真田十勇士
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巻ノ三十八 双槍その八
「ならばな」
「その時その場に応じて」
「軸となる者を使い分ける」
「我等をそうしてですか」
「殿は戦われますか」
「そう考えておる、御主達はそれぞれの個性がはっきりしておる」
十人が十人共というのだ。
「ならばな」
「その時々に応じて」
「我等をですな」
「使われて」
「そして戦われますか」
「そうする、ではよいな」
戦の時はというのだ、こう話してだった。
「それぞれの時に軸になってもらうぞ」
「はい、我等が得手とする時」
「その時にですな」
「それぞれ軸となり」
「戦います」
「頼むぞ、しかし水練は必ずじゃ」
彼等が今しているそれはというのだ。
「励んで身に着けねばな」
「なりませんな」
「武士としても忍としても」
「泳げぬのでは話にならなぬ」
それこそというのだ。
「だからじゃ」
「こうしてですな」
「水練は欠かさぬ」
「殿も我等も」
「そうすべきですな」
「冬は仕方ないが」
寒くて泳げたものではないからだ、冷たい水の中では。
「流石に冬に泳いではな」
「それではですな」
「風邪をひいてしまいますな」
「だからこそ」
「冬だけは、ですな」
「そうじゃ、その時は仕方ないが」
それでもというのだ。
「泳げる時は泳ぐぞ」
「わかりました」
「日々水練にも励みましょう」
「是非共」
十勇士達も応える、そしてだった。
主従はそうした修行も怠らず春日山での日々を過ごした、それこそ寸暇も惜しんでの修行であり彼等は日々強くなっていた。しかも。
幸村からまた書を借りたいと聞いてだ、彼はまた言った。
「何と、今度はですか」
「はい、そうした書をです」
「読まれたいのですか」
「お願い出来ますか」
「喜んで、ただ」
ここでこう言うのだった。
「書も非常に読まれていますな」
「書は読めば読むだけです」
幸村も答えて言う。
「力になりますので」
「だからですか」
「はい、寝る間も惜しんで」
「読まれていますか」
「そうしています」
「朝早くに起きられてですな」
兼続は幸村に問うた。
「すぐに」
「修行に励み」
「そして夜はですか」
「書を読んでいます」
実際にというのだ、幸村も。
「そうした暮らしをしております」
「ご自身を高められる為に」
「拙者が高まれば」
「その分ですな」
「家の力になりますので」
真田家のというのだ。
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