魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第2章:埋もれし過去の産物
第40話「助けたいから」
前書き
フローリアン姉妹は魅了は解けましたが戦闘不能なのでアースラで様子を見守っています。
なお、神夜には不信感を持つようになりました。
...優輝君と別れてから、不安感が止まらない。
何が起こるの?...いや、何が起こっているの?
心に穴がぽっかりと空いたような、そんな怖さ。
何かを喪うような、後悔のような、そんな気持ち。
...でも、今の私が動いた所で、なにも変わらない。それだけは確信できた。
それがとても嫌で、嫌で堪らなかった。
なんの役にも立てない。そんな悔しさが、私の心を駆け巡る。
...あぁ、なんだろう、この気持ち。
何か...何か、忘れているような....。
でも、思い出したくない。そんな想いもある。
―――...お願い、優輝君。どうか、無事に....!
=サーラside=
「っ....!!!」
―――ギギギギギギギィイン!!!
「“ナパームブレス”...!」
「はぁっ!!」
魄翼の連撃を全て弾いて逸らし、迫ってきた赤黒い大きな魔力弾も一太刀で切り裂く。
―――ドドドドォオオン!!
「っ....!」
「穿て!」
「ぁあっ...!」
ディアーチェ達の援護砲撃で魄翼を妨害し、私は強烈な刺突を繰り出す。
...が、それは躱された。
「っ....!纏え漆黒、黒き輝きとなりて、切り裂け!」
〈“Schwarz säbelhieb”〉
すぐに間合いを離し、剣を腰に差すように構える。
迫りくる魄翼の腕に対し、黒い魔力を纏わせた斬撃を放つ!
「っ....!」
「“雷光輪・追の太刀”!!」
「っ!?」
―――ギィイン!!
斬撃で一瞬怯んだ所に、レヴィが斬りかかり、さらに怯ませる。
「(今!)斬り裂け!!」
〈“Aufblitzen”〉
一瞬で間合いを詰め、強力な一閃を放つ。
咄嗟に防御魔法を張られるが、破られる寸前まで罅が入る。
「(これでっ!!)」
「...まだ、甘い。」
「っ...!!」
控えさせていた魔力弾で防御魔法を破り、一撃を与えようとして飛び退く。
...攻撃の軌道上には、拘束魔法が仕掛けられていた。
「...さすがはサーラ。今ので見切ったか。」
「...私は当時、最強とまで謳われたのですよ?ユーリこそ、態と知らせるために声に出しましたね?」
「........。」
何度か打ち合って、理解している。
あの時だって、こんな感じだった。
「...ユーリ、貴女はまだ希望を抱いている。助けてほしいと、願っている!」
「.....違う、私はもう....。」
「なら!さっさと私を殺せばいい!それをせず、私を助けるような真似をするという事は、まだ願っているのでしょう!?」
「.......。」
魄翼が迫り、またそれを弾く。
ユーリの意志とは別に、勝手に攻撃する魄翼は会話中も容赦がない。
「貴女は私を助けようとしている!そして、なにより私が貴女を助けれるようにするために、自身の攻撃を知らせている!」
「っ......。」
「もっと、素直になってください!頼ってください!...貴女の騎士達を!!」
振るわれた魄翼の両腕を、片方は回避し、もう片方は切り払う。
「......助けて....ください....。」
「....!」
「助けてください!!私を、もう、これ以上何かを壊させないで...!」
魄翼による大きな一撃と共に、ユーリはそう叫ぶ。
「....御意に。...私は、貴女を助けるためにここにいるのだから....!」
その一撃を大きく避け、私はそう叫んだ。
「さぁ、行きますよ!!」
まだまだ、私は...私達は戦える!!
=out side=
「っ.....!」
「これは....。」
完全にビルなどが破壊され、荒地となった市街地で、椿は唸る。
「なんて戦いなの...。一撃一撃が砲撃魔法並よ。」
「それを、あの騎士はほぼ一人で凌いでいる...。」
プレシアとリニスが、司のサーチャーによって送られてくる映像を見てそう言う。
「....あれ?」
「どうしたの?ヴィヴィオ。」
そこでヴィヴィオが何かに気付く。
「...あ、この人、サーラさんじゃ...。」
「あれ?知り合いなの?」
ヴィヴィオを代弁するように呟いたトーマの言葉に、葵が聞き返す。
「うん。偶にパパの家に来たりするよ。...そう言えばユーリさん?」
「....ヴィヴィオ、これ以上未来の事は言わないで。」
どんどん未来の事がばれてしまうので、椿がストップをかける。
「(あ、余計気になる所で切っちゃった。)」
しかし、そのストップでは全員が余計に気になってしまうのだった。
「....本当に様子を見ているだけか?」
「当然よ。貴方も見て分かるでしょう?この戦いには割込めない。」
「...確かにそうだな。」
唯一気絶していなかったクロノの言葉に椿はそう返す。
「っ、見つけた!」
「優輝....。」
司は他のサーチャーを操作し、優輝たちの戦いも見つける。
「こっちもこっちで凄まじいわね...。」
「サーチャー越しからでも分かる程の威力の高さ...!」
映像の中では、優輝が緋雪の拳を上手く捌いている。
優輝自身にはあまりダメージはないだろうが、捌く際に相当な衝撃波が発せられている。
「...かやちゃん、今の優ちゃん、どうやってかは知らないけど、霊力と魔力を混ぜ合わせて使っている...。こんなの、体が...!」
「嘘!?優輝!?」
唯一霊力と魔力を細かく感知できる葵の言葉に、椿は驚く。
「優輝君....!」
「(...優輝はさっきから緋雪の攻撃を捌いているだけ。...理由は分かってる。この戦いは、ただ倒すだけでは何も解決できないから、優輝は...!)」
映像から情報を読み取る椿だが、如何せん映像が追い付かない。
司のサーチャーで追いつけない程、縦横無尽に動き回りながら戦闘を行っているからだ。
「....大丈夫...大丈夫だよ...!」
「ヴィヴィオ...?」
「...パパは、負けない...。緋雪お姉ちゃんだって、無事に戻ってくる...!」
...未来ではヴィヴィオにとって優輝たちは家族。
ヴィヴィオは家族として信じているのだ。無事に帰ってくるのを。
「(...私も、信じてるわよ。優輝...!)」
椿もそう願い、司のサーチャーによる映像を見つめた。
=優輝side=
「ぁああああっ!!」
「っぜぁっ!!」
―――ッパァアン!!
シュネーの拳を、片方は受け流し、もう片方は受け止める。
受け止めた音とは思えないような音が、小さな衝撃波と共に発生する。
「ぁあああああ!!」
「っ....!らっ....!」
受け止め、受け流し、受け止め、受け流す。
「(受け止められる...!拮抗...できている...!)」
霊力と魔力を合わせた反則級の身体強化。
それにより、圧倒的だったシュネーとの力の差が、極端に縮まった...!
「っ!レーヴァテイン!!」
「くっ..!....甘いっ!!」
―――ギャ...リィ....!!
蹴りを放たれ、間合いが離される。
その瞬間レーヴァテインで横薙ぎに振るわれる。
...それを僕は、右肘と右膝で挟み、受け止める。
「どうした...!こんなもんか...!?」
「っ....ぁああああっ!!」
「リヒト!」
グローブ状にしていたリヒトを剣に変え、叫びながら振るわれるレーヴァテインを正面から受け止める。
「『...リヒト、大丈夫か?』」
〈『...私は貴方のために作られた矛です。...そして、変わったのは貴方だけではありません。...この程度、強度に問題ありません。』〉
「『はっ....そりゃ、頼もしい...!』」
―――ッギィイイイン!!!
真正面からの斬撃を、リヒトで受け止める。
...あぁ、確かに、これほどの攻撃でびくともしないな、リヒト...!
「こい!シュネー!」
「っ、ぁあああああああああ!!!」
―――ギギギギギギギギギギギギィイン!!!!
互いに剣をぶつけ、弾かれ、相殺し、受け止める。
剣をぶつけ合う度に空気が震える。
チート級の力に、裏技を使った力で対抗する。
剣戟が繰り広げられ、小さな衝撃波が幾度となく発生する。
「(ぐっ....!)」
もちろん、裏技な時点で代償もある。
...体への負担が大きすぎるのだ。それも、常人なら一分ももたないほどだ。
「(だけど、こんな程度で音を上げれるか...!)」
体中が痛い?それがどうした。
体が動かせない訳ではない。...なら、まだ行ける!
「(シュネーはもっと痛かった!もっと苦しかった!僕が死んでしまったばかりに、ずっと悲しんでいた!...だったら、この程度でくたばってたまるか!!)」
僕はシュネーの悲しみを受け止めると誓った。
決して逃げないと...そう決めた!
「ぁああっ!!」
「はぁっ!」
―――ギィイイイン!!!
また、強くぶつける。
代償を払った強化だからか、ちゃんと受け止められる。
「っ....“ツェアシュテールング”!!」
「っ...強化集中!」
自身の一部に魔力が...術式が集中するのが分かる。
その一点を閉じ込めるように集中して強化する。
―――カッ!
「ぐ、うぅ....!!」
「...なんで..なんで、どうして!?どうして壊れないの!?」
術式が発動するのを感じ取る。...だが、僕の体は爆発しない。
確かに、魔力の爆発は起きた。だから体内は傷ついている。
だけど、それは最小限にまで抑えれた。傷だって治癒魔法ですぐ治せる。
「...受け止めるって言ったろ、シュネー...!」
「っ....!」
シュネーの目が見開かれる。
次の瞬間、僕はそれぞれ左右斜め前に防御魔法を張り、飛んできた魔力弾を防ぐ。
「ぎ...!貫け!焔光!!」
〈“Lohen pfeil”〉
防いだ時には既にシュネーは間合いを取っており、弓形態のシャルから矢を射るように炎を纏った砲撃魔法を放ってきた。
「....受け止めろ。アイギス!」
《“Aigis”》
それを僕は十字架に円を重ねたような魔法陣を展開して受け止める。
「(ぐ....!?)」
〈...マスター、リンカーコア、身体、どちらも限界まで20%を切っています。〉
代償で体が痛む。
...リヒトは止めない。リヒトも、シュネーとシャルを止めたいからだ。
「...ここで終われるかよ...!」
救うと決めた。助けると誓った。
あの時果たせなかった約束を、今度こそ果たしたいと願った....!
だから、ここで終わる訳にはいかない...!
「っ、ぁああああああ!!」
「...!ぁっ!!」
―――ギィイイン!!
シュネーが斬りかかってきたのを、リヒトで防ぐ。
「死んでよ!壊れてよ!私の邪魔をしないでよ!!」
「ぐっ...ぁあっ!」
防ぐ、受け止める。体が痛む。気合で耐える...!
シュネーの苦しみはこんなもんじゃなかったんだ...!
「いい加減に...倒れてよ....!」
「....!」
何度も、何度も何度も斬りかかってくるシュネーの顔を見て、僕は目を見開く。
―――泣いていた。
目尻に涙を浮かべ、懇願するように僕に攻撃をする。
...そう、まさにシュネーは“悲しみをぶつけている”のだ。
僕が死んでしまったから。
狂うしかなかったから。
誰にも悲しみを理解してもらえなかったから。
誰にも、助けてもらえなくなってしまったから。
「っ.....!」
「倒れて...!倒れ...て、よぉおお!!!」
「ぐっ....!」
鍔迫り合いになり、その上から僕を吹き飛ばすシュネー。
...やっぱり、力はまだまだシュネーが上か...!
「ぁあああああっ!!」
「っ、はぁっ!!」
―――ギィイイン!!
下にあった海ギリギリで復帰し、攻撃を受け止める。
レーヴァテインが展開されており、その熱で海面が蒸発していく。
「ぐ...!ぐぐ...!」
「っ、ぁああ...!ぁぁああ....!」
押し負けそうになるのを、気合でこらえる。
身体強化の代償で、既に体は限界。...だけど、限界程度では終わらない。
「ぐぅう...!シュネー...!お前の本気を...ぶつけろ!!」
「っ....!」
―――ギィイン!!
一瞬。ほんの一瞬、僕の言葉で力が緩む。
その瞬間に間合いは離れ、僕はリヒトを真上に掲げる。
「....来い、シュネー。僕が、受け止めるから。」
「........。」
僕の言葉に、シュネーは俯いたまま答えない。
「...ホントに、私の悲しみを受け止めてくれる?」
「当たり前だ...!」
「....そっか。」
―――安心したよ。
「っ.....!!?」
ズンッ!と魔力による圧力を感じ取る。
...シュネーの、全開の魔力だ。
「なら、受け取ってよ!私の狂気を...悲しみを!!」
「シュネー....あぁ、来なよ。」
僕も魔力と霊力をリヒトに込める。
それだけじゃない。大気に散らばった魔力もかき集める。
僕もシュネーも、最大まで溜める。そして....!
「“勝利へ導きし王の剣”!!!」
「“狂気に染めし悲しみの紅”ォオオオオオオオ!!!」
金色の極光と、紅色の極光が放たれる。
その二つは拮抗し、その衝撃波で海を吹き飛ばした。
「はぁああああああ!!!」
「ぁあああああああ!!!」
...押されている。僕の魔法が。
...でも、これでいい。この魔法の本領は....。
「っ.....!?」
―――人を導く事だ。
「シュネー...!」
「ぁ...ぅ...!?」
打ち消されるように、シュネーの魔法が消える。
それに固まってしまったシュネーを、僕は抱きしめた。
「っ....!」
「...変わらないな。...いや、転生したから縮んだかな?」
“ムート”として、僕はシュネーにそう言う。
あの日、あの時死んでしまって以来、“ムート”ではなくなっていたからな。
“志導優輝”としてではなく、今は“ムート・メークリヒカイト”でいたい。
「.......。」
「...相変わらず、泣き虫だな。シュネー。いつも、こうやって慰めてたよな?」
「っ....ぅぅ....!」
あれほどの魔力だからか、さしものシュネーも魔力が尽きたらしい。
おまけに、抵抗する気力もないらしく、僕になすがままになっていた。
「...辛かっただろ?悲しかっただろ?....もう、大丈夫だ。」
「っぁ....ムー..ト....。」
言葉を紡ぎながら、僕はシュネーの頭を撫でる。
「...悪かったな、先に死んでしまって。...もう、離れないからな....。」
「ムート...ぅ..ぁあ...ムート....!」
恐る恐ると言った感じで、シュネーが抱きしめ返してくる。
「...存分に泣け。....泣いて、いいぞ。」
「ぅ..うう...うああああああああああああああん!!!!」
僕の胸に顔をうずめるように、シュネーは泣き崩れた。
「寂しかった!苦しかった!ずっと...ずっとずっと、ムートがいなくて...私は...私は....!ああああ...!ああああああ...!」
「........。」
僕はシュネーの言葉を聞きながら、そっと転移魔法を使い、陸まで行って地面に降りる。
「でも...でも!嬉しかった...!また、ムートに会えて....ひっぐ...ぅぅ...私....嬉しかった...!ぐすっ....ぁあああああああ....!!」
「....あぁ、僕もだ。」
泣き続けるシュネーを、僕はあやし続けた。
「ぐすっ....ひぐっ....ぅぅ....。」
「....さぁ、戻ろう。」
ようやく落ち着いてきたので、僕はシュネーの背中を押してそう促す。
「っ......。」
「.....シュネー?」
トン...と、僕を押して距離を取るシュネー。
「....ありがとう、ムート。...私、これで救われたよ...。」
「え?ああ、あの時の約束、果たせなかったからな。」
まだ溢れる涙を拭いながら、シュネーはそう言う。
「...だから...さ、ムート....。」
―――私を...殺して。
「.....え....?」
―――悲しき運命は、もうすぐ終わる....。
後書き
Schwarz säbelhieb…“黒き斬撃”。魔力を纏わせた斬撃。所謂強攻撃的な技。詠唱ありだと威力アップ。
Lohen pfeil…“燃え上がる矢”。炎を纏った強力な砲撃魔法。貫通力も高い。
Aigis…神話にもあるアイギスを模した魔法。ありとあらゆる害のある攻撃を防ぐ。
アォフブリッツェンは古代ベルカの騎士なら一部の人は扱える強力な斬撃魔法です。
なので、サーラも使えます。(シグナムも使えるかも?)
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