おぢばにおかえり
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第二十五話 思わぬ再会その一
思わぬ再会
三年生の時間がはじまってまずは担任の先生と副担任の先生がわかりました。クラスの皆は男の子も女の子も知ってる子ばかりなので特に何もありませんでした。
こうして三年生の学園生活が無事はじまりました。筈でした。少なくとも奥華の詰所で天理高校生の顔合わせがあるまでは。
奥華大教会では所属しているそれぞれの教会にいる天理高校の生徒は時々集まって色々と何かしたりします。大抵は詰所でお菓子を一緒に食べながら話をするだけですけれど。今日はそれのはじめての会合ということで皆の顔合わせをするということになりました。
それでまずは詰所に行くと詰所の人達に笑顔で声をかけてもらいました。
「こんにちは、千里ちゃん」
「はい、こんにちは」
やっぱり詰所は落ち着きます。もう完全に私の第二の家です。入り口の受付にはいつも通り詰所の人達がおられます。どなたも天理教の半被を着ておられます。
「もう三年だったっけ」
「はい、そうなんですよ」
無意識のうちににこにことなりながら言葉を返します。ロビーにはまだ誰もいません。
「長いようで短いですね」
「そうだね。今日はあれだよね」
「はい、天高生の顔合わせです」
「そうそう。今年は男の子が一人いるみたいだよ」
「一年生ですか」
今の二年生は三人でそのうち二人が女の子です。私達三年は二人でもう一人が男の子。女の子の方が多いです。
「そうだよ。一年生は二人だけれどね」
「ですか」
「何でもあれなんだって。実家が奈良にあって自宅から通っていて」
「自宅生ですか」
「うん。まあうちの教会で自宅生って珍しいけれどね」
「そうですね。それは確かに」
地元が大阪や岐阜、それに広島なので天理高校に入る場合はどうしても寮になります。私もそれは同じで東寮に入ってもう三年目です。
「それでどんな子ですか?」
「それがねえ」
ところがここで受付の方は苦笑いをされたうえで首を傾げられました。
「僕もよく知らないんだよ」
「御存知ないですか」
「何でも結構明るい子らしいけれどね」
「明るいんですか」
「天理教には高校から入ったらしくてね。知ってるのはこれ位なんだよ」
「高校からですか」
ここであの入学式の時のいい加減な子を思い出しました。よくもまああれだけいい加減に生きていられるものだと感心してしまったあの子を。
「そうだよ。だからね」
「あとは会ってみてからですか」
「けれど悪い子じゃないらしいね」
こうも言われました。
「詰所にもまだ一回か二回しか来ていないけれどね」
「まだまだよくわからないんですね」
「背は高いね」
それはかなり羨ましいです。
「千里ちゃんとは二十五センチ以上違うよ」
「じゃあ見上げちゃいますね」
「そうなるね。それにしても千里ちゃんも」
今度は私が見られました。足の爪先から頭の天辺まで一通り。それからまた言われました。
「結局大きくならなかったね」
「何でそんなこと言うんですか」
「いや、その彼が大きいからね」
結局背のことは言われます。学校でも寮でもここでも。私にとって小さいということは何処に行ってもついて回るみたいです。不本意なことに。
「ちょっと思ったんだけれど」
「努力はしましたけれど」
ついつい言ってしまいました。
「それでも。結局」
「伸びなかったってことかあ」
「遺伝ですかね、やっぱり」
少し溜息が出てしまいます。
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