ブリッ子
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第一章
ブリッ子
吉田聖子は同じ高校の女子からだ、よく裏でこんなことを言われていた。
「あざとい?」
「そうよね、あざといわよね」
「昔で言うとブリッ子ね」
「そうよね」
こうだ、顔を顰めさせて言われるのだった。
「何かね」
「可愛い娘ぶって」
「男子とか先輩とか先生の前で」
「何なのよ」
「そういうのむかつくわよね」
「そうそう、むかつくわ」
「何か私あの娘嫌い」
「私もよ」
こうした言葉も出て来た。
「ああした娘ってね」
「生理的に駄目よね」
「相手によってキャラ変える娘ってね」
「どうしてもね」
同じ性別、同じ学年の間では嫌われるというのだ。
「印象最悪」
「好きな音楽とか趣味もそんな感じで」
「女の子女の子っぽいのばっかりで」
「キャラ作り過ぎよ」
「私服だってね」
「ブリッ子が過ぎるっての」
「全くよ」
こうしたことを言っていた、だが。
こうした話は一年の間だった、彼女達が二年になるとだ。
彼女達は今度はだ、悪意のある笑みで陰で話した。
「二年になったらね」
「後輩にはそうはいかないわよ」
「一年の女の子達にはね」
「ブリッ子は演じないでしょ」
「キャラ作らないでしょ」
こう話すのだった。
「そこでばれるわよ」
「地が出るわよ」
「それで後輩の娘達から話題になってね」
「ばれるから」
こう悪意のある笑顔で話すのだった。
「あの娘もそれで終わりね」
「ええ、ブリッ子ってばれるわ」
「いいよね」
こうしたことを話してだ、聖子のことを笑うのだった。だが。
後輩達からもだった、聖子は。
評判がよかった、それでだった。二年生になった彼女達は不思議に思って自分達だけで話をしたのだった。
「あれっ、おかしいわね」
「ええ、あの娘後輩からもね」
「好かれてるわよね」
「慕われてるわ」
そうなっていることを話すのだった。
「何かね」
「おかしいわね」
「ああした娘って普通はね」
「ブリッ子はね」
それこそというのだ。
「年下には嫌われるのに」
「何で好かれるのよ」
「ましてや慕われてるって」
「ちょっとここは後輩の娘達に聞いた方がいいわね」
「そうよね」
こう話してだ、そのうえで。
彼女達は当の後輩達に聖子をどう思っているか聞いた、自分達の悪感情は隠して。
するとだ、後輩の娘達はこう話したのだった。
「はい、吉田先輩いい人ですよ」
「皆に優しくて色々教えてくれて」
「明るくていつも笑顔で」
「絶対に怒らないですし」
「女の子らしいですし」
「可愛い人ですよね」
こう話すのだった。
「いや、とてもです」
「感じいい人ですよね」
「私達あの人好きですよ」
「そうなのね」
後輩達の話を聞いてだ、そしてだった。
そのうえでだ、彼女達はあらためてだった。
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