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おぢばにおかえり

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第二十六話 困った子ですその七

「じゃあいいじゃない」
「悪い子じゃないわ」
「いい加減でも?」
「いい加減なのは二の次よ」
「まずは心根」
 ここでまた如何にもといった感じのおみちの言葉が出て来ました。
「それじゃない。違うかしら」
「心が奇麗じゃないと、まずは」
「いい加減でもいいのね」
「そこを何とかするのが女の子の役目じゃない」
「おみちの土台よ」
 このおみちの土台っていうのは子供の頃から聞かされている言葉の一つです。女はおみちの土台、その通りで教会では本当に奥さんが色々仕切っておられます。天理教婦人会という組織はその女の人達の集まりでかなり強いものがあります。教祖も女性の方ですし。
「だからよ。そこはね」
「フォローしてあげるのよ」
「あまりどころか殆どっていうか全然気が進まないんだけれど」
 私の本音です。
「それって」
「向こうが来たら?」
「追い払いたいわね」
 これも本音です。
「あんな騒がしい子。いらないわよ」
「とかいってまんざらでもない様子だけれど?」
「まんざらじゃないって!?」
「そうよ、ちっちってねえ」
「ええ」
 皆ここでも顔を見合わせて話をはじめます。
「嫌いな相手のことは全然話をしないじゃない」
「そうよね。絶対にね」
「それでも今はその阿波野君のこと話してるじゃない」
「ってことはよ」
「私が阿波野君のこと嫌いじゃないってこと?」
「じゃあ聞くわよ」
 一人の娘が私に直接聞いてきました。
「その阿波野君のこと、嫌い?」
「嫌いかどうかって言われると」
 人を嫌いになれば何処までも嫌いになってしまう性分なんでこう言われますと。実際のところ自分ではそこまではって感じだったりします。
「別に。そこまでは」
「ほら、やっぱり」
「嫌いじゃないわよね」
「ええ」
 皆の言葉に答えます。最初は一人だったのに何時の間にか皆になっています。こうした話をするといつもこうなってしまうような。
「じゃあ決まりね。嫌いじゃない」
「つまりは」
「ええ。男の子が相手だし」
「で、そうなるのね」
 いい加減皆が何を言いたいのかわかってきました。
「私と阿波野君のことね」
「そういうことよ。いいじゃない」
「同じ大教会なんでしょ?」
「そうよ」
 このことがまた確認されます。
「それはさっき言ったじゃない」
「しかもちっち高校卒業したらおぢばに残るのよね」
「天理大学に受かればだけれど」
 受験することはもう決めています。今の私の成績だと絶対に大丈夫だとも言われています。このことは皆もよく知っています。天理大学でも天理教のことを勉強するつもりです。
「そうよ」
「落ちても残るつもり?」
「多分」
 今度の返事は少しぼんやりしたものでした。
「本部勤務させてもらうか専修科か。どっちにしろ」
「じゃあ卒業しても会えるじゃない」
「好都合よ」
「で、付き合えってこと?」
「向こうが言ってきたらね」
「ただし」
 また忠告かお節介かわからない言葉が来ました。 
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