戦国異伝
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第二百四十九話 厳島その十
「何があろうとも」
「そうじゃな」
「はい、あの者達ならば」
「だからじゃ」
「上様ご自身がですな」
「先陣を務める」
「そうされますな」
「ふむ、しかし」
ここで言って来たのは鍋島だった、彼が言うには。
「それがしにしてみれば」
「危ういというのじゃな」
「はい、殿のこともありますから」
彼の主であった龍造寺隆信のことをだ、鍋島は言った。言いながら何とか島津四兄弟の方を見ない様にしていた。
「やはり」
「そうじゃな、しかしな」
「上様は、ですな」
「わかってやっておる」
だからというのだ。
「だからじゃ」
「あえて、ですな」
「先陣を務めるのじゃ」
そうするというのだ。
「わかったな」
「はい、それでは」
鍋島も納得した、そしてだった。
彼も今は沈黙した、信長はさらにだった。
森と池田にだ、こう言った。
「御主達にはな」
「はい、上様と共にですな」
「兵を率い」
「この度も御主達に任せる」
兵を率いての護りはというのだ。
「よいな」
「はい、さすれば」
「お任せ下さい」
「そしてじゃ」
今度は毛利と服部にも声をかけた。
「御主達にもじゃ」
「お任せ下さい」
「この度も」
二人は笑って応えた。
「上様を何としてもです」
「お護りします」
「ではな、そして御主達もじゃ」
蘭丸とだ、幸村と兼続にも言う。
「任せるぞ」
「では我等も」
「先陣として」
「上様と共に戦いまする」
「そういうことでな、さて」
信長は楽しげな笑みを浮かべて言った。
「それで陸で破りな」
「それで終わらねば」
「その時はですな」
「いよいよですな」
「やはり」
「うむ、海じゃ」
そこでというのだ。
「戦うぞ」
「そしてですな」
九鬼が言って来た。
「その海は」
「実は期待しておる」
「あの場所で、ですな」
「全ての決着がつくのならな」
「望むところですな」
「そうじゃ」
まさにとだ、信長はここでも笑って言った。
「壇ノ浦で全てが終わるならな」
「是非共ですな」
「源平の戦があの海で終わった様に」
「我等もですか」
「あの海で終わらせますか」
「全て」
「そうしたいのう、しかしな」
ここでだ、信長は。
茶を飲んでだ、こう言ったのだった。
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