剣士さんとドラクエⅧ
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13話 剣舞
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「おぉおおおおおっ!烏賊だ!」
「ナチュラルに足を切り落としながら騒がないで!ギラ!」
強い、そして何よりも楽しみなのは大型の魔物退治だってことだ!ああ、ああ、ああ!最高にわくわくしてきた!私が待ち望んでいたものだ!ああ、楽しそうだ!戦いたい、こいつと戦いたい!
船上で水しぶきを派手に上げて、ばーーっと出てきたのは、自称オセアーノンとかいう大王イカみたいにでっかいでっかい烏賊の魔物!倒し甲斐の有りそうな巨体に、喋れる知能!知能があるから理性もあるかと思ったら、無茶苦茶な理論をぶち立ててあっちから襲ってきたんだ!なんておあつらえ向きの素晴らしい標的なんだっ!
そんで、私の一撃や二撃じゃ潰れそうにない強さを持ってて!というか、素晴らしい耐久性だね!久々にドキドキと胸が踊るよ、こいつ、なんて素晴らしいサンドバックなんだろうね!しかもこの巨体にして、なかなか素早くて避けないとダメージを食らいそうになるのもポイント高いよね!
勿論、激しく攻撃もしてくるし、現にエルトはギラを唱えた直後に薙ぎ払われて吹き飛んだね!でも、海には落ちてないしあれぐらいでエルトが死ぬわけないから知らないけど!ヤンガスが魔神斬りキメててすっごく格好いいし!
「あっはは!すごいすごい!」
笑いながらも愛用の大剣でその巨体を斬り伏せる。斜めに、縦に、はたまた斬撃だけじゃ物足りないから殴る!ける!あははははっ!こんな楽しい戦いに無粋な盾なんて要らないよ!大剣と、一応持っていた普通の剣で双剣みたいにしたら、左右で力加減を変えるのがかなり面倒だったから今、片手は素手なんだ!
だから渾身の力をキメたいときは両手で剣を持って思いっきり、こう、叩き込めれる!気分は最高だ!
「おっと」
こいつ、炎まで吐くんだ!服の端がほんのちょっとだけ、焦げちゃったね!避け損なって、ぷにぷにじゃないほっぺたも軽く火傷したね!でも私はちょっと怪我するぐらいが一番楽しいと思うんだ!あはは!燃えてきた!
吹き飛んでたエルトも無事に戦線に復活したし、これで憂いはなんもないんだ!オセアーノン、私と戦おうよ!全力でね!
起き上がったエルトからはすかさずホイミが飛んできたけど……え、何そのダメージあんまり食らって無いじゃんって言いたげな顔!今の火傷がこの戦闘での初ダメージだよ!
「魔神斬りってこうやるの?ありゃ、魔力がいるんだ、じゃあ使えないな……なら、こうだ!」
技ってさ、格好いいからって、やりたいからって、そう簡単には真似出来ないよね、普通は。だから普通の範疇通り、真似出来なかったから、代わりに大剣の連撃をお見舞いした。魔力が必要な技は真似ができないって知ってる。出来ないからって、二回目のモノマネをしても無駄だってわかってるから。はやぶさ斬りなら別に私でも関係なく出来るさ!
「グォオォォォォッ!」
「あっははははははっ!」
こいつ、まだ動いて、しかもこんなに元気に生きてるなんて!私、こんな丈夫な生き物と戦うの初めてだ!うっかり叩き潰されそうになったけど、その叩きつけた足を逆に蹴り上げてやったら後ろからヤンガスが援護に来たよ!羨ましいなぁ、格好いい魔神斬り!エルトは巻き込まれたくないのかな、最早ギラしか飛んでこないね!良いなぁ、魔法!あんまり効いていないのは気のせい?
「食らえっ!」
渾身の力で大剣を叩き込んで見れば、ありゃ。あんなに丈夫なサンドバックになってたのにオセアーノンちゃん、すっかりくたっとしちゃって。キャパオーバー?もう駄目だ、みたいな?えぇ、なにそれつまらない。もっともっと相手してくれても良かったのにな……。なあ、本当は第二態系とかあるんだろ?ね?
でもオセアーノンはつれない。もう起きる気力もない様子で……生きているけど、戦意喪失した奴をわざわざ倒す必要がないっていうか、とどめを刺す前に海に沈んでいっちゃったっていうか……もう少し戦いたかったな……残念……。
「……、はあ……勝ったーー」
「トウカ、一気にテンション下がったね……」
「トウカの兄貴、大丈夫でがすか?」
「ん、髪の毛の先がちょっと焦げたけど、怪我はエルトのホイミで回復したから平気だよ。とっても……楽しかったけど割と呆気なかったなぁ……」
髪が焦げたっていっても本当に先っちょだけ。パリパリになって焦げの、なんとも言えない嫌な臭いがする。後でそこだけ切ればいいや……。後、ヤンガスの方が現時点では重傷だよ?取り敢えずアモールの水でもぶっかけてみようかな。
私の「ふくろ」からアモールの水を呼び出してふっかけた。「ふくろ」は右手の手袋でね、呼び出しに便利。
「な、なんでがすかっ?!」
「アモールの水」
「ありがとうございやすっ!」
「説明もなしにいきなりぶっかけるの……びっくりするよ」
「そうか、ヤンガスごめん。でさ、個人的にアモールの水はなんか変な味だと思うんだ」
「反省してない……ん?ミネラルじゃないの?」
「ミネラルって薬草並みに回復するものか?」
この世界にミネラルの概念があることにびっくりだけどね。エルトの口から魔法用語以外のカタカナ聞きたくなかった……あるのは知ってたけど、エルトも知っているなら結構一般なのか。あの味は私は好きじゃない。だからアモールの水はぶっかける物だと思っている。回復したら、その分はなんか乾くよね。それはちょっと意味が分からないけど。学者が魔力を使い果たして形を保てなくなるからだとか騒いでたっけ……。
「とにかくいきなり人に水かけちゃ駄目だよ」
「うん」
「あ、あっしは気にしてないでがすよ!」
「うん」
そうか、気にしていないのか。ならいい……。にしても、体力はそう使っていないけど、どっと疲れたよ……。拍子抜けしたし、何よりもっとサンドバッグに出来ると期待してたのに……。
「あ、駄目だこれ。トウカが無気力モードだ」
「……それはよくあるんでがすか?」
「わりとね。今、いきなりテンションが上がるようなものを見せたら駄目だ。心臓が痛いとか叫びだすから。それ以外は大丈夫だよ」
「エルトの兄貴は本当にトウカの兄貴のことを知っているんでがすね」
「十年も一緒にいればね」
何というか、脱力だ。さっきまで最高にハイだったせいかな、もう何もやる気なし。今、もしもドルマゲスと遭遇したら一気に心拍数と、ある意味ではテンションが跳ね上がって心臓麻痺起こすんだろうな……心臓麻痺にキアリクは効かないだろうな……どうせ、まだドルマゲスには会えないよな……はぁ。あんな感じに巨大で、もっと耐久力も素早さもある敵ってなんだろう……大王イカでも探して喧嘩売るべき?
あ、殺気も闘争心もないさっきのオセアーノンがのっそり上がってきた。戦う気のない烏賊はただの烏賊。つまんね。
「いやぁ、お強いですねぇ」
「今のあんたには殺気がない、闘争心もない、敵対心もない。あるのは怯え、恐怖、諦め、焦り。はあ……つまんね」
繰り返すけど、戦う気が一切ないから全然面白くない。こいつに意識があるのは知ってたけどさっきと違ってなんの敵意も感じなかったから会話中も放置してたんだ。……エルトとヤンガスはびびりすぎ。後ろの方で船員が腰抜かしたみたいだけど、びびりすぎだから。こんな……期待させた割にあっさりやられた、被ダメージ4の雑魚なんて。
「相手に求めてることが何か違う!」
「今はただただバトルしたいだけ……あと斬っても壊れないサンドバック求む」
こんな素敵なサンドバッグがあるのなら言い値で買いたい。勿論自分で稼いだお給金から。
後書き
あまり関係ないことですが、パーティーメンバーが常に一人増えている上に超火力のトウカがいるとゲームバランスが崩壊していくので、緊迫感のために気休めまでに魔物全体のHPは上げて描写しているつもりです。
ややエルトも強めでスタートしているので、スライムのHPは15~20ぐらい、オセアーノンで1000ぐらい(元は360)。地味にボスの攻撃力も高めに……被ダメージ4で何言ってるんだって感じですね。エルトは総計100はくらってます。後衛で逃げてこれです。
物語が進んでいけば原作メンバーがトウカの火力に追いついていくのでそこまで顕著な変え方はしません。それから、ゲーム通りに行くと戦闘が一瞬で終了するので現れている数は一度に数十匹単位です。これも徐々に減らしていきます。トウカたちはその一帯の魔物がおおよそ全滅してから進んでいく駆ける天災。
トウカ「槍スキル持ちで初期からなぎはらいを覚えている私に死角はなかった」
剣主体なので滅多に使いません。
心底どうでもいいトウカの初期レベルは20程度。(エルトは3)伸びしろは有り余ってますが、上がりにくいというお約束。「力」と「すばやさ」と「かしこさ」特化で上がっていきます。魔法が使えないので現状「かしこさ」は死にステです。
で、このままではエルト、ヤンガス、ゼシカ、ククールが大多数の魔物にフルボッコされて全滅しかねないのでトウカはオリジナル作戦「単騎突撃」スタイルを次回からとります。トウカを戦闘に参加させ、原作組も通常戦闘をするための策です。
数十匹の魔物に囲まれ……る前に努力チートトウカが単騎で突撃、数を減らします。ホイミ等はトウカに届きます。原作組に襲ってくるのは運良く駆ける天災を避けた魔物で数は正規ほど。レベルは……上がるので、攻略推奨レベル+10ぐらいで。ボスが強いのでまぁいいでしょう。
ちなみに例えトウカがパーティ離脱しても魔物は数十匹単位で来ます。頑張れエルト。
これでもプロットを見る限りゲームより難易度低めで進みそうです……。
そして。今回あっさりボスを倒しましたが、戦闘時間は15分程度。短いのは視点がトウカだからです。基本的に脳筋な彼女視点は戦闘時間を極端に短く表現してバトルジャンキーを表したいので……それ以外の視点だと、わりと長くじりじり書きます。
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