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おぢばにおかえり

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第二十五話 思わぬ再会その五

「そうだったわ。親睦の練り合いだったわ」
「練り合いって?」
「要するに皆で色々と話し合うことよ」
 この練り合いという言葉もおみちの言葉です。英語で言うとミーティングになると思います。
「こう言えばわかるかしら」
「お菓子とかお茶とかジュースを口に入れながらですね」
「ええ、そうよ」
 ですから結構楽しかったりします。お菓子は偉大です。
「お菓子だけれど」
「チョコレートとかドーナツとかですか?やっぱり」
「ドーナツはまあ」
 出る時と出ない時があるような。出て来るのはやっぱりあの駅前のミスタードーナツのあれです。おぢばでドーナツといえばあそこです。
「今日はあるかしら」
「あったら嬉しいですね」
「そうね。ってよく知ってるじゃない」
「ドーナツ好きなんですよ」
 どうやら結構甘党の子らしいです。
「実は」
「ふうん、私と一緒ね」
「あっ、それは有り難いですね」
「何で有り難いのよ」
「ってことはあれじゃないですか」
 明るいですけれど随分と手前勝手なことを言い出しました。
「先輩と一緒にいたらお菓子をおごってもらえるってことで」
「はい!?」
 思わず聞き返してしまいました。
「今何て言ったのよ」
「だから。先輩と一緒にいたらお菓子食べ放題だなって」
「そんなわけないでしょっ」
 またしてもりっぷくです。八重歯が出てしまったのがわかります。
「何でそうなるのよ。どういう考えしたらそんなふうになっちゃうのよ」
「まあ自然に」
「あっきれた。物凄い思考回路ね」 
 本気で呆れました。今のには。
「そんなことはないから安心しなさい」
「けれどドーナツ好きですよね」
「ええ、それはね」
 これについては異論はありません。
「大好きよ。本当にね」
「僕あとソフトやクレープや回転焼きも好きなんですよ」
「結構おぢば向きね」
 どれもおぢばのお店に多いです。私もどれも大好きです。
「阿波野君の舌って」
「そうなんですか」
「結構何でも食べる方?」
「女の子には五月蝿いですけれど」
「そういうことは聞いてないから」
 このお気楽なペースに今一つ以上についていけないものも感じてはいます。
「とにかく。何でも食べるのね」
「はい、とりあえず何でも」
「じゃあやっていけるかしら」
 腕を組んで考えながら述べました。
「おぢばで」
「全然平気ですけれど」
「まずは食べ物だからね」
 これは何でも言えると思います。まずは何か食べないといけませんしそれが合うにこしたことはないです。どうやらこの子はこれに関しては合格っぽいです。
「やっぱり」
「で、お菓子ですけれど」
「ああ、それね」
「何が出るんですか?一体」
「まあ色々」
 こう答えることしかできませんでした。
「色々出るわよ」
「色々ですか」
「正直部屋に入るまで何が出るかわからないわよ」
「わからないってことはわかりました」
 何か天才バカボンみたいな返事でした。話を聞いていて私がバカボンのお母さんみたいな気がするのはきっと気のせいでしょう。そう思いたいです。
「じゃあ行きますか」
「ええ。それにしても」
 ふう、と溜息を出してしまいました。
「君みたいな子が同じ奥華なんてね」
「宜しく御願いしますね」
「御願いされるわ。全く」
 こんなやり取りをしながら皆での顔合わせの練り合いに入りました。それにしてもこの阿波野君の調子のいいことといったら。何なんでしょうか。


第二十五話   完


                                    2008・9・18
  
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