FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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女子力の極み?
前書き
ナインハルトが予想とは全然違かった(笑)
シルエットの感じからてっきりゴッツゴツの奴を想像してたのに、まさかの優男だったとは・・・
「う~ん・・・」
俺は今ギルドのリクエストボードの前で腕を組んで頭を悩ませている。理由は単純、これといった依頼が見当たらないからだ。
「シリル!!ちょっといい?」
「??はい!!」
すると、突然カウンターにいるミラさんから名前を呼ばれたのでそちらに駆けていく。
「いい仕事見つかった?」
「それがさっぱり・・・」
レオンとの再戦に向けて討伐系の依頼に行こうと思っていたのだが、あいにくナツさんやガジルさんが手当たり次第に持っていってしまったらしく、近場での討伐の依頼がなかったのだ。なぜ近場がいいかというと、歩いていけば乗り物酔いをしなくて済むからである。
今日はウェンディが住んでいる『フェアリーヒルズ』の大掃除でいないため、トロイアをかけてくれる人がいない。だから歩いていける範囲の場所に行きたかったんだけど・・・他の乗り物酔いする人たちも同じことを考えていたみたいで、馬車で数時間といったものしか残っていなかったのだ。
「ならちょうどよかったわ」
「へ?」
俺がいけそうな仕事がないことに対して笑顔でそういうミラさん。いや、ミラさんはいつも笑顔だからこれが普段通りなのかな?
「今日ね、フェアリーヒルズで大掃除があるよ」
「昨日ウェンディから聞きましたよ」
フェアリーヒルズに住んでる皆さんで天気のいい今日を狙って掃除をするのは前々から決まっていたらしい。そのせいでウェンディがいないから仕事にいけなくて困ってるんだよ。
「もしよかったら、シリルも一緒に来ない?」
「・・・はい?」
一瞬ミラさんが何を言っているのかわからなかった。どういうこと?
「お掃除の後にみんなに料理を作ろうと思ってるのよ。その時にシリルにも手伝ってもらおうかなぁと思って」
説明してもらうと徐々に事情を理解できてくる。要は皆さんにお疲れさまでしたという意味を込めて料理を振る舞うのを手伝ってほしいということなのだろう。ただ、それだと一つ問題がある。
「俺、男なんですけど・・・入っていいんですか?」
フェアリーヒルズは妖精の尻尾の女子寮だ。そんなところに男である俺が入るなんて、果たして許される行為なのだろうか?
「大丈夫よ!!シリル男に見えないし!!」
「さらっと爆弾投下してきますね!?」
皆さんからよく言われるからなんとなく予想してたけど、まさか笑顔でそんなこと言われるなんて思ってませんでしたよ!!
「それにエルザにも許可は取ってあるから」
「い・・・いつの間に・・・」
「昨日よ♪」
ウインクしながら得意気な様子のミラさん。なんと彼女は昨日のうちに俺がフェアリーヒルズに入っていいか許可を取っていたらしい。俺が仕事に行ってたらどうするつもりだったんだよこの人・・・
「私はもう少しギルドにいるけど、シリルは先にフェアリーヒルズに行っててちょうだい」
「は・・・はい」
今日はいけそうな仕事もなかったし、ウェンディにも会えるからよしとするか。そう考えながら俺は、ギルドのすぐ近くにある女子寮『フェアリーヒルズ』へと向かったのだった。
フェアリーヒルズにて・・・
「お邪魔しま~す」
二階建ての見た目が綺麗な建物。前までは資金不足だったはずのギルドが保有していたそれは、本当に同じギルドが管理しているのかと疑ってしまうほどに真新しさを保っていた。
「お?ちょうどいいところに来たな」
寮の玄関を開けて中に入る。すると、俺の声に気付いたエルザさんがヒョコッと顔を覗かせる。
「あれ?シリル。どうしたの?」
「あんた、ここ女子寮よ?」
「やっと自覚が出てきたの~?」
「セシリー殴るよ?」
エルザさんが誰に話しかけたのか気になったウェンディたちが同じようにこちらを覗く。どうやら彼女たちは事情を聞かされていなかったらしく、俺がフェアリーヒルズにやって来たことに驚いているようだった。
「ミラさんに手伝いを頼まれたもんでね」
「あ!!そうなんだ」
先程バカにしてきたセシリーの頬を引っ張りながら簡潔にやって来た理由を話し、ウェンディもそれに納得した。すると、何やら寮の中が騒がしいことに気付く。
「あの・・・なんだか騒がしいみたいですけど、どうしたんですか?」
「あぁ。ジュビアの思い込みが発動してな」
声が聞こえる方を見つめているエルザさんとウェンディたち。俺も一体何をしているのかと見てみると、そこには何かを言い争っているルーシィさんとジュビアさんがいた。
「二人は何を言い争ってるの?」
「実はね・・・」
なぜ彼女たちが何かを言い合っているのかをウェンディに訪ねてみると、ことの発端はルーシィさんが見た夢にあったらしい。なんでもミスフェアリーガールズで彼女が一位を取り、賞金をもらう夢を見たのだとか。
だが実際にはそんなものやってないからお金は手に入らないため、家賃の支払いや生活費が足りないやらで困っていると嘆いていたんだとか。そんな彼女を慰めようと実際にミスフェアリーガールズが開かれたら誰が一位を取るかでルーシィさんを誉めていたところ、カナさんがグレイさんみたいなクールぶってる人も落とせるとかいったもんでジュビアさんが激怒。前々から恋敵と思っていたルーシィさんに対抗意識を燃やしているのだとか・・・
「こうなったら仕方ありません!!ルーシィに女子力勝負を申し込みます!!負けた方かわグレイ様から手を引くのです!!」
「はぁ!?」
すると、ジュビアさんがいきなりそんな提案をルーシィさんに突きつけた。それを聞いたルーシィさんはかなり困惑している様子・・・
「じょ・・・女子力で勝負ってどういう・・・」
「面白い話になってきたね」
ルーシィさんの後ろでそういったのは片手に一升瓶を持ったカナさん。彼女が何を思い付いたのかわからないルーシィさんは、キョトンとしている。
「その話、私が引き取るよ!!今ここで第一回!!ルーシィvs.ジュビア!!女子力対決を開催するよ!!」
「はぁ!?」
なんと彼女が思い付いたのはジュビアさんとルーシィさんが互いの女子力を競い合うというものだった。
「いきなり何言い出すのカナ!?」
「だから女子力対決よ。グレイへの愛を証明するため戦うジュビアとその恋敵!!ルーシィが女子力を競うんだ!!」
「ちょっとカナ!?」
カナさんの提案を聞いて燃えているジュビアさんと巻き込まれた格好のルーシィさん。カナさんはそこまで言うと、俺たちの方を指さす。
「そして審査員は私たち七人!!」
「「はい!?」」
なんと二人の戦いをジャッチする役を担うことになってしまった俺たち。いきなり話を振られたために俺とウェンディは変な声を出してしまった。
「女子力勝負か・・・」
「なかなか興味深いな」
突然指名されたために困惑していた俺たちとは違い、レビィさんとエルザさんはこの戦いに興味津々。
「皆さん、なんだか乗り気みたいだね」
「うちらしいといえばうちらしいけどね」
その場の勢いに任せて行動する。これこそが妖精の尻尾のいいところだと思う。同時に悪いところでもあるのだけどね。だが、この期に及んでいまだにこの戦いに納得できない人がいた。
「ここは誤解を解いて掃除再開でしょ!?何変なこと始めようとしてんのよ!!」
二人の対決を提案したカナさんに迫るルーシィさん。彼女はこの対決にはあまり乗り気ではないみたいだ。
「今のジュビアを説得できると思う?」
彼女に捲し立てられているカナさんは冷静な表情でジュビアさんを見るように言う。彼女たちの目に映ったのはグレイさんを奪い取るために絶対に勝つと鬼の形相で意気込んでいる水の魔導士の姿だった。
「やりたいようにさせてガスを抜くのが一番だって」
「でも・・・」
「大丈夫。悪いようにはしないから」
もっともなことを言われて反撃の言葉が見つからないルーシィさん。カナさんはそんな彼女を見て下品な笑いを浮かべながらお酒を一口口に含む。あの人自分が楽しみたいだけなんじゃないだろうか?
「仕方ないな~。ちょっとだけ合わせてみよっかな・・・」
半ば諦め気味にそう呟くのは星霊魔導士。しかし女子力対決って、具体的に何をするのだろうか。
「それでは試合を始めるよ!!二人には、このレビィの部屋で掃除対決をしてもらうよ!!」
ある部屋の前に立って試合内容を伝えるカナさん。それにいち早く反応したのはもちろんその部屋の持ち主である少女。
「私の部屋で掃除対決?」
なぜ自分の部屋が選ばれたのか全くわからないレビィさん。それを聞いたカナさんは不敵な笑みを浮かべる。
「いつも身の回りを綺麗にするのはレディーの基本」
バタンッと音を立てて開かれる女子寮の一室。さぞかし綺麗に整頓されているのかと思いきや、そこに広がっていたのは言葉を失うほどに本が散乱している光景だった。
「勝負の舞台作りのためにちょうどよかったので、レビィの本の山を崩しておいたんだ!!」
「ひどいよカナ!!」
涙を浮かばせ非情な仕打ちに怒る本大好き少女。一瞬レビィさんの部屋ってこんなに汚いのかと引いてしまったのが申し訳なく思えてくる。
「いつもはちゃんと綺麗に整頓されてるんだよ」
「それならよかった」
ウェンディにコソッと耳打ちされ認識を改める。しかしすごい本の量だな。一体どれだけあるのだろうか?
「では勝負スタート!!」
その声と共に勢いよく部屋に飛び込む二人の女性。ルールは簡単、部屋をカーテンで二分してそれぞれのエリアをくまなく掃除。その結果を審査員が判断するそうだ。
そしてしばらくすると、気だるそうな声でルーシィさんが終了したことを伝えるので俺たちがどのようになったかを見に行く。
「「「「オオッ!!」」」」
それを見て声を上げるのはチビッ子魔導士とその相棒である猫たち。制限時間を楽々クリアし、なおかつ完璧に整頓されている部屋を見て感心せずにはいられなかったのだ。
「さすがはルーシィ!!早速高い女子力を披露だ!!」
「一人暮らししてるからね。てかこれ、言うほど女子力と関係ないような」
どこからかマイクを取り出し実況し始めるカナさん。対してルーシィさんは、全くやる気がないようで、早く終われと言わんばかりの態度を取っていた。
「ジュビアも終わりました!!」
「オオッ!?ジュビアも早いね!!」
その直後、カーテン一つ隣で同様の作業をしていたジュビアさんも終了を告げる。彼女の掃除スキルはルーシィさんに匹敵するのか否か、ドキドキしながらカーテンを開ける。
「「「「「・・・」」」」」
開けた瞬間、審査員全員が沈黙した。理由は単純、部屋中グレイさんだらけになっていたからだ。
「ねぇシリル・・・これって・・・」
「いや・・・なんとなく予想はできてた」
グレイさんのことが大好きなジュビアさん。彼女なら自分の部屋も彼の写真やらで埋め尽くされているはず。それが彼女の水準になっているのだから、部屋を掃除することになったらこうなるのはなんとなく目に見えていた。
「「「「「ルーシィ(さん)に一票!!」」」」」
「どうして!?」
無論この対決は満場一致でルーシィさんの勝利。ジュビアさんは心底納得いかない様子で唇を噛んでいるけど、むしろよくこれで勝てると思いましたよね・・・
「とにかくこれで終わりね。勝ってもグレイはいらないけど」
「何を言ってるんだい?」
ようやくこの展開から解放されると大きく背伸びをするルーシィさん。しかし、そんな彼女を見てカナさんは不思議そうな顔をする。
「では第二戦行ってみよう!!」
「第二戦!?」
予想外の展開に顔面蒼白のルーシィさん。俺ももういいのではないかと思っていたので彼女の反応には賛同できる。
「これで終わりじゃないの!?」
「えー?こういうのは五戦三勝制でしょ?」
「五戦三勝制!?」
しかも次でルーシィさんが勝ってもまだ終わりではないらしい。それを聞いたジュビアさんはまだ巻き返せるのだとわかると、次こそはと意気込んでいる様子だった。
「次の種目は・・・料理対決!!」
戦いの舞台はキッチンへと移される。ギルドの女性が誰でも使えるようにと作られたそれは、広さもあり、二人で料理をするのにも十分に思えるものだった。
「まずは胃袋をつかめ!!っていう格言からわかるように、男は料理の上手い女に弱い!!だよねシリル!!」
「は!!はい!!」
この中で唯一の男性ということで名前を呼ばれたのだろうが、いきなり話のことだったので上ずった声が出てしまった。その声に隣にいるセシリーとシャルルが苦笑している。
「つまり!!料理の腕前で女子力を競うのはいわば必然!!」
「確かに」
「定番だな」
カナさんの言葉にうなずくウェンディとエルザさん。そして二人は開始の合図と共にすぐさま料理へと取り掛かる。
「ちなみにシリルはどんな料理が好きなのかな?」
「え?」
ルーシィさんたちの料理が出来上がるまでは暇な俺たち。だからなのか、カナさんがどこからともなく取り出したマイクを俺の口元へと持ってくる。
「えっと・・・ハンバーグとか?」
化猫の宿にいた頃、ウェンディが作ってくれたハンバーグが美味しくてハマっていた時期があったのを思い出す。実質ギルドには二人しかいなかったから、二人とも料理が作れないとどうしようもないこともあり、俺もウェンディもそこそこ料理は得意な方だと思う。
「ほほぉ、子供らしくて可愛いねぇ。誰が作ってくれるとより美味しいのかな?」
「!!」
ニヤニヤと笑みを浮かべるカナさん。彼女は間違いなく正解の目星がついているのだろうが、あえて聞いてくるあたり本当に嫌らしい人だ。
「「ふんぬ!!」」
俺が答えようか迷っていると、目の前のテーブルに戦っている二人の料理が勢いよく置かれる。それを見て助かったと思っている俺はまだまだ子供なのだろうか。
「これまた早い!!二人ほぼ同時だね」
話題が女子力対決へと戻り、全員の視線が彼女たちが作った料理へと注がれる。今はまだ何を作ったのか秘密にするために、蓋がされているが、二人の自信満々の顔を見る限り、相当手の込んだものなのではないだろうか。
「オープン!!」
蓋を開ける両者。ルーシィさんの作ったのはパスタ。対するジュビアさんは紅茶!!・・・ん?
「「「「「紅茶?」」」」」
「はい」
料理対決なのに出てきたのは何の変哲もない紅茶。審査員全員の頭が思考を停止していると、ジュビアさんが胸を張り、この料理にした理由を述べる。
「アールグレイです。グレイ様が入っている料理が、パスタに負けるわけありません」
ドヤ顔で勝利を確信する水の魔導士。だが、当然これは料理ではないため、またしても満場一致でルーシィさんの勝利となった。
「第三戦は・・・セクシーポーズ対決!!」
ところ変わってフェアリーヒルズ内のある一室へとやって来た俺たち。そこには対決のために水着姿になっているルーシィさんとジュビアさんがいる。
「自分の魅力を上手にアピールできるのも女子力の基本!!同じ条件の下、ポーズだけで二人の魅力を比較するね」
まさかこんなところで水着姿になるとは思ってなかったルーシィさんは顔を赤らめ胸の前で手をクロスしている。対するジュビアさんは、もう後がないとあってか、かなり不安そうな表情をしていた。
「ジュビアさん・・・大丈夫かな?」
「ちょっと無理かもね・・・」
この戦いに破れたらグレイさんをルーシィさんに奪われてしまう。そのことだけが頭の中を過っているようで、さっきまでの様子から一転しているジュビアさん。そんな彼女を見ていると、こちらまで不安な気持ちになってくるから不思議だ。
「それでいいのか?」
すると突然、腕組みをしたエルザさんがルーシィさんにそんなことを言い出す。
「エルザさん?」
「どうしたんですか?」
あまりにも唐突にそんなことを言い出すので何が起きたのかわからなかったウェンディと俺は、訝しげに彼女の顔を見上げる。だが、緋色の女性の表情は真剣そのものだった。
「もしかして、わざと負けようとか思ってないだろうな?
ジュビアがあそこまで真剣にこの勝負に挑んでいるのは、ルーシィにならグレイを奪われるかもしれないと、お前の力を恐れ、そして認めているからだ」
どうやらルーシィさんは不安に押し潰されそうになっているジュビアさんのために残りの戦いを負けてあげようと考えていたらしい。だけど、それを感じ取ったエルザさんが彼女を説得しているみたいだ。
「女として真剣に勝負を挑んでくる彼女から、お前は逃げるつもりか?」
「・・・そう・・・だよね。これはあたしとジュビアの真剣勝負。勝負から逃げるのは妖精の尻尾じゃないよね」
先程までのやる気のなさから一転し、気合いに満ちている顔のルーシィさん。
「見せてあげるジュビア。『週ソラ』のグラビア経験者の・・・女子力ってものを!!」
そう言うと次々とポーズを決めていくルーシィさん。それを見ていた俺たちは、自身の魅力を完璧に表現していく彼女に見入っている。
「ハッ!!」
そこまできて気付いた。これは隣からグーパンチが飛んでくるパターンなのではないかと。心配になり隣の少女に目を向ける。てっきり怒ってこちらを見ているかと思われた藍髪の少女。だが、彼女はどこから取り出したのかわからないカメラを構えて目の前のモデルを休むことなく撮影している。
「すごいです!!ルーシィさん輝いてます!!」
「落ち着いてウェンディ」
「なんで泣いてるの~?」
眩しすぎる星霊魔導士に感動しているウェンディ。同性である彼女までここまでの反応をしているのだから、俺のこの反応もまともなのだと思い、少しホッとしている。
「ルーシィがあそこまでやった以上、あんたも全力で対抗すべきだよ!!」
「え!?全力って・・・」
戸惑いを捨てたルーシィさんはもはや女子力の化身。あれに勝利しグレイさんを手にするには、それ以上のポーズを取らなければならない。
それを聞いたジュビアさんは恥ずかしそうに顔を赤くさせる。彼女は普段は薄着に滅多にならないし、グラビア撮影もルーシィさんとは違ってしたことがないだろうから、不馴れなところがあるだろう。
この第三戦は完全にルーシィさん有利!!そう思っていたのに、ここからまさかのどんでん返しが起こることになる。
「ジュ・・・ジュビア・・・恥ずかしい・・・でもグレイ様のためなら、これくらい我慢します/////」
審査員から目を反らしながらもゆっくりとポーズを決めるジュビアさん。ルーシィさんに比べればポーズ自体はなんてことのない平凡なもの。しかし、恥ずかしさに押し潰されそうになりながらも、大好きな人のために頑張るその姿は、この場にいる全てのものを魅了していた。
「「「「「これはジュビアの勝ちだな」」」」」
「一瞬ドキッとしました」
「すごいです、ジュビアさん」
満場一致で勝利したのはジュビアさん。ウェンディと俺はその色っぽさに思わず顔を赤らめてしまう。それだけ彼女は頑張ったと思う。ただ、それに納得のいかないものが一人だけいた。
「ちょっと!!真剣に戦えと言っておいてその判定は何!?」
エルザさんへと詰め寄るルーシィさん。ちなみにジュビアさんはいまだに恥ずかしさで胸元を押さえて立ち上がらずにいた。
「すまないなルーシィ。だかお前は大事なものを忘れていたんだ。恥じらい・・・という感情をな」
「人を痴女みたいに言わないで!!」
男性を虜にする・・・グラビアアイドル的なものでいえばルーシィさんの方が勝っていたかもしれない。でもこれは女子力対決。いかに女性らしいかが鍵となるのである。
「次の勝負は初デートの服装です!!」
いまだに納得できていないルーシィさん。しかし結果は結果。彼女は次こそ試合を決めるべくお題に最適と思われる服装へと着替えてくる。
「おおっ!?これは大胆な服装!!」
まず最初に姿を現したのは現在王手をかけている金髪の女性。彼女の服装はふくよかな胸元を大きく露出させたミニスカの猫耳ファッション。露出も高めで男性から見ればかなり嬉しい服装であるといえる。だけど・・・
「初デートな服装ではないですよね?」
「何~?その猫耳」
「えぇ!?」
俺とセシリーが自信満々のルーシィさんの心をへし折ってみせる。普通に可愛いし見てる分にはいいと思う。でも初デートで、街を歩くとなると話は別だろう。もっと露出を押さえたシンプルかつ女性らしさを醸し出す服装の方がいいと思う。向こうの人みたいに。
「ルーシィ。あいつを見てみろ」
「え・・・」
エルザさんの指さす先を見つめるルーシィさん。そこには対戦者であるジュビアさんが、テーマに沿った服装で立っていた。
「清純さをアピールする白・・・露出は少なめだが体のラインはしっかり強調した控えめセクシー。実にデートらしい服装じゃないか!!」
胸元の大きく開いた白のワンピースに身を包んだジュビアさん。その姿はどこかのお嬢様とも取れるような、華やかさが滲み出ていた。
「グレイ様、早く来ないかなー」
「デート待ちの彼女というイメージまで完璧だ!!」
デートが待ち遠しくて早めに待ち合わせ場所に来た彼女をイメージしているジュビアさん。それを見た女性陣は大盛り上がりだ。
「ジュビアさん!!可愛いです!!」
「今回もジュビアの勝ちだな」
「やりましたグレイ様!!」
二連敗からの二連勝で五分に戻したジュビアさん。その脇では追い付かれた格好のルーシィさんがガッカリと項垂れていた。
「次の勝負で決まるね。どちらの女子力が高いのかが」
カナさんのその一言で負けたくないというスイッチが入ったのか、ジュビアさんと睨み合うルーシィさん。二人の間で見えない火花が散っているように周りは感じていた。
「雰囲気もいい感じで盛り上がってきたところで、最後の種目は―――」
ついに戦いを決する種目が発表される。そんなタイミングで、思いもよらない来訪者がやって来た。
「こんにちは!ジュビアいる?」
玄関からやって来たのは銀色の髪をした女性、ミラさん。
「ミラさん」
「どうしたんですか?」
「ジュビアへの伝言を頼まれてね」
ミラさんはどうやらジュビアさんへ何か言付けを預かってきたらしく、姿が見えないので彼女の住んでいるフェアリーヒルズまで探しに来たらしい。
「ジュビアなら今宿敵との最後の戦いに入ろうとさるところだよ。悪いけど後にして」
名前を呼ばれているにも関わらずルーシィさんと睨み合ったままのジュビアさん。どうやら気合いが入りすぎているようで、ミラさんの呼び掛けなど耳に届いていないようだ。
「そう?なら仕方ないわね。グレイからの呼び出しなんだけど・・・仕事の依頼をジュビアと一緒に・・・とか思ったみたいだけど」
ミラさんが困ったように手を頬に当ててそう言う。すると、さっきまで自らを呼ぶ声に反応していなかったこの女性の体がわずかに揺れた。
「じゃあシリル。振り回して悪いんだけど、ジュビアの代わりに―――」
同じ水属性の魔法を操る俺にグレイさんと一緒に仕事に行くようにと言おうとしたのだろう。ミラさんがこちらを向くと、その後ろをスキップしながら通りすぎていく一つの影が目に入る。
「待っててくださいグレイ様ぁ!!」
勢いよく扉を開けてフェアリーヒルズからギルドへと駆けていくジュビアさん。ルーシィさんとの決着など頭から抜け落ち、お花畑をランランと走っていくかのようなその後ろ姿を見ながら、取り残されたルーシィさんは唖然としていた。
「・・・大掃除、終わらせようか」
「そうだね・・・」
その場にいた全員が予想できなかった戦いの結末。やる気になったところでそれを削がれてしまったルーシィさんの目が死んでいたのが、妙に俺の印象に残っていた。
それからしばらくして、フェアリーヒルズの大掃除が終わると、ウェンディたちは汗を流すために大浴場へと向かったのだった。
「シリル!これ並べておいて!!」
「了解で~す」
ミラさんから盛り付けされた料理を渡され、それをテーブルへと並べていく。元々俺はミラさんの手伝いで来たのだが、ただ黙って見ているのもなんだったので掃除も一緒に手伝ったのだ。そして彼女たちがお風呂に入っている間に、労いの料理を作ることにしたのだった。
「これで一先ず終わりですか?」
「うん。じゃあ私、エルザたち呼んでくるから」
エプロンを脱ぐと大浴場へと小走りに向かうミラさん。すると、ミラさんを先頭にしたウェンディたちが食堂へとやってきた。
「「「「「いただきます!!」」」」」
席に着くなり両手を合わせて挨拶をすると、全員が男性陣顔負けの勢いで料理を口に運んでいく。よほどお腹が空いてたんですね。
「美味しい!!」
「さすがミラだね!!」
「あら?それ作ったのはシリルよ?」
野菜炒めを食べていたレビィさんとカナさん、そしてそれを聞いていたミラさんがそう言う。俺が作ったことが意外だったのか、二人はキョトンとしている。
「おかわりもありますので」
「大掃除頑張ったんだから、そのねぎらいよ」
次の料理を作りながら俺とミラさんが皆さんに声をかける。料理に視線を向けていると、後ろからすごい視線を感じた俺と彼女は、そちらに顔を向け直す。
「「「「「これぞ女子力」」」」」
「ここにいた・・・本命が」
「え?」
「??」
先程まで話題に上がっていた女子力の話に戻っており、驚いてしまう俺と、何のことだかさっぱりのミラさん。
「昔はへたくそだったはずだが・・・」
「何か言いました?」
「何でもない」
エルザさんがミラさんを見つめてそう言葉を漏らす。隣にいるウェンディは何と言ったのか聞き取れなかったので彼女に話しかけるが、料理を頬張りながらエルザさんは誤魔化していた。
その後はルーシィさんがなんか敗北感に包まれながら食べていたけど、そもそも女子力ってどういうものなのか、みんなイマイチわかってないんだし、なんだっていいんじゃないかな?と思った今日この頃。
後書き
いかがだったでしょうか。
ここに来てまさかのFAIRYGIRLSから一話使わせてもらっちゃいました。
ちなみにこのスッピンオフからはもう一つやりたい話があるのでいずれ書こうと思います。
次はアニメオリジナルに戻る予定ですので悪しからず。
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