薄ら笑いが三人の興味を引き立てたらしく、かなり食い付いてきている。セリーヌはそれでしめしめと悪者のような笑いを一瞬見せた後、言葉を紡いでいく。
「見たい?見たいでしょ?」
「いいから早くしなさい!!」
「「そうだそうだ!!」」
焦らし過ぎて反感を買った彼女は、興奮している三人を落ち着けると、セシリーの手を取りドアの方へと向かっていく。
「シャゴット、ナディ。三人は連れてくから~」
「えぇ。よろしくね」
「お気をつけて」
子供たちを引き連れて部屋を後にしていくお母さん猫。四人の足音が聞こえなくなった頃、藍色の髪をした幼き竜が口を開く。
「ねぇ、一体どうしたの?」
顔をうつ向かせている白い猫に優しく問いかける少女。彼女とは初対面の天神と氷神も、疲労の色を隠せない目の前の猫を心配そうに見つめている。
「こんなことを皆さんにいうのは、間違っていると思うのですが・・・」
ただでさえうつ向いているのに、さらに顔を下げていくシャゴット。どうやら、相当な困り事があると考えるべきなのかもしれない。
「何かあるの?」
「あたしたちでよければ、力になるよ?」
俺とシェリアが顔を覗き込むようにしながらそう言う。隣に座っているレオンは、ボリボリとポッキーを食べながらも、視線は一切彼女から外すことなく、真剣な眼差しで次に出てくる言葉を待っている。
「シャゴット様」
「・・・そうですね」
後ろからナディが声をかけると、ついに覚悟を決めたシャゴットは顔を上げ、こちらを見る。
「実は最近、エクシードたちが誘拐されているのです」
「「「えぇ!?」」」
いきなり出てきたその言葉に驚愕して立ち上がる俺たち。
「誰に誘拐されたかは分かってるの?」
一人だけ冷静さを保っているように見えるレオンが座ったまま二人のエクシードへと質問を投げ掛ける。それに対し、今度は手を上下に振り続けている黒い猫が答える。
「この近くに闇ギルドが出没してて・・・そいつらに・・・」
「ほう・・・」
それを聞いた途端、顔色一つ変えずに手に持っていたクルミを握りつぶす氷の神。それを見てこの部屋にいる全員がゾッとしたが、俺やウェンディは気持ちがわかるから、何も言わずに元通りに座る。
「いつくらいからなの?」
「半年ほど前だったと・・・」
「どうして教えてくれなかったんですか?」
そこまで言って、あることを思い出した。半年くらい前だと、丁度俺たちが天狼島から帰還する直前くらいか?もしかしたら、彼女たちは救いを求めたかったのだけれども、俺たちが不在だったからそれが出来なかったのかもしれない。
「私たちはできる限り自分たちの力でなんとかしたいと考えていました。皆さんに助けを求めるのは、違うと思ったもので・・・」
エクシードたちは、エドラスではエクスタリアという国を自分たちの力で作り上げてきた種族だ。当然、その時のように村を作りたい気持ちもあるのだろうし、何よりこちらの世界に逃がした子供たちが見つかった時、自分たちの力だけでここまでやれたと誇れるものを作りたかったのかもしれない。その気持ちはよくわかるから、誰も何も言うことが出来なかった。
「引っ越そうとかは、考えなかったんですか?」
ウェンディがそう質問をすると、シャゴットは下唇を噛んだ後、ゆっくりと口を開く。
「ここに住みたいという、私のエゴです。彼らが来たときに、すぐにここを離れていれば・・・」
悔しそうにそういうシャゴット。だけど、それは彼女のせいではない。ほんの少し飛んでいけば、娘へと会える距離。さらには人里からもある程度離れていて、これ以上の条件はないであろう場所。そんなところから別のところへ行くなんて、誰だって考えることはできない。
「シャゴット様のせいじゃありません!!親だったら誰だって、子供のことを見守りたいと思って当然です!!」
ナディも同様のことを考えていたようで、フォローを入れる。それに、彼女だけじゃない。ハッピーの両親だってこの村にはいるんだ。さらには他の子供を逃がしたエクシードからすれば、自分たちの子供にもいつか会えると思える環境が作れ、それだけでモチベーションは高まっていく。それは村起こしという大変な作業をする彼らの力になるのは言うまでもないだろうし。
「捕まったエクシードたちはどうなってるの?」
シェリアが気になったことを質問してみる。言われてみると、エクシードたちをなぜ誘拐するのか、あまり予測ができない。
「みんな、奴隷として扱われていると聞いています」
「「「「奴隷?」」」」
すると、頭の中に全く想像していなかった単語が現れ、思わずオウム返ししてしまう。
「ぼきゅたちは翼が使える。だから、物資を運んだりするのに役立つと考えているみたいなんだ」
それを聞いて思わず納得する。彼らは人間ではまずできない空を飛ぶことができる。実際俺やウェンディ、ナツさんは彼らの使うその魔法によく助けられている。エクシードたちを捕まえた闇ギルドの人間は、自分たちだけでは運びにくい道具や食料などを、体の小さな彼らに持たせ、空を飛んで運ばせるといった行動をしているらしい。
「ひどい・・・」
「最低だね」
二人の天空の魔導士が口々にそう言う。俺も同感だ。人として、そんなことをやってはいけない。ましてや無理矢理捕まえてそんなことをするなんて・・・
「その問題!!俺たちで解決します!!」
拳を強く握りしめ、それを震わせながら立ち上がりつつそう叫ぶ。すると、目の前の二匹のエクシードは、驚愕の表情を浮かべている。
「で・・・ですが、これは私たちの問題です。皆さんにご迷惑をかけるなんて・・・」
申し訳なさそうに顔をうつむかせるシャゴット。それを見ていたウェンディとシェリアも、俺と 同じように立ち上がる。
「ううん!!それは違うよ!!」
「そうだよ!!あたしたちはみんなを守りたいもん!!」
俺たちにもセシリーやシャルル、ラウルがいる。みんな大切な仲間で、一緒に支え合ってきた存在。そんな彼女たちの仲間が、家族が傷つけられていると聞いて、黙っていられるわけがない。
「ぼきゅたちも最初はみんなを頼ろうと思ったんだけど・・・人間たちには『ギルド間抗争禁止』っていう条約があるって聞いたから・・・」
シャゴットの後ろで今にも目から滴を落としそうになっているナディ。彼のその発言を聞いて、俺たち三人は思わず口を塞いでしまった。
俺たちはギルドに所属している魔導士。例え相手が闇ギルド・・・正規に登録されていないギルドであっても、互いに戦闘をし合うことは禁止になっている。
以前ジュビアさんとガジルさんのいた幽鬼の支配者は、そのルールを破ったために解散命令を出されたって聞く。今回は俺たち四人だけで問題のギルドに突っ込もうとしてるわけだけど、もしかしたらその規約に触れて皆さんに迷惑をかけてしまうかもしれない。それだけは絶対避けたいけど、だからと言って困っているエクシードたちを見過ごすことはできない・・・
「なんだ、そんなことか」
一体どうすればいいのか悩んでいると、ここまで静かにソファに腰かけていたレオンが口を開く。
「それなら方法は簡単だ。要は戦わなければいいんだろ?」
何やら考えがあるのか、不敵な笑みを浮かべるレオン。それを聞いたシャゴットとナディは、目を見開き固まっている。
「戦わないで済むならその方がいいんだ。ぼきゅたちはみんなを取り戻したいだけだから」
「私もです。それに、皆さんにも決して傷ついてほしくないから・・・」
不安さを拭い切れない彼らはギリギリ聞こえるか否かといった声でそう呟く。相手はそこそこ人数がいるギルドなんだろうし、不安になるのもわかる。だけど・・・
「大丈夫!!絶対みんなを連れてくるから!!」
「二人は安心してここで待っててね」
胸をドンッと叩く俺と落ち着かせるように手を握り締め、ニッコリと微笑んでみせるウェンディ。その瞬間、シャゴットの目からうっすらと涙が溢れたのがわかった。
「はい・・・よろしくお願いします」
そう言ってウェンディの手を握り返すシャゴット。その後ろにいるナディも深々と頭を下げている。
「よし!!行こっ!!」
「うん!!」
「オッケー!!」
「わかった」
エクシードのみんなが安心して生活できるように、そしていつセシリーたちの以外の子供たちが見つかってもいいように、俺たちは全力で捕まっているエクシードたちを救い出す。そう心に誓い、四人の魔導士たちは部屋を飛び出したのであった。
後書き
いかがだったでしょうか。
今回のこのストーリーはFAIRYTAILの小説第一段『心に宿るcolor』を元ネタにしています。
四人のチビッ子たちの最初の依頼?といった感じですかね。
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