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黒を纏う聖堂騎士団員

作者:櫻木可憐
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27.母の想い

「愚かなる人の子よ。
人が望むのが死だからこそ、望みを叶えるが我の役目。
それを人の分際でありながら拒むというのか。
貴様らだけで多数の人の望みを捨てるか」

エイトは青い鳥の姿をした神 エリスを眺めました。
情報通り美しい神です。
ただ神だから偉いだろ、とありがち態度がちょっとウザイ。
法皇のククールがそんな言葉に耳を貸すわけもなく、冷たい目で神を見ます。
今にもマダンテをぶちかましそうなゼシカにヤンガスが怯えてます。

「聞きたいんですけど」

神にあっさり質問をかますエイト。
どんなゲームもあっさり神に質問しないぞ。
あんたらラプソーンに質問したか?
してないだろ!!

「貴方、人でありながら神に質問などいい度胸がいいな」

「はい。
これでも竜と人の子で、サザンビークの血筋が混じっていますし。
ラプソーンもクロノス、ゼシカのマダンテ、ドラゴンソウル、かぶとわりで倒しましたし。
勇気なら民家のタル、ツボ破壊、タンスあさりでつけましたから。」

「おいエイト!!オレの技なくないか!?
まあタンバリン要員だったんだが。」

はいはい。
ククールは放置しましょう。

「死を酔拝する宗教にクロノスが混ざり込んだ理由です。
と、いうかなんでクロノスなんです?
封印をしたのはクロノスではないでしょ?」

「賢いやつだな。
封印した人の子は、自分の血筋に己の魔力と封印魔法と私を受け継がせたのだ。
封印魔法は受け継がせるたびに弱まるので維持する魔力まで継承させる必要があった。
そうして孫や娘に継承しながら持続させていたのだ。
それがあの宗教に紛れ込んだようだな。
つまらん。本当につまらん生き物だ。」

「・・・・・・」

エイトは振り返りマルチェロを見ました。
女と向かい合ったまま、動く気配はありません。
と、思うと女から口を開いたのです。
それを見たエイトは戦いに集中しました。
聞いてはいけないように感じたからです。

「あなた、マルチェロね。
私より多少若いぐらいね。クロノスには父親みたいな感じかしら」

違います。彼女いわく兄だそうです。
マルチェロは何も言いません。

「私が、憎い?クロノスを殺した私が憎い?
母の分際でありながら子の命を左右したから。」

「ふん。
子にしてみての始めの不幸は母を選べないことだ。
私ならあんな両親、闇から闇に葬り去るがな」

「あなた、どうして法皇になろうとしたの・・・・・・
国に攻めこんで独裁政治をしてしまえばよかったんじゃあ・・・・・・」

あなた、いいこと言いますね。
本当に言いますね。
それ言ったらDQストーリー否定してませんか?

「彼女は殺人は自己満足だと言ったわ。
でもね、人の行動原理は全て自己満足なのよ。
私がクロノスを手放したのもそう。
あの宗教にいたら殺されてしまうから。
あの時、生まれた子を殺す勇気なんて私にはなかったわ。
だから捨てたの。手放したの。
死ぬかもしれないのに、手放したの・・・
わがままで身勝手な私のせい。
死を酔拝するより大事なものを見つけたのよ」

「私にそんな母などいなかった。
いたら私を捨て勝手に死を選ばないだろうな。」

「・・・ならあなたに子がいたら?」

「なるほど。
法皇暗殺の指名手配犯の私などいない方が子供のためだな。
死を選ぶだろうな。
言われてみれば母が生きていたら、私を養子に取る話などあがりもしなかったな。」

「そう・・・・・・

宗教内でエリスを持つ子がマイエラにいると知らせが入り、それを殺す役を決めていたの。
これも私の身勝手な考え。
私以外の誰にもクロノスを殺させたくはなかったのよ。
だから来たの。助ける気はなかったわ。
追手から逃げるぐらいなら死なせたい。
他の信者より先に、ね。
でもあなたみたいな人がいるなら託せばよかったわ。
ごめんなさい、私が悪いの。」

マルチェロは理解できませんでした。
母がいないせいか、子へ対する考え方が理解できないのです。
ただ、自分は母に想われていたのかもしれないと思うとマルチェロは、なんだか今までを申し訳なく感じるのです。

「マルチェロ・・・これが私にできる償いよ。
エリスを封印するにはクロノスの封印魔法を外した際の全ての魔力がいるわ。
でも今、それはない。」

そういうとマルチェロの耳元で何かを囁きました。
消え入りそうなか細い声で。
しっかり聞いたマルチェロは、はっきり女に話しました。

「マダム、活用します。
代わりに条件があります。よろしいですか」

「・・・・・・」

「この世界がこれからどうなろうと、自ら死ぬことだけはお止めください。
クロノスが小さな頃から見てきました。
男と混ざる生活から少し女性の思考には弱い面がありますが、
優しい子というのは事実です。
そんなクロノスがあなたが死ぬことを喜んだりなど・・・しない。」

それを聞いた女は涙を流しながら頷きました。


はやぶさの剣を握るかつての聖堂騎士団員、戦場に立つ。 
 

 
後書き
マルチェロの口調が途中変わったのは・・・
まあ解釈できるわ!!って方はともかく、
変わったときにやっとマルチェロは女をクロノスの母として認めたのです。
自分の子を殺すやつを母として認めるには時間がいりますよね。 
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