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戦国異伝

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第二百五十話 信長の先陣その二

「あの地におった様じゃな」
「そうか、飛騨は険しい山ばかり」
「あそこは修行に最適じゃが」
「それだけがおられる理由ではなかったか」
「その様じゃ、それでわしはそのことを知り」
 飛騨にもだ、魔界衆の者達がいたことをだ。
「上様にお伝えした次第じゃ」
「己の務めを果たした」
「そうしたのじゃな」
「新五郎殿や牛助殿と同じく」
「そうじゃ、そもそもその為に美濃に戻った」
 追い出されたということになってというのだ。
「それで入ったがな」
「美濃にはなかったが」
「飛騨にはあった」
「そうであったか」
「うむ、そうであった」
 まさにというのだ。
「あの国にな」
「ふむ、どうやらな」
「魔界衆は色々な国におってな」
「そして蠢いておったのだな」
「そうであった様じゃ」
 まさにとだ、安藤は三人に応えた。
「古来はな」
「それでずっとか」
「今に至るまでか」
「本朝の裏におったか」
「そのことがわかった」
 そうだったとだ、安藤はこのことも言ったのだった。
「わしもな」
「調べてか」
「上様に命じられて」
「そのうえで」
「飛騨の奥の寺の書物にあった」
 そのことが書かれていたというのだ。
「そこで書いておった」
「ふむ、興福寺なり東大寺なりと同じか」
「書き残してくれた先人がおってか」
「それでわかったか」
「そうじゃ、先人達に感謝せねばな」
 安藤は深い心を込めて言った。
「お陰で何かとわかったわ」
「そうじゃな、比叡山の奥にもそうした書があり」
「高野山でも牛助殿が見付けられた」
「本願寺にもあったしな」
「あの者達と戦った高僧の方々も多かった」
 本朝の歴史においてというのだ。
「それで書き残されておったのじゃ」
「そうじゃな、そしてな」
「飛騨のこともわかり」
「そして果心居士殿もおられたのじゃな」 
 このことも納得したのだった、四人衆の者達は。安藤は一度織田家を出てそうしたこともわかったのだった。
 そしてだ、ふとだった。
 本陣でだ、信忠に佐々が言っていた。
「殿、次の戦でです」
「決めるな」
「上様ご自身が囮となり敵を引き寄せられます」
「そしてじゃな」
「そこで我等が攻めまする」
 そうなるというのだ。
「上様は退かれますので」
「島津家の釣り野伏を我等もするか」
「確かにこの策はよいです」
 前田も言って来た。
「敵をこちらの攻める場所まで持って来られますので」
「だからじゃな」
「そうです、かつて上様がされた」
「あの十面埋伏の計か」
「あれもまたです」
「言うならば釣り野伏か」
「そうなります」
 信長が尾張統一の時に使ったあの計もというのだ。 
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