アイドルになるには
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5部分:第五章
第五章
その合格通知を見てだ。母はだ。
妙に納得した顔になってだ。こう娘に言った。
「よかったけれどね」
「けれどって。何か引っ掛かる言い方だけれど」
「あんた、多分体力買われたから」
「体力?」
「そう、ルックスや歌じゃないから」
それはよくわかることだった。母だからこそ。
「まあそれでも合格は合格ね」
「私も晴れてアイドルなのね」
「頑張りなさい。これは第一歩よ」
アイドルになるだ。それだというのだ。
「大変なのはこれからだから。けれど」
「けれどなのね」
「あんたなら何があっても大丈夫でしょ」
ここでもだ。娘の体力を考えて言うのだった。
「それこそ魔界都市の中でも生きられるでしょ」
「魔界都市って。そういう小説あったわよね」
「あったわ。とにかくあんたなら大丈夫だから」
「よくわからないけれどアイドルとしてやっていけるんなら」
彩奈は能天気に笑って述べた。
「私頑張るわね」
「ええ、頑張りなさい」
ここでは温かい笑顔で言う母だった。
「お母さんもお父さんも応援するからね」
「応援してくれるの」
「当たり前でしょ」
こうだ。彩奈に言うのである。
「アイドルなのよ、アイドル」
「アイドルだからなの」
「そう、アイドルだからよ」
母は笑顔で娘に話すのだった。
「アイドルはもうね。天使なのよ」
「天使なの?」
「そうよ。だったら応援せずにはいられないわよ」
こうだ。目を輝かせて話すのである。
「わかったわね。それじゃあね」
「それじゃあなの」
「そうよ。だから目指すのはね」
目をさらに輝かせてだ。娘に話す。
「松田聖子ちゃんよ」
「聖子さんなの」
「それか中森明菜ちゃんか」
「物凄いトップアイドルなんだけれど」
二人共だ。まさに伝説と言っていい存在だ。
それになれとだ。娘にハッパをかけて言うのである。
「なれる訳ないじゃない」
「なろうと思えばなれるわよ」
「なろうと思えばなの」
「そう、だから空を見なさい」
青空だ。見事なまでに晴れ渡った。
その雲一つ青空を娘にも見る様に言って。そのうえでの言葉は。
「あの一際輝く星があるわね」
「青空に?」
「青空でも星はあるのよ」
明るいから見えないだけだ。科学の授業でも習うことだ。
「その星こそがね」
「お母さん巨人嫌いじゃないの?」
「巨人!?北朝鮮と同じよ」
つまり究極の独裁主義にあるというのだ。
「お父さんもお母さんも言ってるでしょ。巨人だけは応援したら駄目よ」
「私横浜ファンだから」
彩奈はこのことは素っ気無く返した。
「巨人なんか嫌いだから」
「それはいいことよ」
ちなみのこの母親と父親は日本ハムファンだ。それぞれ。
「とにかくよ。その一際輝く星がね」
「アイドルの星なのね」
「その星を目指して駆け上がりなさい」
そして今度言う言葉は。
「果てしないアイドル坂をね」
「今度は未完に終わりそうね」
こんな話をしてだった。二人は何時の間にか出て来ていた庭を後にしてだ。家の中に入ったのだった。
何はともあれ彼女はアイドルになった。そのマネージャーは喜多村さんになった。
喜多村さんは親切でしかもできるマネージャーだった。その彼女のマネージングでだ。彩奈は確実にアイドルとしての資質を身に着けていきテレビやラジオ、グラビアで活躍する様になっていた。特に。
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