戦国異伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二百四十七話 待つ者達その十
「あの者達の国にな」
「そうされますか」
「どうも耶蘇教の本山はな」
「羅馬という街にあるそうですな」
歳久が言って来た。
「大層古い街とか」
「そして相当にな」
「腐っておるとか」
「だからじゃ」
それでというのだ。
「あの教えについてもな」
「考えておられますか」
「人買いをしておるとか」
家久の言葉は剣呑なものだった。
「坊主でありながら」
「うむ、だからじゃ」
「あの教えは」
「危うい、だから考えておるのじゃ」
「やはりそうですか」
「天下を乗っ取られてはたまらぬ」
だからだというのだ。
「何としてもじゃ」
「あの者達も何とかする」
「そうされますか」
「教えがどうなどと構わぬ」
耶蘇教のそれ自体はというのだ。
「神の下に等しいというのもな」
「同じ人ならば」
「それは当然のことですな」
「身分はあるにしても」
「そのことは」
「それ自体はよい」
至ってというのだ。
「しかしその教えを餌としてじゃ」
「人を寄せ」
「そして奴隷として売る」
「そのうえで国を乗っ取る」
「そうした所業はですな」
「放ってはおけぬ、まさに天魔の所業じゃ」
信長は顔を顰めさせてもこうも言った。
「だからじゃ」
「断じて、ですな」
「その所業を許さず」
「耶蘇教に対しても」
「政を講じますか」
「そうする、何かとな」
こう言ってだ、信長は魔界衆との戦の後のことも考えるのだった。彼はその中で家臣達にこうしたことも言った。
「必要ならば禁じる」
「耶蘇教を」
「それ自体を」
「そうも考えておる」
「致し方ありませぬかと」
ここで信長に言って来たのは羽柴だった、彼も普段の剽軽さなはなく顔を強張らせている。
「民を奴隷にし売り飛ばしあまつさえ国を乗っ取るなぞ」
「許せぬな」
「それを許してはです」
「天下人ではない」
「はい」
羽柴は信長に強く言う。
「ですから」
「わしも同じ考えじゃ」
「だからですな」
「はい、確かに禁じるとなればです」
「相当じゃな」
「ですがそれを国を乗っ取るのに使い」
あまつさえだ、民を奴隷にし売るならばというのだ。
「教え以前です」
「放ってはおけぬわ」
「だからこそです」
「それも考えておこう、しかしな」
ここでだ、信長はこうも言った。
「貿易はする」
「これまで通り」
「南蛮ともな」
「そうされますな」
「スペインやポルトガル等と揉めてもな」
それでもというのだ。
「南蛮とのそれはする」
「続けられますな」
「神戸や横浜、長崎、堺等でな」
「これまで通りですな」
「南蛮ともするしじゃ」
「明とも」
「貿易は多くの銭を生む}
だからこそというのだ。
ページ上へ戻る