Blue Rose
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第七話 姉としての責任その十四
「何時でもな」
「そうさせてもらうわね」
「ああ、何かあってからじゃ遅いからな」
こうも言った龍馬だった、ぶっきらぼうな口調だが心は伝えていた。
「遠慮するなよ」
「お礼は今日みたいにアイスでいいわね」
「ああ」
また答えた龍馬だった。
「それで充分だよ」
「百円のね」
「別になくてもいいさ」
そのお礼のアイスもというのだ。
「気を使わなくていいからな」
「そういう訳にはいかないのよ」
くすりと笑ってだ、母は自分の横にいる自分よりもずっと背の高い息子に答えた。
「親しい仲にも礼儀ありって言うでしょ」
「だからか」
「そうよ、親子でもね」
その最も深い間柄でもというのだ。
「お礼はするから」
「お袋そこはしっかりしてるな」
「そうしないとね」
また言った母だった。
「人として駄目でしょ」
「そういうことか」
「だからアイスをね」
お礼として、というのだ。
「買ったのよ」
「親父にもそうしてるんだな」
「お父さんはチョコレートよ」
「親父チョコレート好きだしな」
「買ってるのよ」
「そうなんだな」
「ええ、だからこうした時は楽しみにしていてね」
くすりと笑って息子に言うのだった、そして。
母はふとだった、左手のその海を見てだった。まずは目を瞬かせてそのうえで龍馬に言った。
「おかしな魚がいるわ」
「鮫か?」
「鮫だったら鮫って言うわ」
正面を見ている息子に答えた。
「鮫じゃないわよ」
「じゃあ何だ」
「見て、海の方」
「?」
龍馬は母の言葉を受けてだった、そのうえで。
その海を見た、すると。
海面のところに赤い長いリボンが数本見えていた。そのリボンの先に銀色の頭が見えた。その僅かなものを見てだった。
龍馬は顔を曇らせてだ、この言葉を出した。
「リュウグウノツカイか?」
「確かそのお魚って」
母もその名前を聞いて言った。
「深海魚よね」
「ああ、しかもだ」
龍馬はさらに言った。
「あの魚が出るとな」
「確か海が荒れるのよね」
「お袋も知ってるんだな」
「お話は聞いたことはあるわ」
これが母の返事だった。
「けれど姿とかはね」
「知らなかったのか」
「お母さん食べられるお魚には詳しいけれど」
それでもというのだ。
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