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SAO‐戦士達の物語《番外編、コラボ集》

作者:鳩麦
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コラボ・クロス作品
戦士達×ツインズ
  SAOツインズ×戦士達の物語 Ending

朝、目が覚めてリビングへと行くと、いつものようにサチが朝食を作っていた。

「ふぁ、おはよう」
「おはよ。今ご飯出来るから、ちょっと待っててね」
「おーう」
サチが一瞬リョウをみてそう言い、リョウは席に着こうとして……

玄関をノックする音が響いた。

「ん……?」
「……キリカ達かな?」
「にしちゃ随分はえぇなぁ……」
言いながらリョウは玄関に向かう。

一応懐にダガーをしまいつつ扉を開けると……

「や、こんにちは。従兄さん」
「……誰だお前。キリカか?」
そこに居たのは、白い装束のような服に全身を包み、顔を隠した誰か。
自分の事を“従兄”と呼んだため、リョウはそう聞いたが……

「あれ?キリカ達に聞いてないかな?」
そう言って、そいつは首をかしげる気配。
キリカ達に……?と思いながらリョウは昨日の会話を反芻する。

『一応聞くけど、全身白づくめで顔を隠しているプレイヤーと見なかった?』

「……あぁ。ほんじゃお前さんがキリカ達に変なアイテム渡した本人か?」
「変なって……ファンからの素敵なプレゼントのつもりだったんだけどなぁ……」
『……声高けぇな。女か……?』
どちらかと言えば中性的と言うのが正しい気もするが……そんな事をリョウが思っていると、白装束が感心したように言う。

「でも流石。察しが良いね。大正解だよ」
フードの奥で微笑む気配がして、リョウは背の低いそいつを見下ろすように鼻で息を付き、言う。

「そりゃどうも。で?何か御用かい?キリカのファンさんよ」
「あぁ。えっと、そうだなぁ、サチも居ると嬉しいんだけど……」
「……リョウ?どちらさま?」
彼女の声に反応するかのように、サチが奥から顔をだす。リョウは一度そちらを一瞥すると、そこに居ろと一言言ってそいつに向き直る。
白装束は、奥で少し警戒したように自分を見ているサチにひらひらと片手を振って居た。

「これで満足か?」
「うんうん。えっと、先ず、この度はキリカ達がお世話になりました」
「はぁ?」
行き成りぺこりと頭を下げた彼女に、リョウは眉根を寄せる。

「フレンドリストと黒鉄宮確認してもらえれば分かると思うんだけど、彼女達は無事に元の世界に帰りました。私は、キリカ達の代理として御別れの御挨拶に来たの」
「……はぁ。そりゃご丁寧にどうも」
なんか此奴、独特なテンションを持っているなと思いつつ、リョウは首をかしげた。

『……ん?』
と、そこでリョウは目の前の彼女に違和感を覚える。

「それで、これは私からのお土産と言うか……ま、私がキリカ達のファンになった理由とでも思っていただければ」
そう言って彼女が手渡してきたのは……

「……なんじゃこりゃ」
「あの二人の、写真集」
「ぶはっ!?」
一冊の本型オブジェクト。
その表紙には、なんかいつもと違う体勢のキリカとドウセツが映っていた。タイトルは……

「“白百合×黒百合”って……はぁ……?」
「あはは。驚いた?」
「いやぁ……こりゃ確かに人気でそうだな……なーるほど……で?以上かい?」
「うん。以上。私はこれにて」
そう言って立ち去ろうとする白装束に、リョウが声を掛ける。

「おや、どうだい?上がってお茶でも一杯」
「いやいや。お構い無くっ!?」
語尾が跳ね上がるようになり、白装束がそこから飛びのいた。その場所に、先程リョウが懐に仕込んだダガーが突き刺さる。

「……なんの、つもりかな?従兄さん」
「一つ」
「……?」
白装束の問いを無視して、リョウが呟くように言う。

「通常、いくらキリカが俺を従兄って呼ぶと知ってて行き成り他人はその呼び方で呼ばねぇし、昨日の時点ではキリカの俺の呼び方は兄貴だ。二つ。なんで俺は“さん”付けでサチは呼び捨てだ?三つ。『流石』ってのは普通はそいつを前から知ってる場合に出やすい言葉だよな。四つ。体に染みついた動きってのは拭えねェもんでな。回避の初動がそっくりだ。けど、どういうわけか熟練してやがる。さて、この辺で聞こうか」
そのまま、リョウは白装束をかぶった人物を正面から見た。

「Who are you?(お前誰だ?)」
「…………」
白装束は、しばらく黙っていた。しかしやがて、苦笑するように言う。

「今は、やめとこうかな。いつか、言う事も有るかもね」
「そうか。じゃあな」
「うん、またね」
その言葉を最後に、彼女は森の中へと姿を消した。

外周の向こうの空を見れば、本日も快晴である。

蒼い蒼いこの空を、キリカやドウセツもまた、見ているのだろうか……

────

窓の向こうの空を見れば、本日も快晴である。

桐ケ谷家の二階。散らかったリョウの部屋に、今、サチ、キリト、アスナが集まっていた。
リョウのパソコンの横には、一台のプリンターと、ナーヴギアがある。それは、サチの物であった。

「おっ!兄貴!来た来た!」
「わ!綺麗だよリョウ!」
「本当、ちゃんと復元できてるよ!」
「当り前だ。俺が何日かけたと……」
ウィン、ウィンと音を立てて、プリンターがゆっくりと稼働していた。そこから、一台の写真が刷り出されて来ていた。ゆっくり、ゆっくりと、その全体が見えて来る。

サチのナーヴギアの中に残っていた、破損したアイテムデータの中から、あの時記録結晶でとったデータを、スクリーンショットとしてパソコン内でリョウが復元、抽出し、現実世界で写真風に印刷しているのである。

一度は殆ど消去されかけたそれはかなり破損しており、修復は実際困難を極めたと言っていい。ちなみに、この写真一枚復元するのに、二週間がかかった。

「おぉぉ!」
「凄い……」
「やった……!」
「ふぅ……」
やがて、その写真が、プリンターから出現した。

────

『じゃ、サチお願い!』
『あ、うん。こうして……行くよー?』
『ほら!ドウセツそんな離れないでこっちこっち!』
『ちょっと……』
『やれやれ、仲良いねぇ……キリト達以上かもなこりゃ……』
『む……えいっ!』
『うわっ!?ちょ、アスナ!?』
『ほら、キリト君ピースピース!』
『お、おう』
『ほほぉ……そらっ』
『うわっ!?ちょ、従兄ぉ!?』
『ま、せっかくだからな。兄妹でくっつくのも悪かねぇだろ?』
『う、む……あぁもう、今回だけね!』
『ハァ……』
『くすくす……じゃ、行くよ!』

────

ベランダにでて、一息ついて居ると、後ろから大声が聞こえてきやがる。

『この調子で、“白百合×黒百合”目指そうぜ!』
『えぇ!?』
『あ、でもそれも面白いかも』
『アスナ!?』

「ったく……」
勝手な事言いやがって、誰が作業すると思ってんだっつーの……
でもまぁ、次会った時にからかう材料になると思えば、それはそれで有りかもな。

んなことを思っていると、自然と口の端がつりあがる。おっといけねぇ。

「やれやれ……なんとかなったな」
此処と同じで此処とは違う。並行世界に住む、俺達の妹と撮った唯一の写真。それが今、キリト達の騒ぐ机の上に有る。

あの日と同じ、蒼い蒼い空に向かって、小さく呟く。

「また会おうぜ……二人とも」

いつか、必ず。





Crossing story 《Twin's and Fighters》 完 
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