ドリトル先生北海道に行く
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第七幕その四
「小さな開拓村が襲われたことがあったよ」
「とんでもない事件だったって」
王子のお顔は何時しか強張ったものになっています。
「聞いてるよ」
「うん、僕も調べたことがあるけれど」
その事件についてです。
「あれは酷いね」
「本当にあったんだよね」
「うん、そうだよ」
その通りと答えた先生でした。
「あれは本当にあった事件なんだ」
「この北海道で」
「今も慰霊碑もあるしね」
犠牲になった人達の為にです。
「北海道ではかなり有名な事件だね」
「そうだよね」
「羆嵐といってね」
「何人も犠牲になって」
「軍隊まで出てね」
「えっ、軍隊って」
軍隊と聞いてです、動物の皆は思わず言いました。
「熊を退治するのに?」
「軍隊まで出たんだ」
「狩人じゃなくて」
「軍隊が」
「そうだったんだ、もっとも軍隊がこうした時に出るのは」
そうした場合はといいますと。
「他の国にも例があるね」
「そういえばそうだね」
「フランスの野獣でもそうだったわ」
「ジェヴォダンの野獣」
「あの野獣についてもだったね」
「軍隊も出て」
「そして退治されたわ」
そうしたこともあったとです、皆も言います。
「言われてみてば」
「あの野獣には二百人位犠牲になったんだっけ」
「狼とも言われてるけれど」
「あれ狼じゃないんじゃ?」
「そうも言われてるわね」
「僕も狼じゃないと思ってるよ」
先生は野獣についても言いました。
「狼にしてはね」
「色々とだよね」
「習性が違っていて」
「狼には思えない」
「先生もそう言うんだね」
「うん、あの野獣は狼と言われていたけれど」
その主張がというのです。
「最近違うんじゃないかという説が有力だね」
「それで先生もなんだ」
「あの野獣は狼じゃない」
「そう言うんだね」
「論文でも書いたけれど」
そのジェヴォダンの野獣というかつてフランスに現れた謎の獣についてもですう。
「あの野獣は狼じゃないね」
「軍隊まで出て来た」
「そしてその羆の事件でもなんだ」
「軍隊まで出動したんだ」
「そのうえで何とか退治したんだ」
「凄いね」
「とんでもない話だね」
動物の皆も唸って言います。
「あの野獣もそうだったけれど」
「その羆もね」
「物凄いね」
「そこまでの事件だなんて」
「冬眠する穴がない位に大きな熊だったんだ」
事件を起こしたその羆はです。
「冬眠しそこねて気性も荒れて冬だから食べるものもなくて」
「小さな村を襲って」
「そのうえで沢山の人を食い殺した」
「そうした事件だったんだ」
「銃もなくて碌に武器もなかったからね」
襲われた村はです。
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