Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-
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A's編
第四十六話 事件後の穏やかな日々
side フェイト
アースラで母さんとアルフと三人で過ごすゆっくりとした日々。
母さんに魔法のアドバイスをもらったり、クロノに模擬戦に付き合ってもらったりと充実した日々。
裁判が始まってからも母さんと一緒にいられるし、何も不満はない。
最近では裁判が一時止まっているので時間もたくさんとれる。
でも母さんも色々忙しいのか常に一緒というわけにもいかない。
母さんを待っている時間に士郎から貰った白い剣のペンダントを眺める。
「フェイト、それお気に入りだね」
「え? う、うん。士郎との大切な繋がりだから」
「そだね。あ、そうそうなのはからビデオメール来てたよ」
「ほんと」
少し前から始めたなのはとのビデオメール。
映像越しだけど士郎やなのはの近況を知る事は出来るし、私達の近況を話す事も出来る。
前回来たビデオメールではなのはの友達のアリサとすずかを紹介してもらったり、ビデオ越しだけど少しずつ友達が増えているのがうれしい。
裁判が終わって海鳴にいったらすずかやアリサとも会いたいし。
そんな時部屋の鍵が開く音がして
「ただいま」
「おかえりなさい。母さん」
「あ、おかえり。今日ははやいんだね」
「ちょっとね。
あとフェイト、横になってるのはいいけど髪に寝癖がついてるわよ」
私の髪を撫でる母さんの手が気持ちいい。
そんな母さんの後ろにいる誰か。
それは
「お邪魔するわね。フェイトさん」
「リンディ提督」
「ちょっと話があってね」
どこか少し疲れているような困った表情を浮かべたリンディ提督だった。
リンディ提督の話というのは、アリシアが永遠の眠りについたあの事件の再調査報告を兼ねて裁判が再開する日程の連絡、そして嘱託魔導師試験について
だけど
「あれ? 確か……嘱託魔導師試験ってフェイトに裁判終了までに受けてみるか考えてほしいって言っていたアレだよね?」
アルフの言葉に私も首を傾げる。
アルフの言うとおりこの話は裁判後っていう事だったはずだけど。
「そう。異世界での行動制限が減るから裁判後に海鳴に移住した時動きやすいようにっておもってたのだけど」
「状況が少し変わったという事ね。
察するに士郎君に関わる事かしら?」
母さんの言葉にリンディ提督が静かに頷き、資料がモニターに映し出された。
そこには『特別会議資料−魔術師【衛宮士郎】について− ≪部外秘≫』と書かれていた。
士郎についての資料?
それに部外秘って
「いいのかしら?
部外秘資料を私達に見せて」
母さんの言葉ももっともだ。
部外秘資料の漏洩となればリンディ提督の進退にかかわるもの。
だけど
「プレシアさんとフェイトさん、アルフさんには関わりがある事ですから。
この資料にある通り先日完全非公開で特定階級以上の方々が集まって士郎君の事についての会議が開かれました」
管理局の特定階級以上の人たちが集まって開くってもしかして
「士郎の、魔術師の存在が公になったからですか?」
「ええ、今まで見つかった事のない新たな魔法技術が管理外世界で見つかったからどう対応するか意見が分かれているから」
「まさかとは思うけど、海鳴に攻め込むなんて事は」
「そんな事はしません」
母さんの言葉に慌てて首を横に振るリンディ提督。
それに安堵の息を吐くけど
「だけどあんまりいい話でもないんだろ?」
「ええ、アルフさんの言う通りよ。
確かに管理外世界という事もあるし、魔術師との関わりを断ち切りたくないから現状は今まで通りよ」
今まで通りということはつまり
「今回の事件と私達を通しての繋がりを維持して、魔術技術を教えてもらえないか依頼だけは出すといったところかしら?」
「そうです」
リンディ提督が頷いた事に安堵しかけるけど気になった事があった。
リンディ提督は今「現状は今まで通りよ」と言った。
「リンディ提督、現状って」
「その前にここを見てもらえるかしら」
リンディ提督がパネルを操作して表示したのは資料の『確認武装』と『事実未確認又は詳細不明資料』の欄。
エクスカリバーやジュエルシード八個消滅の件や次元断層消滅に関しては原因不明として記載していない事は知ってる。
それ以外にない情報がある。
それがジュエルシードを破壊した赤い槍の事。
そして破壊されたジュエルシードに関しても
あの資料は管理局が魔術師に強硬姿勢を取るのを牽制するために公開するって聞いていたけど
「会議前に作成した資料をレティとグレアム提督にみてもらったの。
その中でジュエルシード破壊の件と破壊した槍についてはジュエルシード事件の資料に士郎君の関与不明情報として記載しておくことにしたの」
「なるほどね。
その情報を受けて管理局が強硬な姿勢をとるのか、現状を維持するのか判断がつかなかったわけね」
「ええ、この情報がなくて強硬な姿勢を取るなら、新たに判明した情報として公開すればいいし、現状維持なら手札としてもっておけるわ」
士郎、結構綱渡りな状態なんだ。
今まで見つかった事のない魔法技術という事もあったから管理局との繋がりや情報の公開を気にしてたのは知ってる。
だけどここまで切迫しているとは思わなかった。
「けどさ管理局が強硬な姿勢を取った場合って士郎もまずいと思うけど、管理局側も結構まずくないかい?」
アルフがそんな事を言うけど、いまいち意味がわからなくて首を傾げてしまう。
だけど母さんとリンディ提督はそれに頷く。
「アルフ、それってどういう事?」
「だってさ士郎の奴が使ってた武装の中でこの中にないやつがあるじゃん」
「エクスカリバーの事かしら?」
リンディ提督がアルフの言葉に首を傾げるが
「いや、そうじゃなくて。
管理局が来る前、士郎と初めて会った時に」
「あ、そういえばアレもあるんだよね」
エクスカリバーやジュエルシードを破壊した槍の存在でリンディ提督やクロノの前で話した事はなかったけど、確かにある。
目に見える威力としてはエクスカリバーには及ばないけど異質な武器が
「フェイトさん、それって」
「えっと私となのは、士郎が初めて会った時に私、士郎と戦ったんですけどその中に宝具のような武器がいくつかあって」
「まだあったのね。
その事は今は置いておくとしてさっきアルフさんがいってた心配も当然あるわ。
士郎君はまだ本当の実力を見せていないだろうし、士郎君の武装にどれだけのモノがあるか想像もつかないもの」
「一般の武装局員程度なら少々集めても意味はないでしょうしね」
そうか。
士郎の実力なら武装局員と戦闘しても武装局員の方が危ない。
確かに数では勝るけど非殺傷設定がないSランククラスの攻撃を使う相手と戦いたいはずがない。
仮に戦ったとしても勝つまでにどれだけ被害が出るかわかったもんじゃない。
「嘱託魔導師の件に話を戻すけど、嘱託魔導師試験を受ける気があるなら裁判終了前に受けてもらいたくて」
「フェイトとアルフにも嘱託魔導師、非常勤局員として管理局との繋がりを残しておけば引き渡しがスムーズに出来るというわけね」
つまり私が嘱託魔導師になれば海鳴に行く際の士郎の負担を減らせる。
「勿論すぐにとはいわないわ」
「いえ」
もう私の中で答えは出てる。
私は少しでも士郎の役に立ちたい。
それにリンディ提督やクロノの力になれる。
「嘱託魔導師試験受けさせてください」
母さんが一瞬驚いたけど、私の眼を見てすぐに微笑んで頷いてくれた。
「わかったわ。
なら嘱託魔導師試験の件進めさせてもらうわね。
ありがとう。フェイトさん」
それから再来週の裁判があった日に私の嘱託魔導師試験の受験の意思が再確認されて、試験の日取りが決まった。
そして試験当日。
受ける嘱託魔導師試験はAAAランク。
勿論目指すは一発合格。
本来なら緊張してしまう状況だけど意外なほど緊張していなかった。
なぜなら再開された裁判で提出されたアリシアがいなくなってしまった事件の再調査報告書。
それからさらに二週間ほど審議がされ、一昨日上層部の圧力などの関与が認められて今回の事件の発端となった原因が上層部にも責任がある、という事で母さんの減刑が決定的になった。
その他にも事情を知った管理局の局員の中で子供を持つ方々から情状酌量を求める意見が多数上がったのだ。
そのため私も安心しきってしまったというか試験だというのにそんなに緊張していない。
それに試験官はレティ提督だし、試験官補佐としてエイミィがいるし、リンディ提督も推薦者として同席してる。
勿論母さんもリンディ提督たちと共に試験の様子を見てる。
「では受験番号1番の方、氏名と出身世界をどうぞ」
「ミッドチルダ出身、フェイト・テスタロッサです。
こちらが私の使い魔のアルフです」
「よろしく」
それにしてもリンディ提督は推薦者だから当然として、試験官やその補佐官がなかば身内であるレティ提督やエイミィでいいんだろうかとも思ってしまう。
なんだかあまり緊張していない試験なのに余計に気が抜けてしまいそう。
「じゃ、まずは儀式試験の実践から」
「はい」
エイミィの言葉に右手にバルディッシュを握る。
そして左手で首にかかる金色の宝石が埋まっている白い剣を握る。
冷たい金属のはずなのに温もりを感じる。
大丈夫。
気を引き締め直して詠唱を始めた。
side リンディ
フェイトさんの嘱託魔導師認定試験が始まった。
「使い魔持ちのAAAクラス魔導師か。
筆記試験はほぼ満点。
魔法知識も戦闘関連に関しては修士生クラス。
リンディの推薦も納得いくわね」
「でしょう」
フェイトさんの儀式魔法を見ながら筆記試験の結果にも目を通すレティ。
プレシアさんも黙って試験を見つめているけど、やはり母親と言うべきかどこか心配そうにモニターを見ている。
「それに雷の魔力変換資質持ちとは珍しいわね」
「それは私似なんでしょうね」
レティの言葉にどこか苦笑しながらそんな事を言うプレシアさん。
確かにプレシアさんも魔力変換資質持ちだし、こういったところはやはり親子という事なのでしょうね。
「儀式魔法4種、無事確認と。
じゃあ一時間休憩だからお弁当食べて一休みしてね」
「はい」
「じゃあ、私は行くわ」
エイミィの言葉に頷くフェイトさん。
それを確認して部屋を後にするプレシアさん。
その手にはランチボックスが握られている。
プレシアさんが部屋からいなくなって
「ここから一時間は団欒タイムですね」
「プレシアさんも忙しいし、フェイトさんの試験に立ちあうからって休みの申請をしていてよかったわ」
プレシアさんは裁判中にもかかわらずアリシアさんが亡くなった事件の再調査結果、そして局員からの情状酌量を求める意見により既に技術提供という形で一研究者として協力してくれている。
その分裁判の合間にフェイトさんとゆっくり出来る時間は減ってしまっていた。
そんな時にフェイトさんの試験当日に休みが貰えるとわかるや否やアースラの厨房と食材に使用許可を求めてきた。
勿論すぐに許可を出して、今日のフェイトさんとアルフさんのお弁当はプレシアさんの手作りとなっている。
それに長期滞在のために最低限の調理機器がプレシアさん達の部屋には備え付けられており、時間がある時はプレシアさんが腕を振るっているという話。
「二人の関係も良好そうでなによりね」
レティの言うとおりね。
さて私達も食事にしましょうか。
side フェイト
母さんの作ってくれたお弁当を食べて、午後からの最終の実戦訓練を迎え、試験も完了した。
それから試験場から移動して今は試験の結果を聞いている。
「魔法技術も使い魔との連携もほぼ完璧。
戦闘も攻撃に傾倒しすぎだけどまあ合格点」
戦闘が攻撃に傾倒しすぎっていうのはやっぱり私の戦闘スタイルの問題だよね。
私が得意としているスピード。
足を止めて防御をして攻撃をするというのはどちらかというとなのはのようなスタイルだし。
士郎のスタイルは……士郎のスタイルってなんだろ?
魔力弾は使用しているのは見た事がないけど剣の投擲や弓で遠距離は出来る。
剣を使った近距離もお手の物。
それに足を止めてのスタイルかというと庭園での自動機械との戦いではそんなのではなかった。
威力も弱いどころか私なんかじゃ防げないような攻撃もあるし、かといって防御が苦手かというとそういうわけでもないし……士郎って結構反則だよね。
とまだ話の途中だから考えるのは中断、戦闘スタイルについては後で母さんにも相談してみようっと
「うっかりやさんは今後気をつけてしまうとして」
はうっ!
実戦訓練の時にクロノとの戦いで負けて不合格と勘違いするという大きな勘違いをしてしまったのだから恥ずかしい。
だけど
「おめでとう、フェイトさん。
これをもってAAAランク嘱託魔導師認定されました」
「認定証の交付の時に面接があるからあとはそれだけね」
「はい。ありがとうございます」
無事に合格できたことがうれしい。
うれしいけどまだ顔が赤い気がする。
でも
「おめでとう。よく頑張ったわね」
「やったね。フェイト」
何よりもうれしいのが、私が合格した事を本当にうれしそうに笑みを浮かべて頭を撫でてくれる母さんと私に抱きついて尻尾を勢いよく振っているアルフ。
すれ違ってしまった時もあったけど、今こうして母さんとアルフと一緒にいられるのも士郎やなのは達のおかげ。
今度のビデオメールでちゃんと報告しないと
「じゃあ、今日はフェイトさんの合格祝いにパーティでもやりましょうか」
「お、いいですね。艦長」
「なら張りきって御馳走を作らないとね」
「丁度いいお酒もあるのよ」
「いや、レティ提督。フェイトに飲酒はまだ早いんでは」
「私は肉がいい」
でもビデオメールよりも先に母さん達とのお祝いが先みたい。
少し前までは全然考えられなかった世界。
それが今ここにある。
「ささっと認定証を交付してしまいましょうね」
「そうね。さ、いきましょう。フェイト」
私に手を差し出してくれるリンディ提督と母さん。
それはまるでもう一人母さんが増えたようで
「はい!」
心が温かくて二人の手を掴んで歩きはじめていた。
後書き
無事に四十六話更新。
しかし時間がない。
執筆に時間はとれない・・・
私に自由は時間をくれ!!
とまあぼやきながら、次回も来週更新です。
それではまた来週。
ではでは
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