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真田十勇士

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巻ノ三十四 十勇士その三

「それで御主達にもな」
「ううむ、しかし」
「我等は特に」
「まあそう言うでない」
 信之は微笑んでだ、彼等にさらに言った。
「くれるものは貰うことじゃ」
「それが論功ですか」
「そうしたものでありますか」
「そうじゃ、確かに御主達は無欲じゃ」
「それでもじゃ」
 彼等の主である幸村も言う。
「貰っておけ拙者にしてもな」
「殿もですか」
「頂くのですか」
「この度の戦は上田を守る戦であった」
 このこともだ、幸村は言った。
「それで手に入れた領地はないがな」
「それでもですか」
「論功は行われ」
「そのうえで」
「御主達にも褒美がある」
 間違いなくというのだ。
「だから受けよ、それもな」
「左様ですか」
「それでは」
「我等も」
「その様にな、では今はな」
 今宵はというのだ。
「飲もうぞ」
「はい、酒と食いものはです」
「遠慮しませぬ」
「では今宵は」
「たらふく飲ませてもらいます」
 こちらはいいと言ってだった、彼等は酒も食いものも楽しんだ。そしてその次の日の論功の場においてだった。
 昌幸はまずは直臣達への論功を行いだ、次に信之と彼の家臣達に行いだった。それから幸村にはだった。
「御主は今は二千石だが」
「はい」
「この度の働きを見るとじゃ」
 まさにというのだ。
「四千石に相応しい」
「では」
「石高を倍にする」
「四千石に」
「そうじゃ、そしてじゃ」
 そのうえでとだ、昌幸は今度は十人を見て言った。
「御主達にもな」
「大殿、申し訳ありませぬが」
「我等は禄は今のままで充分です」
「銭も宝もいりませぬ」
「ですからそうしたものは」
「ははは、そう言うと思っておったわ」
 昌幸は彼等の言葉を受けてまずは顔を崩して笑った。
 そしてだ、彼等にあらためてこう言ったのだった。
「しかしじゃ」
「それでもですか」
「そうじゃ、そうしたものがいらぬのならな」
 褒美のそれがというのだ。
「他のものをやろう」
「と、いいますと」
「それは」
「御主達に名をやろう」
 それを褒美にするというのだ。
「それでどうじゃ」
「我等にですか」
「名を下さるのですか」
「そうじゃ、御主達はこの度まさに一騎当千の働きをした」
 このことをだ、昌幸も言うのだった。 
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