戦国異伝
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第二百四十九話 厳島その五
「まさかな」
「尾張一国を瞬く間に統一され」
「天下に雄飛され」
「今に至りますな」
「思いも寄らなかったわ」
「ですな、それがしなぞです」
羽柴がここで言うことはというと。
「上様にお仕えして厩の番からです」
「いきなり侍大将だったな」
「それにしてもらい」
「今は大名じゃな」
「はい、大身の」
こう柴田に応える。
「この通り」
「二十年の間にな」
「まこと夢の様です」
「そうじゃな、しかしじゃ」
「大名であるからこそ」
「それも何十万石ものな」
それ故にとだ、柴田はまたこのことを羽柴に言うのだった。
「それならより慎め」
「その行いを」
「御主は剽軽に過ぎる」
「ははは、今も尚」
「そこは全く変わらぬのう」
二十年前からというのだ。
「御主とはその頃からの付き合いじゃが」
「思えば長いですな」
「二十年じゃからな」
「しかしその間にですな」
ここでだ、羽柴はこうも言ったのだった。
「我等はここまで至りました」
「上様が天下を一つにされてな」
「そしてです」
「魔界衆を滅ぼすか」
「いよいよ」
「そうであるな、確かにのう」
柴田もしみじみとして言うことだった。
「この二十年、色々あったわ」
「全くですな」
「織田家がここまでなるとは」
「夢の様ですな」
「そうじゃな」
「その夢を夢で終わらせぬ為に」
明智が生真面目な顔で言って来た。
「魔界衆を滅ぼしましょう」
「御主もそれでじゃな」
「はい、操られた雪辱を」
こう柴田に応えた、明智もまた。
「晴らします」
「そうじゃな」
「あの屈辱忘れられませぬ」
その目を燃え上がらせてだ、明智はこうも言った。
「それ故に」
「あの者達を討つな」
「完全に」
「わしも同じじゃ、長く天下を脅かしてきた者達ならば」
「討たずにはですな」
「いられぬ」
到底という言葉だった。
「奸賊共はな」
「そうじゃ、ここで討つぞ」
佐久間も言う。
「高野山で調べたしな」
「都でもな」
林も続く。
「そうしたからにはな」
「是非共な」
「魔界衆を倒そうぞ」
「次の戦でな」
「しかし。まさかと思うが」
九鬼は眉を顰めさせ怪訝な顔で述べた、彼も織田家の重臣であり一団の中にいるのだ。青い衣の一団のその中に。
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