戦国異伝
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第二百五十話 信長の先陣その八
「よかったな」
「因縁を切るという意味でも」
「まことによかった」
信長は顔を微笑まさせてもいた。
「今思うとその時思った以上にじゃ」
「そしてそのうえで」
「因縁も切ることが出来ればな」
信長が見るだ、魔界衆の他の敵もというのだ。
「それは大きいやもな」
「上様にとって」
「そしてわしが治める天下にとってもな」
「そうなりますか」
「この戦の後落ち着けばな」
それからともだ、信長は話した。
「南の海に出るぞ」
「船を出し」
「軍勢を乗せ」
「そのうえで」
「琉球と盟を結び美麗の島も呂宋も他の島々も手に入れ」
そしてというのだ。
「貿易もして国を大いに富ますぞ」
「はい、わかりました」
「さすればです」
「我等もまた」
「南の海に出ます」
幸村と兼続だけでなくだ、宗茂と蘭丸も言った、彼等は本陣で信長と馬を進めながら話をしていたのだった。
その信長の話を聞いてだ、伊達は言った。
「そうか、南にか」
「出られるとです」
「確かに言っておられたか」
「はい、そしてです」
報をする兵はさらに言った。
「先陣にも鉄砲騎馬がおります」
「おお、わしのこの兵を用いておられるか」
「それも多く」
「そうか、有り難い」
「そう言われますか」
「実にな」
笑みを浮かべての言葉だった。
「わしを認めて下さっておられるということじゃ」
「だからですか」
「有り難いことじゃ」
こう言うのだった。
「実にな」
「それでなのですが」
「殿は」
「この戦が終われば仙台においてな」
転封されたその地においてというのだ。
「政に励み仙台を富ますぞ」
「そうされますか」
「これからは」
「天下はわしの手にはあまりにも大きい」
片倉と成実にも言った。
「天下に相応しい方はな」
「はい、やはり」
「上様ですな」
その片倉と成実も言って来た。
「それに相応しいのは」
「やはり」
「そうじゃ、あの方こそはな」
まさにというのだ。
「天下人じゃ、わしは小さい」
「上様と比べ」
「だからこそ」
「わしは戦の後は領地の仙台でな」
そこで、というのだ。
「見事な国を作りたい」
「それが殿のお考えですな」
「今の殿の」
「そう考えておる、まあ外に兵を出すことはな」
「考えてはいませぬか」
「あまり」
「政じゃ」
それだというのだ。
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