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京料理

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2部分:第二章


第二章

 そしてだ。そのうえでだった。彼はだ。
 仕事は真面目にした。しかし京都の食べ物は一切口にしなかった。全てコンビニやチェーン店のだ。何処でも同じ味の食べ物を食べるのだった。しかしである。
 仕事の合間にだ。京都人の後輩に対してだ。こう言うのであった。
「気のせいか京都の店は何処も味が薄いだぎゃ」
「そうなんですか?」
「そうだぎゃ。薄いだぎゃ」
 こうだ。憮然とした顔で言うのである。
「あの濃い、名古屋の味はないだぎゃ」
「ここ京都ですさかい」
 後輩はこう平然と返すのだった。
「そりゃ味も」
「薄いだぎゃ?」
「だから薄いでっか?」
 後輩は自覚していないようだった。京都のその味にだ。
「そんなに」
「薄いだぎゃ。味噌も醤油も弱いだぎゃ」
 それが問題だというのである。
「全く。こんな味じゃ名古屋じゃ潰れるだぎゃ」
「何か大阪支社の人と同じこと言いますなあ」
「大阪の連中もそう言うだぎゃ」
「はい。味が薄うおますと。大阪の言葉で」
「その気持ちよくわかるだぎゃ」
 彼は大阪の側に立って言った。
「全くここでもだぎゃ」
「居酒屋でもですか?」
「何だぎゃ、酒も料理も味が薄いぎゃ」
 彼は今居酒屋のチェーン店にいる。そこの木造の内装のカウンターに二人並んで座って飲み食いをしているのである。周りは学生やサラリーマン達がいて賑やかに京都弁で騒いでいる。
 その中でだ。彼はビールを飲みイカゲソを食べている。そのイカゲソを食べながらの言葉だ。
「塩まで弱いぎゃ」
「塩?これが普通ですよ」
「普通じゃないぎゃ。だから味が薄いぎゃ」
「チェーン店だから何処も同じやないですか?」
「それでもここは京都だぎゃ」
 これが問題だった。チェーン店でも京都にあるのだ。
「それじゃあやっぱりだぎゃ」
「味が薄いって言いはりますか」
「京都人が食べるから京都人の舌に合わせるぎゃ」
 当然と言えば当然だ。マクドナルドも日本の店とアメリカの店では味が違う。それどころかハンバーガーの大きさまで違うのだ。
「だから名古屋人にはどうしても合わないぎゃ」
「その辺り辛いでっか」
「好きになれないぎゃ」
 こう言うのである。そのうえで飲み食いしていた。不機嫌な顔で。
 だが仕事はこなしていきだ。商談やそういったものを無事に済ませていった。そしてそれが終わってからだ。彼は契約先の会社の重役の人にだ。こう誘われたのである。
「仕事も終わりましたし」
「はい、お疲れ様でした」
「どうでっか?これから」
 その重役の人は初老の恰幅のいい人だ。質のいいスーツを着ている。
 その人がだ。こう彼に言ってきたのだ。
「歌舞伎でも」
「歌舞伎ですか」
「はい。今日は片岡三兄弟が揃うんですわ」
 こうだ。笑いながら裕貴に話すのである。
「だから。どうでっか?」
「そうですね。それなら」
 相手先の誘いならだ。どうするべきかは彼もわかっていた。
 それでだ。笑顔でこう答えたのである。
「御願いします」
「はい、そやったら行きましょう」
 重役の人は言いながら裕貴を見た。彼の横にいる後輩もだ。
 そのうえでだ。重役の人はまた二人に言った。
「ええ舞台になりますで、今日は」
「それでは」
「ご一緒させて下さい」
 こうしてだった。彼は後輩と共にだ。
 
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