ほね・骨 ・Bone!!~【30万人の骸骨が、異世界に移住した結果がこの有様だよ!】
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プロローグ①「現実はクソゲー」
地上から遥か深い地底。
そこには無数のトラップを張り巡らした迷宮がある。
だが、今は、死者と生者が剣・魔法・毒ガスなど殺し合う地獄の戦場に成り果てていた。
(馬鹿なっ!馬鹿なっ!馬鹿なぁー!こんな事があっていいはずがない!)
エンシェントリッチのワルキュラは、護衛の吸血鬼姉妹と一緒に走りながら焦っていた。
難攻不落で有名だったはずの大地下城塞『アカンドラ』がありえない手段で陥落しちゃったのだ。
ワルキュラのアカンドラは全千階層。水攻めに対抗できるように排水設備完備。
秘密の通路を張り巡らせ、侵入してきた外敵を一方的に奇襲して各個撃破できる。
不利になったら後退して態勢を立て直し、敵に消耗を強いる。
そんな硫黄島の地下要塞の上位互換バージョンな場所だから、米軍でも攻略不可能だろと自慢できるレベルの素晴らしい地下城塞。
狭い通路は物量という概念を無意味にする、はずだった。
(あんな手段を使うとかっ!あいつら人間か!?)
ワルキュラに敵対する連中が、本当にとんでもない手段を取ったのだ。
まず第百階層までを占拠。その後にトンネルを魔法で掘って、水素爆弾を運搬してそこで起爆。
最初に内蔵された原子爆弾が核分裂起こして爆発。その圧力で水素同士が核融合引き起こす。
つまり、広島に投下された原子爆弾の千倍以上の威力があると言われるエネルギーが地底で炸裂した。
そのせいでワルキュラの軍勢は、20万人が綺麗さっぱり蒸発。
千階層中、九百階層まで使い物にならなくなった。
(水爆を作るとか現代人チートすぎる!
原発より遥かに作るの簡単だけど、現代人やばい!)
さらに瓦礫と化したアカンドラの上層を、敵軍が魔法で穴を掘り、攻略を続行。
そこらへんにいる異世界人達を無理やり徴兵して
『逃げたら家族を苦しめて殺す』と脅して、一家の大黒柱なお父さんやお兄さん達を地下城塞へと投入するというソ連軍真っ青な手段を取ったのである。
無理やり兵士にされたお父さん達の数。ざっと一千万人以上。その背後で督戦隊の真似事をしているゲスが十万人。
それを迎撃する側のワルキュラの部下十万人。
兵力差百倍。
相手は損害度外視で、絶対防衛ラインを突破し、着々と地下城塞を攻略しつつある……無数のお父さん達を死体にして。
そんな鬼畜行為を行ったゲス達の魔の手が、彼の背後から迫ろうとしている。
「待てぇー!ワルキュラー!逃げるなぁー!」
「お前を殺せばゲームから開放されるんだっ!だから死ね!ここで死ね!」
「お前のせいで何人の人間が死んだと思っているんだ!水素爆弾で死ねば良かったのに!」
(異世界人をNPC(ノンプレイヤーキャラ)だと思い込んで使い潰した貴様らが言って良いセリフじゃないだろ!?)
地下城塞に投入されたお父さん達は生きていたとしても、遭難して餓死寸前の状態で取り残されている事間違いなし。
生き残っても水素爆弾は放射能を撒き散らしているから、被爆しているはず。健康的な生活を取り戻す事はできない。
ワルキュラは卑劣すぎるゲスどもの悪行に返事した。
「死ぬのは貴様らだっ!外道どもっ!」
逃げ続けたワルキュラは一度振り向き、MPを一気に大量消費。魔法を解き放つ。
「暗黒渦(ブラック・ホール)!」
人間達の中央に、真っ暗な渦が広がる。
その穴は次々と数十人の人間を飲み込み、超重力で圧縮して潰して、自身も空間から消え去った。
だが、殺しても殺しても人間達は次から次へと、この階層へと降りてきて。ワルキュラを殺すべく神聖属性魔法を雨のごとく乱射する。
「「神聖波(ジャスティス・フレア)!」」
アンデッドが受けたら、HPを一気に削りかねない。膨大な光の雨。
もう少しでワルキュラの元に届こうとした瞬間、彼を護衛していた双子の吸血鬼姉妹が身を投げ出した。
「ま、待て――」
光が二人の少女を焼き尽くす。
骨の一欠片も残らない。残るのは思い出のみ。
(また、守れなかったっ……!俺はっ……!なんて無力なんだっ……!)
この世界で巡り会えた五人の素敵な女の子。これで全て死んだ事になる。
ワルキュラは涙が出ない空洞の眼窩を真っ赤に光らせ、更に地下の階層へと向けて逃げ出した。
今すぐ、仇を取ってやりたがったが、魔法使いはMP(マジック・ポイント)が命。
逃げながら魔力の回復を待たないといけない。
(くそっ!くそっ!くそっ!
プラチナとルビーまで死んでしまった!これで俺は一人だ!ゲームの皮を被った異世界でっ!)
~~~~~~
全ての始まりは一つのゲームだった。
ノーライフ・オンライン。通称『ノー・オン』
天才と謳われた鳳凰院博士が作り上げた体感型VRMMOだと、日本政府とマスコミ達は言っていた。
自由度も豊富。魔法あり、エルフあり、
電脳世界はここまで進化したのだと……
(違う。ノー・オンの舞台は本物の異世界だ。電子上の世界じゃない)
このゲームの一番の特徴は、ヘルメット型の専用機器を使って、ゲームの中に入り込んだかのような没入感を味わう事ができる。
現実としか思えない山、青空、城、大草原をプレイヤー達は駆け巡り、その壮大さに感動。
専門家達は『現実とゲームの区別が付かなくなりますねぇ』と苦言を呈した。
(現実の肉体から幽体離脱して、異世界の肉体に憑依しているから、現実と思うのは当たり前だ。
異世界だって現実なのだから)
しかも、全く新しい技術にも関わらず、自由度が高く、冒険者・商人・海賊・オークなど、どんなプレーも可能な事が大きな評判を呼んだ。
専用機器が五十万円以上するのに予約が殺到。
瞬く間にプレイヤーの数は108万人を超え、ゲームの世界も108に増やされ、日本を支える巨大産業として多くの企業がスポンサーとなった。
巨額の予算を思う存分に使ったおかげで、プレイヤーは家どころか、都市や船を作る事も出来るようになったし、NPC達は自分の意志を持ち、ゲームの世界を現実の世界だと思い込んで生活し始め、今ではプレイヤー達が『人工知能にも人間同様の人権を与えるべき!』と、国会の前でデモ活動すらしている。
(嘘だ。NPCは自由意思を持つ生物だ。
自分で考える事ができる完全な人工知能なんてものは俺は知らない。
嬉しかったら笑ったり、辛かったら泣いたりできる。一人の存在なんだ)
プレイヤー達は、自分の意識は脳にあると思い込み、専用機器で魂を異世界へと飛ばされ、ゲーム感覚で殺し合いを繰り返し
『この痛覚設定何とかならないのかよ。現実みたいでマジ痛ぇ』と愚痴った。
触覚、味覚、聴覚、視覚、嗅覚を制限する必要があると、真面目に議論されている。
(お前らアホか!?生身の肉体でモンスターと殺し合いしたら痛くて当然だろう!?)
最初から最後まで嘘で塗り固められたオンラインゲーム。
それがノー・オンの正体。
だが、ゲームの皮を被っていた頃はまだマシだった。
死んでも復活できる魔法があったし、犯罪行為を行えば裁くガードがそこら中にいて秩序は保たれていたのだ。
全てが崩れたのは西暦2199年2月14日。バレンタインの日に、歴史の教科書に残る悲劇が起きた。
~~~~~~~~~~
深い闇が広がる夜の海。
そこで裸の白い骸骨が居た。隣に銀髪が美しい吸血鬼ルビーがいる。
「さぁ!泳ぐぞ!ルビー!」
「あ、あのワルキュラ様?」
その声に右隣を見たワルキュラ。
ルビーは青色のビキニの水着を着ている。ロリ娘なのに豊満な胸。ロリなのに巨乳という魅力を見事に発揮していた。
肌は吸血鬼だから真っ白で美しく、親衛隊の長なのにオドオドして不安そうな所が……実にワルキュラの好みだったのである。
(うほ、素敵なロリ巨乳。
死んで、生きた骨になったけど、俺って幸せ者すぎる)
「ワルキュラ様って、身体に骨しかないから……海に入ったら沈みっぱなしですよ?
泳ぐのは無理なような……?」
残酷な真実をルビーが突きつけてきた。
骨は水に浮かばない。
夜の海で泳いだり出来ないのだ。
出来るのはせいぜい、海底をゆっくり散歩するくらいだ。当然、ルビーと一緒にイチャイチャできない。
「……俺には海を泳ぐ権利がない。そういう事か……っ!
よく考えたら、手も骨だから、ルビーと水かけ遊びも出来ないっ……!?」
落ち込んだ白い骸骨。慌てたルビーはアイテムボックスから紫色の線香を取り出して、炎の魔法で火をつける。
ラベンダーの良い香りがして、ワルキュラの心が癒された。
「ワ、ワルキュラ様;っ!ほらっ!美味しい美味しい特製線香ですよ!
一緒に海底を歩いたりできませんけど、浜辺で砂の城とかつくりませんか?
手が骨でも、手袋を嵌めれば、水かけ遊びできますよ?」
甲斐甲斐しく世話してくれる巨乳な美少女がいる。
その事実だけでワルキュラは元気になれた。アンデッドだからエッチィ事なんて全くできないが心は男。
素敵な女の子が居たら、心がドキドキして充実感って奴を感じる。
浜辺で釣りを楽しんでいるプレイヤー達が、鬱陶しそうにワルキュラを見るくらいに、今の彼は幸せ絶頂期。
「ルビー」
「はい、なんでしょうか?」
「……俺は幸せ者だ。
ルビーは食事できない俺のために特製線香作ってくれるし。
プラチナは軍団の運営をやってくれるし……お前たちと出会えて良かった」
今の自分は骨なのに幸せすぎた。地球で全てを失ったワルキュラにとって、この異世界は幸せが詰まっている。
ルビーも、顔を少し真っ赤に染めて嬉しそうだ。
「僕も幸せですよ。ワルキュラ様に助けて貰わなかったら、お姉ちゃんと一緒に火炙りにされて灰にな――」
『諸君、私は鳳凰院ガイだ』
ルビーの言葉が遮られた。重い声の主は、遥か天空を覆い尽くす巨大な頭蓋骨。
これはイベントお知らせの時に使う立体映像だ。
『突然だが、これからノーライフ・オンラインは絶望未来仕様へと移行する。
ゲーム内で死ねば、現実の君達の脳は壊される。そんな仕様にした。
僧侶魔法の復活魔法は削除。
治安を守るガードを全消去。
ログアウトボタンの削除。
つまり、死んだらおしまい。そういう仕様だ。
君達には、全てが自由になった異世界を本気で楽しんでもらいたい』
不安を感じたルビーは慌てて、近くに待機していた護衛達を集めた。
全員がLV500超えの吸血鬼。どんな事態が発生しても対応できるはずだ。
そして、その予感は見事に的中する。
『なに、私も鬼じゃない。
君達にはこれから殺し合いをしてもらうが、このデスゲームから開放される条件はちゃんと設けてある。
……ゲーム内時間で一ヶ月。その期間内に各世界にいる大魔王を全て倒せ。
そうすれば君達は地球に帰れる。
ただし、大魔王を倒せなかったら罰ゲームだ』
これを見ている108人の大魔王、108万人のプレイヤー、この異世界に住まう全ての存在が天空を見つめ、続きの言葉を待った。
「罰ゲームは強制ゲームオーバー。
つまり、地球にある君達の身体は死ぬ。
当然、ゲームクリア前に死んでも死ぬ。どうかね?わかりやすいだろう?』
釣り客……プレイヤー達は、大魔王と鳳凰院の方を交互にチラチラと見た。
まだ彼らは判断に迷っている。
だって、こんな昔のラノベみたいな展開はありえない。常識的に判断したらそう判断できる。
鳳凰院博士の悪ふざけの可能性が濃厚だ。
しかし、プレイヤーの一人が腕についている装置を色々と操作して「ログアウトボタンが本当にないぞ!」と叫んだ事で、場の雰囲気が険悪なものになる。
『これはゲームではない。本物のリアルなデスゲームだ。
ゲーム内の一日は現実で1秒になるように設定した。だから政府も助けに来ない。
生き残るには、大魔王を全て倒すしかない』
追い打ちをかけるように、天空の頭蓋骨が言葉を述べた。
場にいるプレイヤー達は五十名。彼らは不安を解消するために集まってくる。
ルビー達はワルキュラを含めても六名少し。プレイヤー達に先手を取られたら、勝てたとしても犠牲者が出る。
「あ、あんた大魔王だよな?」「責任取れよ!」「ガードがいないって事はエッチな事しても――」
先手を打ったのは勿論。
「ブラックホール!」
この世界を本物だと理解しているワルキュラだった。
プレイヤー達の半分が、黒い穴に吸い込まれて圧縮されて消え去る。
理不尽な展開に思考を停止するプレイヤー達。そこを追撃するかのように
「全員殺せ!」
ワルキュラの叫びが場に響き渡った。
これを切っ掛けに、一方的すぎる殺し合いが開始。
戦いは先手を取ったワルキュラ側の圧倒的な優位に進む。
プレイヤー達は問答無用で殺され、即席パーティだから連携も取れない。
一人でも逃がしたら居場所がばれて大変。だから、ワルキュラは逃げた相手も容赦なく殺した。
だが、戦いに絶対はない。
護衛の吸血鬼の一人が剣で刺されてしまった。しかも心臓をズブリっと貫いた上に、剣は銀製。
見事に吸血鬼の弱点を複数突いた攻撃としか言いようがない。
「闇剣(ブラック・ブレード)!」
護衛が殺された直後、ワルキュラが真っ黒な剣を魔法で作り出し、プレイヤーを切り裂いて仇を取った。
十秒後には残ったプレイヤーも全て動かない死体となり果て、浜辺にザァザァという波の規則的な音が鳴り響く。
ルビーは死んだ吸血鬼の元へと駆けつけ、蘇生魔法を試みる。
胸元へと両手を当て呪文を呟く。
だが、やはりというべきか――
「……ワルキュラ様。蘇生魔法を使ったはずなのに……こ、効果がありません」
「なんだとっ……?
そんな馬鹿な事があるか!!アトリが開発したオリジナルの魔法だぞ!」
それから三度。蘇生魔法を使った。しかし効果が出ない。死体は死体のままだ。
プレイヤー達が使う僧侶魔法とは全く異なる蘇生魔法。それすらも使用停止対象に入っていた。そういう事になる。
今までは死んでも蘇生魔法で復活できた。
だが、これからは死んだらそのまんま。
現実の地球と変わらない。ノー・オンはそんなクソゲーと化してしまった。
なら、ワルキュラがやるべき事は決まっている。
ここはプレイヤー達がウヨウヨいる危険な場所。
ばれたら包囲されて殺される。ロリ巨乳で可愛いルビーなんて殺される前に何をされるか分かったもんではない。
こんな所でグダグダ迷っている暇はないのだ。
「ルビー……拠点に戻るぞ。
急いで戻る必要がある。残念だが死体はそこに置いていけ」
「で、でも、この状態で放置したらサリーの魂が成仏して、蘇生不可能になっちゃいますよ?」
魂が成仏したら蘇生そのものが不可能になる。
それは僧侶用の蘇生魔法でも、オリジナルの蘇生魔法でも共通したルールだ。
しかし、ワルキュラにとって今は一分が千金に値する。少しでも拠点に戻るのが遅れたら、その分だけ死体が増える。
生きて動く骨が、死んだ骨になったりするのだ。
「サ、サリーは『この仕事が終わったら、結婚するんだ』って自慢してて、僕の一番古い親友で――」
「……ルビー。
お前の役職はなんだ?」
「きゅ、吸血鬼親衛隊の隊長です!」
「なら、やるべき事はわかっているな?」
「は、はい!ワルキュラ様を護衛する事です!」
「なら、死体は置いていけ」
十秒ほどの沈黙の後。ルビーは歯を食いしばって俯いたまま
「……はい、僕は仕事を全うします」
死んでも復活できる。そんな優しい環境に居たルビーにとって泣きたくなる。そんな日になってしまった。
……三十日後、優しいルビーも自分の仕事を全うして遺体も残らない死に方をした。
ワルキュラを守るために、姉のプラチナと一緒に盾となり、その人生を終えたのだ。
108人いる大魔王、108万人いたプレイヤーのほとんどが争いで死に果て、地底の奥深くで最後の決戦が始まろうとしている。
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この話のコメントまとめ+作者の感想
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【内政チート】「大砲より軽くて運搬しやすい ロケットで軍事チート」By15世紀のインド
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【小説家になろう】 内政物「幼児年齢の主人公に内政やらせれば、難易度がアップして便利!」
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ワルキュラ(´・ω・`)他の大魔王を見捨てて籠城するぞ!!
異世界人を強制徴兵できる分、プレイヤーの方が野戦で有利すぎる!
大魔王(´・ω・`)(´・ω・`)連携取れるような訓練詰んでいないし、別々に行動した方が良いですよねー
プレイヤー (´・ω・`)水爆作った!小型化する時間なかったから、現地まで運搬して起爆するタイプ!
大魔王(´・ω・`)(´・ω・`)ふぁっ!?
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