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カロチャの刺繍

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第二章

「ドイツ人かオーストリア人にしか見えないですよ」
「そっちの違いはあるのかい?」
「どっちも同じゲルマンですからね」
「あまり変わらないよね」
「というか一緒ですね」
「そうだよね」
「ナチスが併合したりしてましたし」
 笑ってだ、レキはこうも言った。
「そこは」
「うん、そうだね」
「ただ、それでもなんですよね」
「僕はアジア系なんだよ」
「紛れもなく」
「名前にそれが出ているね」
「はい、そうですよね」
 レカもそのことは認める。
「確かに」
「そうだね」
「それでも外見は」
「ご先祖が随分混血したせいでね」
「ドイツ系そのものですね」
「そうなってるよ」
「ですね、私はこの通りですけれど」
「君はそうだね」
 レカのその子供にしか見えない外見を見てだ、イシュトヴァーンも言う。
「アジア系に見えるね」
「これで髪の毛の色が黒だったら」
「そのものだね」
「そうですよね」
「うん、それで今回のツアーだけれど」
「日本からの」
「ブタペストからね」
「カルチャに行きますね」
「さて、あそこに行ったら」
 イシュトヴァーンは赤ワインを飲みつつレカに言った。
「いつも通りね」
「あそこに行った時の」
「そうツアーでね」
「お料理とですね」
「それを大司教のね」
「司教座も見てもらいますか」
「いつも通りね」
 こうレカに言うのだった。
「そうしてもらおう」
「わかりました、それじゃあ」
「うん、そうね」
「後は、ですね」
「そうそう、土産ものも買ってもらって」
「本当にいつも通りですね」
「あと君にはね」
 後輩にだ、イシュトヴァーンはさらに言った。
「モデルにもなってもらうよ」
「それもいつも通りですね」
「全てはビジネスだよ」
 赤ワインを楽しみつつだ、イシュトヴァーンは言った。
「あとハンガリーの宣伝」
「その長所のですね」
「ハンガリーはキューブとトカイだけじゃないんだ」
「どっちも買ってもらいますけれどね」
「それでもだよ」
「他にも色々なものがありますからね」
「騎兵も有名だったし」
 第二次世界大戦までだ、ポーランドもそうであったが平地にあるハンガリーは馬がよく育ちその為騎兵が強かったのだ。
「それとね」
「パプリカ」
「いや、それよりも」
「カロチャだからですね」
「あれも見てもらいたいしね」
「そして買ってもらう」
「そう、だから」
 それ故にというのだ。
「カロチャでも頑張ってもらうよ」
「わかりました」
 レカはイシュトヴァーンの倍に勢いでワインを飲みつつ彼に答えた。 
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