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戦闘はあっけなく
光り出した魔法陣を見ながら僕は、僕の実力を見たいと言われていたのを思い出して、
「今回は僕一人で頑張ってみるよ」
「大丈夫なのですか?」
心配そうに声をかけてくるレイアに、僕は不安にさせないように笑って、
「僕の力がどの程度か分勝った方が良いかなって。今の段階でも十分レイアの力になれるみたいだけれど、より正確に分かるならそちらの方が良い」
「それは……」
「だから僕も頑張ってみようと思う」
「……すみません。私のために颯太を危険にさらしてしまいました」
「えっと、でも僕が何かミスした時は手助けをよろしく」
「! もちろんです!」
さすがに失敗して倒されてしまったのでは格好がつかないし、それにそうなると元の世界に僕は戻ってしまうので、レイアの手助けが出来ない。
なのでその時は手助けしてもらおうと思った。
と、そこでリリアとエイダが、
「任せておいて。普段からエイダの保護でで慣れているから」
「ちょっと、リリア!」
「あら、嘘は言っていないはずだけれど~」
「うう……まあいいわ。私に倒される前に、雑魚に倒されるんじゃないわよ」
エイダがどこぞのライバルであるかのように僕に言う。
彼女なりの応援なのだけれど、
「もう少しいい方は無いのかな」
「う……ま、まあ心配だし、目の前で死なれたら目覚めが悪いから少しは手伝ってあげても良くてよ」
「……60点」
「点数を付けるな! まあ、真似だけじゃなくて異世界人の“想像”がどんなものかを見るにはいいかもね。それは楽しみにしているわ」
何故か挑戦状の様な言葉を投げつけられる。
それを聞いて僕はふと思う。
僕達の周りはもうすでにある程度の物が満たされてしまっている。
だからきっとすでに……幼子の様な何かを真似する時代はとうに終わってしまったのだ。
新しい物を作り出す時代になっていて、想像力が試されている。
僕達の時代とこの世界の僕の状況はとても良く似ている。
そんな夢想じみた言葉が僕の中で浮かんできて消えた。
理由は、目の前の魔法陣の光が更に強くなったからだ。
それは眩しいぐらいに輝く。
同時に、光がそこから垂直にたちのぼり始める。
揺らぐこと無く一つの筋として空高くの持っていったそれは、僕達の身長の五倍程度で伸びが止まる。
そこで光の帯が小さな光の粒へと変化し、何かを形作ろうと収束していく。
安易な方法で、光の色でドラゴンの属性を見れないかと思っていた僕は、その目論見が失敗したので当初の予定通り……そう思って“魔法結晶石”のうち、緑色の物を取り出した。
光の粒はまだそれを形作らない。
存在が確定するまでは目的のドラゴンは、“光”としてしか存在しないだろう。
だから、ドラゴンとしてそれが“現れる”その瞬間を待つ。
やがて、ふっと空よりも深い蒼の、爬虫類の様なぬるりとした光沢をもつ肌が現れる。
今だ、そう僕は思った。
「そーい」
緑色の、土属性の“魔法結晶石”を投げる。
とりあえずは青いので水属性や、氷による攻撃をする相手だと見てもいいだろう。
まずは蔓の魔法で拘束。
ようやく形作り始めたドラゴンが、蔓にぐるぐる巻きにされていく。
それから、と思って目の前のドラゴン相手なら炎の属性の魔法で倒した方が良いけれどその前に、
「炎では蔓が……水分が多いから燃えにくいとはいえ、僕の魔力は強いから消し炭になってしまうかもしれない。となるともう一度拘束系の魔法……同じ水属性を当ててみよう」
イメージするのは、液体窒素。
マシュマロを入れるとサクサクになって美味しかった。
そんな事を思い出しながら僕は、青色の“魔法結晶石”を投げる。
ドラゴンが蔓ごと凍りついて……そのままひび割れた様に崩れ落ちる。
ぼろぼろと地面に落ちて山として積みあがったかと思うと、白い光にそれらが包まれる。
そして、消滅した。
「……え?」
そこで僕は間の抜けた声を上げたのだった。
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