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デート・ア・セブン~七つの大罪と美徳~

作者:事の葉
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危険信号と選択

「・・・あ」
狐珀が我が家に到達すると、ふと、士道に預けた上着のことを思い出した・・・
「明日でいいや」
しかし、現在の天候、向かったところで先程の少女のように盛大にコケるのがオチなので、翌日、雨が上がった時にでも貰えばいい、と思い、レインコートを玄関にある服かけにかけ、無駄に広い一軒家のリビングに服を脱ぎ捨て、風呂場に向かう。


「・・・はぁ」
風呂からあがり、ラフな部屋着に着替えるなり、溜息をつく。
「テレビのリモコン・・・」
あまり片付いているとは言えないリビングへ隠れてしまったリモコンを探すべく、机の下、ソファの下、ソファのクッションを開く等、部屋をひっくり返してみたが、見つかる気がしない。
「あー」
何処にしまったか思いだし、スタスタとリビングを後にし、階段を上がって行く。
「あった~」
自室に入り、デスクトップが置いてある黒い机の端に置いてあったリモコンを取るなり、ボタンのない面を頬にスリスリする。
「生活の必需品・・・」
ふふふふと不気味に笑うとリモコンを頭に乗せ、バランスを保ちながら階段を下りて行く。
まるでエスカレーターを下りているのではないかと思うくらい完璧なバランス感覚で一度も落ちることなく、リビングに辿りつくと、頭からリモコンを取り出し、ニュース番組を付け、リモコンを机の上に置く。
『今日、午前11時37分に起こった空間震で、一人の死体が発見されました』
今、やったことを後悔した。あの時は、完全に自我を失っている状態であるが、記憶は鮮明に、自らに飛び散った血飛沫さえも、覚えている。
『現在身元を確認しています』
それと同時に、テレビに今日、狐珀によって起こってしまった惨状が映される。
全体的に、特に運転席部分の損傷が激しい大型トラックをクレーンで持ち上げている。飛び散っていた血は現在も降り続けている豪雨により洗い流され、空は夜のように暗かった。
『続いてのニュースです』
「・・・他あったっけ」
アナウンサーの嬉しそうな声に良いニュースだと気づき、すぐさま番組表を見る。しかし、これといって暇を潰せそうな番組は無く、再放送も全部見ていた。
「・・・」
渋々再放送の謎解き○○バラエティー、イ○○Qを選択し、それをBGMにしながら料理を開始する。
「確かまだあった筈・・・」
ドリアの材料があるのを確認し、外に出しておいても大丈夫なものを一つ一つ出していき、冷蔵庫の隣に置いてあるエプロンや手袋等が入っているボックスから一昨日洗ったばっかの白いエプロンを取り出し、着始めるが、それと同時に携帯がブルルルとバイブを始める。
「・・・」
料理を邪魔するでない、という気持ちで睨みつけながら、発信先を見ることもなく、通話を開始し、耳に当てる
「もしもし」
『あ、狐珀か?』
電話の先から聞きなれた士道の声が聞こえる。
「それ確認する必要ある?」
『念のためだ。んで、こっちに具材ないもんでそっちに食いに行っていい?』
「外食という素晴らしい選択肢」
『却下しまーす。とりあえず行くから』
「・・・」
なんという勝手な男なのだろう、そう思い、はぁと溜息をつきながら携帯を置く。
まぁこんなことも考えて、四人分の両は充分にある。おかわりが必要になったとしても、1回までなら作れる両が入っている。
米を洗い、炊飯ボタンを押し、とろけるチーズを適当にちぎり、昨日の残りのカレーを加熱する。
「・・・まぁいっか」
久しぶりに友人が来るというのは嬉しい・・・が、彼女(?)持ちというのがイラッと来るが、まぁ許してやろう。
慌てると料理の質が落ちるということは、人気の店の店長であった母からよく言われていたので、一個一個丁寧に、しかしある程度スピーディーに済ませて行く。

ある程度準備し終えた後、朝比奈家のインターホンが鳴る。押している間伸び続けるので、ピーーーーーン、ポーーーーーンと長く伸びる。
「・・・はいはい」
子供の頃、このインターホンが楽しくて、十秒以上押し続けたり、逆に短く小刻みにする日もある。そんなことを思い出しながら、エプロンのまま、扉を開ける。
「よぉ」
「・・・」
扉を開けたら、そこには、五河兄妹、夜刀神十香、そして、鳶一折紙がいた。全員別々の傘を開き、恐らく途中で車に水をかけられたであろう十香は、学生服が全てビッチョビチョになっていた。
「・・・まぁどうぞ」
想定外の折紙という新たなる人物に驚きを隠せなかったが、十香が濡れているし、全員も外で話をしたくないだろうから、とりあえず上がらせる。
「キツネ、シャワーは何処だ?」
「あぁ。そこを右」
上がるなり、十香はビショビショの状態のまま、タッタッタと風呂場に向かい、入っていく。勿論、地面に水が落ちない訳もなく、そこには、水の足跡と、その周囲に雨粒が落ちていた。
「すまん」
士道が呆れ混じりに謝るが、いいよ、それだ言い、リビングに入る。
やって来る途中に、レンジで温めるというところまで行ったので、余った時間でリビングを片づけていた為、汚くはない。
「意外と遅かったね」
相変わらず抑揚のない声を発しながら、フカフカソファに座った士道の後ろに手を置く。
「ん?あぁ、途中で鳶一と会ってな。ダメだったか?」
「大丈夫。よく食べるから元から6人分で用意してた」
「誰が食べるんだ?」
「ボク」
一時の間もおかず、狐珀が答えると、苦笑し、テレビに目線を向ける。
「キツネー!」
テレビを見ていた皆の耳に、十香の大声が聞こえる。
「どした~?」
大声を出す気力など元からない狐珀は、聞こえる程度に風呂場に近づく。
「着替えがないぞ!」
「あ~・・・ボクのでいい?」
「うむ」
女子の服を健全な、男子高校生が持っている筈もなく、自室に戻って行く。
「確か・・・」
小さい頃着ていた服がまだ残っていた筈。押し入れの棚を次々と開けていき、ようやく見つけ、再び頭に乗せると、今度はわざと横にぐらぐら揺らしながら階段を下りていく。
「十香~。あげる~」
近くにいようといまいとお構いなしに扉を開けると、頭に乗せた服を、手で持ち、思いっきり投げると、すぐさま、落ちた場所も確認せず、扉を閉める。
「ご飯ご飯ーるるるらー」
台本を棒読みしたような鼻歌を歌いながら、リビングへと入って行く。皆が番組に釘付けになっている中、ふらふらと歩き、リビングまで辿りつく。レンジの残り時間を確認し、大きなあくびを一つする。
「キツネ~後何分~?」
白リボンの妹モードの琴里が顔をキッチンからテレビを見ている狐珀に向ける。
「どっちにしろ十香帰ってこないと食べませーん」
そう言うと、ぶーと頬を膨らまし、テレビに顔を向けた。
と、同時に、リビングの入り口から、頭にバスタオルをかけ、腰まであろうかという夜色の髪を少し濡らした十香がやってくる。先程渡した男服を着て。
「お~全員揃った~」
そう言うと、それを予期したようにレンジがチンという音を立てる。
手に鍋用の手袋をはめ、高熱の大皿を取り出す。所々焦げ目のついたとろっとろのチーズ、そして、その下に隠れたホワイトソース、吸っているだけでもお腹がいっぱいになりそうな程の香り。作った本人がいうのもなんだが、これは相当美味いだろう。
「士道ちょっとどいて」
「ん?あ、おう」
テレビから目線を反らし、後ろに垂直で立っている狐珀を見、足をどかす。
「はい皆さま、特別カレードリアの出来あがりです」
気力のない声と同時に、タオルの上に置かれた白い大皿をテーブルに乗せる。
白いソファから見下ろすだけで、十香はジュルリ・・・とよだれを垂らす。
「・・・じゃぁ十香、手伝って」
「ぬ?何故だ?」
「取り皿と、スプーン。手伝わないと十香だげご飯抜き」
それだけ言うと、驚愕した顔をし、誰かに盗られるのでは・・・とでも思っているのか、1秒ばかしそこから離れなかったが、誰も盗らない、と士道が言うと、十香は士道の前を通り、狐珀の隣へ行く。
「それで、何から手伝えばよいのだ?」
「じゃぁ、あの皿持ってって、あと出来れば配って」
狐珀がご飯茶碗のようなものを指差すと、十香はすぐ分かった、と言い、五つ全てをタワーみたいに乗せ、女子ならではなのであろうバランス感覚で机に置くと、言われた通りに皆の前へ並べる。
「キツネはどこに座るのだ?」
「あ~・・・適当で」
そう言うと、十香は誰も座ってない場所に皿を置き、またスタスタと小走りで狐珀の隣へ向かう。
「他はないか?」
「・・・じゃぁ、誰かがつまみ食いしないように見ておいて。特に琴里」
スプーンを五つ持った狐珀が、金色の眼光を狐珀へと向ける。
そこには、今、まさかの素手でジャガイモを取ろうとしている琴里がいた。ビクッと肩を大きく動かすと、そろ~りと腕を戻していく。
「ぬ、承諾した」
それに何故か敵対心のようなものを生み出した十香が、再び足早に向かうと、士道の前を通り、士道の隣に座ると、ドリアと琴里を目だけ動かし、監視し続けている。
「・・・てい」
その隙につまみ食いしようとしていた折紙の頭に昼間の時よりも軽くチョップを喰らわす。
「・・・バレた」
「一度程度ならおかわり出来るから待って」
そう言うと、つまみぐいをしようとしていた琴里と、よだれを垂らしそうな程待ってくれていた十香の顔がぱぁっと明るくなる。折紙は顔が変わらないのでよく分からないが、少し嬉しいようだ。
「「「いただきます」」」
皆がパチンと手を合わせると同時に、揃って言うと、自らのスプーンで近くの部分を根こそぎ奪っていく。



流石に五人もいると、想像以上に早く減るもので、話をしたりしているので20分程度で一杯目が終了してしまった。
しかし、こんなの想定内。三十分前に、第二号をレンジに入れ、温めておいたのだ。
チンという音を発すると、米粒一つない大きな皿をキッチンに置き、レンジの中から先程よりも大量に入ったこれまた白い先程よりも大きな皿に入ったドリアが机に置かれる・・・と、同時に構えていたスプーンをドリアにつっこみ、琴里と十香、そして折紙が取りあげると、小皿に移し、ある程度冷ましてから口の中に入れる・・・が、1、2秒で冷める訳も無く、口の中でどうにかして熱いのから逃れようとする。しかし、そんなのお構い無く、狐珀は口の中に含む。勿論熱いが、熱くなければドリアではない。そして、モグモグと口を動かし、とろけるチーズとスパイスなカレーが口の中に広がっていき、狐珀の腹を、味覚を満たして行く。



「「「ごちそうさまでした」」」
二皿目が終えた後、皆がパチンと手を合わせる。
「キツネはこんなにも料理が上手かったのだな」
「急いでたから・・・」
「キツネは謙虚なのだ~」
腹がもうパンパンだが、相変わらずいつも通りというか、二人は幸せそうだった。
その中、士道が大皿を持ち上げ、キッチンに持って行くと、洗っていなかった食器も含め洗ってくれた。
と、その時、折紙にちょっと来て、と言われ、ぐいっと腕を引っ張られる。しかし、何故ここまで力が強いのか・・・
「二人しか入れない場所ある?」
「・・・ボクの部屋くらい」
それにそう、と言うと、階段を上がり、狐珀の自室へと入って行く。
「なに?」
狐珀が動じず、首を傾げると、雰囲気で、何か、深刻な話をするのだと悟った。
「朝比奈狐珀、貴方は・・・精霊?」
「・・・」
この一室が、まるで隙間という隙間からどんよりとした空気を流しこまれたように重くなる。
「答えて」
喋ろうとしない狐珀に、念押しをするように折紙が喋る。しかし、狐珀は喋ろうとしない。
「私は今日、空間震が起こったあの場所にいた。その時、精霊と会って、話しかけられた。貴方に」
ふと、狐珀の脳の中に焼きついた、あの無表情な顔がよみがえる。
「・・・」
「最後に聞こえた叫び声は絶対に、貴方の声」
「・・・どこで調べた?」
明らかに先程よりも数トーン下げた声が、少しの怒りを生み出し、聞く。
「それに答える義務はない」
「・・・そうだったね」
「朝比奈狐珀、答えて」
「・・・そうだ・・・と言ったらどうする?」
「ただちに連絡を入れ、AST全員でこの家ごと貴方を消滅させる」
「・・・出来ると思ってるのか?」
その場に烏のような黒い羽根を残し、狐珀は瞬間移動のようにあり得ない速度で地面に座っていた折紙の目の前に現れ、カッと目を見開き、ニタァと笑う。
「出来る。そして、今、貴方を精霊と判断した」
「・・・」
携帯を取り出そうとした折紙の頭を、爪を立てた狐珀の手が覆う。と、次の瞬間、まるで糸の切れた操り人形のように地面に崩れ落ち、携帯を地面に落とした。
「・・・通話中だったか」
落ちた携帯を見るなり、すぐさま電話を切り、手の平に持っていた水晶のように透明なガラスを見る。それは、シャボン玉のように換気の為に開けていた窓から入る風で軽く動く。
「・・・お返し。少し変えたけど」
シャボン玉の中に手を突っ込むと、グチャグチャと気持ち悪い音を立てながら中をかき回してから、折紙の頭の中にシャボン玉を入れる。
すると、折紙はパチクリと目を開き、未だ力の入らないであろう足を、なんとかして動かし、座ってから狐珀を見る。
「何で・・・ここに?」
「食べた後、いきなり倒れたから一番静かな場所に置いてた」
相変わらず何もない声でその人生を左右しかねない嘘がバレることはなく、折紙はそう、と言う。
「うぅ・・・」
頭痛か、頭を抑え、軽く唸る。
「ここで安静にしてて。暇だったらパソコンでも何でも使っていい」
正直言って、変なことを言ったが、別にこの部屋に精霊とバレるものは絶対にない。
「ごめんなさい」
「大丈夫。数分は痛いだろうから」
そう言うと、部屋の電気を付け、扉を閉める。
一つ溜息をつくと、偶然にも気になったのか、上る士道と鉢合わせした。
「あれ?鳶一は?」
「あれから倒れて、今寝てる。邪魔しないように」
「そ、そうか・・・」
鳶一にそんな持病があるなんて、聞いたこともない士道は、狐珀の無表情さに少し疑問を持ったが、寝ているのであれば、邪魔しないのが男というもの。今上って来た階段を下りて行く。
「大丈夫そうだったか?」
「多分ね。傷っぽいのはないと思う」
「いや、そうじゃなくて・・・」
「?」
「・・・なんでもない」
士道が何を言おうとしたかは分からないが、それ程ためらうことなのだろうか?
「あ、そういえば琴里がお前と話したいって」
「うん。分かった」
「それと、家事全般は任せとけ!いつものお返しだ」
「お~凄い」
相変わらず気の抜けた声で褒めるも、それはちゃんと心がこもっているのだと、士道は分かり、心から少し嬉しさが込みあがる。
「遅かったわね」
リビングに入るなり、可愛らしい声が二人をお迎えする。
先程と違い、赤い髪を黒いリボンで括り、口にはチュッパチャップスを含んでいる士道の妹・琴里が仁王立ちをしている。
「遅くないよ」
「うっさいわね。私に意見すんじゃないの」
「なんとも理不尽な妹・・・」
士道にしか聞こえないようにそう言うと、うんうんと心の底から同感した士道は大きく縦に首を振った。
「なに?」
「なんでもない」
「・・・まぁいいわ。狐珀、精霊としての貴方の力の話だから、十香や士道に聞かれたくなければ場所を変えるけど」
いきなり先程の折紙のように深刻な顔をし始める琴里の台詞に、眉間にしわを寄せた。
「・・・ボクの部屋には折紙が寝てるから、元お母さん達の部屋でいい?」
「えぇ」
それだけ言うと、こっちこっちと手を動かし、琴里を後ろに、狐珀は生前、両親の部屋だった場所に案内する。
そこには、関門開きの仏壇がポツリとあるだけで、これといって何か特別なものがある訳ではない。
「・・・ここでいいの?」
「うん」
隣に折紙がいることが不安だが、狐珀は、押し入れにしまっていた座布団を二つ取り出し、一つを琴里に投げると、ある程度距離を置き、座る。何とかキャッチした琴里は、怒る気力も無くなり、座布団を置き、その上に慣れない正座をする。
「で、本題は?」
「貴方の精霊として、調べさせて貰ったわ」
「うん」
「で、貴方の力をある程度予測したのよ」
「ほほう」
興味があるのか、狐珀はあぐらの体制から少し身体を前のめりにした。
「何かを奪う能力・・・合ってる?」
「ピンポン。正解」
一瞬も焦らす事無く、狐珀は正解を告げると、合ってるか合ってないかの不安が一瞬で消えたせいで、少し体制を崩してしまった。
「なんで分かった?」
「今日の映像を解析してみると、狐珀の目の前で弾丸とミサイルは消えたのよ」
「よく分かったね」
そう、あの時、狐珀はミサイルと弾丸を奪っていた。もっと言うと、体内に取り込んでいるのだ。勿論、それは今も狐珀の体内にあるが、体外に出る時にその元の形となるのみで、体内にそのまんま弾丸とミサイルが入っている訳ではない。
「そこで質問よ。貴方のその能力は、物体を持たない・・・いわば記憶とかも奪えるの?」
その通りだと、首肯する。
「それは、精霊の力としても?」
「・・・それは分からない。でも、体力を奪ったりは出来たから、出来ると思う」
一度もやったことのないその考えに、不確定要素しかなかったが、琴里はほっと胸を撫で下ろした。
「そう。その答えを聞きたかったのよ」
「?」
「貴方のその力、平和のために使わない?」 
 

 
後書き
お疲れ様でした~。これから続けて執筆しますんで~・・・あでも、10時からカラオケが・・・フッフッフ。女子とですよ!母さんの大学仲間っすけど。 
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